今回は、「経済学・経済政策 ~H29-4-1 国民経済計算(5)総需要の構成割合~」について説明します。
目次
経済学・経済政策 ~平成29年度一次試験問題一覧~
平成29年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
国民所得概念・国民経済計算 -リンク-
本ブログにて「国民所得概念」「国民経済計算」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- 国民所得概念・国民経済計算のまとめ
- R5-4 国民経済計算(13)GDPの帰属計算
- R4-3 国民経済計算(12)国民経済計算
- R3-1 国民経済計算(10)実質GDPの推移
- R3-3 国民経済計算(11)GDPに含まれるもの
- R2-3 国民経済計算(1)国民所得概念と国民経済計算
- R1-3 国民経済計算(2)総需要の構成要素
- H30-5 国民経済計算(3)GDPの構成要素
- H29-3 国民経済計算(4)GDPの帰属計算
- H28-1 国民経済計算(6)実質GDPとGDPデフレーターの推移
- H28-4 国民経済計算(7)国民経済計算の指標
- H27-3 国民経済計算(8)国民経済計算の概念
- H26-1 国民経済計算(9)雇用者報酬の割合の推移
国民経済計算
「国民経済計算」は、日本経済の全体像を国際比較可能な形で体系的に記録することを目的として、国連の定める国際基準(SNA)に準拠しつつ、統計法に基づく基幹統計として「国民経済計算の作成基準及び作成方法」に基づき作成されています。
内閣府から公表される「国民経済計算」には「四半期別GDP速報」と「国民経済計算年次推計」があります。
「四半期別GDP速報」は、速報性を重視してGDPをはじめとする支出側系列等を四半期単位で年に8回公表されており、「国民経済計算年次推計」は、生産・分配・支出・資本蓄積といったフロー面や、資産・負債といったストック面も含めて、年に1回公表されています。
国民経済計算の指標
「国民経済計算」には、馴染みの深い「GDP(国内総生産)」を初めとして、他にも様々な指標があります。
国民経済計算の指標の命名規則
「国民経済計算」には様々な指標があるため混乱しがちですが、指標の命名規則がある程度決まっているので、以下に説明します。ただし、全ての指標に当てはまるわけではありませんのでご注意ください。
説明する命名規則に基づく指標一覧を以下に示します。(全ての指標が存在するかは未確認)
なお、頻繁に登場する指標には赤色マーカーを付けています。
命名規則に基づく指標一覧
生産 | 所得 | 支出 | ||
総額 | 国内 | GDP(国内総生産) | GDI(国内総所得) | GDE(国内総支出) |
国民 | GNP(国民総生産) | GNI(国民総所得) | GNE(国民総支出) | |
純額 | 国内 | NDP(国内純資産) | NDI(国内純所得) | NDE(国内純支出) |
国民 | NNP(国民純資産) | NNI(国民純所得) | NNE(国民純支出) |
頻繁に登場する指標の構成要素を以下に示します。
主な指標の構成要素
GDP(Gross Domestic Product:国内総生産)
「GDP(国内総生産)」は、”国内”で一定期間内に新たに生み出された財・サービスの「付加価値」の総額のことをいいます。
「GDP(国内総生産)」は、新たに生み出された財・サービスの「付加価値」の総額であるため、新たに生み出されたものではない「株価の上昇」や「地価の上昇」や「中古市場での取引」は含まれません。
付加価値
「付加価値」とは、新たに生み出された価値であり「産出額」から「中間投入額」を控除することにより計算することができます。
新たに生み出された価値である「付加価値」を求めるためには、新たに生み出された価値ではない「材料費」や「外注加工費」などを控除する必要があります。
これらの「材料費」や「外注加工費」などのことを「中間投入額」といいますが、「中間投入額」を控除せずに各企業の産出額を加算していくと2重3重でカウントされてしまいます。
GDPの構成要素(需要)
「GDP(国内総生産)」を「需要」から捉えた場合の構成要素は以下の通りです。
GDP(国内総生産)の構成要素(需要)
「GDP(国内総生産)」の構成要素だけを見ても、あまり理解が進みませんが、財市場における「開放経済」の「総需要曲線(YD)」の公式と組み合わせてイメージすると分かりやすいと思います。
- 開放経済(輸出入含む)
YD = C + I + G + EX-IM
