今回は、「財務・会計 ~R1-5 計算書類等(2)~」について説明します。
目次
財務・会計 ~令和元年度一次試験問題一覧~
令和元年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
計算書類等 -リンク-
本ブログにて「計算書類等」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
計算書類等
「計算書類等」については、会社法第435条から443条に定められています。
計算書類等の作成及び保存(会社法第435条/会社計算規則第59条)
すべての株式会社は、各事業年度に係る「計算書類」「事業報告」「これらの附属明細書(計算書類の附属明細書/事業報告の附属明細書)」を作成しなければなりません。
株式会社が作成する書類のうち「計算書類」は「貸借対照表」「損益計算書」「株主資本等変動計算書」「個別注記表」で構成されます。
また「計算書類」と「計算書類の附属明細書」は作成から10年間保存しなければなりません。
書類 | 保存期間 |
計算書類(貸借対照表/損益計算書/株主資本等変動計算書/個別注記表) | 10年間 |
計算書類の附属明細書 | |
事業報告 | なし |
事業報告の附属明細書 |
会社法(平成十七年法律第八十六号) ~計算書類等の作成及び保存~
(計算書類等の作成及び保存)
第四百三十五条 株式会社は、法務省令で定めるところにより、その成立の日における貸借対照表を作成しなければならない。
2 株式会社は、法務省令で定めるところにより、各事業年度に係る計算書類(貸借対照表、損益計算書その他株式会社の財産及び損益の状況を示すために必要かつ適当なものとして法務省令で定めるものをいう。以下この章において同じ。)及び事業報告並びにこれらの附属明細書を作成しなければならない。
3 計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書は、電磁的記録をもって作成することができる。
4 株式会社は、計算書類を作成した時から十年間、当該計算書類及びその附属明細書を保存しなければならない。
会社計算規則(平成十八年法務省令第十三号) ~各事業年度に係る計算書類~
(各事業年度に係る計算書類)
第五十九条 法第四百三十五条第二項に規定する法務省令で定めるものは、この編の規定に従い作成される株主資本等変動計算書及び個別注記表とする。
2 各事業年度に係る計算書類及びその附属明細書の作成に係る期間は、当該事業年度の前事業年度の末日の翌日(当該事業年度の前事業年度がない場合にあっては、成立の日)から当該事業年度の末日までの期間とする。この場合において、当該期間は、一年(事業年度の末日を変更する場合における変更後の最初の事業年度については、一年六箇月)を超えることができない。
3 法第四百三十五条第二項の規定により作成すべき各事業年度に係る計算書類及びその附属明細書は、当該事業年度に係る会計帳簿に基づき作成しなければならない。
計算書類等の監査等(会社法第436条)
作成した「計算書類」「事業報告」「これらの附属明細書(計算書類の附属明細書/事業報告の附属明細書)」は、株主に提供する前に監査等を受けなければなりません。
取締役会設置会社 | 監査役設置会社 | 会計監査人設置会社 | ||
取締役会の承認 | 監査役の監査 | 監査役の監査 (または監査等委員会・監査委員会の監査) |
会計監査人の監査 | |
計算書類 | ○ | ○ | ○ | ○ |
計算書類の附属明細書 | ○ | ○ | ○ | ○ |
事業報告 | ○ | ○ | ○ | - |
事業報告の附属明細書 | ○ | ○ | ○ | - |
会社法(平成十七年法律第八十六号) ~計算書類等の監査等~
(計算書類等の監査等)
第四百三十六条 監査役設置会社(監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社を含み、会計監査人設置会社を除く。)においては、前条第二項の計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書は、法務省令で定めるところにより、監査役の監査を受けなければならない。
2 会計監査人設置会社においては、次の各号に掲げるものは、法務省令で定めるところにより、当該各号に定める者の監査を受けなければならない。
一 前条第二項の計算書類及びその附属明細書 監査役(監査等委員会設置会社にあっては監査等委員会、指名委員会等設置会社にあっては監査委員会)及び会計監査人
二 前条第二項の事業報告及びその附属明細書 監査役(監査等委員会設置会社にあっては監査等委員会、指名委員会等設置会社にあっては監査委員会)
3 取締役会設置会社においては、前条第二項の計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書(第一項又は前項の規定の適用がある場合にあっては、第一項又は前項の監査を受けたもの)は、取締役会の承認を受けなければならない。
