経済学・経済政策 ~R4-4 主要経済理論(15)絶対所得仮説~

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今回は、「経済学・経済政策 ~R4-4 主要経済理論(15)絶対所得仮説~」について説明します。

 

目次

経済学・経済政策 ~令和4年度一次試験問題一覧~

令和4年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

絶対所得仮説・相対所得仮説・ライフサイクル仮説・恒常所得仮説 -リンク-

本ブログにて「絶対所得仮説」「相対所得仮説」「ライフサイクル仮説」「恒常所得仮説」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。

 

 

消費理論の体系

消費関数には、短期の消費動向を表す「ケインズ型消費関数(絶対所得仮説)」と長期の消費動向を表す「クズネッツ型消費関数」がありましたが、それぞれの異なる2つの消費関数を矛盾なく説明できないかという論争が起こる中で、新たな仮説として「相対所得仮説」「ライフサイクル仮説」「恒常所得仮説」という「三大仮説」が提唱されました

また、「三大仮説」には組み込まれていませんが「トービンの流動資産仮説」という仮説もあります。

これらの仮説は、結果として、どれが正しいということはなく、いずれの仮説も現実の私たちの行動を正しく説明できる部分があるとされています。

 

 

絶対所得仮説(ケインズ型消費関数)

「絶対所得仮説」とは、経済学者であるケインズによって提唱された消費関数に関する仮説であり、個人の消費は、現在の所得により決定されるという理論のことをいいます。

後述しますが、「ケインズ型消費関数」は数年という短期や高所得者層の消費動向を表しています

 

ケインズ型消費関数(税金を考慮しない場合)

税金を考慮しない場合の「ケインズ型消費関数」は、所得水準に関わらず発生する「基礎消費(a)」と、「限界消費性向(b)」に「GDP(Y)」を乗じた「変動消費(bY)」を合計することにより求めることができます。

 

 

基礎消費(a)

「基礎消費(a)」とは、所得水準に関わらず発生する消費のことをいいます。

 

限界消費性向(b)

「限界消費性向(b)」とは「所得(Y)」が1単位増加したときの「消費(C)」の変化量のことをいいます。

「 Y = C+I+G 」であり「 Y > C 」の関係が成立するため「限界消費性向(b)」は「0 < b < 1」の範囲で推移します。

 

 

「限界消費性向」は「ケインズ型消費曲線」の「傾き」として表されます

 

 

平均消費性向( C ÷ Y )

「限界消費性向(b)」に似た指標として「平均消費性向」という指標があります。

「平均消費性向」は、「原点(0)」と「所得(Y)」により決定する「消費(C)」をつなぐ曲線の傾きとして表されます

 

 

「平均消費性向」は「C(縦軸)÷ Y(横軸)」で求められます。

「基礎消費(a)」と「限界消費性向(b)」が一定であるとした場合、「平均消費性向」は「所得(Y)」が増加するにつれて小さくなります

式で表さなくとも、上述のグラフで「所得(Y)」を増加させる(右に動かす)ことをイメージすると「所得(Y)」が増加するにつれて「平均消費性向(傾き)」が小さくなることが分かると思います。

 

 

ケインズ型消費関数(税金を考慮した場合)

税金を考慮した場合の「ケインズ型消費関数」は、所得水準に関わらず発生する「基礎消費(a)」と、「限界消費性向(b)」に「所得(Y)」から「税金(T)」を差し引いた「可処分所得(Yd)」を乗じた「変動消費(b(Y-T))」を合計することにより求めることができます。

 

 

税金(T)

「税金(T)」は、「定額税(T0)」と、「所得(Y)」に「税率(t)」を乗じた「定率税(tY)」を合計することにより求めることができます。

 

 

「税金(T)」を「定額税(T0)」と「定率税(tY)」で表した場合の「ケインズ型消費関数」を以下に示します。

 

 

消費関数論争(三大仮説)

「消費関数論争」とは「短期(ケインズ型消費関数)」と「長期(クズネッツ型消費関数)」で異なるそれぞれの消費関数について、どのような理論であれば矛盾なく説明することができるのかを主題とした論争のことをいいます。

