経済学・経済政策 ~R4-18 比較生産費と貿易理論(1)絶対優位と比較優位~

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今回は、「経済学・経済政策 ~R4-18 比較生産費と貿易理論(1)絶対優位と比較優位~」について説明します。

 

目次

経済学・経済政策 ~令和4年度一次試験問題一覧~

令和4年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

絶対優位・比較優位 -リンク-

本ブログにて「絶対優位」「比較優位」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。

 

 

比較優位論

「比較優位論」とは、イギリスの経済学者のデヴィッド・リカードによって提唱された「自由貿易」に関する最も基本的な概念のことをいい、アダム・スミスが提唱した「絶対優位」の概念を修正する形で提唱されました。

「比較優位論」では、自由貿易において、それぞれの国が自国で最も得意とする財(機会費用が少なく自国の利益を最大化できる財)を生産して、そうではない財を他国から輸入すれば、それぞれの国の労働生産性を増大させるとともに高品質の財や高い利益を得られるようになると説明しています。

複数の国と財で考えると複雑になるため、A国とB国という2つの国で、X財とY財という2つの財を生産または輸出入するという前提で「比較優位論」を説明していきます。

なお、「比較優位論」は、自由貿易に関する概念であるため、自由貿易を事例として説明されることが多いですが、企業や個人などの様々なケースに当てはめることができます。

 

絶対優位と比較優位

「絶対優位」とは、2つの国で比較したとき生産性が高い(優位である)ことをいいます。

「比較優位」とは、それぞれの国において2つの財の生産性を比較して求めた「比較生産費(=機会費用)」を2つの国で比較したとき「比較生産費(=機会費用)」が小さい(優位である)ことをいいます。

「比較優位論」では、「比較優位」である国で財を生産した方が双方の国にとって有益であることを示しています。

 

絶対優位

「絶対優位」とは、2つの国で比較したとき生産性が高い(優位である)ことをいいます。

以下の図では「A国」の方が2つの財の生産性が高く「絶対優位」であることを示しています。

 

絶対優位

 

比較生産費(=機会費用)

「比較生産費(=機会費用)」とは、同一国で2つの財の生産性を比較して求められる相対的な生産性であり、費用が小さい方が優位であることを表しています。

以下の図では「A国」では「X財」の方が「比較生産費(=機会費用)」が小さく、「B国」では「Y財」の方が「比較生産費(=機会費用)」が小さいことを示しています。

 

比較生産費(=機会費用)

 

比較生産費(=機会費用)

「比較生産費」と「機会費用」が同義ということではありません。
「比較優位論」においては「比較生産費」と「機会費用」が同じになるということを表しています。

 

比較優位

「比較優位」とは、それぞれの国において2つの財の生産性を比較して求めた「比較生産費(=機会費用)」を2つの国で比較したとき「比較生産費(=機会費用)」が小さい(優位である)ことをいいます。

以下の図では「X財」は「A国」の方が「比較生産費(=機会費用)」が小さく「比較優位」であり「A国」で生産した方が2つの国にとって有益であり、「Y財」は「B国」の方が「比較生産費(=機会費用)」が小さく「比較優位」であり「B国」で生産した方が双方の国にとって有益であることを示しています。

 

比較優位

 

試験問題

それでは、実際の試験問題を解いてみます。

【令和4年度 第18問】

生活の中での絶対優位、比較優位と機会費用について考える。

下表に示すように、Aさんは30分間で、おにぎりであれば10個、サンドイッチであれば6個作ることができる。また、Bさんは30分間で、おにぎりであれば6個、サンドイッチであれば2個作ることができる。

AさんとBさんが持つ絶対優位、比較優位と機会費用に関する記述として、最も適切な組み合わせを下記の解答群から選べ。

 

おにぎり サンドイッチ
Aさん 10個/30分 6個/30分
Bさん 6個/30分 2個/30分

 

a Aさんにとって、おにぎりを1個作ることの機会費用は、サンドイッチ3/5個である。
b Bさんにとって、おにぎりを1個作ることの機会費用は、サンドイッチ3個である。
c おにぎりとサンドイッチを作ることの両方に絶対優位を持っているのは、Bさんである。
d サンドイッチを作ることに比較優位を持っているのは、Aさんである。

