平成28年度の事例Ⅳに関する解答例(案)を説明していきます。
私なりの思考ロジックに基づく解答例(案)を以下に説明しますので、参考としてもらえればと思います。
目次
事例Ⅳ ~平成28年度試験問題一覧~
平成28年度の他の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
限界利益と貢献利益による分析
「限界利益と貢献利益による分析」とは、限られた経営資源で、企業の営業利益を増やすために「製品」や「事業部門」の採算性を分析することをいいます。
「限界利益分析」と「貢献利益分析」は、以下のように使い分けられます。
- 「限界利益分析」は、限られた経営資源で、企業の営業利益を最大にするために、販売(生産)する製品の最適な販売比率(最適セールスミックス)を求めるために活用されます。
- 「貢献利益分析」は、製品ラインナップや事業部門の採算性を見極め、企業全体の利益に貢献していない製品の生産を中止したり、事業部門を廃止する判断をするために活用されます。
第3問
第3問(配点15点)
大都市の都心部に出店した創作料理店は業績の不振が続いている。そこで、同店を閉店するかどうかの検討を行うことにした。同店は、商業施設にテナントとして出店している。同店の見積損益計算書は以下のとおりである。この見積損益計算書をもとに、閉店すべきかどうかについて、意思決定の基準となる尺度の値と計算過程を(a)欄に記入し、結論を理由とともに(b)欄に50字以内で述べよ。
店舗見積損益計算書 (単位:百万円) 売上高 98 変動費 49 限界利益 49 個別固定費(※) 40 共通固定費配賦額 26 営業利益 ▲17 (※)店舗個別の付属設備および器具備品は償却済みである。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方
店舗見積損益計算書に基づき、創作料理店の業績を評価するための指標とその数値を算出して、業績の不振が続いている創作料理店を閉店すべきかどうかについて分析することを求められています。
店舗を閉店すべきかどうかの意思決定は「貢献利益分析」により実施します。
店舗見積損益計算書から「貢献利益」を算出して、「貢献利益」が「プラス」か「マイナス」かによって、店舗を閉店すべきかどうかを判断していきます。
創作料理店の貢献利益
貢献利益は「売上高 - 変動費 - 個別固定費」であり「限界利益」から「個別固定費」を控除して算出します。
「店舗見積損益計算書」の数値から求めると「貢献利益」が「プラス」であることが分かります。
「貢献利益」が「プラス」であるということは、営業利益の増加に貢献していることを表しているため、「店舗を閉鎖すべきではない」との判断を行います。
店舗見積損益計算書 | |
(単位:百万円) | |
売上高 | 98 |
変動費 | 49 |
限界利益 | 49 |
個別固定費 | 40 |
貢献利益 | 9 |
共通固定費配賦額 | 26 |
営業利益 | ▲17 |
貢献利益の意味について(店舗運営)
企業は、継続的に利益を出していくことが絶対的な命題であるため、ある店舗を運営する以上は、少なくともその店舗を運営するための費用(「変動費」「個別固定費」)を回収して利益を上げることができなければ、その店舗を運営すること自体に意味がありません。(運営しない方がまだましです。)
また、企業は店舗を運営するための費用以外に、会社を運営するための管理機能を持っています。例えば、社長の給与や本社ビルの建物経費や総務・財務部門といった管理部門のスタッフの給与などがそれに該当しており、これらの会社運営を維持するために発生する「共通固定費」も店舗の運営により回収しなければ、企業全体として利益を上げることができません。
つまり、ある店舗の運営により「共通固定費」の回収にどの程度貢献できているかを金額で表しているのが「貢献利益」です。
「貢献利益」がプラスであれば「共通固定費」の回収に貢献できているため店舗の運営を継続すべきであることを示し、「貢献利益」がマイナスであれば、その店舗の運営するための費用すら回収できていないので閉店した方がよいことを意味しています。
解答
業績の不振が続いている創作料理店を閉店すべきかどうかについて、意思決定の基準となる尺度の値と計算過程(a)、および閉店すべきかどうかの結論と理由(b)は以下の通りです。
(a) | 貢献利益:9百万円 限界利益(49百万円)- 個別固定費(40百万円)= 貢献利益(9百万円) |
(b) | 閉店すべきではない。貢献利益が正で共通固定費を一部回収できておりD社の利益増加に貢献しているため。(50文字) |
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