「消費関数論争」の中で、それぞれの消費関数を矛盾なく説明する仮説として「相対所得仮説」「ライフサイクル仮説」「恒常所得仮説」という「三大仮説」が提唱されましたが、どの仮説が正しいということはなく、いずれの説も現実の私たちの行動を正しく説明できる部分があるとされています。

 

相対所得仮説

「相対所得仮説」とは、経済学者であるデューゼンベリーによって提唱された消費関数に関する仮説であり、個人の消費は、現在の所得により決定されるのではなく、過去の自分の消費習慣(時間)や他人の消費水準(空間)に影響を受けるという理論のことをいいます。

 

歯止め効果(ラチェット効果)

「歯止め効果(ラチェット効果)」とは、個人の消費は、過去の自分の消費習慣(時間)に影響を受けて決定されるため、所得が減少しても短期的には消費がそれほど減少しないとされています。

「歯止め効果(ラチェット効果)」は、所得が減少しても、それまでの自分の消費習慣を急に変えることができなかったり、長期契約などの制約によりすぐに消費を減らすことができないといった理由により発生します。

長期においては、減少した自分の所得に基づく消費習慣に慣れていき、消費を減少していきます。

 

デモンストレーション効果

「デモンストレーション効果」とは、個人の消費は、自分の所得だけでなく、他人の消費水準(空間)に影響を受けて決定されるため、所得が減少しても短期的には消費がそれほど減少しないとされています。

「デモンストレーション効果」とは、所得が減少しても、他人の目が気になりすぐには消費を減らすことができないといった理由により発生します。

長期においては、自分の所得だけが減少したのではなく、景気の悪化などにより他人の所得も減少したことに気が付き、消費を減少していきます。

 

ライフサイクル仮説

「ライフサイクル仮説」とは、経済学者であるモディリアーニ、ブルンバーグ、安藤によって提唱された消費関数に関する仮説であり、個人の消費は、現在の所得金額ではなく、生涯を通じて得られると想定される所得総額(生涯所得)を、生涯を通じて全部使い切れるように決定されるという理論のことをいいます。

「ライフサイクル仮説」では、定期昇給などによって「生涯所得」が増加する見通しがあれば消費を増やしますが、宝くじなどによって一時的な所得である「変動所得」を得たとしても消費を増やさないとされています。

また、所得が消費を上回る青年期から壮年期にかけては将来のために貯蓄を増やし、所得が減少する老年期においてはその貯蓄を切り崩しながら生活水準を維持していくため、高齢化が進み、人口全体に占める労働から引退した高齢者の割合が大きくなると、経済全体における「貯蓄率」が減少して「平均消費性向(C÷Y)」が上昇します。

 

恒常所得仮説

「恒常所得仮説」とは、経済学者であるフリードマンによって提唱された消費関数に関する仮説であり、個人の消費は、過去に得た所得の平均値に基づき将来に得られると想定される所得金額である「恒常所得」と、一時的な所得である「変動所得」に区分した上で、「恒常所得」に基づいて消費が決定されるという理論のことをいいます。

「恒常所得仮説」では、定期昇給などによって「恒常所得」が増加する見通しがあれば消費を増やしますが、宝くじなどによって一時的な所得である「変動所得」を得たとしても消費を増やさないとされています。

 

試験問題

それでは、実際の試験問題を解いてみます。

【令和4年度 第4問】

絶対所得仮説によって所得と消費の関係を述べた記述として、最も適切なものはどれか。

 

ア 今月は職場で臨時の特別手当が支給されたので、自分へのご褒美として、外食の回数を増やすことにした。

イ 将来の年金が不安なので、節約して消費を抑制することにした。

ウ 職場の同僚が旅行に行くことに影響を受けて、自分も旅行に行くことにした。

エ 新型コロナウイルスの影響で今年の所得は減りそうだが、これまでの消費習慣を変更することは困難なので、これまでどおりの消費を続けることにした。

オ 賃上げによって給料が増えることになったが、不景気が当分続きそうなので、消費は増やさないことにした。

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

考え方と解答

「絶対所得仮説」に関する知識を問う問題です。

 

絶対所得仮説(ケインズ型消費関数)

「絶対所得仮説」とは、経済学者であるケインズによって提唱された消費関数に関する仮説であり、個人の消費は、現在の所得により決定されるという理論のことをいいます。

税金を考慮しない場合の「ケインズ型消費関数」は、所得水準に関わらず発生する「基礎消費(a)」と、「限界消費性向(b)」に「GDP(Y)」を乗じた「変動消費(bY)」を合計することにより求めることができます。