計算書類等の株主への提供(会社法第437条)
株式会社は、定時株主総会の招集の通知に際して、株主に「計算書類」「事業報告」を提供しなければなりません。「これらの附属明細書(計算書類の附属明細書/事業報告の附属明細書)」を提供する必要はありません。
また、「計算書類」「事業報告」だけでなく、株主に提供する前に監査等を受けた結果を提供する必要があります。「監査報告」とは監査役(または監査等委員会・監査委員会)による監査の結果であり、「会計監査報告」とは会計監査人による監査の結果のことをいいます。
右記以外の会社 | 取締役会設置会社 監査役設置会社 |
取締役会設置会社 監査役設置会社 会計監査人設置会社 |
|
計算書類 | ○ | ○ | ○ |
計算書類の附属明細書 | - | - | - |
事業報告 | ○ | ○ | ○ |
事業報告の附属明細書 | - | - | - |
監査報告 | - | ○ | ○ |
会計監査報告 | - | - | ○ |
会社法(平成十七年法律第八十六号) ~計算書類等の株主への提供~
(計算書類等の株主への提供)
第四百三十七条 取締役会設置会社においては、取締役は、定時株主総会の招集の通知に際して、法務省令で定めるところにより、株主に対し、前条第三項の承認を受けた計算書類及び事業報告(同条第一項又は第二項の規定の適用がある場合にあっては、監査報告又は会計監査報告を含む。)を提供しなければならない。
計算書類等の定時株主総会への提出等(会社法第438条)
株式会社が定時株主総会に提出または提供しなければならない書類は「計算書類等の株主への提供」と同じです。
「計算書類」は定時株主総会において承認を受けるために提出または提供し、「事業報告」は定時株主総会において報告するために提出または提供します。
- 計算書類:定時株主総会の承認を受ける。
- 事業報告:定時株主総会に報告する。
会社法(平成十七年法律第八十六号) ~計算書類等の定時株主総会への提出等~
(計算書類等の定時株主総会への提出等)
第四百三十八条 次の各号に掲げる株式会社においては、取締役は、当該各号に定める計算書類及び事業報告を定時株主総会に提出し、又は提供しなければならない。
一 第四百三十六条第一項に規定する監査役設置会社(取締役会設置会社を除く。) 第四百三十六条第一項の監査を受けた計算書類及び事業報告
二 会計監査人設置会社(取締役会設置会社を除く。) 第四百三十六条第二項の監査を受けた計算書類及び事業報告
三 取締役会設置会社 第四百三十六条第三項の承認を受けた計算書類及び事業報告
四 前三号に掲げるもの以外の株式会社 第四百三十五条第二項の計算書類及び事業報告
2 前項の規定により提出され、又は提供された計算書類は、定時株主総会の承認を受けなければならない。
3 取締役は、第一項の規定により提出され、又は提供された事業報告の内容を定時株主総会に報告しなければならない。
計算書類の公告(会社法第440条)
株式会社は、定時株主総会の終結後遅滞なく、計算書類を公告しなければなりませんが、株式会社の種類や規模により、公告しなければならない計算書類が異なります。
株式会社の規模による違い
- 大会社
定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表及び損益計算書を公告しなければならない。 - 大会社以外の株式会社
定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表を公告しなければならない。
なお、「大会社」とは以下のいずれかの条件に該当する会社と定義されています(会社法第2条)。
大会社の定義
- 貸借対照表において「資本金」として計上した額が5億円以上の場合
- 貸借対照表において「負債の部」に計上した額の合計額が200億円以上の場合
会社法(平成十七年法律第八十六号) ~計算書類の公告~
(計算書類の公告)
第四百四十条 株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大会社にあっては、貸借対照表及び損益計算書)を公告しなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、その公告方法が第九百三十九条第一項第一号又は第二号に掲げる方法である株式会社は、前項に規定する貸借対照表の要旨を公告することで足りる。
3 前項の株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後遅滞なく、第一項に規定する貸借対照表の内容である情報を、定時株主総会の終結の日後五年を経過する日までの間、継続して電磁的方法により不特定多数の者が提供を受けることができる状態に置く措置をとることができる。この場合においては、前二項の規定は、適用しない。
