今回は、「事例Ⅲ ~平成24年度 解答例(4)(第3問-設問1)~」について説明します。
目次
事例Ⅲ ~平成24年度試験問題一覧~
平成24年度のその他の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
生産管理
「生産管理」とは、生産活動に関する「Q:品質」「C:コスト」「D:数量および納期」の最適化を図るため、「需要予測」「生産計画」「生産実施」「生産統制」を行うことをいいます。
生産管理のポイント
「生産管理」に関連する主なポイントは以下の通りです。
- 営業部門が入手した需要予測または受注情報を製造部門に迅速に連携して、迅速に生産計画に反映されるべきです。
- 生産計画は「大日程・中日程・小日程」に分割してできるだけ短い間隔で更新され、できるだけ短い期間を対象として作成されるべきです。
- 生産計画は、全ての製品および全ての工程を対象にして立案されるべきです。
- 生産計画に基づき、一元的に生産統制(進捗管理、現品管理、余力管理)されるべきです。
生産統制
「生産統制」とは、作成された生産計画にしたがって生産活動を実施できるように、生産活動の状況を把握して、計画に対する差異が発生した場合には、即座に対策を行って差異を解消させていくことをいいます。
生産計画と生産統制の関係
「生産統制」では「生産計画」と照らし合わせて「QCD」の観点から問題が発生していないかを管理していきますが、「生産統制」で管理する項目には「進捗管理」「現品管理」「余力管理」があります。
生産統制 | 生産計画 | 説明 |
進捗管理 | 日程計画 | 日々の作業の進行状況を把握して調整する管理活動 |
現品管理 | 材料・部材計画 | 在庫の品質を確保して、所在と数量を明確に把握して調整する管理活動 |
余力管理 | 工数計画 | 労働者や機械の能力(例えば最大生産量など)に対する負荷状況を把握して、能力と負荷のバランスを調整する管理活動 |
進捗管理(進度管理)
「進捗管理」とは、日々の作業の進行状況を把握して調整する管理活動のことをいいます。
「進捗管理」の一番の目的は納期を遵守することですが、生産計画よりも前倒しして作業を進めても、仕掛品・完成品を倉庫に保管するコストが増加してしまうなどの問題が発生するため、適切ではありません。
「進捗管理」では、早過ぎず遅過ぎず計画通りの日程で作業が進行するよう管理する必要があります。
現品管理
「現品管理」とは、「資材」「仕掛品」「製品」などの在庫の品質を確保して、所在と数量を明確に把握して調整する管理活動のことをいいます。
状況 | 観点 |
外部業者からの受け入れ (原材料・部品) |
受け入れ数量の過不足確認 品質の確認(傷・変形・破損など) |
運搬 (原材料・部品・仕掛品・完成品) |
運搬数量の過不足確認 適正な運搬荷姿 - 現品の傷・変形・破損の防止 適正な運搬方法 - 現品の傷・変形・破損の防止 |
保管 (原材料・部品・仕掛品・完成品) |
保管数量の過不足確認 適正在庫の維持 - 在庫の長期保管による品質劣化の防止 適正な保管方法 - 積み上げによる荷崩れ等の防止 - 温度管理等による品質劣化の防止 |
外部業者への受け渡し (完成品) |
受け渡し数量の過不足確認 品質の確認(傷・変形・破損など) |
余力管理
「余力管理」とは、労働者や機械の能力(例えば最大生産量など)に対する負荷状況を把握して、能力と負荷のバランスを調整する管理活動のことをいいます。
第3問(設問1)
第3問(配点40点)
C社では新規事業として外食チェーンY社との取引を検討している。その計画について以下の設問に答えよ。
(設問1)
Y社から要求されているセントラルキッチンとしての機能を備えるためには、C社ではどのような対応を必要とするのか、120字以内で述べよ。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
解答の方向性
第3問(設問1)では、食品スーパーを中心に事業展開してきたC社にとって、Y社から要請されているセントラルキッチン事業を実現するための課題を発掘し、そのための問題を解決する能力を問われています。
Y社から要求されているセントラルキッチンとしての機能と、現在のC社における生産の現状を比較して、そのギャップからどのような対応が必要かを考えて、解答を構成していきます。
与件文で関連しそうな箇所
与件文の【生産概要】の中盤と最後の一段落、および【新規事業】の中盤に記述されています。
