経済学・経済政策 ~R3-19 市場構造と競争モデル(5)独占市場(供給独占)~

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今回は、「経済学・経済政策 ~R3-19 市場構造と競争モデル(5)独占市場(供給独占)~」について説明します。

 

目次

経済学・経済政策 ~令和3年度一次試験問題一覧~

令和3年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

完全競争市場・独占市場(供給独占)・独占的競争市場 -リンク-

本ブログにて「完全競争市場」「独占市場(供給独占)」「独占的競争市場」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。

 

 

独占(供給独占)

「独占(供給独占)」とは、供給者が1社であり財が差別化されている市場のことをいいます。

 

完全競争市場 独占的競争市場 独占(供給独占)
供給者 多数 多数 1社
市場で扱う財 同一 ある程度差別化 差別化
価格支配力 なし あり あり
市場への参入と退出 長期的には可能 長期的には可能 不可能

 

「独占市場(供給独占)」においては、財が差別化されており市場への新規参入も不可能であるため、「独占企業」が価格支配力を有する「プライスメイカー」として、自らの利潤を最大化させるように価格を設定することができます。

 

独占企業の直面する需要曲線(D)

「独占市場(供給独占)」においては、市場における供給者が1社しか存在しておらず、全ての需要者は唯一の供給者である「独占企業」から供給される財を需要するため、「独占企業」の直面する需要曲線は、市場全体の需要曲線と同じく右下がりの曲線となります。

したがって、「独占企業」は、財の「生産量」を減らしてその価格を高く設定したり、財の価格を低く設定して「生産量」を増やすことができます。

ちなみに、「完全競争市場」においては、各企業は市場全体で決定した価格を受容する「プライステイカー」であるため、各企業が直面する需要曲線は水平となります

「完全競争市場」の各企業が直面する水平な需要曲線(以下左図)と「独占企業」の直面する右下がりの需要曲線(以下右図)を以下に示します。

 

完全競争市場と独占市場(供給独占)の需要曲線

 

各企業が直面する需要曲線は「d」で表され、市場全体の需要曲線を表す場合は「D」と表されますが、市場を独占する企業の直面する需要曲線は、市場全体の需要曲線と同一であるため「D」と表されます

各企業の生産量は「q」で表され、市場全体の生産量を表す場合は「Q」と表されますが、市場を独占する企業の生産量は、市場全体の生産量と同一であるため「Q」と表されます

 

限界収入(MR:Marginal Revenue)

「限界収入(MR)」とは、生産量を1単位増加したときの総収入の増加分のことをいいます。

「完全競争市場」においては、各企業の「需要曲線(d)」が水平の曲線であったため「限界収入曲線(MR)」は「需要曲線(d)」と同じく水平(MR=d)でしたが、「独占市場(供給独占)」においては「需要曲線(D)」が右下がりの曲線であるため「限界収入曲線(MR)」と「需要曲線(D)」は異なる曲線(MR≠D)となります。

 

完全競争市場と独占市場(供給独占)の限界収入曲線(MR)

 

「限界収入曲線(MR)」と「需要曲線(D)」が異なる曲線(MR≠D)であることを数式から確認していきます。

 

右下がりの曲線(直線)である「需要曲線(D)」は、Y軸との切片を「a」、傾きを「-b」、生産量(横軸)を「Q」とした場合、以下の関数により表すことができます。

 

  • 需要曲線(D)
    D = abQ

 

「総収入(TR)」は「価格」に「生産量」を乗じることにより算出できるため、「価格」を「P」とした場合「総収入(TR)= P × Q」として求めることができます。また、「価格(P)」は「需要曲線(D)」上の点であるため「P=D」の関係が成立します。

 

  • 総収入(TR)= 価格(需要曲線上の点)× 生産量
    TR = P × Q = D × Q =( a-bQ )× Q = aQ-bQ²

 

「限界収入曲線(MR)」は「生産量を1単位増加したときの総収入の増加分」であるため「総収入(TR)」の関数を「生産量(Q)」で微分することにより算出することができます。

 