4 金融商品取引法第二十四条第一項の規定により有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならない株式会社については、前三項の規定は、適用しない。
会社法(平成十七年法律第八十六号) ~大会社の定義~
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
六 大会社 次に掲げる要件のいずれかに該当する株式会社をいう。
イ 最終事業年度に係る貸借対照表(第四百三十九条前段に規定する場合にあっては、同条の規定により定時株主総会に報告された貸借対照表をいい、株式会社の成立後最初の定時株主総会までの間においては、第四百三十五条第一項の貸借対照表をいう。ロにおいて同じ。)に資本金として計上した額が五億円以上であること。
ロ 最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が二百億円以上であること。
連結計算書類
「連結計算書類」については、会社法第444条に定められています。
連結計算書類の作成条件(会社法第444条)
「金融商品取引法の規定により有価証券報告書を提出する大会社」は「連結計算書類」を作成しなければなりません。
なお、「大会社」とは以下のいずれかの条件に該当する会社と定義されています(会社法第2条)。
大会社の定義
- 貸借対照表において「資本金」として計上した額が5億円以上の場合
- 貸借対照表において「負債の部」に計上した額の合計額が200億円以上の場合
なお、「金融商品取引法の規定により有価証券報告書を提出する大会社」に該当していなくても「会計監査人設置会社」は任意で「連結計算書類」を作成することができます。
連結計算書類の作成(会社法第444条/会社計算規則第61条)
「連結計算書類」は「連結貸借対照表」「連結損益計算書」「連結株主資本等変動計算書」「連結注記表」で構成されます。
連結計算書類の承認と監査(会社法第444条)
作成した「連結計算書類」は、株主に提供する前に「監査役の監査」「会計監査人の監査」「取締役会の承認」を受けなければなりません。
なお、「大会社」には「監査役会」と「会計監査人」の設置が義務付けられています(会社法第328条)。
取締役会の承認 | 監査役の監査 (または監査委員会) |
会計監査人の監査 | |
連結計算書類 | ○ | ○ | ○ |
ちなみに、「会計監査人設置会社」が任意で「連結計算書類」を作成した場合でも、「監査役の監査」「会計監査人の監査」「取締役会の承認」を受けなければなりません。
連結計算書類等の株主への提供(会社法第444条)
「金融商品取引法の規定により有価証券報告書を提出する大会社」または「会計監査人設置会社」で任意で連結計算書類を作成する会社は、定時株主総会の招集の通知に際して、株主に「連結計算書類」「監査報告」「会計監査報告」を提供しなければなりません。
取締役会設置会社 監査役設置会社 会計監査人設置会社 |
|
連結計算書類 | ○ |
監査報告 | ○ |
会計監査報告 | ○ |
会社法(平成十七年法律第八十六号) ~連結計算書類~
第四百四十四条 会計監査人設置会社は、法務省令で定めるところにより、各事業年度に係る連結計算書類(当該会計監査人設置会社及びその子会社から成る企業集団の財産及び損益の状況を示すために必要かつ適当なものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)を作成することができる。
2 連結計算書類は、電磁的記録をもって作成することができる。
3 事業年度の末日において大会社であって金融商品取引法第二十四条第一項の規定により有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないものは、当該事業年度に係る連結計算書類を作成しなければならない。
4 連結計算書類は、法務省令で定めるところにより、監査役(監査等委員会設置会社にあっては監査等委員会、指名委員会等設置会社にあっては監査委員会)及び会計監査人の監査を受けなければならない。
5 会計監査人設置会社が取締役会設置会社である場合には、前項の監査を受けた連結計算書類は、取締役会の承認を受けなければならない。
6 会計監査人設置会社が取締役会設置会社である場合には、取締役は、定時株主総会の招集の通知に際して、法務省令で定めるところにより、株主に対し、前項の承認を受けた連結計算書類を提供しなければならない。
7 次の各号に掲げる会計監査人設置会社においては、取締役は、当該各号に定める連結計算書類を定時株主総会に提出し、又は提供しなければならない。この場合においては、当該各号に定める連結計算書類の内容及び第四項の監査の結果を定時株主総会に報告しなければならない。
一 取締役会設置会社である会計監査人設置会社 第五項の承認を受けた連結計算書類
二 前号に掲げるもの以外の会計監査人設置会社 第四項の監査を受けた連結計算書類
