経済学・経済政策 ~H27-3 国民経済計算(8)国民経済計算の概念~

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今回は、「経済学・経済政策 ~H27-3 国民経済計算(8)国民経済計算の概念~」について説明します。

 

目次

経済学・経済政策 ~平成27年度一次試験問題一覧~

平成27年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

国民所得概念・国民経済計算 -リンク-

本ブログにて「国民所得概念」「国民経済計算」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。

 

 

国民経済計算

「国民経済計算」は、日本経済の全体像を国際比較可能な形で体系的に記録することを目的として、国連の定める国際基準(SNA)に準拠しつつ、統計法に基づく基幹統計として「国民経済計算の作成基準及び作成方法」に基づき作成されています。

内閣府から公表される「国民経済計算」には「四半期別GDP速報」と「国民経済計算年次推計」があります。

「四半期別GDP速報」は、速報性を重視してGDPをはじめとする支出側系列等を四半期単位で年に8回公表されており、「国民経済計算年次推計」は、生産・分配・支出・資本蓄積といったフロー面や、資産・負債といったストック面も含めて、年に1回公表されています。

 

国民経済計算の指標

「国民経済計算」には、馴染みの深い「GDP(国内総生産)」を初めとして、他にも様々な指標があります。

 

国民経済計算の指標の命名規則

「国民経済計算」には様々な指標があるため混乱しがちですが、指標の命名規則がある程度決まっているので、以下に説明します。ただし、全ての指標に当てはまるわけではありませんのでご注意ください。

説明する命名規則に基づく指標一覧を以下に示します。(全ての指標が存在するかは未確認)

なお、頻繁に登場する指標には赤色マーカーを付けています。

 

命名規則に基づく指標一覧

生産 所得 支出
総額 国内 GDP(国内総生産) GDI(国内総所得) GDE(国内総支出)
国民 GNP(国民総生産) GNI(国民総所得) GNE(国民総支出)
純額 国内 NDP(国内純資産) NDI(国内純所得) NDE(国内純支出)
国民 NNP(国民純資産) NNI(国民純所得) NNE(国民純支出)

 

黄色マーカーを付けている「GNP(国民総生産)」については、内閣府から公表される「国民経済計算」において、2000年(国際基準:1993SNA)から使用されなくなっています。

 

頻繁に登場する指標の構成要素を以下に示します。

 

主な指標の構成要素

 

指標の1文字目

指標の1文字目に使われる「G」と「N」は「Gross:総額」と「Net:純額」を表しています

 

  • G(Gross:総額)
  • N(Net:純額)

 

指標の2文字目

指標の2文字目に使われる「D」と「N」は「Domestic:国内」と「National:国民」を表しています

 

  • D(Domestic:国内)
  • N(National:国民)

 

指標の3文字目

指標の3文字目に使われる「P」と「I」と「E」は「Product:生産」と「Income:所得」と「Expenditure:支出」を表しています

 

  • P(Product:生産)
  • I(Income:所得)
  • E(Expenditure:支出)

 

国内(Domestic)概念と国民(National)概念

「国民経済計算」の指標の2文字目に使われる「Domestic:国内」と「National:国民」の概念について説明します。

 

 

国内(Domestic)概念

「国民経済計算」における”国内”という概念は、日本国内の領土に居住する経済主体を対象とする概念を表しており、主として生産活動に関連した概念です。

個人の場合、国籍によらず、日本国内の領土で発生した場合は”国内”の概念に含まれます。

法人等の場合、日本国内の領土で生産活動を行っている外国企業の在日子会社などは”国内”の概念に含まれますが、海外で生産活動を行っている日本企業の海外支店などは”国内”の概念に含まれません

 

国民(National)概念

「国民経済計算」における”国民”という概念は、日本の居住者主体を対象とする概念を表しています。

個人の場合、”国民”の概念に含まれるか否かはその個人の国籍ではなく、日本国内に住所または居所を有するか否かにより判定されるため、日本に6ヶ月以上居住している外国人は”国民”の概念に含まれますが、国外に2年以上居住する日本人は”国民”の概念には含まれません

法人等の場合、海外で生産活動を行っている日本企業の海外支店などは”国民”の概念に含まれますが、日本国内の領土で生産活動を行っている外国企業の在日子会社などは”国民”の概念に含まれません

 

GDP(Gross Domestic Product:国内総生産)

「GDP(国内総生産)」は、”国内”で一定期間内に新たに生み出された財・サービスの「付加価値」の総額のことをいいます。

「GDP(国内総生産)」は、新たに生み出された財・サービスの「付加価値」の総額であるため、新たに生み出されたものではない「株価の上昇」や「地価の上昇」や「中古市場での取引」は含まれません

 

付加価値

「付加価値」とは、新たに生み出された価値であり「産出額」から「中間投入額」を控除することにより計算することができます。

 

 

新たに生み出された価値である「付加価値」を求めるためには、新たに生み出された価値ではない「材料費」や「外注加工費」などを控除する必要があります

これらの「材料費」や「外注加工費」などのことを「中間投入額」といいますが、「中間投入額」を控除せずに各企業の産出額を加算していくと2重3重でカウントされてしまいます

 

 

GNP(Gross National Product:国民総生産)

「GNP(国民総生産)」は、”国民”が一定期間内に新たに生み出したモノやサービスの「付加価値」の総額のことをいいます。

 

内閣府から公表される「国民経済計算」においては、2000年(国際基準:1993SNA)から「GNP(国民総生産)」の概念はなくなり「GNI(国民総所得)」が導入されています

 

NDP(Net Domestic Product:国内純生産)