 

[解答群]

ア aとb
イ aとd
ウ bとc
エ bとd
オ cとd

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

考え方と解答

「比較優位論」に関する知識を問う問題です。

 

「比較優位論」とは、イギリスの経済学者のデヴィッド・リカードによって提唱された「自由貿易」に関する最も基本的な概念のことをいい、アダム・スミスが提唱した「絶対優位」の概念を修正する形で提唱されました。

「比較優位論」では、自由貿易において、それぞれの国が自国で最も得意とする財(機会費用が少なく自国の利益を最大化できる財)を生産して、そうではない財を他国から輸入すれば、それぞれの国の労働生産性を増大させるとともに高品質の財や高い利益を得られるようになると説明しています。

 

今回の問題では、「比較優位論」を人の関係に当てはめて、生活の中における「絶対優位」と「比較優位」について考えていきます。

 

絶対優位

「絶対優位」は、「おにぎり」と「サンドイッチ」に分けて、2人の生産性を比較します。

問題で与えられた表では、「おにぎり」と「サンドイッチ」を30分間で何個作れるかについて整理されていますが、2人の生産性を分かりやすくするため、1個作るのにかかる時間として再整理します。

 

おにぎり サンドイッチ
Aさん 3分/1個 5分/個
Bさん 5分/1個 15分/個

 

おにぎりの場合

  • Aさんがおにぎりを1個作るのにかかる時間は「3分」ですが、Bさんは「5分」かかるため、Aさんの方が生産性が高く「絶対優位」である

 

おにぎり
Aさん 3分/1個
Bさん 5分/1個

 

サンドイッチ

  • Aさんがサンドイッチを1個作るのにかかる時間は「5分」ですが、Bさんは「15分」かかるため、Aさんの方が生産性が高く「絶対優位」である

 

サンドイッチ
Aさん 5分/個
Bさん 15分/個

 

比較生産費(=機会費用)

「比較生産費(=機会費用)」は、「Aさん」と「Bさん」に分けて「おにぎり」と「サンドイッチ」を作る場合の生産性を比較して求めます。

 

Aさんの場合

  • おにぎりを1個作るのにかかる時間は、サンドイッチを1個作るのにかかる時間の「3分/5分」で済みます。(おにぎりを1個作るための「比較生産費(=機会費用)」はサンドイッチの「3/5個=0.6個」となる)
  • サンドイッチを1個作るのにかかる時間は、おにぎりを1個作るのにかかる時間の「5分/3分」だけかかります。(サンドイッチを1個作るための「比較生産費(=機会費用)」はおにぎりの「5/3個≒1.67個」となる)

 

おにぎり サンドイッチ
Aさん 3分/5分 = 0.60 5分/3分 ≒ 1.67

 

Bさんの場合

  • おにぎりを1個作るのにかかる時間は、サンドイッチを1個作るのにかかる時間の「5分/15分」で済みます。(おにぎりを1個作るための「比較生産費(=機会費用)」はサンドイッチの「5/15個≒0.33個」となる)
  • サンドイッチを1個作るのにかかる時間は、おにぎりを1個作るのにかかる時間の「15分/5分」だけかかります。(サンドイッチを1個作るための「比較生産費(=機会費用)」はおにぎりの「15/5個=3個」となる)

 

おにぎり サンドイッチ
Bさん 5分/15分 ≒ 0.33 15分/5分 = 3.00

 

比較優位

「比較優位」は、「おにぎり」と「サンドイッチ」に分けて「比較生産費(=機会費用)」により2人の生産性を比較します。

 

おにぎり

  • Aさんの「比較生産費(=機会費用)」が「0.60」であるのに対して、Bさんは「0.33」であるため、おにぎりを作ることに関しては「比較生産費(=機会費用)」が小さいBさんの方が「比較優位」である。

 

おにぎり
Aさん 3分/5分 = 0.60
Bさん 5分/15分 ≒ 0.33

 

サンドイッチ

  • Aさんの「比較生産費(=機会費用)」が「1.67」であるのに対して、Bさんは「3.00」であるため、サンドイッチを作ることに関しては「比較生産費(=機会費用)」が小さいAさんの方が「比較優位」である。

 

サンドイッチ
Aさん 5分/3分 ≒ 1.67
Bさん 15分/5分 = 3.00

 

