今回は、「運営管理 ~R3-18 IE/作業研究(22) 動作研究~」について説明します。
目次
運営管理 ~令和3年度一次試験問題一覧~
令和3年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
動作研究
「動作研究」とは、作業者が行うすべての動作を調査・分析して、最適な作業方法を求めるための手法であり、作業する人間の身体動作や目の動きを分析して、非効率な動作を排除したり、動作を組み替えるなどの方法によって作業を改善することをいいます。
サーブリッグ分析(微動作分析)
「サーブリッグ分析(微動作分析)」とは、作業を構成する動作を手作業の最小単位である「18種類の動作要素(サーブリッグ)」に分解して作業の無駄を分析する手法です。
動作要素(サーブリッグ)の分類
「動作要素(サーブリッグ)」は、その有用度により「第1類(作業に必要な動作要素)」「第2類(補助的な動作要素)」「第3類(作業に寄与しない動作要素)」に区分されます。
分類 | 説明 |
第1類 | 作業に必要な動作要素であり、改善の余地がある動作要素 動作の基本とであり作業そのものと物の取り扱いからなる動作要素 「第1類」の中でも「組み合わす」「使う」「分解する」の3つだけが価値を生む動作要素であり、それ以外の動作はすべて改善の余地がある動作要素です。 |
第2類 | 補助的な動作要素であり、できるだけ排除すべき動作要素 動作を遅れさせる要素であり、治工具の置き方や使い方、または材料の置き方などに問題がある場合に発生する動作要素 |
第3類 | 作業に寄与しない動作要素であり、排除すべき動作要素 作業が進んでいない状態であり、動作の不均衡や前後工程とのつながりの悪さなどが原因で発生する動作要素 |
サーブリッグ記号
「動作要素(サーブリッグ)」は、それぞれの動作要素に合わせた「サーブリッグ記号」で表されます。
動作経済の原則
「動作経済の原則」とは、作業者が行う作業から「ムダ・ムラ・ムリ」を排除して、最も合理的に作業を行うための経験則のことをいい、4つの基本原則に基づき「身体の使用に関する原則」「作業場の配置に関する原則」「設備・工具の設計に関する原則」に分類されています。
4つの基本原則
「動作経済の原則」は、疲労軽減と時間短縮を実現する「4つの基本原則」の考え方に基づき「身体の使用に関する原則」「作業場の配置に関する原則」「設備・工具の設計に関する原則」が定められています。
- 動作の数を減らす。
- 両手を同時に使う。
- 動作の距離を短くする。
- 動作を楽にする。
身体の使用に関する原則
- 両手は、同時に動作を始め、あるいは同時に終わる。
- 両手は、休憩時間以外は同時に休めてはならない。
- 腕の運動は、左右対称的に、また同時に行う。
- 手に物を保持したままにしてはならない。
- 身体の運動部分をなるべく指や手などによる小さい動きで行う。
- 作業は、落とす、転がす、弾むなどの重力、慣性などの自然な力を利用して容易に行う。
- 動作は自然な姿勢を保ちリズムよく行う。
- 他の身体部位でできる作業は、手や指や目を使わないようにする。
- 運動の方向を急に変更せずに、連続した曲線状の運動とする。
作業場の配置に関する原則
- 工具や材料は、作業者の手の届く定位置に配置する。
- 工具や材料は、作業位置の周辺で、できるだけ作業者の前面に配置する。
- 工具や材料は、最良の順序で作業がしやすいように配置する。
- 作業台や椅子は、作業者の体格に合わせて正しい姿勢がとれるような高さと形にする。
- 物の供給や搬出は、慣性や重力を利用して行う。
- 作業の性質に適した痛風、温度、湿度、採光および照明を与える。
設備・工具の設計に関する原則
- 機械類の操作は足を有効に使って、手の負担が軽くなるように設計する。
- 2つ以上の工具はできるだけ1つに組み合わせる。
- 治具、万力などを活用して、人間による保持を削減する。
- ハンドルなどの握り部分は、手のひらに当たり握りやすい形状にする。
- できるだけ専用の工具を使用する。
作業域
「作業域」とは、作業を遂行するときに、作業者が身体各部の動かすのに必要な作業範囲のことをいいます。「作業域」には「最大作業域」と「正常作業域」があります。
最大作業域
「最大作業域」とは、肩を動かさずに手を伸ばしたときに届く範囲のことをいいます。
最大作業域
正常作業域
「正常作業域」とは、上腕を身体に近づけた自然な状態で、肘を中心にして前腕を自在に動かせる範囲のことをいいます。
正常作業域
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【令和3年度 第18問】
ある部品の検査工程では、部品のふたを取り外して中身の配線に異常がないかをチェックする作業をしている。この工程のレイアウトを下図に、作業手順①~④を図の右に示している。この作業をサーブリッグ分析した結果を下表に示す。この分析結果から得られる判断に関する記述として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
[解答群]
ア 最初に改善すべきは、第1類に分類される「保持」と「手待ち」である。
イ 左手の動作要素5から12に保持があるので、両手作業が可能な保持具を導入する。
ウ 部品箱、合格品箱、不合格品箱の配置を見ると、すべて正常作業域に配置されているため、レイアウトは改善しなくてよい。
エ 右手の分析結果より、仕事をするうえで必要な動作要素は8つである。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
