事例Ⅲ ~平成27年度 解答例(6)(第3問)~

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今回は、「事例Ⅲ ~平成27年度 解答例(6)(第3問)~」について説明します。

 

目次

事例Ⅲ ~平成27年度試験問題一覧~

平成27年度のその他の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

生産管理

「生産管理」とは、生産活動に関する「Q:品質」「C:コスト」「D:数量および納期」の最適化を図るため、「需要予測」「生産計画」「生産実施」「生産統制」を行うことをいいます。

 

生産管理のポイント

「生産管理」に関連する主なポイントは以下の通りです。

 

  • 営業部門が入手した需要予測または受注情報を製造部門に迅速に連携して、迅速に生産計画に反映されるべきです。
  • 生産計画は「大日程・中日程・小日程」に分割してできるだけ短い間隔で更新され、できるだけ短い期間を対象として作成されるべきです。
  • 生産計画は、全ての製品および全ての工程を対象にして立案されるべきです。
  • 生産計画に基づき、一元的に生産統制(進捗管理、現品管理、余力管理)されるべきです。

 

生産統制

「生産統制」とは、作成された生産計画にしたがって生産活動を実施できるように、生産活動の状況を把握して、計画に対する差異が発生した場合には、即座に対策を行って差異を解消させていくことをいいます。

 

生産計画と生産統制の関係

「生産統制」では「生産計画」と照らし合わせて「QCD」の観点から問題が発生していないかを管理していきますが、「生産統制」で管理する項目には「進捗管理」「現品管理」「余力管理」があります。

 

生産統制 生産計画 説明
進捗管理 日程計画 日々の作業の進行状況を把握して調整する管理活動
現品管理 材料・部材計画 在庫の品質を確保して、所在と数量を明確に把握して調整する管理活動
余力管理 工数計画 労働者や機械の能力(例えば最大生産量など)に対する負荷状況を把握して、能力と負荷のバランスを調整する管理活動

 

進捗管理(進度管理)

「進捗管理」とは、日々の作業の進行状況を把握して調整する管理活動のことをいいます。

「進捗管理」の一番の目的は納期を遵守することですが、生産計画よりも前倒しして作業を進めても、仕掛品・完成品を倉庫に保管するコストが増加してしまうなどの問題が発生するため、適切ではありません

「進捗管理」では、早過ぎず遅過ぎず計画通りの日程で作業が進行するよう管理する必要があります。

 

現品管理

「現品管理」とは、「資材」「仕掛品」「製品」などの在庫の品質を確保して、所在と数量を明確に把握して調整する管理活動のことをいいます。

 

状況 観点
外部業者からの受け入れ
(原材料・部品)
受け入れ数量の過不足確認
品質の確認(傷・変形・破損など)
運搬
(原材料・部品・仕掛品・完成品)
運搬数量の過不足確認
適正な運搬荷姿
- 現品の傷・変形・破損の防止
適正な運搬方法
- 現品の傷・変形・破損の防止
保管
(原材料・部品・仕掛品・完成品)
保管数量の過不足確認
適正在庫の維持
- 在庫の長期保管による品質劣化の防止
適正な保管方法
- 積み上げによる荷崩れ等の防止
- 温度管理等による品質劣化の防止
外部業者への受け渡し
(完成品)
受け渡し数量の過不足確認
品質の確認(傷・変形・破損など)

 

余力管理

「余力管理」とは、労働者や機械の能力(例えば最大生産量など)に対する負荷状況を把握して、能力と負荷のバランスを調整する管理活動のことをいいます。

 

在庫管理

「在庫管理」は「生産統制(現品管理)」で管理される項目ですが、「在庫管理」として解答を求められることが多いため、独立した項目として説明します。

「在庫管理」のポイントは、営業が入手する需要予測または受注情報に基づき、製品ごとに適正な在庫水準を設定して、生産量と出荷量のバランスを取りながら、適正な在庫水準を維持していくことです。

 

  • 在庫管理とは、適正な在庫水準を設定して維持することである

 

 

在庫管理

必要な資材を、必要なときに、必要な量を、必要な場所へ供給できるように、各種品目の在庫を好ましい水準に維持するための諸活動。
備考 在庫管理の方式として、定量発注方式と定期発注方式に大別される。(JISZ8141-7301)

 

第3問

第3問(配点20点)

 

