今回は、「経済学・経済政策 ~R4-8 主要経済指標(12)景気循環~」について説明します。
目次
経済学・経済政策 ~令和4年度一次試験問題一覧~
令和4年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
景気循環・景気動向指数 -リンク-
本ブログにて「景気循環」「景気動向指数」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- 景気循環・景気動向指数のまとめ
- R5-6 主要経済指標(13)景気動向指数(一致系列)
- H30-3 主要経済指標(3)CI・DIによる景気判断
- H29-6 主要経済指標(5)景気動向指数(採用系列)
- H24-1 主要経済指標(10)景気動向指数(先行系列)
景気循環
「景気循環」とは、経済全体の活動水準である景気において循環的に見られる変動のことをいい、「景気変動」や「景気の波」とも呼ばれます。
景気循環の局面
「景気循環」を表現する際には、その局面を2つに分ける方法と4つに分ける方法があります。
「景気循環」の基礎となっているバーンズとミッチェルの定義では4つの局面に分ける方法が示されていますが、実経済では「回復と好況」「後退と不況」の境界を判別することは困難であるため、2つの局面に分ける方法で表されるのが一般的であり、日本の内閣府においても2つの局面に分ける方法により「景気循環」を公表しています。
2つの局面に分ける方法
2つの局面に分ける方法では、「景気循環」の周期は、景気の「谷」から「谷」までとされており、景気の局面を「拡張期(拡大期)」「後退期」で表現します。
景気循環の周期(2つの局面に分ける方法)
4つの局面に分ける方法
4つの局面に分ける方法では、「景気循環」の周期は、景気の正常な水準から出発して「山」から「谷」を経て正常な水準に戻るまでとされることが多く、景気の局面を「好況(拡張・拡大)」「後退」「不況(収縮)」「回復」で表現します。
景気循環の周期(4つの局面に分ける方法)
景気循環論
「景気循環論」とは、ある特定の要因により景気が一定の周期で恒常的かつ法則的に循環すると考える説のことをいいます。
「景気循環」は、その周期が短いものから順に「キチン循環」「ジュグラー循環」「クズネッツ循環」「コンドラチェフ循環」に分類されます。
景気循環の種類 | 周期 | 主な要因 |
キチン循環(短期波動) | 約40ヶ月 | 企業の在庫変動 |
ジュグラー循環(中期波動) | 約10年 | 企業の設備投資 |
クズネッツ循環 | 約20年 | 建設需要 |
コンドラチェフ循環(長期波動) | 約50年 | 技術革新 |
景気循環と景気動向指数(CI・DI)の関係
日本の「景気循環」は、内閣府が毎月公表している「景気動向指数(CI・DI)」の動向を見て判断されています。
景気循環とCI(コンポジット・インデックス)の関係
「CI(コンポジット・インデックス)」とは、景気変動の大きさやテンポ(量感)を測定することを目的とした指標のことをいいます。
一般的に、「CI一致指数」の変動と景気の転換点は概ね一致しており、「CI一致指数」が上昇しているときは景気の「拡張期(拡大期)」にあり、「CI一致指数」が低下しているときは景気の「後退期」にあります。
景気循環とDI(ディフュージョン・インデックス)の関係
「DI(ディフュージョン・インデックス)」とは、経済活動の各分野への景気の波及の度合い(波及度)を測定することを目的とした指標のことをいいます。
月々で振れはあるものの、「DI一致指数」が継続的に「50%」を上回っている場合は景気の「拡張期(拡大期)」とし、「DI一致指数」が継続的に「50%」を下回っている場合は景気の「後退期」としています。
また、「DI一致指数」が「100%」から「0%」に下降していく期間を「好況」とし、「DI一致指数」が「0%」から「100%」に上昇していく期間を「不況」としています。
なお、「DI一致指数」が「50%」の点を「景気転換点」といいますが、「不況(0%→100%)」の中で「50%」となる点が「谷」となり、「好況(100%→0%)」の中で「50%」となる点が「山」となります。
景気循環とDI一致指数の関係(2つの局面に分ける方法)
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【令和4年度 第8問】
景気循環に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 景気循環の1周期は、景気の谷から山までである。
イ 景気循環の転換点は、名目GDPの変化によって判断する。
ウ 景気循環の最も短い周期は、設備投資の変動が主な要因であると考えられている。
エ 景気の谷から山にかけての期間は、景気の拡張期である。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
「景気循環」に関する知識を問う問題です。
「景気循環」とは、経済全体の活動水準である景気において循環的に見られる変動のことをいい、「景気変動」や「景気の波」とも呼ばれます。
「景気循環」を表現する際には、その局面を2つに分ける方法と4つに分ける方法がありますが、日本の内閣府においても2つの局面に分ける方法により「景気循環」を公表しているため、2つの局面に分ける方法を前提として解説します。
(ア) 不適切です。
2つの局面に分ける方法では、「景気循環」の周期は、景気の「谷」から「谷」までとされており、景気の局面を「拡張期(拡大期)」「後退期」で表現します。
景気循環の周期(2つの局面に分ける方法)
したがって、景気循環の1周期は、景気の谷から山までではなく、景気の谷から谷までであるため、選択肢の内容は不適切です。
(イ) 不適切です。
日本の「景気循環」は、内閣府が毎月公表している「景気動向指数(CI・DI)」の動向を見て判断されています。
一般的に、「CI一致指数」の変動と景気の転換点は概ね一致しており、「CI一致指数」が上昇しているときは景気の「拡張期(拡大期)」にあり、「CI一致指数」が低下しているときは景気の「後退期」にあります。
また、月々で振れはあるものの、「DI一致指数」が継続的に「50%」を上回っている場合は景気の「拡張期(拡大期)」とし、「DI一致指数」が継続的に「50%」を下回っている場合は景気の「後退期」としています。
したがって、景気循環の転換点は、名目GDPではなく景気動向指数の変化によって判断するため、選択肢の内容は不適切です。
(ウ) 不適切です。
「景気循環」は、その周期が短いものから順に「キチン循環」「ジュグラー循環」「クズネッツ循環」「コンドラチェフ循環」に分類されます。
景気循環の種類 | 周期 | 主な要因 |
キチン循環(短期波動) | 約40ヶ月 | 企業の在庫変動 |
ジュグラー循環(中期波動) | 約10年 | 企業の設備投資 |
クズネッツ循環 | 約20年 | 建設需要 |
コンドラチェフ循環(長期波動) | 約50年 | 技術革新 |
周期の最も短い「景気循環」は「キチン循環」といい、その主な要因は「企業の在庫変動」であると考えられています。
したがって、景気循環の最も短い周期は、設備投資の変動が主な要因ではなく、在庫変動が主な要因であると考えられているため、選択肢の内容は不適切です。
(エ) 適切です。
2つの局面に分ける方法では、「景気循環」の周期は、景気の「谷」から「谷」までとされており、景気の局面を「拡張期(拡大期)」「後退期」で表現します。
景気循環の周期(2つの局面に分ける方法)
したがって、景気の谷から山にかけての期間は、景気の拡張期であるため、選択肢の内容は適切です。
答えは(エ)です。
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