  • 限界収入曲線(MR)
    ⊿TR ÷ ⊿Q = a2bQ

 

「需要曲線(D)」と「限界収入(MR)」の関数を比較すると、どちらもY軸の切片は「a」ですが、傾きは「需要曲線(D)」では「-b」であり、「限界収入曲線(MR)」では「-2b」となっていることが分かります。

したがって、「独占企業」の「限界収入曲線(MR)」は「需要曲線(D)」とY軸の切片が同じで傾きが2倍の曲線となります。

 

独占企業の需要曲線(D)と限界収入曲線(MR)

 

利潤を最大化させる生産量の決定(MR=MC)

「独占企業」は、利潤を最大化させる「限界収入曲線(MR)」と「限界費用曲線(MC)」の交点において「生産量(Qm)」を決定するため、財の価格は「生産量(Qm)」における「需要曲線(D)」の高さ(Pm)で決定します。

なお、「生産量(Qm)」における「需要曲線(D)」上の点のことを「クールノーの点(M)」といいます。

 

独占市場(供給独占)における利潤の最大化

 

ラーナーの独占度

「ラーナーの独占度」とは「独占企業」の価格支配力の強さを表す指標であり、以下の公式により求めることができます。

「ラーナーの独占度」の数値が大きいほど「限界収入(MR)」が大きく当該企業による独占度が高いことを表しています。

なお、「完全競争市場」においては「価格(P)= 限界収入(MR)」であり、利潤を最大化させる条件が「限界収入(MR)= 限界費用(MC)」であるため、「ラーナーの独占度」の分子である「価格(P)- 限界費用(MC)」はゼロとなります

 

 

また、「ラーナーの独占度」は「需要の価格弾力性」の逆数という関係があります。(需要の価格弾力性については別途説明します)

 

 

利潤を最大化させる生産量における総収入・総費用・利潤の大きさ

利潤を最大化させる「生産量(Qm)」における「独占企業」の「総収入(平均収入)」「総費用(平均費用)」「利潤(平均利潤)」の大きさについて説明していきます。

 

総収入/平均収入

利潤を最大化させる「生産量(Qm)」における「独占企業」の「平均収入」は縦軸の高さ(Pmとなり、「総収入」は「平均収入(Pm)」に「生産量(Qm)」を乗じた面積となります。

 

独占企業の平均収入と総収入

 

総費用/平均費用

利潤を最大化させる「生産量(Qm)」における「独占企業」の「平均費用」は縦軸の高さ(CACとなり、「総費用」は「平均費用(CAC)」に「生産量(Qm)」を乗じた面積となります。

 

独占企業の平均費用と総費用

 

利潤/平均利潤

利潤を最大化させる「生産量(Qm)」における「独占企業」の「平均利潤」は「平均収入(Pm)」から「平均費用(CAC)」を控除した縦軸の高さ(Pm-CACとなり、「利潤」は「平均利潤(Pm-CAC)」に「生産量(Qm)」を乗じた面積となります。

 

独占企業の平均利潤と利潤

 

余剰分析(独占市場(供給独占))

「独占市場(供給独占)」の「余剰(利益)」について考えていきます。

 

「独占市場(供給独占)」においては「限界収入曲線(MR)」は「需要曲線(D)」と異なり、Y軸の切片が同じで傾きが2倍の曲線となります。

「独占市場(供給独占)」においては「プライスメーカー」である「独占企業」が利潤を最大化させる「限界収入曲線(MR)」と「限界費用曲線(MC)」の交点で「生産量(Qm)」を決定するため、財の価格は「生産量(Qm)」における「需要曲線(D)」の高さ(Pm)で決定します。

 

独占市場(供給独占)の余剰分析

 

「消費者余剰」は、価格の上昇と生産量(消費量)の減少により「完全競争市場」の場合よりも減少します

「生産者余剰」は、価格の上昇により増加する分と生産量(供給量)の減少により減少する分があるため、「完全競争市場」と比較したとき、一概に増加するか減少するかを判断することはできません

