今回は、「運営管理 ~R4-28-2 商品計画(5)品揃え~」について説明します。
目次
運営管理 ~令和4年度一次試験問題一覧~
令和4年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
商品計画・商品構成・品揃え -リンク-
本ブログにて「商品計画」「商品構成」「品揃え」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
商品計画
「商品計画」とは、小売店舗において、多様化する顧客ニーズを満足させて、利益を得ることをできる「商品構成(商品ミックス)」を計画することをいいます。
中小企業の小売店舗が、大型店舗に対抗するためには、他店との違いや独自性といったストアコンセプトを明確に打ち出して「差別化」を図る「商品構成(商品ミックス)」とする必要があります。
「差別化」を図るためには、「ターゲットとする顧客」を選定して「その対応ニーズ」を把握してから「商品構成(商品ミックス)」を計画していきます。
商品構成(商品ミックス)
「商品構成(商品ミックス)」には階層があり、大まかな商品構成のことを「商品カテゴリー(商品ライン)」といい、さらに細かな商品構成を「品目(商品アイテム)」といいます。
商品カテゴリー(商品ライン)
「商品カテゴリー(商品ライン)」とは、相互に関連性がある一連の商品群のことをいいます。「商品カテゴリー(商品ライン)の数」のことを「品揃えの幅」といい「狭い」「広い」で表されます。
品目(商品アイテム)
「品目(商品アイテム)」とは、同一の「商品カテゴリー(商品ライン)」における商品の種類のことをいいます。「品目(商品アイテム)の数」のことを「品揃えの奥行き」といい「浅い」「深い」で表されます。
品揃え戦略
「品揃え戦略」には「品揃えの総合化(フルライン政策)」「品揃えの専門化(限定ライン政策)」といった方法があります。
品揃えの総合化(フルライン政策)
「品揃えの総合化」とは、販売する「商品カテゴリーの数」を増やすことによって「品揃えの幅を広げること」をいいます。
品揃えの専門化(限定ライン政策)
「品揃えの専門化」とは、販売する「商品カテゴリーの数」を絞り込み、「品目(商品アイテム)の数」を増やし、「品揃えの奥行きを深くすること」をいいます。
中小企業の小売店舗における品揃え戦略
中小企業の小売店舗が、豊富な品揃えを武器とする大型店舗に対抗するためには、他店との違いや独自性といったストアコンセプトを明確に打ち出して「差別化」を図る必要があります。
また、中小企業の小売店舗では、大量の商品を陳列するスペースを確保することも難しいため、商品を絞り込んで効率性を高めていく必要があります。
これらの状況を組み合わせると、中小企業の小売店舗が採用する「品揃え戦略」は、品揃えの幅を狭く奥行きを深くする「品揃えの専門化(限定ライン政策)」に限定されてきます。
ラインロビング
「ラインロビング」とは、販売する「商品カテゴリーの数」を増やすことにより、他店から顧客や売上を奪うことをいいます。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【令和4年度 第28問】
以下は、文房具店の店主X氏と中小企業診断士(以下、「診断士」という。)との間で行われた会話である。この会話に基づく下記の設問に答えよ。
X氏:「最近は、近所の小学校の生徒数が少なくなっているので、子供向けの文房具の売上が落ちています。品揃えを変えていこうと考えているのですが、アドバイスをいただけますか。」
診断士:「品揃えの計画を立てるには、まず店舗の商圏における消費者のニーズを理解することが大事です。小学生が減っているということなので、新たな顧客層をターゲットにしたいですね。」
X氏:「店舗の徒歩圏には高齢者が多く居住しているのですが、あまり来店していません。高齢者の方に使ってもらえる店にしていきたいと思います。」
診断士:「ニーズに合った商品を品揃えすることで、購買の機会を増やしたいですね。どのようなニーズがありそうですか。」
X氏:「自治会では、高齢者の絵画サークルなどをやっているようなので、絵の具やデッサン用の鉛筆などの品揃えを増やそうと考えています。」
