財務・会計 ~H26-5 償却原価法(1)~

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今回は、「財務・会計 ~H26-5 償却原価法(1)~」について説明します。

 

目次

財務・会計 ~平成26年度一次試験問題一覧~

平成26年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

金融商品に関する会計処理

金融商品に関する会計処理は「金融商品に関する会計基準」で規定されています。

なお、資産の評価基準については「企業会計原則」に規定されていますが、金融商品に関しては「金融商品に関する会計基準」の方が優先して適用されます。

 

償却原価法

償却原価法とは、金融債権を「債権金額」より低い価額または高い価額で取得した場合に、「債権金額」と「取得価額」の差額の性格が金利の調整と認められるときは、償却期に至るまで、毎期一定の方法で「取得価額」にその差額を加減していく方法をいいます。なお、その加減する金額は「受取利息」または「支払利息」として処理します。

償却原価法には「利息法」と「定額法」の2つの方法があり、原則として「利息法」を適用するものとされていますが、継続適用を条件として「定額法」を適用することも認められています

 

償却原価法の事例

「償却原価法」の会計処理手順を、以下の事例に基づき説明していきます。
「定額法」から説明する方が分かりやすいと思うので「定額法」「利息法」の順番で説明します。

 

事例の前提条件

A社は、X1年度期首に「額面:\1,000,000」の社債を「取得価額:¥929,955」で購入した。
社債の償還期限はX5年度期末であり、実効利子率「4.6%」、クーポン利子率は「3%(1年後より年1回支払)」に設定されている。

 

定額法(容認)

「償却原価法」では、継続適用を条件として「定額法」を適用することが認められています
「定額法」では「債権金額」と「取得価額」の差額を、取得してから償還するまでの期間で一定額に配分して「金利調整差額償却額」を計上します。

事例では「X1年度期首」に取得して「X5年度期末」に償却するため、5年で配分していますが、取得日や償還日が年度途中の場合は月数や日数で配分します。

 

金融債権(社債)の貸借対照表価額の推移

 

年度 貸借対照表価額
(期首)
金利調整
差額償却額
(受取利息)
貸借対照表価額
(期末)
X1年度 ¥929,955 ¥14,009 ¥943,964
X2年度 ¥943,964 ¥14,009 ¥957,973
X3年度 ¥957,973 ¥14,009 ¥971,982
X4年度 ¥971,982 ¥14,009 ¥985,991
X5年度 ¥985,991 ¥14,009 ¥1,000,000

 

金融債権(社債)取得時の仕訳(X1年度期首)

 

借方 貸方
満期保有目的債券(社債) ¥929,955 現金 ¥929,955

 

年度末における仕訳(各年度)

年度末に、クーポンによる利息の受け取りと、当該年度に配分される「金利調整差額償却額」の計上について、仕訳を行います。
「金利調整差額償却額」は「金融債権」の貸借対照表価額に加算する形で処理します。

 

借方 貸方
現金
満期保有目的債券(社債)
¥30,000
¥14,009
受取利息(クーポン利息)
受取利息(金利調整差額)
¥30,000
¥14,009

 

利息法(原則)

「償却原価法」では、原則として「利息法」を適用するものとされています。
「利息法」を適用する場合には「定額法」では使わなかった「実効利子率」「クーポン利子率」という数値データを使って「金利調整差額償却額」を算定していきます。

「利息法」では「債権金額」と「取得価額」の差額を、取得してから償還するまでの期間にわたって配分しますが、配分する金額は以下の手順により算定されるため、毎期に配分される金額は一定額ではなく変動することとなります。

 

  • ② 利息配分額 = ①貸借対照表価額(期首)× 実効利子率
  • ③ クーポン利息 = 債権金額 × クーポン利子率
  • ④ 金利調整差額償却額 = ② 利息配分額 - ③ クーポン利息
  • ⑤ 貸借対照表価額(期末)= ① 貸借対照表価額(期首)+ ④ 金利調整差額償却額

 

金融債権(社債)の貸借対照表価額の推移

 

年度
貸借対照表価額
(期首)

利息配分額

クーポン利息
(受取利息)

金利調整
差額償却額
(受取利息)

貸借対照表価額
(期末)
X1年度 ¥929,955 ¥42,778 ¥30,000 ¥12,778 ¥942,733
X2年度 ¥942,733 ¥43,366 ¥30,000 ¥13,366 ¥956,099
X3年度 ¥956,099 ¥43,981 ¥30,000 ¥13,981 ¥970,080
X4年度 ¥970,080 ¥44,624 ¥30,000 ¥14,624 ¥984,704
X5年度 ¥984,704 ¥45,296 ¥30,000 ¥15,296 ¥1,000,000