会社法(平成十七年法律第八十六号) ~大会社の定義~
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
六 大会社 次に掲げる要件のいずれかに該当する株式会社をいう。
イ 最終事業年度に係る貸借対照表(第四百三十九条前段に規定する場合にあっては、同条の規定により定時株主総会に報告された貸借対照表をいい、株式会社の成立後最初の定時株主総会までの間においては、第四百三十五条第一項の貸借対照表をいう。ロにおいて同じ。)に資本金として計上した額が五億円以上であること。
ロ 最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が二百億円以上であること。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【令和元年度 第5問】
会社法上の計算書類に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 会社法上の計算書類には、株主資本等変動計算書は含まれない。
イ 計算書類の作成と報告に当たっては、会社法のほかに財務諸表規則(財務諸表等の用語、様式および作成方法に関する規則)に準拠しなければならない。
ウ 公開会社は、計算書類に加えて連結計算書類を作成し、定時株主総会に報告することが求められている。
エ 取締役会設置会社は、定時株主総会の招集の通知に際して、株主に計算書類を提供しなければならない。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
会社法上の計算書類に関する知識を問う問題です。
(ア) 不適切です。
株式会社が作成する書類のうち「計算書類」は「貸借対照表」「損益計算書」「株主資本等変動計算書」「個別注記表」で構成されます。
したがって、会社法上の計算書類には、株主資本等変動計算書は含まれるため、選択肢の内容は不適切です。
(イ) 不適切です。
「財務諸表規則(財務諸表等の用語、様式および作成方法に関する規則)」は、金融商品取引法の規定に基づき提出する「貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、キャッシュ・フロー計算書など」の作成や表示に関する規則であり、金融商品取引法の適用を受ける上場会社がこれらの財務計算に関する書類を作成する際に従うべき規則として定められています。
金融商品取引法の適用を受けない株式会社については「財務諸表規則」に準拠する必要はありません。
したがって、計算書類の作成と報告に当たっては、会社法のほかに財務諸表規則(財務諸表等の用語、様式および作成方法に関する規則)に準拠しなければならないとされていますが、金融商品取引法の適用を受けない株式会社については財務諸表規則(財務諸表等の用語、様式および作成方法に関する規則)に準拠する必要はないため、選択肢の内容は不適切です。
(ウ) 不適切です。
「金融商品取引法の規定により有価証券報告書を提出する大会社」は「連結計算書類」を作成しなければなりません。
なお、「大会社」とは以下のいずれかの条件に該当する会社と定義されています(会社法第2条)。
大会社の定義
- 貸借対照表において「資本金」として計上した額が5億円以上の場合
- 貸借対照表において「負債の部」に計上した額の合計額が200億円以上の場合
したがって、公開会社は、計算書類に加えて連結計算書類を作成し、定時株主総会に報告することが求められているのではなく、金融商品取引法の規定により有価証券報告書を提出する大会社については計算書類に加えて連結計算書類を作成し、定時株主総会に報告することが求められているため、選択肢の内容は不適切です。
(エ) 適切です。
株式会社は、定時株主総会の招集の通知に際して、株主に「計算書類」「事業報告」を提供しなければなりません。「これらの附属明細書(計算書類の附属明細書/事業報告の附属明細書)」を提供する必要はありません。
また、「計算書類」「事業報告」だけでなく、株主に提供する前に監査等を受けた結果を提供する必要があります。「監査報告」とは監査役(または監査等委員会・監査委員会)による監査の結果であり、「会計監査報告」とは会計監査人による監査の結果のことをいいます。
右記以外の会社 | 取締役会設置会社 監査役設置会社 |
取締役会設置会社 監査役設置会社 会計監査人設置会社 |
|
計算書類 | ○ | ○ | ○ |
計算書類の附属明細書 | - | - | - |
事業報告 | ○ | ○ | ○ |
事業報告の附属明細書 | - | - | - |
監査報告 | - | ○ | ○ |
会計監査報告 | - | - | ○ |
したがって、取締役会設置会社は、定時株主総会の招集の通知に際して、株主に計算書類を提供しなければならないため、選択肢の内容は適切です。
答えは(エ)です。
コメント