診断士:「買上点数を増やして①客単価を高めるために関連購買を促進できる取り組みをするのがよいでしょう。今はあまり来店されていないということなので、販売促進をして接客にも力を入れて常連客を増やすことが重要です。常連客の満足度を高めると、友人などへ口コミで店舗を薦めてもらえることも期待できます。」
X氏:「分かりました。」
診断士:「ただ、文房具は毎日買うものではありません。そこで、別の取り組みとして、高齢者が好む菓子や飲み物など、②今まで販売していない商品カテゴリーの品揃えをしてはどうでしょうか。また、商品を販売するだけでなく、ワークショップなどを開いてもよいかもしれません。」
(設問2)
会話の中の下線部②に記載されている、今まで販売していない商品カテゴリーの品揃えをするラインロビングに関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 今回のラインロビングの取り組みでは、近隣の商店へ影響することはない。
イ 今回のラインロビングの取り組みでは、顧客の来店目的に影響することはない。
ウ 今回のラインロビングを提案する主目的は、粗利益率を高めることにある。
エ 今回のラインロビングを提案する主目的は、買上点数を増やすことにある。
オ 今回のラインロビングを提案する主目的は、来店頻度を増やすことにある。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答(設問2)
「ラインロビング」に関する知識を問う問題です。
「ラインロビング」とは、販売する「商品カテゴリーの数」を増やすことにより、他店から顧客や売上を奪うことをいいます。
(ア) 不適切です。
「ラインロビング」とは、販売する「商品カテゴリーの数」を増やすことにより、他店から顧客や売上を奪うことをいいます。
選択肢には「今回のラインロビングの取り組みでは、近隣の商店へ影響することはない」と記述されていますが、今回のラインロビングの取り組みによって、近隣の商店から顧客や売上を奪うため、近隣の商店にも影響があります。したがって、選択肢の内容は不適切です。
(イ) 不適切です。
「ラインロビング」とは、販売する「商品カテゴリーの数」を増やすことにより、他店から顧客や売上を奪うことをいいます。
したがって、選択肢には「今回のラインロビングの取り組みでは、顧客の来店目的に影響することはない」と記述されていますが、今回のラインロビングの取り組みによって、文房具の購入を目的として来店していた顧客だけでなく、菓子や飲み物の購入を目的とする顧客も来店するようになるため、選択肢の内容は不適切です。
(ウ) 不適切です。
下線部②付近の会話において、中小企業診断士が「文房具は毎日買うものではないため、今まで販売していない商品カテゴリーの品揃えをしてはどうか。」と提言していることから、顧客が店舗に来店する頻度を高めるための品揃え戦略について言及していることが分かります。
なお、新しい商品を増やすことによって店舗全体の粗利益率が高くなるか否かは、新しい商品の粗利益率に依存します。
したがって、今回のラインロビングを提案する主目的は、粗利益率を高めることではなく、来店頻度を増やすことにあるため、選択肢の内容は不適切です。
(エ) 不適切です。
下線部②付近の会話において、中小企業診断士が「文房具は毎日買うものではないため、今まで販売していない商品カテゴリーの品揃えをしてはどうか。」と提言していることから、顧客が店舗に来店する頻度を高めるための品揃え戦略について言及していることが分かります。
したがって、今回のラインロビングを提案する主目的は、買上点数を増やすことではなく、来店頻度を増やすことにあるため、選択肢の内容は不適切です。
(オ) 適切です。
下線部②付近の会話において、中小企業診断士が「文房具は毎日買うものではないため、今まで販売していない商品カテゴリーの品揃えをしてはどうか。」と提言していることから、顧客が店舗に来店する頻度を高めるための品揃え戦略について言及していることが分かります。
したがって、今回のラインロビングを提案する主目的は、来店頻度を増やすことにあるため、選択肢の内容は適切です。
答えは(オ)です。
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