財務・会計 ~R4-13-2 資金管理(4)資金繰り表~

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今回は、「財務・会計 ~R4-13-2 資金管理(4)資金繰り表~」について説明します。

 

目次

資金管理 -リンク-

本ブログにて「資金管理」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。

 

 

資金管理

企業が経営活動を継続するにあたって、支払遅延や支払不能といった最悪の事態を回避することは最重要の課題であり、そのためにも「資金管理」は非常に重要です。

仕入債務の支払期間と売上債権の回収期間のサイクルがずれていたり、季節により収入の変動が大きい場合は、損益計算書では売上も利益も適切に計上されているにもかかわらず、一時的に運転資金が不足することがあります。

運転資金が不足すると、仕入債務や従業員の給料を支払うために、銀行から借り入れを行い、何とか資金を調達してピンチを乗り越えます。しかし、このような対処を繰り返していくと、悪循環に陥り徐々に借入金額が膨らんでいくことになりかねません。

 

資金繰り表

「資金繰り」は「資金管理」の基本であり、「資金繰り表」において資金(現金)の収支計画と実績を管理していきます。

資金計画において、期首の現金残高、期中の現金収入及び支出、期末の現金残高を精度高く見積もることによって、将来的な資金不足をできるだけ早く察知することができ、資金不足を回避するために事前の対策を講じることができます。

 

資金繰り表のフォーマット

資金繰り表では、現金の収入および支出を「経常収支」と「経常外収支」に分割して管理します。

ただし、経常収支と経常外収支に分割せずに、単に「収入」と「支出」で管理する方法もあります。

 

4月 5月 6月 3月
前月繰越
経常収支 収入
支出
経常外収支 収入
支出
翌月繰越

 

資金繰り表における現金収支の分類

資金繰りにおける「現金収支」は「経常収支」と「経常外収支」に分類されます。

 

経常収支項目
経常収入 売上収入 現金売上
売掛金の現金回収
受取手形の期日入金
営業外収入 受取利息
受取配当金
経常支出 仕入・外注費 現金仕入
買入金の現金支払
支払手形の期日決済
賃金給与
その他経費
営業外支出 支払利息

 

経常外収支項目
経常外収入 設備収入 固定資産等売却収入
有価証券売却収入
貸付金返済
財務収入 借入金収入
受取手形の割引
経常外支出 設備支出 固定資産購入支出
有価証券購入支出
貸付金支出
財務支出 借入金返済
配当金支出

 

試験問題

それでは、実際の試験問題を解いてみます。

【令和4年度 第13問】

次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。

A社では、X1年4月末に以下のような資金繰り表(一部抜粋)を作成した(表中のカッコ内は各自推測すること)。

 

(単位:万円)
5月 6月
前月末残高 1,000 470
経常収支 収入 現金売上 200 240
売掛金回収 800 800
収入合計 1,000 1,040
支出 現金仕入 720 (   )
諸費用支払 510 540
支出合計 1,230 (   )
収支過不足 ▲230 (   )
備品購入支出 300 0
当月末残高 470 (   )

 

売上高の実績額および予想額は以下のとおりである。

 

(単位:万円)
4月(実績) 5月(予想) 6月(予想) 7月(予想)
1,000 1,000 1,200 1,600

 

また、条件は以下のとおりである。

  1. 売上代金の20%は現金で受け取り、残額は翌月末に受け取る。
  2. 仕入高は翌月予想売上高の60%とする。仕入代金は全額現金で支払う。
  3. すべての収入、支出は月末時点で発生するものとする。
  4. 5月末に事務用備品の購入支出が300万円予定されているが、それを除き、経常収支以外の収支はゼロである。
  5. A社では、月末時点で資金残高が200万円を下回らないようにすることを、資金管理の方針としている。

 

(設問2)

中小企業診断士であるあなたは、A社の経営者から、当座の資金繰り対策として銀行借り入れ以外の手段がないか、アドバイスを求められた。6月末の時点で資金残高が200万円を下回らないようにするための手段として、最も適切なものはどれか。

 

ア 5月に予定されている事務用備品の購入支出のうち半額を現金払いとし、残額の支払いは7月に延期する。

イ 6月に予定されている諸費用支払のうち400万円を現金払いとし、残額の支払いは7月に延期する。

ウ 仕入先と交渉して、6月の仕入代金のうち半額を現金払いとし、残額を買掛金(翌月末払い)とする。

エ 得意先と交渉して、5月の売上代金のうち半額を現金で受け取り、残額を売掛金(翌月末回収)とする。

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

考え方と解答(設問2)

「資金繰り」に関する知識を問う問題です。

 

「設問1」では、6月末の時点で資金不足に陥ることを避けるために、金融機関からいくら借り入れる必要があるかを求められましたが、「設問2」では金融機関から借り入れることなく資金不足に陥ることを避ける手段について求められています。

今回の問題では、資金不足に陥ることを避けるために、売上代金の回収を早めたり、代金の支払いを延期するといった手段の中から、6月末の時点で資金残高が200万円を下回らないようにする手段を選択します。

今回の問題では、5月に支払い予定の事務用備品の詳細が分からないので採用できないのだと思いますが、選択肢に記述されている手段以外にも、調達する物品を購入するのではなくリースにするといった手段も資金不足に陥ることを避けるための手段として有効です。

 

(ア) 不適切です。

5月に予定されている事務用備品の購入支出のうち半額を現金払いとし、残額の支払いは7月に延期する場合の6月末の時点における資金残高について考えます。

5月に支払う予定の事務用備品の購入代金300万円のうち150万円の支払いを7月に延期するということは、6月末の時点における資金残高が150万円増加するという結果になります。

