今回は、「経済学・経済政策」の「総生産物曲線・生産関数」に関する記事のまとめです。
目次
総生産物曲線・生産関数 -リンク-
本ブログにて「総生産物曲線」「生産関数」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- R3-12 生産関数と限界生産性(11)全要素生産性
- R2-16 生産関数と限界生産性(1)総生産物曲線/労働需要曲線
- R1-14 生産関数と限界生産性(2)総生産物曲線
- R1-20 生産関数と限界生産性(3)コブ=ダグラス型生産関数
- H28-20 生産関数と限界生産性(4)限界生産物/平均生産物
- H27-11 生産関数と限界生産性(5)新古典派の経済成長モデル
- H27-16 生産関数と限界生産性(6)コブ=ダグラス型生産関数
- H26-13-1 生産関数と限界生産性(7)限界生産物/平均生産物
- H26-13-2 生産関数と限界生産性(8)労働需要曲線
- H25-11 生産関数と限界生産性(9)新古典派の経済成長モデル
- H24-18 生産関数と限界生産性(10)限界生産物/平均生産物
総生産物曲線
「総生産物曲線」とは、縦軸に「生産量(Y)」を、横軸に「生産要素の投入量」を取ったグラフに表される「生産要素の投入量と生産可能な最大産出量の関係を表す曲線(生産関数)」のことをいいます。
生産関数
「生産関数」とは、生産要素の投入量と生産可能な最大産出量の関係を表す関数のことをいいます。「生産関数」には以下のようなものがありますが、今回は「コブ=ダグラス型生産関数」について説明していきます。
- コブ=ダグラス型生産関数
- CES生産関数
- 固定係数型生産関数
コブ=ダグラス型生産関数
「コブ=ダグラス型生産関数」とは、1920年代にC・W・コブとP・H・ダグラスがアメリカ経済の実証分析を行う際に使用した生産関数であり、生産活動に投入される「生産要素」である「労働投入量(N)」と「資本投入量(K)」から「生産量(Y)」を求める関数のことをいいます。
「コブ=ダグラス型生産関数」には以下の特徴があります。
- 生産要素(労働と資本)の限界生産物(限界生産力)は逓減する( 0<α<1 / 0<β<1 )
- 規模に関する収穫一定(収穫不変)である(α+β=1)
- 1次同次関数である(α+β=1)
- 生産要素をともにN倍すると生産量もN倍となる(α+β=1)
- 代替の弾力性が1である
生産要素(労働と資本)の限界生産物(限界生産力)は逓減する
「コブ=ダグラス型生産関数」を構成する生産要素には「労働」と「資本」の2種類があります。
「コブ=ダグラス型生産関数」には「 0<α<1 / 0<β<1 」との仮定があるため「労働」と「資本」の「限界生産物(限界生産力)」は逓減します。
「労働投入量(N)」の冪指数(上付き文字の部分/●乗の部分)である「労働分配率(α)」には「 0<α<1 」との仮定があるため「労働投入量(N)」の増加に伴って「労働の限界生産物(限界生産力)」は徐々に小さくなります(逓減します)。
同様に、「資本投入量(K)」の冪指数(上付き文字の部分/●乗の部分)である「資本分配率(β)」には「 0<β<1 」との仮定があるため「資本投入量(K)」の増加に伴って「資本の限界生産物(限界生産力)」は徐々に小さくなります(逓減します)。
縦軸に「生産量(Y)」を、横軸に「労働投入量(N)」を取ったグラフに「労働」の「総生産物曲線」を描画すると、「労働分配率(α)」には「 0<α<1 」との仮定があるため「総生産物曲線」は「左上に凸の曲線」となります。
「労働の限界生産物(限界生産力)」とは「労働投入量(N)」を1単位増加したときの「生産量(Y)」の増加分のことをいいます。
「労働の限界生産物(限界生産力)」は、縦軸に「生産量(Y)」を、横軸に「労働投入量(N)」を取ったグラフに描かれた「総生産物曲線」の接線の「傾き」として表されます。
「総生産物曲線」の接線の「傾き」である「労働の限界生産物(限界生産力)」は「労働投入量(N)」の増加に伴って徐々に小さくなる(逓減する)ことが分かります。
数学的に見た場合、仮に「労働分配率(α)」が「α=1」であれば「労働投入量(N)」と「生産量(Y)」の関係を表す「生産関数」は「Y=N」となるため「生産関数」に基づき描かれる「総生産物曲線」は直線となります。
また、「労働分配率(α)」が「α>1」であれば「総生産物曲線」は「右下に凸の曲線」となり「労働投入量(N)」の増加に伴い「限界生産物(限界生産力)」は逓増します。(例えば「α=2」であれば「生産関数」は「Y=N²」です。)
規模に関する収穫一定(収穫不変)である
「コブ=ダグラス型生産関数」には「 α+β=1 」との仮定があるため、以下の3つの特徴があります。
「コブ=ダグラス型生産関数」において、「労働投入量(N)」と「資本投入量(K)」を2倍にしたときの「生産量(Y)」を確認します。
- Y=Nα×K(1-α)
- Y=2Nα×2K(1-α) → 「労働投入量(N)」と「資本投入量(K)」を2倍にする
