今回は、「経済学・経済政策 ~R1-7 国際収支と為替変動(4)購買力平価説と金利平価説~」について説明します。
目次
経済学・経済政策 ~令和元年度一次試験問題一覧~
令和元年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
購買力平価説・金利平価説 -リンク-
本ブログにて「購買力平価説」「金利平価説」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
購買力平価説
「購買力平価説」とは、物価が変動するような長期においては「物価水準」により為替レートが決定されるという理論のことをいい、「日本の通貨(円)」と「アメリカの通貨(ドル)」の関係は以下の公式で表されます。
なお、「購買力平価説」を応用した有名な指標として、英国の経済専門誌「エコノミスト」によって考案された「ビックマック指数」があります。
「購買力平価説」の公式にある「為替レート(e)」の上昇と低下は、以下の変化を表しています。
- 「e」が上昇する = 円安(ドル高)に推移する
- 「e」が低下する = 円高(ドル安)に推移する
例えば、日本において「100円」で購入できる財と同じものを、アメリカでは「1ドル」で購入できるとした場合、日本の通貨(円)とアメリカの通貨(ドル)の為替レートは「 e = 1ドル = 100円」に決定します。
- Pj = Pa × e
- 100円 = 1ドル × e
- e = 100円/1ドル
ところが、日本の物価が上昇して、それまで「100円」で購入できていた財を「200円」支払わなければ購入できなくなったとすれば「円」の通貨価値は下落したということを表しています。
その結果、為替レートは「円安(ドル高)」に推移して「e = 1ドル = 200円 」に決定します。
- Pj = Pa × e
- 200円 = 1ドル × e
- e = 200円/1ドル
「日本の通貨(円)」と「アメリカの通貨(ドル)」の関係を表す公式を用いると、以下に示すように「日本の物価水準(Pj)」が上昇すると「為替レート(e)」も上昇することが分かります。
- Pj ↑= Pa × e ↑
ただし、「為替レート(e)」が上昇するということが「円高」になることを意味しているのか「円安」になることを意味しているのかが分かりにくいので、単に公式を暗記するのではなく「日本の物価上昇 → 円の通貨価値が下落 → 為替レートが円安に推移」という流れで理解しておくことをお薦めします。
金利平価説
「金利平価説」とは、金利が変動するような長期においては「金利(利子率)」により為替レートが決定されるという理論のことをいい、「日本の通貨(円)」と「アメリカの通貨(ドル)」とした場合の関係は以下の公式で表されます。
「金利平価説」の公式にある「期待為替レート(e’)」と「為替レート(e)」の上昇と低下は、以下の変化を表しています。
- 「e′・e」が上昇する = 円安(ドル高)に推移する
- 「e’・e」が低下する = 円高(ドル安)に推移する
例えば、日本(円)の金利(利子率)とアメリカ(ドル)の金利(利子率)が共に「3%」であったとします。
ところが、日本(円)の金利(利子率)が「4%」に上昇して、日本(円)の方がアメリカ(ドル)よりも金利(利子率)が高くなると、投資家が「ドル」を売り「円」を購入するため「円」の超過需要が発生します。
その結果、為替レートは「円高(ドル安)」に推移します。
「日本の通貨(円)」と「アメリカの通貨(ドル)」の関係を表す公式を用いると、以下に示すように「日本の金利(利子率)(rj)」が上昇すると「為替レート(e)」が低下することが分かります。
ただし、「為替レート(e)」が低下するということが「円高」になることを意味しているのか「円安」になることを意味しているのかが分かりにくいので、単に公式を暗記するのではなく「日本の金利上昇 → ドル売り円買い → 円の超過需要 → 為替レートが円高に推移」という流れで理解しておくことをお薦めします。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【令和元年度 第7問】
為替レートの決定に関する記述として、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。
a 金利平価説によると、日本の利子率の上昇は円高の要因になる。
b 金利平価説によると、日本の利子率の上昇は円安の要因になる。
c 購買力平価説によると、日本の物価の上昇は円高の要因になる。
d 購買力平価説によると、日本の物価の上昇は円安の要因になる。
[解答群]
ア aとc
イ aとd
ウ bとc
エ bとd
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
金利平価説と購買力平価説による為替レートの決定に関する知識を問う問題です。
金利平価説
「金利平価説」とは、金利が変動するような長期においては「金利(利子率)」により為替レートが決定されるという理論のことをいいます。
例えば、日本(円)の金利(利子率)とアメリカ(ドル)の金利(利子率)が共に「3%」であったとします。
ところが、日本(円)の金利(利子率)が「4%」に上昇して、日本(円)の方がアメリカ(ドル)よりも金利(利子率)が高くなると、投資家が「ドル」を売り「円」を購入するため「円」の超過需要が発生します。
その結果、為替レートは「円高(ドル安)」に推移します。
したがって、金利平価説によると、日本の利子率の上昇は円高の要因になるため、(a)に記述されている内容が適切です。
「日本の通貨(円)」と「アメリカの通貨(ドル)」の関係を表す公式を用いると、以下に示すように「日本の金利(利子率)(rj)」が上昇すると「為替レート(e)」が低下することが分かります。
ただし、「為替レート(e)」が低下するということが「円高」になることを意味しているのか「円安」になることを意味しているのかが分かりにくいので、単に公式を暗記するのではなく「日本の金利上昇 → ドル売り円買い → 円の超過需要 → 為替レートが円高に推移」という流れで理解しておくことをお薦めします。
購買力平価説
「購買力平価説」とは、物価が変動するような長期においては「物価水準」により為替レートが決定されるという理論のことをいいます。
例えば、日本において「100円」で購入できる財と同じものを、アメリカでは「1ドル」で購入できるとした場合、日本の通貨(円)とアメリカの通貨(ドル)の為替レートは「 e = 1ドル = 100円」に決定します。
ところが、日本の物価が上昇して、それまで「100円」で購入できていた財を「200円」支払わなければ購入できなくなったとすれば「円」の通貨価値は下落したということを表しています。
その結果、為替レートは「円安(ドル高)」に推移して「e = 1ドル = 200円 」に決定します。
したがって、購買力平価説によると、日本の物価の上昇は円安の要因になるため、(d)に記述されている内容が適切です。
「日本の通貨(円)」と「アメリカの通貨(ドル)」の関係を表す公式を用いると、以下に示すように「日本の物価水準(Pj)」が上昇すると「為替レート(e)」も上昇することが分かります。
- Pj ↑= Pa × e ↑
ただし、「為替レート(e)」が上昇するということが「円高」になることを意味しているのか「円安」になることを意味しているのかが分かりにくいので、単に公式を暗記するのではなく「日本の物価上昇 → 円の通貨価値が下落 → 為替レートが円安に推移」という流れで理解しておくことをお薦めします。
(a)と(d)に記述されている内容が適切であるため、答えは(イ)です。
コメント