「動作研究」の「サーブリッグ分析」「動作経済の原則」「作業域」に関する知識を問う問題です。
(ア) 不適切です。
「サーブリッグ分析(微動作分析)」とは、作業を構成する動作を手作業の最小単位である「18種類の動作要素(サーブリッグ)」に分解して作業の無駄を分析する手法です。
「動作要素(サーブリッグ)」は、その有用度により「第1類(作業に必要な動作要素)」「第2類(補助的な動作要素)」「第3類(作業に寄与しない動作要素)」に区分されます。
分類 | 説明 |
第1類 | 作業に必要な動作要素であり、改善の余地がある動作要素 動作の基本とであり作業そのものと物の取り扱いからなる動作要素 「第1類」の中でも「組み合わす」「使う」「分解する」の3つだけが価値を生む動作要素であり、それ以外の動作はすべて改善の余地がある動作要素です。 |
第2類 | 補助的な動作要素であり、できるだけ排除すべき動作要素 動作を遅れさせる要素であり、治工具の置き方や使い方、または材料の置き方などに問題がある場合に発生する動作要素 |
第3類 | 作業に寄与しない動作要素であり、排除すべき動作要素 作業が進んでいない状態であり、動作の不均衡や前後工程とのつながりの悪さなどが原因で発生する動作要素 |
最初に改善すべき動作要素は、作業に寄与していない「第3類」に区分される動作要素であり、問題で与えられた表においては「保持」と「手待ち」が「第3類」に該当しています。
したがって、最初に改善すべきは、第1類ではなく第3類に分類される「保持」と「手待ち」であるため、選択肢の内容は不適切です。
(イ) 適切です。
「動作経済の原則」とは、作業者が行う作業から「ムダ・ムラ・ムリ」を排除して、最も合理的に作業を行うための経験則のことをいい、「身体の使用に関する原則」「設備・工具の設計に関する原則」において「保持」に関する指摘がされています。
身体の使用に関する原則
- 手に物を保持したままにしてはならない。
設備・工具の設計に関する原則
- 治具、万力などを活用して、人間による保持を削減する。
したがって、左手の動作要素5から12に保持があるので、両手作業が可能な保持具を導入することにより左手の無駄を改善することができるため、選択肢の内容は適切です。
(ウ) 不適切です。
「作業域」とは、作業を遂行するときに、作業者が身体各部の動かすのに必要な作業範囲のことをいいます。「作業域」には「最大作業域」と「正常作業域」があります。
「最大作業域」とは、肩を動かさずに手を伸ばしたときに届く範囲のことをいいます。
「正常作業域」とは、上腕を身体に近づけた自然な状態で、肘を中心にして前腕を自在に動かせる範囲のことをいいます。
正常作業域
問題で与えられた図を見ると、「部品箱」「合格品箱」「不合格品箱」の全てが「正常作業域」の範囲外に設置されています。
したがって、部品箱、合格品箱、不合格品箱の配置を見ると、すべて正常作業域に配置されておらず、部品箱は最大作業域に配置されているが、合格品箱、不合格品箱は最大作業域に配置されておらず、レイアウトは改善すべきであるため、選択肢の内容は不適切です。
(エ) 不適切です。
「動作要素(サーブリッグ)」は、その有用度により「第1類(作業に必要な動作要素)」「第2類(補助的な動作要素)」「第3類(作業に寄与しない動作要素)」に区分されます。
分類 | 説明 |
第1類 | 作業に必要な動作要素であり、改善の余地がある動作要素 動作の基本とであり作業そのものと物の取り扱いからなる動作要素 「第1類」の中でも「組み合わす」「使う」「分解する」の3つだけが価値を生む動作要素であり、それ以外の動作はすべて改善の余地がある動作要素です。 |
第2類 | 補助的な動作要素であり、できるだけ排除すべき動作要素 動作を遅れさせる要素であり、治工具の置き方や使い方、または材料の置き方などに問題がある場合に発生する動作要素 |
第3類 | 作業に寄与しない動作要素であり、排除すべき動作要素 作業が進んでいない状態であり、動作の不均衡や前後工程とのつながりの悪さなどが原因で発生する動作要素 |
「サーブリッグ分析(微動作分析)」とは、作業を構成する動作を手作業の最小単位である「18種類の動作要素(サーブリッグ)」に分解して作業の無駄を分析する手法です。
「動作要素(サーブリッグ)」は、それぞれの動作要素に合わせた「サーブリッグ記号」で表されます。
問題で与えられた表に基づき、右手の動作要素を「第1類」「第2類」「第3類」に分類すると以下の通りです。
No. | 略字 | 動作要素 | 分類 |
1 | UD | 手待ち | 第3類 |
2 | TE | ふたに手を伸ばす | 第1類 |
3 | G | ふたをつかむ | 第1類 |
4 | DA | ふたを取り外す | 第1類 |
5 | TL | 本体にふたを運ぶ | 第1類 |
6 | P | 位置決めする | 第2類 |
7 | A | ふたを本体に付ける | 第1類 |
8 | RL | 手を放す | 第1類 |
9 | TE | 手を戻す | 第1類 |
10 | UD | 手待ち | 第3類 |
選択肢に記述されている「必要な動作要素」とは「第1類」に分類される動作要素であるため、右手の分析結果より、仕事をするうえで必要な動作要素は「7」です。
したがって、右手の分析結果より、仕事をするうえで必要な動作要素は8つではなく7であるため、選択肢の内容は不適切です。
答えは(イ)です。
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