- Y=2(α+(1-α))×Nα×K(1-α)
- Y=21 × Nα×K(1-α) → 「2」の1乗となるため1次同次関数という
- Y=2 × Nα×K(1-α) → 「生産量(Y)」は2倍になる
「 α+β=1 」との仮定がある「コブ=ダグラス型生産関数」において「労働投入量(N)」と「資本投入量(K)」の「投入比率(N:K)」を変更せずに、それぞれの投入量を増加すると「労働分配率(α)」や「資本分配率(β)」に関係なく「生産量(Y)」は比例的に増加していきます。
このように、「生産要素の投入量」を増加したときに「生産量(Y)」が比例的に増加することを「規模に関する収穫一定(収穫不変)である」といいます。
収穫逓減/収穫一定(収穫不変)/収穫逓増
規模に関する「収穫逓減/収穫一定(収穫不変)/収穫逓増」をグラフで表すと以下の通りとなります。
念のため、「労働投入量(N)」と「資本投入量(K)」に具体的な数値を入れて「生産量(Y)」の変化を確認していきます。
N=1/K=1から1ずつ増加する場合(α=0.5/β=0.5)
「労働投入量(N)」と「資本投入量(K)」の増加に伴う「生産量(Y)」の増分が常に「1」となり、比例的に増加していきます。
No. | N | K | N0.5 | K0.5 | Y=N0.5K0.5 | Yの増分 |
1 | 1 | 1 | 1.000 | 1.000 | 1 | - |
2 | 2 | 2 | 1.414 | 1.414 | 2 | 1 |
3 | 3 | 3 | 1.732 | 1.732 | 3 | 1 |
4 | 4 | 4 | 2.000 | 2.000 | 4 | 1 |
5 | 5 | 5 | 2.236 | 2.236 | 5 | 1 |
6 | 6 | 6 | 2.449 | 2.449 | 6 | 1 |
7 | 7 | 7 | 2.646 | 2.646 | 7 | 1 |
8 | 8 | 8 | 2.828 | 2.828 | 8 | 1 |
9 | 9 | 9 | 3.000 | 3.000 | 9 | 1 |
10 | 10 | 10 | 3.162 | 3.162 | 10 | 1 |
N=3/K=1から投入比率を変更することなく増加する場合(α=0.5/β=0.5)
「労働投入量(N)」と「資本投入量(K)」の「投入比率(N:K)」を変更することなく同時に増加(N=3,6,9・・・/K=1,2,3・・・)していくと、「生産量(Y)」の増分が常に「1.732」となり、比例的に増加していきます。
No. | N | K | N0.5 | K0.5 | Y=N0.5K0.5 | Yの増分 |
1 | 3 | 1 | 1.732 | 1.000 | 1.732 | - |
2 | 6 | 2 | 2.449 | 1.414 | 3.464 | 1.732 |
3 | 9 | 3 | 3.000 | 1.732 | 5.196 | 1.732 |
4 | 12 | 4 | 3.464 | 2.000 | 6.928 | 1.732 |
5 | 15 | 5 | 3.873 | 2.236 | 8.660 | 1.732 |
6 | 18 | 6 | 4.243 | 2.449 | 10.392 | 1.732 |
7 | 21 | 7 | 4.583 | 2.646 | 12.124 | 1.732 |
8 | 24 | 8 | 4.899 | 2.828 | 13.856 | 1.732 |
9 | 27 | 9 | 5.196 | 3.000 | 15.588 | 1.732 |
10 | 30 | 10 | 5.477 | 3.162 | 17.321 | 1.732 |
N=3/K=1から投入比率を変更せずに増加する場合(α=0.8/β=0.2)
「 α+β=1 」の条件が成立する前提で「労働分配率(α)」や「資本分配率(β)」を変更しても、「労働投入量(N)」と「資本投入量(K)」の投入比率(N:K)を変更することなく同時に増加(N=3,6,9・・・/K=1,2,3・・・)していくと、「生産量(Y)」の増分が常に「2.408」となり、比例的に増加していきます。
No. | N | K | N0.8 | K0.2 | Y=N0.8K0.2 | Yの増分 |
1 | 3 | 1 | 2.408 | 1.000 | 2.408 | - |
2 | 6 | 2 | 4.193 | 1.149 | 4.816 | 2.408 |
3 | 9 | 3 | 5.800 | 1.246 | 7.225 | 2.408 |
4 | 12 | 4 | 7.300 | 1.320 | 9.633 | 2.408 |
5 | 15 | 5 | 8.727 | 1.380 | 12.041 | 2.408 |
6 | 18 | 6 | 10.098 | 1.431 | 14.449 | 2.408 |
7 | 21 | 7 | 11.423 | 1.476 | 16.858 | 2.408 |
8 | 24 | 8 | 12.711 | 1.516 | 19.266 | 2.408 |
