今回は、「事例Ⅲ ~平成27年度 解答例(7)(第4問)~」について説明します。
目次
事例Ⅲ ~平成27年度試験問題一覧~
平成27年度のその他の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
第4問
第4問(配点20点)
海外製品との競争が厳しい時代のなかで、今後もC社は国内生産を維持する考えである。そのためにC社が強化すべき点は何か、その理由とともに140字以内で述べよ。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
解答の方向性
第4問では、C社の経営環境を把握し、国内生産を維持していくために必要な戦略と強化策について助言する能力を問われています。
国内生産を維持していくために必要な戦略と強化策を求められているため、与件文の中で「外部環境と内部環境の状況」について記述されている箇所を抜粋して「C社の強みを伸ばしてC社の弱みを克服する方法」を解答として取りまとめていくという流れで考えていきます。
重要なのは、これまでの問題で解答に取り上げていない「弱み」については、必ず解答に盛り込む。という点です。
与件文で関連しそうな箇所
与件文において、【C社の概要】の中盤から後半に記述されています。
【C社の生産概要】と【改善チームによる調査結果】に記述されている内容は、これまでの問題で解答していますが、【C社の概要】に記述されている「若手人材確保が難しく高齢化が進んでいる」「農業機械部品と産業機械部品の顧客からの軽量化、複雑形状化要求に対応できていない」という「C社の弱み」については、これまでの問題で触れていないため、必ず解答に盛り込んでおきたいところです。
問題文の中では、以下の部分が該当します。
詳細に示すと以下の通りとなります。
- 一般に3K職場といわれる作業環境が影響して若手人材確保が難しく、高齢化が進んでいる。
⇒従業員の高齢化が進んでいるという「C社の弱み」を克服するため、若手人材を確保するための施策を行い、C社の優れた技術力を継承していく必要があると考えられます。 - 公共事業予算の縮小や海外製品との競争激化などの影響を受け、マンホール蓋の受注量が減少し、売上高が低迷した時期があった。その対応としてC社では、中小鋳物工場が減少するなか、積極的に鋳造工程の生産能力の増強を進めるとともに、機械加工工程と塗装工程の新設により一貫生産体制を確立することで、農業機械部品と産業機械部品の受注獲得に成功した。その際、鋳造技術に精通した中堅エンジニア3名を社内から選抜して営業部をつくり、新市場の開拓を行わせたことも大きな力となった。
⇒C社は、過去に海外製品との競争激化により主要製品であるマンホール蓋の売上の低迷を経験していますが、その時は一貫生産体制の確立と鋳造技術に精通した人財による営業部の編成によって乗り切ったと記述されています。
そういった経験を持つ鋳造技術に精通した中堅エンジニアで構成される営業体制は「C社の強み」であり、この営業体制を活用して、引き続き新市場の開拓を行えば、国内における収益を拡大できると考えることができます。 - 現在の売上構成比は、建設資材55%、農業機械部品30%、産業機械部品15%となっている。農業機械部品と産業機械部品の受注量は増加傾向にあるが、これらの部品では顧客からの軽量化、複雑形状化要求が強くなっていて、鋳造技術の向上が求められている。
⇒農業機械部品と産業機械部品の受注量は増加傾向にあるため、鋳造技術の向上によってこれらの部品の顧客から求められている軽量化、複雑形状化要求に対応することができていないという「C社の弱み」を克服して対応することができれば、国内における収益を拡大できると考えることができます。
C社が強化すべき点
国内生産を維持していくためにC社が強化すべき点は、以下の通りです。
- 一般に3K職場といわれる作業環境が影響して若手人材確保が難しく、高齢化が進んでいるため、若手人材を確保してベテラン従業員から若手人財にC社の優れた技術力を継承する施策を強化する。
- 鋳造技術に精通した中堅エンジニアで構成される営業部は、農業機械部品と産業機械部品の受注獲得において大きな力となった経験を有しているため、引き続き新市場の開拓を行い、新たな受注の獲得を目指していく。
- 受注量が増加傾向にある農業機械部品と産業機械部品の顧客から求められている要求(顧客のニーズ)に対応することができれば、国内における収益を拡大できると考えられるため、鋳造技術を向上して顧客のニーズに対応していく。
解答例
ここまでに整理してきた内容を140文字以内にまとめます。
強化すべき点は①若手人材確保と技術継承②継続的な新市場開拓③顧客ニーズに応じた鋳造技術向上である。理由は①高齢化が進んでいるため②新市場を開拓した経験のある営業部を活用できるため③受注量が増加傾向にある農業機械部品と産業機械部品の顧客ニーズに応えれば収益増加を見込めるためである。(140文字) |
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