今回は、「経営分析(1)(過去問の出題傾向)」について説明します。
目次
経営分析
「経営分析」は「事例Ⅳの第1問」として必ず出題され、配点も「20点~25点」と高いので確実に得点を稼ぎたい問題です。
「経営分析」に関連する記事は、以下のページに整理しています。
経営分析とは
「経営分析」では、企業の財務諸表に基づき、その企業の経営状況を定量的に分析していきます。定量的に分析して企業の経営状況を正確に把握することによって、経営者が意思決定を行うための情報を提供することを目的としています。
経営分析の出題傾向
「経営分析」は、中小企業診断士の二次試験(事例Ⅳ)の「設問1」で毎年出題されている分野です。過去8年間における出題の傾向について、簡単ですが以下に整理してみました。
年度 | 比較対象 | 財務諸表 | 財務指標 【求められる解答】 |
||||
前期 | 他社 | その他 | PL | BS | その他 | ||
H29 | - | ○ | - | ○ | ○ | - | 優れている(1つ)課題(2つ) |
H28 | ○ | - | - | ○ | ○ | - | 重要と思われるもの(3つ) |
H27 | - | ○ | - | ○ | ○ | - | 優れている(1つ)課題(2つ) |
H26 | - | ○ | - | ○ | ○ | - | 優れている(1つ)課題(2つ) |
H25 | - | - | 出資後 | - | ○ | - | 主要な財務比率(3つ) |
H24 | - | - | 改修工事後 | ○ | ○ | 費用内訳 | 収益性(3つ) |
H23 | - | ○ | - | ○ | ○ | - | 問題点(3つ) |
H22 | - | ○ | - | ○ | ○ | - | 重要と思われるもの(3つ) |
「比較対象」の分析
「経営分析」では、自社の経営状況を比較するための対象が必要となります。
一般的に、自社の経営状況を比較する対象として、以下2つの観点が考えられます。
- 自社の経営状況が改善されているのか。
- 世の中の同業他社よりも優れているのか。
過去の出題傾向を見てみると「経営分析」における「比較対象」は以下の3パターンであり、「世の中の同業他社」と比較する問題が出題されることが多いようです。
- 同業他社と比較する。(5回)
- 自社の前期の財務諸表と比較する。(1回)
- 設備投資後・出資後の自社の財務諸表と比較する。(2回)
「3.」では「設備投資後・出資後の自社の財務諸表」を導いてから経営分析を行うこととなるため、「設備投資後/出資後の財務諸表」を間違えてしまうと「経営分析」の正解を導くことができなくなってしまうので少し厄介です。
ここで「経営分析」の本質について少し考えてみましょう。
例えば、あるA社の社長が「ここ3年で営業利益を1%から3%に伸ばすことができたが、まだまだだと考えている。」とおっしゃっていたとします。
中小企業診断士であるあなたは、社長に何を提言していくべきでしょう。
たぶん、最初のヒアリング項目は「どうやって営業利益を1%から3%に伸ばすことができたのでしょうか?」だと思います。何も対策を実施せずに景気が良くなり収益が増えたからという理由だとした場合は、景気が悪くなるとまた営業利益が低下してしまうため論外です。
社長が売上を伸ばすために新規顧客を開拓するための営業体制を見直したり、売上原価を低減するために何らかの対策を講じたことにより、営業利益が増えているとしたら、第1ステップは成功で、今後の経営目標について話が進んでいくはずです。
今後の経営目標について話を進めていくとした場合。。。
- 社長は「まだまだ」とおっしゃっていますが、そもそも、何がどれくらい「まだまだ」なのかを分かっていない可能性があります。
- 「まだまだ」を判断する基準として同業他社の情報をお伝えするのが、社長としてもイメージしやすく、自社でも実現できそうなものとして受け入れやすいのではないかと思います。
- 仮に、同業他社における平均の営業利益が「10%」だったとした場合、A社が目指すべき指標として同業他社の平均である「10%」を営業利益目標として中期計画を策定することを提言してみてはどうでしょうか。
- もちろん「営業利益目標を10%にしてはどうですか?」という数字だけをお伝えしても意味はなく、社長は「どうやってそれを実現していけばいいのか?」ということを一番知りたいはずなので、中小企業診断士であるあなたが、A社の財務指標を同業他社と比較して、どこが優れていて、どこが劣っているのかを分析したうえで、営業利益目標を達成するための対策を具体的に提言していくこととなります。
これが経営分析であり、同業他社との比較が非常に重要です。
(※)注意事項
社長は企業を運営してきた経営者です。実際には、私たち中小企業診断士よりも、同業他社や自分の会社のことを理解している方がほとんどです。
「財務諸表」の分析
基本的に、問題で与えられた「損益計算書(PL)」と「貸借対照表(BS)」に基づき「財務指標」を計算していくこととなりますが、平成25年度においては「貸借対照表(BS)」だけが与えられるというパターンで出題されました。
「経営分析」で使用する財務指標には「収益性」「効率性」「安全性」がありますが、「貸借対照表(BS)」だけでは「安全性」しか求めることができません。つまり、平成25年度では「安全性」について分析をするように。という意図の問題だったということです。
本番の試験で、過去の試験傾向と異なるパターンが出題された場合でも、慌てずにその意図を考えてみるようにしてみましょう。
「財務指標」の分析
過去の試験傾向を見る限り、「経営分析」の問題では、常に「3つ」の財務指標を解答するように求められていますが、「3つ」の財務指標を解答するように求められることにも意味があります。
財務指標は「収益性」「効率性」「安全性」の「3つ」に分類することができます。
さらに、「安全性」は「短期安全性」「長期安全性」「資本調達構造」の「3つ」に分類することができます。
「財務指標」の分類
財務指標 | 収益性 | |
効率性 | ||
安全性 | 短期安全性 | |
長期安全性 | ||
資本調達構造 |
つまり、「経営分析」の問題では、それぞれの観点(分類)から「1つ」ずつの財務指標を選択して解答する必要があります。
例えば、「損益計算書(PL)」と「貸借対照表(BS)」が与えられた場合は、「収益性」「効率性」「安全性」の観点(分類)からそれぞれ「1つ」ずつの財務指標を選択して解答します。
また、平成25年度のように「貸借対照表(BS)」だけが与えられた場合は、「安全性」の「短期安全性」「長期安全性」「資本調達構造」の観点(分類)からそれぞれ「1つ」ずつの財務指標を選択して解答します。
コメント