9 | 27 | 9 | 13.967 | 1.552 | 21.674 | 2.408 |
10 | 30 | 10 | 15.195 | 1.585 | 24.082 | 2.408 |
生産要素
生産活動に投入される「生産要素」には「労働」と「資本」の2種類があります。
「労働」は労働者の雇用調整などによって短期であっても増減させることができますが、設備投資を伴う「資本」を増減させるには、ある程度の長い期間が必要となります。
「労働」と「資本」のどちらでも考え方は変わらないため、ここからは「労働」を例に説明します。
労働
労働者の雇用調整などによって短期であっても増減させることができる「労働投入量(労働量)」と「生産量(産出量)」の関係を確認します。
労働の限界生産物(限界生産力)
「労働の限界生産物(限界生産力)」とは「労働投入量(N)」を1単位増加したときの「生産量(Y)」の増加分のことをいいます。
「労働の限界生産物(限界生産力)」は、縦軸に「生産量(Y)」を、横軸に「労働投入量(N)」を取ったグラフに描かれた「総生産物曲線」の接線の「傾き」として表されます。
上図に示した「総生産物曲線(生産関数)」においては、「総生産物曲線」の接線の「傾き」である「労働の限界生産物(限界生産力)」は「労働投入量(N)」の増加に伴って徐々に小さくなる(逓減する)ことが分かります。
「労働投入量(N)」の増加に伴って「労働の限界生産物(限界生産力)」が必ず逓減するということではありません。
あくまで、上図に示した「総生産物曲線(生産関数)」においては、「労働投入量(N)」の増加に伴って「労働の限界生産物(限界生産力)」は逓減するということを表しています。
例えば、「令和元年度 第14問」で与えられた「総生産物曲線(生産関数)」では、「労働投入量(労働量)」を「原点O」から徐々に増加していくと「労働の限界生産物」は逓増して「点A」の手前で最大となり、その後逓減していき「点B」においてゼロとなります。「労働投入量(労働量)」をさらに増加していくと「労働の限界生産物」はマイナスとなり、そのマイナス幅は徐々に大きくなっていきます。
労働の平均生産物(平均生産力)
「労働の平均生産物(平均生産力)」とは「労働投入量(N)」1単位当たりの「生産量(Y)」のことをいい、「生産量(Y)」を「労働投入量(N)」で除することにより求めることができます。
「労働の平均生産物(平均生産力)」は、縦軸に「生産量(Y)」を、横軸に「労働投入量(N)」を取ったグラフに描かれた「総生産物曲線」上の点と原点を結んだ直線の「傾き」として表されます。
上図に示した「総生産物曲線(生産関数)」においては、「総生産物曲線」上の点と原点を結んだ直線の「傾き」である「労働の平均生産物(平均生産力)」は「労働投入量(N)」の増加に伴って徐々に小さくなる(逓減する)ことが分かります。
「労働投入量(N)」の増加に伴って「労働の平均生産物(平均生産力)」が必ず逓減するということではありません。
あくまで、上図に示した「総生産物曲線(生産関数)」においては、「労働投入量(N)」の増加に伴って「労働の平均生産物(平均生産力)」は逓減するということを表しています。
例えば、「令和元年度 第14問」で与えられた「総生産物曲線(生産関数)」では、「労働投入量(労働量)」を「原点O」から徐々に増加していくと「労働の平均生産物」は「原点O」の近くで最小となり、その後増加して「点A」で最大となった後、減少していきます。
全要素生産性(Total Factor Productivity:TFP)
「全要素生産性」とは、生産活動に投入される「労働投入量(N)」と「資本投入量(K)」以外で生産活動の質を向上して生産性を高める要因全般のことをいいます。
「全要素生産性」の例として「技術進歩」や「生産の効率化」などが挙げられます。
また、「労働投入量(N)」と「資本投入量(K)」以外で生産活動の質を向上して生産性を高める要因全般が当てはまるため、「全要素生産性」には「労働」や「資本」の質的な向上も含まれます。
全要素生産性の算出方法
「全要素生産性(A)」は「生産量(Y)」を「全ての生産要素の投入量」で除して算出します。
「全ての生産要素の投入量」のイメージが湧きにくいと思いますが「コブ=ダグラス型生産関数」を変形して「全要素生産性(A)」を表すと以下の通りとなります。
極端な例ですが、例えば、「全ての生産要素の投入量」が増減していないにも関わらず「生産量(Y)」が2倍になると「全要素生産性(A)」も2倍になります。
これは、「労働投入量(N)」や「資本投入量(K)」以外に、生産活動の質を向上して生産性を高めた要因(全要素生産性)があるということを示しています。
これで、「全要素生産性」の定義が生産活動に投入される「労働投入量(N)」と「資本投入量(K)」以外で生産活動の質を向上して生産性を高める要因全般のことという意味がなんとなく分かるのではないかと思います。
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