今回は、「財務・会計 ~R2-16 金利(2)マイナス金利~」について説明します。
目次
財務・会計 ~令和2年度一次試験問題一覧~
令和2年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
金利 -リンク-
「金利」については、過去にも説明していますので、以下のページにもアクセスしてみてください。
マイナス金利政策
2016年1月に、日本銀行(中央銀行)が「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を発表して、同年2月から「マイナス金利」が導入されました。
「マイナス金利」になると、金融機関に資金を預けたときに、預金者が金融機関から利息を受け取るのではなく、預金者が金融機関に利息を支払うこととなります。
日本銀行(中央銀行)が導入した「マイナス金利」は、民間の金融機関(市中銀行)が日本銀行(中央銀行)に預けている当座預金において一定金額を超過した部分に対して「マイナス金利(▲0.1%)」が適用されるというものであり、一般の家庭や企業が民間の金融機関(市中銀行)を利用した預金や借入金に「マイナス金利」が適用されるというものではありません。(「マイナス金利」にはなりませんが適用される金利は下がります。)
日本銀行(中央銀行)としては、民間の金融機関(市中銀行)が一定額以上の資金を日本銀行(中央銀行)に預けたら金利を支払うこととなるため、余剰資金を日本銀行(中央銀行)に預けるのではなく、企業への融資や投資に回すようになり、経済が活性化してデフレを脱却できると期待していました。
日本銀行(中央銀行)としては、「マイナス金利」の導入により、2016年末には「年2%の物価上昇率(インフレ率)」を達成することを目指していましたが、実現することはできませんでした。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【令和2年度 第16問】
金利に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
ア 金融機関に資金を預けたときに、利息を支払わなければならない場合、これをマイナス金利という。
イ 政策によってマイナス金利が現実のものとなるのは、日本の場合、市中銀行による日銀預け金に限定される。
ウ マイナス金利によって、借入金利が下がり、企業の資金調達がしやすくなると期待される。
エ マイナス金利によるデフレーションに備えて、提供する財やサービスの価格を見直すことが求められる。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
「マイナス金利」に関する知識を問う問題です。
(ア) 適切です。
「マイナス金利」になると、金融機関に資金を預けたときに、預金者が金融機関から利息を受け取るのではなく、預金者が金融機関に利息を支払うこととなります。
したがって、金融機関に資金を預けたときに、利息を支払わなければならない場合、これをマイナス金利というため、選択肢の内容は適切です。
(イ) 適切です。
日本銀行(中央銀行)が導入した「マイナス金利」は、民間の金融機関(市中銀行)が日本銀行(中央銀行)に預けている当座預金において一定金額を超過した部分に対して「マイナス金利(▲0.1%)」が適用されるというものであり、一般の家庭や企業が民間の金融機関(市中銀行)を利用した預金や借入金に「マイナス金利」が適用されるというものではありません。(「マイナス金利」にはなりませんが適用される金利は下がります。)
したがって、政策によってマイナス金利が現実のものとなるのは、日本の場合、市中銀行による日銀預け金に限定されるため、選択肢の内容は適切です。
(ウ) 適切です。
日本銀行(中央銀行)としては、民間の金融機関(市中銀行)が一定額以上の資金を日本銀行(中央銀行)に預けたら金利を支払うこととなるため、余剰資金を日本銀行(中央銀行)に預けるのではなく、企業への融資や投資に回すようになり、経済が活性化してデフレを脱却できると期待していました。
また、一般の家庭や企業が民間の金融機関(市中銀行)を利用した預金や借入金に「マイナス金利」が適用される訳ではありませんが、適用される金利は下がります。
したがって、マイナス金利によって、借入金利が下がり、企業の資金調達がしやすくなると期待されるため、選択肢の内容は適切です。
(エ) 不適切です。
日本銀行(中央銀行)としては、「マイナス金利」の導入により、2016年末には「年2%の物価上昇率(インフレ率)」を達成することを目指していましたが、実現することはできませんでした。
「マイナス金利」の導入は「インフレーション」を目指したものであり、「マイナス金利」を導入しても「デフレーション」にはなりません。
したがって、マイナス金利によるデフレーションに備えてではなく、マイナス金利によるインフレーションに備えて、提供する財やサービスの価格を見直すことが求められるため、選択肢の内容は不適切です。
答えは(エ)です。
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