ここまでの結果を整理すると以下の通りとなります。

 

「おにぎり」と「サンドイッチ」のいずれを作るのも「Aさん」の方が「絶対優位」である(生産性が高い)が、「おにぎり」については「Bさん」の方が「比較優位」であり、「サンドイッチ」については「Aさん」の方が「比較優位」であるため、「Aさん」と「Bさん」が協力して「おにぎり」と「サンドイッチ」を作る場合は、「おにぎり」は「Bさん」が作り、「サンドイッチ」は「Aさん」が作るのが有益である。

 

(a) 適切です。

「比較生産費(=機会費用)」は、「Aさん」と「Bさん」に分けて「おにぎり」と「サンドイッチ」を作る場合の生産性を比較して求めます。

 

Aさんの場合

  • おにぎりを1個作るのにかかる時間は、サンドイッチを1個作るのにかかる時間の「3分/5分」で済みます。(おにぎりを1個作るための「比較生産費(=機会費用)」はサンドイッチの「3/5個=0.6個」となる
  • サンドイッチを1個作るのにかかる時間は、おにぎりを1個作るのにかかる時間の「5分/3分」だけかかります。(サンドイッチを1個作るための「比較生産費(=機会費用)」はおにぎりの「5/3個≒1.67個」となる)

 

おにぎり サンドイッチ
Aさん 3分/5分 = 0.60 5分/3分 ≒ 1.67

 

したがって、Aさんにとって、おにぎりを1個作ることの機会費用は、サンドイッチ3/5個であるため、選択肢の内容は適切です

 

(b) 不適切です。

「比較生産費(=機会費用)」は、「Aさん」と「Bさん」に分けて「おにぎり」と「サンドイッチ」を作る場合の生産性を比較して求めます。

 

Bさんの場合

  • おにぎりを1個作るのにかかる時間は、サンドイッチを1個作るのにかかる時間の「5分/15分」で済みます。(おにぎりを1個作るための「比較生産費(=機会費用)」はサンドイッチの「5/15個≒0.33個」となる
  • サンドイッチを1個作るのにかかる時間は、おにぎりを1個作るのにかかる時間の「15分/5分」だけかかります。(サンドイッチを1個作るための「比較生産費(=機会費用)」はおにぎりの「15/5個=3個」となる)

 

おにぎり サンドイッチ
Bさん 5分/15分 ≒ 0.33 15分/5分 = 3.00

 

したがって、Bさんにとって、おにぎりを1個作ることの機会費用は、サンドイッチ3個ではなく1/3個であるため、選択肢の内容は不適切です

 

(c) 不適切です。

「絶対優位」は、「おにぎり」と「サンドイッチ」に分けて、2人の生産性を比較します。

 

おにぎりの場合

  • Aさんがおにぎりを1個作るのにかかる時間は「3分」ですが、Bさんは「5分」かかるため、Aさんの方が生産性が高く「絶対優位」である

 

おにぎり
Aさん 3分/1個
Bさん 5分/1個

 

サンドイッチ

  • Aさんがサンドイッチを1個作るのにかかる時間は「5分」ですが、Bさんは「15分」かかるため、Aさんの方が生産性が高く「絶対優位」である

 

サンドイッチ
Aさん 5分/個
Bさん 15分/個

 

したがって、おにぎりとサンドイッチを作ることの両方に絶対優位を持っているのは、BさんではなくAさんであるため、選択肢の内容は不適切です

 

(d) 適切です。

「比較優位」は、「おにぎり」と「サンドイッチ」に分けて「比較生産費(=機会費用)」により2人の生産性を比較します。

 

サンドイッチ

  • Aさんの「比較生産費(=機会費用)」が「1.67」であるのに対して、Bさんは「3.00」であるため、サンドイッチを作ることに関しては「比較生産費(=機会費用)」が小さいAさんの方が「比較優位」である。

 

サンドイッチ
Aさん 5分/3分 ≒ 1.67
Bさん 15分/5分 = 3.00

 

したがって、サンドイッチを作ることに比較優位を持っているのは、Aさんであるため、選択肢の内容は適切です

 

(a)と(d)に記述されている内容が適切であるため、答えは(イ)です。


 

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