「NDP(国内純生産)」は、”国内”で一定期間内に新たに生み出されたモノやサービスの「付加価値」の純額のことをいい、「GDP(国内総生産)」から「固定資本減耗」を控除した「純額」で表されます。「固定資本減耗」を簡単に言うと資産の「減価償却費」のことです。

 

 

GDI(Gross Domestic Income:国内総所得)

「GDI(国内総所得)」は、”国内”で一定期間内に得られた所得の総額のことをいいます。

 

GNI(Gross National Income:国民総所得)

「GNI(国民総所得)」は、”国民”が一定期間内に得た所得の総額のことをいい、「GDP(国内総生産)」または「GDI(国内総所得)」に「海外からの所得の純受取」を加算した総額を表しています。

 

 

内閣府から公表される「国民経済計算」においては、2000年(国際基準:1993SNA)から「GNP(国民総生産)」の概念はなくなり「GNI(国民総所得)」が導入されています

 

GDE(Gross Domestic Expenditure:国内総支出)

「GDE(国内総支出)」は、”国内”で一定期間内に支払われたモノやサービスを購入するための「支出」の総額のことをいいます。

 

内閣府が発表する「国民経済計算」においては、2004年度確報から「国内総支出」ではなく「国内総生産(支出側)」と表記されています

 

GDPの構成要素(需要)

「GDP(国内総生産)」を「需要」から捉えた場合の構成要素は以下の通りです。

 

GDP(国内総生産)の構成要素(需要)

 

「GDP(国内総生産)」の構成要素だけを見ても、あまり理解が進みませんが、財市場における「開放経済」の「総需要曲線(YD)」の公式と組み合わせてイメージすると分かりやすいと思います。

 

  • 開放経済(輸出入含む)
    YD = C + I + G + EX-IM
    (民間消費:C、民間投資:I、政府支出:G、EX:輸出、IM:輸入)

 

「GDP(国内総生産)」を「需要」から捉えた場合の構成要素と、「開放経済」の「総需要曲線(YD)」における「民間消費(C)」「民間投資(I)」「政府支出(G)」「純輸出(EX-IM)」の関係は以下の通りです。

 

  • 民間消費(C)= 民間最終消費支出
  • 民間投資(I)= 民間住宅 + 民間企業設備 + 民間在庫変動
  • 政府支出(G)= 政府最終消費支出 + 公的固定資本形成 + 公的在庫変動
  • 純輸出(EX-IM)= 財貨・サービスの輸出 - 財貨・サービスの輸入

 

「民間消費(C)」「民間投資(I)」「政府支出(G)」「純輸出(EX-IM)」の特徴は以下の通りです。

 

  • 「GDP(国内総生産)」に占める「消費(C)」の割合は50%を超えます
  • 「政府支出(G)」の方が「民間投資(I)」よりも高く推移しています。
  • 「純輸出(EX-IM)」は、輸出額から輸入額を控除した金額であるため「GDP(国内総生産)」に占める割合は低くなります
  • 「純輸出(EX-IM)」において、輸入額が輸出額を上回る場合は「マイナス」となります。

 

試験問題

それでは、実際の試験問題を解いてみます。

【平成27年度 第3問】

国民経済計算の概念として、最も適切なものはどれか。

 

ア 国内純生産=国内総生産+固定資本減耗

イ 国内総生産=雇用者報酬+営業余剰・混合所得+生産・輸入品に課される税-補助金

ウ 国内総生産=民間最終消費支出+政府最終消費支出+総固定資本形成+在庫品増加+財貨・サービスの純輸出

エ 国民総所得=雇用者報酬+海外からの所得の純受取

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

考え方と解答

国民経済計算の概念に関する知識を問う問題です。

 

(ア) 不適切です。

「NDP(国内純生産)」は、”国内”で一定期間内に新たに生み出されたモノやサービスの「付加価値」の純額のことをいい、「GDP(国内総生産)」から「固定資本減耗」を控除した「純額」で表されます。「固定資本減耗」を簡単に言うと資産の「減価償却費」のことです。

 

 

したがって、「国内純生産 = 国内総生産 + 固定資本減耗」ではなく、「国内純生産 = 国内総生産 - 固定資本減耗」であるため、選択肢の内容は不適切です

 

(イ) 不適切です。

「GDP(国内総生産)」は、”国内”で一定期間内に新たに生み出されたモノやサービスの「付加価値」の総額のことをいいます。

 

 

したがって、「国内総生産=雇用者報酬+営業余剰・混合所得+生産・輸入品に課される税-補助金」ではなく「国内総生産=雇用者報酬+営業余剰・混合所得+生産・輸入品に課される税-補助金+固定資本減耗」であるため、選択肢の内容は不適切です

 

(ウ) 適切です。

内閣府から公表される「国民経済計算」において「GDP(国内総生産)」は需要の合計として計算されます。「GDP(国内総生産)」の総需要の構成要素は以下の通りです。

 

GDP(国内総生産)の構成要素(総需要)

 

したがって、「国内総生産 = 民間最終消費支出 + 政府最終消費支出 + 総固定資本形成 + 在庫品増加 + 財貨・サービスの純輸出」であるため、選択肢の内容は適切です

 

(エ) 不適切です。

「GNI(国民総所得)」は、”国民”が一定期間内に得た所得の総額のことをいい、「GDP(国内総生産)」または「GDI(国内総所得)」に「海外からの所得の純受取」を加算した総額を表しています。

 

 

内閣府から公表される「国民経済計算」においては、2000年(国際基準:1993SNA)から「GNP(国民総生産)」の概念はなくなり「GNI(国民総所得)」が導入されています

したがって、「国民総所得 = 雇用者報酬 + 海外からの所得の純受取」ではなく「国民総所得 = 国内総所得 + 海外からの所得の純受取」であるため、選択肢の内容は不適切です

 

答えは(ウ)です。


 

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