 

金融債権(社債)取得時の仕訳(X1年度期首)

 

借方 貸方
満期保有目的債券(社債) ¥929,955 現金 ¥929,955

 

年度末における仕訳(X1年度)

年度末に、クーポンによる利息の受け取りと、当該年度に配分される「金利調整差額償却額」の計上について、仕訳を行います。
「金利調整差額償却額」は「金融債権」の貸借対照表価額に加算する形で処理します。

 

借方 貸方
現金
満期保有目的債券(社債)
¥30,000
¥12,778
受取利息(クーポン利息)
受取利息(金利調整差額)
¥30,000
¥12,778

 

年度末における仕訳(X2年度)

「利息法」では「金融債権」の貸借対照表価額に加算される「金利調整差額償却額」が毎期変動していきます

 

借方 貸方
現金
満期保有目的債券(社債)
¥30,000
¥13,366
受取利息(クーポン利息)
受取利息(金利調整差額)
¥30,000
¥13,366

社債を発行する企業視点の問題

社債を発行する企業の視点から見ると、以下のような問題となって出題されます。

B社は、X1年度期首に普通社債の発行を検討している。
この社債は「額面:\1,000,000」であり、クーポン利子率は「3%(1年後より年1回支払)」、償還期限は「5年」とする予定である。B社では社債の目標資本コストを「4.6%」にしたいと考えている場合、この社債をいくらで発行するべきか。

なお、年金現価係数と複利現価係数は以下の通りである。

複利現価係数(4.6%、5年) 年金現価係数(4.6%、5年)
0.7986 4.378
  1. 償還金額(5年後)の割引現在価値
    1,000,000円 × 0.7986 = 798,600円
  2. クーポン利息の割引現在価値
    30,000円 × 4.378 = 131,340円
  3. 社債の発行価額
    798,600円 + 131,340円 = 929,940円

「929,940円 ≒ 929,955円」で、四捨五入の関係により、若干の誤差はありますが、社債を購入するA社の会計処理(利息法)に関する考え方と同じです。

また、社債の発行者と購入者の視点で呼び方が変わりますが、「目標資本コスト」と「実効利子率」が同じ利率となっています。

実際に「平成23年度 第15問」で、同様の問題が出題されていますので、以下のページにもアクセスしてみてください。

 

 

試験問題

それでは、実際の試験問題を解いてみます。

【平成26年度 第5問】

以下の資料に基づいて、社債償還損益の金額を計算した場合、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

[資料]

平成X3年4月1日に、社債(額面2,000,000円)を額面100円につき98円で買い入れた。この社債は、平成X1年4月1日に額面100円につき95円で発行された社債(額面5,000,000円、年利率4%、利払日は3月末日と9月末日、償還期限5年)の一部である。なお、決算日は3月31日、社債は償却原価法によって適切に処理されている。

[解答群]

ア 社債償還益 20,000円
イ 社債償還益 60,000円
ウ 社債償還損 20,000円
エ 社債償還損 60,000円

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

考え方と解答

問題文からは読み取りづらいですが、自社が発行した社債を満期日よりも前に、社債の保有者から買入償還した場合に発生する損益に関する出題です。

 

社債の買入償還金額

  • 社債の買入償還金額:2,000,000円 × 98円 ÷ 100円 = 1,960,000円

 

社債の帳簿価額

平成X1年4月1日に社債を発行してから2年が経過しています。
なお、問題文に「実効利子率」に関する記述がないため、「定額法」により「金利調整差額償却額」を算定して、社債の帳簿価額を算定すると考えます。

 

  • 社債の発行時の価額:2,000,000円 × 95円 ÷ 100円 = 1,900,000円
  • 金利調整差額償却額(2年分):100,000円 × 2年 ÷ 5年 = 40,000円
  • 社債の帳簿価額:1,900,000円 + 40,000円 = 1,940,000円

 

社債償却損益の算出

平成X1年4月1日に発行した社債は「2年」が経過して帳簿価額が「194万円」となっていますが、社債の保有者から「196万円」で買入償還したため、「2万円」の社債償還損が発生します。

 

借方 貸方
社債
社債償還損
1,940,000
20,000
現金 1,960,000

 

答えは(ウ)です。


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