今回は、「運営管理 ~H28-18 生産性(2)生産システムの評価~」について説明します。
目次
運営管理 ~平成28年度一次試験問題一覧~
平成28年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
システムの信頼性/保守性/可用性
システムの「信頼性」「保守性」「可用性」を示す指標について説明していきます。
信頼性:MTBF(Mean Time Between Failure)
「MTBF」は「平均故障間隔」といい「システムの信頼性」を示す指標です。
「MTBF」は、故障が復旧してから次の故障が発生するまでの平均時間であり、数値が大きいほど「信頼性」の高いシステムであることを示しています。
MTBFの算出例
- MTBF =( 120時間 + 90時間 + 90時間 )÷ 3回 = 100時間
保守性:MTTR(Mean Time To Repair)
「MTTR」は「平均修復時間」といい「システムの保守性」を示す指標です。
「MTTR」は、故障が発生してから故障が復旧するまでの平均時間であり、数値が小さいほど「保守性」の高いシステムであることを示しています。
MTTRの算出例
- MTTR =( 3時間 + 1時間 + 2時間 )÷ 3回 = 2時間
可用性:稼働率
「稼働率」は、システムを利用できる時間の割合であり、「システムの可用性」を示す指標です。
信頼性の指標である「MTBF」の数値が高く、保守性の指標である「MTTR」の数値が低いほど、「稼働率」の数値が高くなり総合的に信頼性が高いシステムであると評価されます。
稼働率の算出例
- 稼働率 = MTBF ÷(MTBF + MTTR)= 100時間 ÷(100時間 + 2時間)= 98.039…%
複数システムで構成されるシステム全体の稼働率
複数のシステムで構成されるシステム全体の稼働率の計算方法を以下に示します。
直列システムの稼働率
複数のシステムが「直列」に接続されているシステム全体の稼働率は以下の計算式により算出します。
直列システムの構成図
並列システムの稼働率
複数のシステムが「並列」に接続されているシステム全体の稼働率は以下の計算式により算出します。
並列システムの構成図
信頼性と可用性の違いについて
「信頼性」と「可用性」が示す内容の違いについて説明します。
一言でいうと、「信頼性」とは「故障の発生しにくさ」を示しており、「可用性」は「システムを利用できる時間の割合」を示しています。
以下の特徴を有する2つのシステムで、その違いについて考えていきます。
- システムA:900時間運転すると故障が発生して復旧までに100時間かかる。
- システムB:99時間運転すると故障が発生して復旧までに1時間かかる。
「信頼性」と「可用性」の観点から「システムA」と「システムB」を比較すると、「信頼性」が高いのは「システムA」であり「可用性」が高いのは「システムB」という結果となります。
システムA | システムB | ||
信頼性 | MTBF | 900時間 ÷ 1回 = 900時間 | 99時間 ÷ 1回 = 99時間 |
可用性 | 稼働率 | 900 ÷(900+100)= 90% | 99 ÷(99+1)= 99% |
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【平成28年度 第18問】
下表は、ある設備の故障状況に関して、故障後の設備修復が終わってから再び故障に至るまでの故障間隔とその頻度を度数分布表にまとめたものである。設備の修復時間をある一定時間以下に短縮することにより、90%以上のアベイラビリティ(可用率)を達成したい。これを達成するための設備の平均修復時間の最大値として、最も適切なものを下記の解答群から選べ(単位:時間)。
故障間隔の階級値(時間) 度数 70 3 80 5 90 13 100 7 110 2
[解答群]
ア 6
イ 8
ウ 10
エ 12
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
システムの「信頼性」「保守性」「可用性」を示す指標に関する知識を問う問題です。
MTBF(平均故障間隔)の算出
「MTBF」は「システムの信頼性」を示す指標であり「平均故障間隔」を表しています。
今回の問題では、与えられた度数分布表に記載された「故障間隔の階級値(時間)」の平均値が「MTBF(平均故障間隔))」であり、以下の通り算出することができます。
- MTBF =( 70時間 × 3回 + 80時間 × 5回 + 90時間 × 13回 + 100時間 × 7回 + 110時間 × 2回 )÷ 30回 = 90時間
90%以上の可用率を達成するMTTR(平均修復時間)の算出
「可用率(稼働率)」は「システムの可用性」を示す指標であり、システムを利用できる時間の割合を表しています。
また、「MTTR」は「システムの保守性」を示す指標であり「平均修復時間」を表しています。
「可用率(稼働率)」と「MTBF(平均故障間隔)」と「MTTR(平均修復時間)」の関係は、以下の公式により表されます。
「MTBF(平均故障間隔)」が「90時間」の設備において、「MTTR(平均修復時間)」を何時間以内に短縮することができれば、「可用率(稼働率)」を「90%以上」とすることができるのかについて求めていきます。
- MTBF:90時間 ÷( MTBF:90時間 + MTTR )≧ 可用率(稼働率):90%
- 90時間 + MTTR ≦ 90時間 ÷ 90%
- 90時間 + MTTR ≦ 100時間
- MTTR ≦ 10時間
設備の「MTTR(平均修復時間)」を10時間以内(最大値10時間)に短縮することができれば、90%以上のアベイラビリティ(可用率(稼働率))を達成することができます。
答えは(ウ)です。
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