Y社から要求されているセントラルキッチン事業で必要な対応は【新規事業】に記述されていますが、C社の現状と比較するために【生産概要】に記述されている内容も確認していく必要があります。
問題文の中では、以下の部分が該当します。
詳細に示すと以下の通りとなります。
- 製品の生産工程は、購入した部分肉の受入検査、一次加工(整形)、スライス、トレー盛り付け、包装、製品検査である。納品は、各顧客からの注文によって週2回それぞれの顧客の配送センターへ配送することが原則となっている。生産計画は毎月20日までに翌月の計画が作成されるが、その時点では顧客からの注文内容は確定しておらず、各営業担当が各顧客への販売数量を予測し、製造部では製品在庫との調整を図って見込み生産を行っている。
⇒現在は、生産工程において「牛肉のスライス」は実施していますが、Y社からは「牛肉のスライス、味付け、野菜のカットなどについて盛り付け前までの事前加工」を要求されているため、要求に対応する生産体制を構築する必要があります。
⇒現在は、毎月20日まで営業担当が販売数量を予測して生産計画を立て、各顧客からの注文によって週2回配送していますが、Y社からは「前日発注・翌日全店直接配送を行うこと」を要求されているため、日々の生産計画の策定と配送体制を構築する必要があります。
- また食品業界で強く要求されるトレーサビリティについては、主原料で使用する輸入牛肉、国産豚肉の両方とも購入時に付帯してくるロット番号で識別管理している。現在使用している牛肉は、すべて輸入牛であり、そのため個体管理は行っていない。
⇒現在は、ロット番号で識別管理していますが、Y社からは「国産牛を使用して個体管理すること」を要求されているため、個体管理する体制を構築する必要があります。
- 現在C社には、これまで取引がなかった外食チェーンY社から新規の商談が持ち込まれている。このY社はC社と同地域に立地し、国産牛のステーキ、すき焼き、しゃぶしゃぶ、シチューなどを主なメニューとして、良質な食材、店舗ごとの多彩なメニュー、衛生管理の徹底を掲げて従来のファミリーレストランと差別化を図り、近年急速に多店舗展開している。現在Y社では、材料を本社で手配して各店舗に仕入先から納品させ、加工、調理は各店舗で行っているが、店舗数が増加するなかで加工、調理方法が異なり品質とコストのばらつきに悩んでいた。そこでY社では各店舗の独自性を重視する経営の方針を変更し、集中仕入、集中加工となるセントラルキッチン化の検討を行い、その委託先としてC社を候補としたものである。
⇒外食チェーンY社は、良質な食材、店舗ごとの多彩なメニュー、衛生管理の徹底を掲げて多店舗展開していたが、品質とコストのばらつきを抑えるため、「店舗ごとの多彩なメニュー」をあきらめて、セントラルキッチン化の導入を検討しています。
一番重要なのは、セントラルキッチン化の導入によって、品質とコストのばらつきを抑えることです。
- 打ち合わせの過程でY社からは、全店で必要とする主力メニューの牛肉のスライス、味付け、野菜のカットなどについて盛り付け前までの事前加工を行うことを要求されている。加えて製品のトレーサビリティは国産牛を使用することから個体管理すること、前日発注・翌日全店直接配送を行うことなど、C社でセントラルキッチンとしての機能を持つよう要求されている。C社では、Y社の要求内容に対応可能かどうか検討中である。
⇒この段落にY社から求められている要求がすべて記述されています。具体的には、「全店で必要とする主力メニューの牛肉のスライス、味付け、野菜のカットなどについて盛り付け前までの事前加工を行うこと」「製品のトレーサビリティは国産牛を使用することから個体管理すること」「前日発注・翌日全店直接配送を行うこと」です。
セントラルキッチンとしての機能を備えるために必要な対応
セントラルキッチンとしての機能を備えるために必要な対応は以下の通りです。
- 全店で必要とする主力メニューの牛肉のスライス、味付け、野菜のカットなどについて盛り付け前までの事前加工を行う体制の確立
- 製品のトレーサビリティは国産牛を使用することから個体管理
- 前日発注・翌日全店直接配送を行うこと
- 品質とコストのばらつきを抑えること
解答例
ここまでに整理してきた内容に基づき、120文字以内にまとめます。
必要な対応は、牛肉のスライス・味付け・野菜のカットなど盛り付け前までの事前加工を行う生産体制、主原料である国産牛の個体管理体制、前日発注・翌日全店直接配送を行う生産計画の策定方法と配送体制を整備して、品質とコストのばらつきを抑えることである。(120文字) |
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