C社は、納期遅延の解消を目的に生産管理のIT化を計画している。それには、どのように納期管理をし、その際、どのような情報を活用していくべきか、120字以内で述べよ。

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

解答の方向性

第3問では、納期遅延の解消を目的とした生産管理のIT化を計画しているC社の課題を把握し、納期管理の方法を提案する能力を問われています。

 

「納期遅延の解消を目的とした生産管理のIT化」について問われていますが、「納期遅延の解消」という言葉に囚われすぎると解釈が難しくなるため、第3問は、IT化によってどのように「生産管理」を行うかという観点で単純に考えた方が分かりやすいと思います。

「生産計画」に基づき「生産統制」を行えば「QCD」を管理することができるため、必然的に納期遅延を解消することができます

また、事例ⅢにおいてIT化の効果として取り上げられる「各工程間における情報の共有」という観点も踏まえて、解答を取りまとめていきます。

なお、与件文を読むだけでは、「第1問(設問3)」「第3問」が参照すべき箇所の切り分けが非常に難しかったため、この問題の解答を作成した後、「第1問(設問3)」の解答を考えていきました

 

与件文で関連しそうな箇所

与件文において、【C社の生産概要】の中盤に「C社における生産管理の状況」が記述されています。

また、活用すべき情報については、【C社の生産概要】の後半と【改善チームによる調査結果】に分散して記述されているため、解答から漏れないように、文章ではなく「単語」で抜粋します。

 

問題文の中では、以下の部分が該当します。

 

詳細に示すと以下の通りとなります。

 

  • 主要製品のマンホール蓋は、地方公共団体や通信会社などの事業主体ごとに仕様が異なるため品種が多く、さらにこれら事業主体の予算確定後、C社に発注が行われるため受注量の季節変動が大きい。このため、営業部で得ている顧客情報の予想を基に需要の多い規格品などについてはあらかじめ見込生産し、受注が確定すると在庫品から納品する。一方、農業機械部品や産業機械部品は取引先からの受注が確定した製品を生産している。
    ⇒C社では、製品によって見込生産と受注生産の両方の生産方式を採用していることが分かります。マンホール蓋は営業部の需要予測に基づき見込生産を行い、農業機械部品や産業機械部品は受注生産を行っています。
  • 生産計画は、鋳造工程の計画のみが立案される。その立案方法は、まず受注内容が確定した製品について納期を基準に計画し、さらに余力部分にマンホール蓋などの見込生産品を加えて作成する。鋳造工程以降の後処理工程、機械加工工程、塗装工程、検査発送工程は、前工程から運搬されてきた仕掛品の品種、数量を確認した上で、段取り回数が最小になるようそれぞれの工程担当者が加工順を決めている。1日4回(4ロット)の鋳造作業が行われているが、農業機械部品や産業機械部品の納期遅延が生じている。その対策の1つとしてC社では、受注処理、生産計画、生産統制、在庫管理などを統合したIT化の検討を進めている。
    「鋳造工程」についてのみ生産計画を立案していることが今回の大きな改善ポイントです。生産計画は、すべての工程を対象にして立案されるべきです。全ての工程を対象にした生産計画がないため、工程担当者が前工程から運搬されてきた仕掛品の品種、数量を確認した上で加工順を決めるという属人的な対応が行われたり、受注数量に関係なく鋳造作業の回数が「1日4回(4ロット)」に決められているという対応が行われています。
    また、IT化の検討により受注処理、生産計画、生産統制、在庫管理を統合して管理したいというキーワードも記述されています。
  • 新規受注の問い合わせがあった場合は、営業部が顧客と技術的な打ち合わせを行い顧客の要望を把握し、その内容を設計部に伝え図面等仕様書を作成する。その仕様書が顧客と合意されると、製造部に引き渡して生産準備し、生産計画に織り込んで、資材調達の後製造される。
    ⇒この文章から、受注生産品の生産においては、個別の受注ごとに資材調達を行っていることが分かります。資材調達のリードタイムが納期に直結しているため、現品管理として「資材の納期」を管理して活用していくべきです。
    また、生産管理とは直結しない内容もありますが、ITによって「受注情報」「顧客の要望」「図面等仕様書」を共有して活用していくことが好ましいと考えられます。
  • それによると、製造現場では、鋳造工程後の仕掛品が多く、その置き場に大きなスペースが必要になり、フォークリフトによる製品の移動は、散在する仕掛品置き場を避けて走行している。またこの仕掛品によって、多台持ちを行っている機械加工工程の作業についても設備間の移動が非常に困難な状況である。このため、製造リードタイムが長期化し納期遅延が生じる原因となっている。
    ⇒鋳造工程後の仕掛品が多く仕掛品置き場が散在しているため、フォークリフトによる製品の移動や、機械加工工程の作業における設備間の移動に支障が出ており、納期遅延が生じていることが分かります。現品管理として仕掛品を始めとした「在庫状況」を管理して活用していくべきです。
  • この結果は他製品の工程分析でも同様の傾向を示していて、機械加工工程の残業が日常的に生じている原因が判明した。
    余力管理として「残業状況」を管理して活用していくべきです。
  • そこで改善チームは、機械加工工程の設備稼働状況を調査し、図3に示す結果を得た。稼働率は48%と低く、非稼働として停止37%、空転15%となっている。
    余力管理として「設備稼働状況」を管理して活用していくべきです。