「消費者余剰」と「生産者余剰」を重ね合わせた「社会的総余剰」は「完全競争市場」の場合よりも減少しますが、減少してしまう「余剰」のことを「余剰の損失(死荷重)」といいます。

 

試験問題

それでは、実際の試験問題を解いてみます。

【令和3年度 第19問】

下図によって独占企業の利潤最大化を考える。Dは独占企業の市場需要曲線、MRは独占企業の限界収入曲線、MCは独占企業の限界費用曲線である。

この図に関する記述として、最も不適切なものを下記の解答群から選べ

 

 

[解答群]

ア 社会的に望ましい生産量はQ0で実現し、そのときの総余剰は三角形ABEである。
イ 生産量がQ1のとき、この独占企業の平均収入はP1である。
ウ 独占企業が利潤を最大化させるときの消費者余剰は台形AP2GFである。
エ 独占企業の利潤を最大化する生産量はQ1である。

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

考え方と解答

独占企業に関する知識を問う問題です。

 

「独占企業」は、利潤を最大化させる「限界収入曲線(MR)」と「限界費用曲線(MC)」の交点(G)において「生産量(Q1)」を決定するため、財の価格は「生産量(Q1)」における「市場需要曲線(D)」の高さ(P1)で決定します。

 

独占市場(供給独占)における利潤の最大化

 

「独占企業」が利潤を最大化させる「生産量(Q1)」に決定したとき「社会的総余剰」は最大化されず「余剰の損失(死荷重)」が発生します。

 

独占市場(供給独占)の余剰分析

 

(ア) 適切です。

社会的に望ましい生産量とは、「余剰の損失(死荷重)」が発生せず「社会的総余剰」を最大化させる生産量のことを表しており、「市場需要曲線(D)」と「限界費用曲線(MC)」の交点(E)における「生産量(Q0)」のことをいいます。

社会的に望ましい生産量においては「消費者余剰」は「市場需要曲線(D)」と「財の価格(P0)」に囲まれた範囲である「三角形AP0E」となり、「生産者余剰」は「財の価格(P0)」と「限界費用曲線(MC)」に囲まれた範囲である「三角形P0BE」となるため、「消費者余剰」と「生産者余剰」を重ね合わせた「社会的総余剰」は「三角形ABE」となります。

 

社会的に望ましい生産量における「消費者余剰」と「生産者余剰」

 

したがって、社会的に望ましい生産量はQ0で実現し、そのときの総余剰は三角形ABEであるため、選択肢の内容は適切です

 

(イ) 適切です。

「独占企業」が「生産量」を「Q1」に決定したとき、財の価格は「生産量(Q1)」における「市場需要曲線(D)」の高さ(P1)で決定するため、「平均収入」は縦軸の高さ(P1となります。

 

独占企業の平均収入と総収入

 

したがって、生産量がQ1のとき、この独占企業の平均収入はP1であるため、選択肢の内容は適切です

 

(ウ) 不適切です。

「独占企業」は、利潤を最大化させる「限界収入曲線(MR)」と「限界費用曲線(MC)」の交点(G)において「生産量(Q1)」を決定するため、財の価格は「生産量(Q1)」における「市場需要曲線(D)」の高さ(P1)で決定します。

「独占企業」が利潤を最大化させるとき、「消費者余剰」は「市場需要曲線(D)」と「財の価格(P1)」に囲まれた範囲である「三角形AP1F」となります。

 

独占市場(供給独占)の余剰分析

 

したがって、独占企業が利潤を最大化させるときの消費者余剰は台形AP2GFではなく三角形AP1Fであるため、選択肢の内容は不適切です

 

(エ) 適切です。

「独占企業」は、利潤を最大化させる「限界収入曲線(MR)」と「限界費用曲線(MC)」の交点(G)において「生産量(Q1)」を決定するため、財の価格は「生産量(Q1)」における「市場需要曲線(D)」の高さ(P1)で決定します。

 

独占市場(供給独占)における利潤の最大化

 

したがって、独占企業の利潤を最大化する生産量はQ1であるため、選択肢の内容は適切です

 

答えは(ウ)です。


 

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