もともと、6月末の時点における資金残高は10万円を予定していたため、150万円増加したとしても6月末の時点における資金残高は160万円にしかならず、月末時点で資金残高が200万円を下回らないようにするというA社の資金管理の方針をクリアすることはできません

 

(単位:万円)
5月 6月
前月末残高 1,000 620
経常収支 収入 現金売上 200 240
売掛金回収 800 800
収入合計 1,000 1,040
支出 現金仕入 720 960
諸費用支払 510 540
支出合計 1,230 1,500
収支過不足 ▲230 ▲460
備品購入支出 150 0
当月末残高 620 160

 

したがって、5月に予定されている事務用備品の購入支出のうち半額を現金払いとし、残額の支払いは7月に延期しても、6月末の時点における資金残高は160万円となり200万円を下回るため、選択肢の内容は不適切です

 

(イ) 不適切です。

6月に予定されている諸費用支払のうち400万円を現金払いとし、残額の支払いは7月に延期する場合の6月末の時点における資金残高について考えます。

6月に支払う予定の諸費用540万円のうち140万円の支払いを7月に延期するということは、6月末の時点における資金残高が140万円増加するという結果になります。

もともと、6月末の時点における資金残高は10万円を予定していたため、140万円増加したとしても6月末の時点における資金残高は150万円にしかならず、月末時点で資金残高が200万円を下回らないようにするというA社の資金管理の方針をクリアすることはできません

 

(単位:万円)
5月 6月
前月末残高 1,000 470
経常収支 収入収入 現金売上 200 240
売掛金回収 800 800
収入合計 1,000 1,040
支出 現金仕入 720 960
諸費用支払 510 400
支出合計 1,230 1,360
収支過不足 ▲230 ▲320
備品購入支出 300 0
当月末残高 470 150

 

したがって、6月に予定されている諸費用支払のうち400万円を現金払いとし、残額の支払いは7月に延期しても、6月末の時点における資金残高は150万円となり200万円を下回るため、選択肢の内容は不適切です

 

(ウ) 適切です。

仕入先と交渉して、6月の仕入代金のうち半額を現金払いとし、残額を買掛金(翌月末払い)とする場合の6月末の時点における資金残高について考えます。

6月に支払う予定の仕入代金960万円のうち480万円の支払いを7月に延期するということは、6月末の時点における資金残高が480万円増加するという結果になります。

もともと、6月末の時点における資金残高は10万円を予定していましたが、480万円増加すると6月末の時点における資金残高は490万円となるため、月末時点で資金残高が200万円を下回らないようにするというA社の資金管理の方針をクリアすることができます

 

(単位:万円)
5月 6月
前月末残高 1,000 470
経常収支 収入 現金売上 200 240
売掛金回収 800 800
収入合計 1,000 1,040
支出 現金仕入 720 480
諸費用支払 510 540
支出合計 1,230 1,020
収支過不足 ▲230 20
備品購入支出 300 0
当月末残高 470 490

 

したがって、仕入先と交渉して、6月の仕入代金のうち半額を現金払いとし、残額を買掛金(翌月末払い)とすれば、6月末の時点における資金残高は490万円となり200万円を上回るため、選択肢の内容は適切です

 

(エ) 不適切です。

得意先と交渉して、5月の売上代金のうち半額を現金で受け取り、残額を売掛金(翌月末回収)とする場合の6月末の時点における資金残高について考えます。

5月に受け取る予定の売上代金を200万円から500万円に300万円増額しても、6月に受け取る予定の売上代金(売掛金)を800万円から500万円に300万円減額するため、6月末までに受け取る売上代金の総額は変わらず、6月末の時点における資金残高も変わらないという結果になります

つまり、6月末の時点における資金残高は10万円から変わらず、月末時点で資金残高が200万円を下回らないようにするというA社の資金管理の方針をクリアすることはできません

 

(単位:万円)
5月 6月
前月末残高 1,000 770
経常収支 収入 現金売上 500 240
売掛金回収 800 500
収入合計 1,300 740
支出 現金仕入 720 960
諸費用支払 510 540
支出合計 1,230 1,500
収支過不足 70 ▲760
備品購入支出 300 0
当月末残高 770 10

 

したがって、得意先と交渉して、5月の売上代金のうち半額を現金で受け取り、残額を売掛金(翌月末回収)としても、6月末の時点における資金残高は10万円となり200万円を下回るため、選択肢の内容は不適切です

 

ちなみに、5月ではなく6月の売上代金の回収方法について得意先と交渉すれば、6月末の時点における資金残高は370万円となるため、月末時点で資金残高が200万円を下回らないようにするというA社の資金管理の方針をクリアすることができます

 

  • 得意先と交渉して、6月の売上代金のうち半額を現金で受け取り、残額を売掛金(翌月末回収)とする。

 

6月に受け取る予定の売上代金を240万円から600万円に360万円増額して、7月に受け取る予定の売上代金(売掛金)を960万円から600万円に360万円減額するため、6月末の時点における資金残高が360万円増加するという結果になります。

もともと、6月末の時点における資金残高は10万円を予定していましたが、360万円増加すると6月末の時点における資金残高は370万円となるため、月末時点で資金残高が200万円を下回らないようにするというA社の資金管理の方針をクリアすることができます

 

5月 6月
前月末残高 1,000 470
経常収支 収入 現金売上 200 600
売掛金回収 800 800
収入合計 1,000 1,400
支出 現金仕入 720 960
諸費用支払 510 540
支出合計 1,230 1,500
収支過不足 ▲230 ▲100
備品購入支出 300 0
当月末残高 470 370

 

したがって、売上代金の回収時期を早めても資金繰りを改善する効果がないのではなく、そのタイミングが間違っているということですね。

「資金繰り表」の重要性を認識することができる問題ですね。

 

答えは(ウ)です。


 

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