 

納期管理と活用すべき情報

納期管理

「納期管理」には「生産管理」が重要となります。

「生産管理」とは、生産活動において「Q:品質」「C:コスト」「D:数量および納期」の最適化を図るため、「需要予測」「生産計画」「生産実施」「生産統制」を行うことをいいます。

「生産統制」とは、作成された生産計画にしたがって生産活動を実施できるように、生産活動の状況を把握して、計画に対する差異が発生した場合には、即座に対策を行って差異を解消させていくことをいいます。

つまり、「生産計画」に基づき「生産統制」を行えば「QCD」を管理することができるため、必然的に納期遅延を解消することができます

 

対象とすべき製品

問題文には「納期遅延の解消を目的に生産管理のIT化を計画している。」と記述されています。与件文を見ると、納期遅延が発生しているのは受注生産の製品だけですが、C社では製品によって見込生産と受注生産の両方の生産方式を採用しています。

納期管理は、C社が取り扱うすべての製品に対して行う必要があります。

したがって、解答は「見込生産や受注生産といった生産方式の違いに関わらず、全ての製品について立案した生産計画に対する一元的な生産統制により納期管理を行う。」とします。

 

対象とすべき工程

与件文には「生産計画は、鋳造工程の計画のみが立案される。」と記述されていますが、「生産管理」はすべての工程に対して行う必要があります。

 

したがって、解答は「見込生産や受注生産といった生産方式の違いに関わらず、全ての製品について立案した全工程を対象にした生産計画に対する一元的な生産統制により納期管理を行う。」とします。

 

活用すべき情報

 

「生産統制」で管理する項目は「進捗管理」「現品管理」「余力管理」に分類することができます。

「進捗管理」「現品管理」「余力管理」の観点から「活用すべき情報」を整理していきます。

 

進捗管理

進捗管理については、与件文に具体的な記述がないため、「工程別の進捗状況」を管理することとします。

 

現品管理

現品管理については、与件文から以下の通り抽出します。

  • 資材の納期
  • 仕掛品を始めとした在庫状況

 

余力管理

余力管理については、与件文から以下の通り抽出します。

  • 残業状況
  • 設備稼働状況

 

これらの内容を整理して読みやすいように順序を入れ替えて、解答は「活用すべき情報は各工程の進捗状況、設備稼働状況と残業状況、資材の納期と資材や仕掛品や完成品の在庫状況」とします。

 

情報の共有

事例Ⅲにおいて、IT化を記述する際には、その効果として「各工程間における情報の共有」という観点も入れておいた方が良いと考えられます。

上述した「生産計画」などの情報は、すべての工程に情報が共有されているべきです。

また、「生産計画」などの情報以外にも、与件文で記述されている「受注情報」「図面等仕様書」についても解答に盛り込むこととしました。なお、「図面等仕様書」は「顧客の要望」に基づき記述されている資料であり文字数も足りないため、「顧客の要望」は解答には含めないことにしました。

 

解答例

ここまでに整理してきた内容を120文字以内にまとめます。

 

全製品の全工程を対象にした生産計画に対する一元的な生産統制と工程間における迅速な情報共有により納期管理を行う。活用すべき情報は各工程の進捗状況、設備稼働状況と残業状況、資材の納期と資材や仕掛品や完成品の在庫状況、受注情報と図面等仕様書である。(120文字)

 

事例Ⅰ~事例Ⅲは正解のない試験なので、あくまで解答例として参考にしてもらえればと思います。

 


 

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