今回は、「経済学・経済政策 ~R3-2 その他(8)国債等の保有者別内訳~」について説明します。
目次
経済学・経済政策 ~令和3年度一次試験問題一覧~
令和3年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
資金循環統計 -リンク-
本ブログにて「資金循環統計で公表されているデータ」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- H27-2 その他(6)各経済主体の資産・負債差額
資金循環統計
「資金循環統計」とは、国内の金融機関、法人、家計といった各経済主体の金融資産・負債の残高や増減などを、預金や貸出といった金融商品毎に記録した統計のことをいいます。
「資金循環統計」は、以下の内容で構成されています。
- 金融取引表(金融取引によって生じた、期中の資産・負債の増減額を記録)
- 金融資産・負債残高表(取引の結果、期末時点で保有される資産・負債の残高を記録)
- 調整表(金融資産・負債残高表と金融取引表の間の乖離額を記録)
本ページに記載している内容は「日本銀行ホームページ(資金循環統計)」に記載されている内容に基づき、加工して作成しています。「日本銀行ホームページ(資金循環統計)」をご覧になりたい場合は、以下のリンクにアクセスしてください。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【令和3年度 第2問】
下図は、国債等の保有者別内訳である。
図中のa~cに該当する保有者の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
[解答群]
ア a:金融機関(中央銀行を除く) b:個人 c:中央銀行
イ a:金融機関(中央銀行を除く) b:中央銀行 c:個人
ウ a:個人 b:中央銀行 c:金融機関(中央銀行を除く)
エ a:中央銀行 b:金融機関(中央銀行を除く) c:個人
オ a:中央銀行 b:個人 c:金融機関(中央銀行を除く)
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
「資金循環統計」で公表されている国債等の保有者別内訳に関する知識を問う問題です。
「資金循環統計」とは、国内の金融機関、法人、家計といった各経済主体の金融資産・負債の残高や増減などを、預金や貸出といった金融商品毎に記録した統計のことをいいます。
本ページに記載している内容は「日本銀行ホームページ(資金循環統計)」に記載されている内容に基づき、加工して作成しています。「日本銀行ホームページ(資金循環統計)」をご覧になりたい場合は、以下のリンクにアクセスしてください。
国債等の発行残高は年々増加しており、国(中央政府)の借金である国債の発行残高は約1000兆円、地方政府の借金である地方債の発行残高は約200兆円、国と地方を合計すると約1,200兆円まで膨らんでいます。
- 国債等の発行残高:1,212兆4,680億円(2020年12月末時点)
国債等の保有比率については、「海外」の保有比率が高くなりつつあるものの、国債等の発行残高の約80%を「中央銀行」「預金取扱期間」「保険・年金基金」が保有しているという状況が続いています。(今回の問題では「預金取扱期間」「保険・年金基金」を合計して「金融機関(中央銀行を除く)」と表記されています。)
資金循環統計と今回の試験問題における分類の対応表を以下に示します。
資金循環統計における分類 | 今回の試験問題における分類 |
中央銀行 | 中央銀行 |
預金取扱機関 | 金融機関 (中央銀行を除く) |
保険・年金基金 | |
うち公的年金 | 政府 |
家計 | 個人 |
海外 | 海外 |
その他 | その他 |
国債等の発行残高の約80%を「中央銀行」と「金融機関(中央銀行を除く)」が保有しているため、「中央銀行」と「金融機関(中央銀行を除く)」が(a)と(b)のどちらに該当するかを問われている問題であり、(c)はそれ以外に該当する「個人」を選択するということになります。
国債等の保有比率推移(2005年~2020年)
「中央銀行」と「金融機関(中央銀行を除く)」の保有比率の推移を見ていくと、従来は「金融機関(中央銀行を除く)」による保有比率が非常に高く推移していましたが、「中央銀行(日本銀行)」が2013年4月に公表した「量的・質的金融緩和」の対策の一つである「長期国債買入れの拡大と年限長期化」により、2013年頃から「中央銀行」による保有比率が非常に高くなっていき、2018年を境に「中央銀行」の方が「金融機関(中央銀行を除く)」よりも国債等の保有比率が高くなっていることが分かります。
国債等の保有残高推移(2005年~2020年)
国債等の保有残高の推移を見ても「金融機関(中央銀行を除く)」の保有残高が減少してはいるもののそれほど極端に減少している訳ではありません。
つまり、「中央銀行」による保有比率が非常に高くなったのは、「金融機関(中央銀行を除く)」の保有残高が減少しているのではなく、「量的・質的金融緩和」の対策の一つである「長期国債買入れの拡大と年限長期化」により「中央銀行」による国債等の買い入れが始まったためということになります。
したがって、2013年頃から国債等の保有比率が高くなっていき、2018年を境に(b)よりも高くなる(a)のグラフは「中央銀行」を表しており、国債等の保有比率が徐々に減少している(b)のグラフは「金融機関(中央銀行を除く)」を表しています。
答えは(エ)です。
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