 

 

(ア) 適切です。

「絶対所得仮説」では、「消費(C)」は所得水準に関わらず発生する「基礎消費(a)」に、所得により増減する「変動消費(bY)」を加算して構成されるため「所得(Y)」が増加すると「消費(C)」も増加するということを表しています。

 

したがって、「今月は職場で臨時の特別手当が支給されたので、自分へのご褒美として、外食の回数を増やすことにした。」という所得と消費の関係は、絶対所得仮説に関する記述であるため、選択肢の内容は適切です

 

(イ) 不適切です。

「将来の年金が不安なので、節約して消費を抑制することにした」という所得と消費の関係は、ライフサイクル仮説に関する記述であるため、選択肢の内容は不適切です

 

ライフサイクル仮説

「ライフサイクル仮説」とは、経済学者であるモディリアーニ、ブルンバーグ、安藤によって提唱された消費関数に関する仮説であり、個人の消費は、現在の所得金額ではなく、生涯を通じて得られると想定される所得総額(生涯所得)を、生涯を通じて全部使い切れるように決定されるという理論のことをいいます。

「ライフサイクル仮説」では、定期昇給などによって「生涯所得」が増加する見通しがあれば消費を増やしますが、宝くじなどによって一時的な所得である「変動所得」を得たとしても消費を増やさないとされています。

 

(ウ) 不適切です。

「職場の同僚が旅行に行くことに影響を受けて、自分も旅行に行くことにした」という所得と消費の関係は、相対所得仮説のデモンストレーション効果に関する記述であるため、選択肢の内容は不適切です

 

相対所得仮説

「相対所得仮説」とは、経済学者であるデューゼンベリーによって提唱された消費関数に関する仮説であり、個人の消費は、現在の所得により決定されるのではなく、過去の自分の消費習慣(時間)や他人の消費水準(空間)に影響を受けるという理論のことをいいます。

デモンストレーション効果

「デモンストレーション効果」とは、個人の消費は、自分の所得だけでなく、他人の消費水準(空間)に影響を受けて決定されるため、所得が減少しても短期的には消費がそれほど減少しないとされています。

「デモンストレーション効果」とは、所得が減少しても、他人の目が気になりすぐには消費を減らすことができないといった理由により発生します。

長期においては、自分の所得だけが減少したのではなく、景気の悪化などにより他人の所得も減少したことに気が付き、消費を減少していきます。

 

(エ) 不適切です。

「新型コロナウイルスの影響で今年の所得は減りそうだが、これまでの消費習慣を変更することは困難なので、これまでどおりの消費を続けることにした」という所得と消費の関係は、相対所得仮説の歯止め効果(ラチェット効果)に関する記述であるため、選択肢の内容は不適切です

 

相対所得仮説

「相対所得仮説」とは、経済学者であるデューゼンベリーによって提唱された消費関数に関する仮説であり、個人の消費は、現在の所得により決定されるのではなく、過去の自分の消費習慣(時間)や他人の消費水準(空間)に影響を受けるという理論のことをいいます。

歯止め効果(ラチェット効果)

「歯止め効果(ラチェット効果)」とは、個人の消費は、過去の自分の消費習慣(時間)に影響を受けて決定されるため、所得が減少しても短期的には消費がそれほど減少しないとされています。

「歯止め効果(ラチェット効果)」は、所得が減少しても、それまでの自分の消費習慣を急に変えることができなかったり、長期契約などの制約によりすぐに消費を減らすことができないといった理由により発生します。

長期においては、減少した自分の所得に基づく消費習慣に慣れていき、消費を減少していきます。

 

(オ) 不適切です。

「絶対所得仮説」では、「消費(C)」は所得水準に関わらず発生する「基礎消費(a)」に、所得により増減する「変動消費(bY)」を加算して構成されるため「所得(Y)」が増加すると「消費(C)」も増加するということを表しています。

 

したがって、「賃上げによって給料が増えることになったが、不景気が当分続きそうなので、消費は増やさないことにした」という所得と消費の関係は、絶対所得仮説の内容とは異なるため、選択肢の内容は不適切です。

 

答えは(ア)です。


 

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