(民間消費:C、民間投資:I、政府支出:G、EX:輸出、IM:輸入)
「GDP(国内総生産)」を「需要」から捉えた場合の構成要素と、「開放経済」の「総需要曲線(YD)」における「民間消費(C)」「民間投資(I)」「政府支出(G)」「純輸出(EX-IM)」の関係は以下の通りです。
- 民間消費(C)= 民間最終消費支出
- 民間投資(I)= 民間住宅 + 民間企業設備 + 民間在庫変動
- 政府支出(G)= 政府最終消費支出 + 公的固定資本形成 + 公的在庫変動
- 純輸出(EX-IM)= 財貨・サービスの輸出 - 財貨・サービスの輸入
「民間消費(C)」「民間投資(I)」「政府支出(G)」「純輸出(EX-IM)」の特徴は以下の通りです。
- 「GDP(国内総生産)」に占める「消費(C)」の割合は50%を超えます。
- 「政府支出(G)」の方が「民間投資(I)」よりも高く推移しています。
- 「純輸出(EX-IM)」は、輸出額から輸入額を控除した金額であるため「GDP(国内総生産)」に占める割合は低くなります。
- 「純輸出(EX-IM)」において、輸入額が輸出額を上回る場合は「マイナス」となります。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【平成29年度 第4問】
GDPは、国の経済の大きさを測る際に利用される代表的な尺度のひとつである。GDPを需要サイドから捉えたものは総需要と呼ばれる。以下の設問に答えよ。
(設問1)
総需要は、民間消費、民間投資、政府支出、純輸出から構成される。下図は、2000年度以降の日本の総需要の構成割合を表している。
図中のa〜cに該当するものの組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
[解答群]
ア a:純輸出 b:政府支出 c:民間投資
イ a:政府支出 b:純輸出 c:民間投資
ウ a:政府支出 b:民間投資 c:純輸出
エ a:民間投資 b:純輸出 c:政府支出
オ a:民間投資 b:政府支出 c:純輸出
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答(設問1)
日本の総需要(需要サイドから捉えたGDP)の構成割合に関する知識を問う問題です。
「GDP(国内総生産)」を「需要」から捉えた場合の構成要素は以下の通りです。
GDP(国内総生産)の構成要素(需要)
「GDP(国内総生産)」の構成要素だけを見ても、あまり理解が進みませんが、財市場における「開放経済」の「総需要曲線(YD)」の公式と組み合わせてイメージすると分かりやすいと思います。
- 開放経済(輸出入含む)
YD = C + I + G + EX-IM
(民間消費:C、民間投資:I、政府支出:G、EX:輸出、IM:輸入)
「GDP(国内総生産)」を「需要」から捉えた場合の構成要素と、「開放経済」の「総需要曲線(YD)」における「民間消費(C)」「民間投資(I)」「政府支出(G)」「純輸出(EX-IM)」の関係は以下の通りです。
- 民間消費(C)= 民間最終消費支出
- 民間投資(I)= 民間住宅 + 民間企業設備 + 民間在庫変動
- 政府支出(G)= 政府最終消費支出 + 公的固定資本形成 + 公的在庫変動
- 純輸出(EX-IM)= 財貨・サービスの輸出 - 財貨・サービスの輸入
「民間消費(C)」「民間投資(I)」「政府支出(G)」「純輸出(EX-IM)」の特徴は以下の通りです。
- 「GDP(国内総生産)」に占める「消費(C)」の割合は50%を超えます。
- 「政府支出(G)」の方が「民間投資(I)」よりも高く推移しています。
- 「純輸出(EX-IM)」は、輸出額から輸入額を控除した金額であるため「GDP(国内総生産)」に占める割合は低くなります。
- 「純輸出(EX-IM)」において、輸入額が輸出額を上回る場合は「マイナス」となります。
この特徴を問題で与えられた図に当てはめて考えていきます。
- 「c」は「総需要(需要サイドから捉えたGDP)」に占める割合が低く、2011年から2014年にかけて「マイナス」で推移しているため、「純輸出」であると判断することができます。
- 「a」の方が「b」よりも「総需要(需要サイドから捉えたGDP)」に占める割合が高く推移しているため、「a」が「政府支出(G)」であり「b」が「民間投資(I)」であると判断することができます。
「a:政府支出 b:民間投資 c:純輸出」であるため、答えは(ウ)です。
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