今回は、「事例Ⅲ ~令和元年度 解答例(1) 全体構成の理解~」について説明します。
目次
事例Ⅲ ~令和元年度試験問題一覧~
令和元年度のその他の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
全体構成の理解
事例Ⅰ~事例Ⅲの問題では、最初に、試験問題の全体像を把握して、それぞれの問題で与件文のどこを参考にして解答するかを考えることをお薦めします。
令和元年度の試験問題では、試験問題の全体像を把握せずに「第1問」から順番に解いていくと、「生産の概要」と「自動車部品機械加工の受託生産計画」に記述されている内容の多くが「第2問」で問われている「生産面での効果とリスク」のように感じてしまうため、「第2問」で何を答えたらよいのか迷ってしまうはずです。
試験問題の全体像を把握して「第3問(設問1)」と「第3問(設問2)」に関連する箇所を与件文から抜き出してしまえば、与件文において「第2問」に関連する箇所が非常に少ないことが分かります。
このように、最初に、試験問題の全体像を把握して、それぞれの問題で与件文のどこを参考にして解答するかを考えることが非常に重要です。
第1問
第1問(配点20点)
C社の事業変遷を理解した上で、C社の強みを80字以内で述べよ。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
第1問では、輸送用機械、産業機械、建設機械などに用いられる金属部品の製造業を顧客に、金属熱処理および機械加工を営むC社の事業変遷を理解した上で、C社の強みを分析する能力を問われています。
「事例Ⅲ」の第1問としてよくあるパターンの問題であり、与件文から該当する文言を抜き出して列挙していきます。与件文から該当する文言を抜き出すのはそれほど難しくありませんが、抜き出した内容を文字数内に収めるために取捨選択するのが難しい問題です。
与件文で関連しそうな箇所
与件文では、1ページの全般と、2ページ目の前半に記述されています。
「1ページ」に記述されている「企業概要」と、「2ページ」に記述されいている「生産の概要」の前半から、「C社の強み」を抜粋していきます。
問題文の中では、以下の部分が該当します。
第2問
第2問(配点20点)
自動車部品メーカーX社からの機械加工の受託生産に応じる場合、C社における生産面での効果とリスクを100字以内で述べよ。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
第2問では、自動車部品メーカーX社からの機械加工の受託生産に応じる場合のC社における生産面での効果とリスクを分析する能力を問われています。
「自動車部品機械加工の受託生産計画」に記述されている内容を参考にして、生産面での効果とリスクを解答していきますが、「第3問」も「自動車部品機械加工の受託生産計画」に記載されている内容に関連しているため、「第2問」の解答で抽出すべき箇所がどこなのかを明確にしてから解答を構成することが重要です。
与件文で関連しそうな箇所
与件文では、2ページ目の後半に記述されています。
「第2問」と「第3問(設問1)」と「第3問(設問2)」で解答すべき内容と、与件文に記述されている内容の関連付けが非常に難しくなっています。
「2ページ」の後半以降で記述されている「自動車部品機械加工の受託生産計画」において、「第3問(設問1)」の「新工場計画」に関する記述と「第3問(設問2)」の「外注かんばんを使った後工程引取方式」に関する記述を除く箇所から、「C社における生産面での効果とリスク」を抜粋していきます。
問題文の中では、以下の部分が該当します。
第3問(設問1)
第3問(配点40点)
X社から求められている新規受託生産の実現に向けたC社の対応について、以下の設問に答えよ。
(設問1)
C社社長の新工場計画についての方針に基づいて、生産性を高める量産加工のための新工場の在り方について120字以内で述べよ。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
第3問(設問1)では、C社社長の新工場計画についての方針に基づく、生産性を高める量産加工のための新工場の在り方を提言する能力を問われています。
問題文だけを読むと何を解答すればよいのか分かりにくく非常に難しく感じますが、与件文に記述されている「C社社長が社内に表明している方針」を読めば、解答の方向性を絞りやすくなります。
「最適な新規設備の選定」「作業の標準化と教育の実施」「生産性の高いレイアウト」という3つの観点から解答を構成しますが、「マシニングセンタ」や「工場レイアウト」に関する知識がないと解答に苦慮する可能性があります。
「作業の標準化・マニュアル化・教育の実施」については、「事例Ⅲ」の頻出カテゴリなので確実に解答できるようにしておきたいところです。
与件文で関連しそうな箇所
与件文では、1ページの最下行から2ページ目にかけて、および2ページ目の後半と3ページ目の後半に記述されています。
「1ページの最下行から2ページ目」では、現在の工場で採用しているレイアウトについて、「2ページ目の後半」では、導入する工作機械の候補について記述されていますが、解答の骨子となるのは「3ページ目」に記述されている「C社社長が社内に表明している方針」です。
問題文の中では、以下の部分が該当します。
第3問(設問2)
第3問(配点40点)
X社から求められている新規受託生産の実現に向けたC社の対応について、以下の設問に答えよ。
(設問2)
X社とC社間で外注かんばんを使った後工程引取方式の構築と運用を進めるために、これまで受注ロット生産体制であったC社では生産管理上どのような検討が必要なのか、140字以内で述べよ。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
第3問(設問2)では、X社とC社間で外注かんばんを使った後工程引取方式を導入するにあたって、C社の生産管理上でどのような検討が必要になるのかを分析する能力を問われています。
「受注ロット生産体制」と「外注かんばんを使った後工程引取方式」という言葉にこだわりすぎると、非常に難しく感じてしまいますが、与件文に記述されている内容から、C社における現状の生産管理とX社から導入を提案されている後工程引取方式を導入した場合の生産管理の違いを整理して解答を構成していけば、思ってるほどには難しくありません。
与件文で関連しそうな箇所
与件文では、2ページ目の中央部に記述されている「生産の概要」の最後の段落と、2ページの最下行から3ページ前半の「自動車部品機械加工の受託生産計画」に記述されています。
「生産の概要」の最後の段落には、現状のC社における生産管理の実施方法が記述されており、「自動車部品機械加工の受託生産計画」には、X社から導入を提案されている後工程引取方式の概要が記述されています。
問題文の中では、以下の部分が該当します。
第4問
第4問(配点20点)
新工場が稼働した後のC社の戦略について、120字以内で述べよ。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
第4問では、新工場が稼働した後のC社の戦略を提言する能力を問われています。
C社は、自動車部品メーカーX社からの機械加工の受託生産に応じるために、新工場の建設や工作機械の導入に多額の投資を実施するため、新工場が稼働した後は、それらの設備や仕組みをどのように活用して収益性を高めていくかという観点で戦略を考えていく必要があります。
新工場の設備や仕組みを活用して収益性を高めるためには、X社以外の生産活動についてもコスト削減を図るか、または売上を拡大するかの2通りの方向性が考えられます。なお、売上を拡大する場合は、そのターゲットを選定して解答に盛り込んでいきます。
与件文で関連しそうな箇所
与件文では、1ページ目に記述されている「企業概要」の最初の段落と最後の段落、および3ページ目の「自動車部品機械加工の受託生産計画」に記述されています。
「企業概要」の最初の段落にはC社の組織編制が記述されており、最後の段落にはC社の売上構成が記述されています。ちなみに、C社の組織編制については、新規顧客を獲得するという戦略を取る場合に必要となる営業組織が存在するか否かを確認するだけです。
今回の問題では、新工場が稼働した後のC社の戦略を求められているため、「自動車部品機械加工の受託生産計画」において、新工場がどのような方針のもとで建設されたのかという観点を中心に確認していきます。
問題文の中では、以下の部分が該当します。
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