経済学・経済政策 ~費用逓減産業(自然独占)のまとめ~

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今回は、「経済学・経済政策」の「費用逓減産業(自然独占)」に関する記事のまとめです。

 

目次

費用逓減産業(自然独占) -リンク-

本ブログにて「費用逓減産業(自然独占)」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。

 

 

財市場の分類

財市場は「完全競争市場」と「不完全競争市場」に分類され、さらに「不完全競争市場」は「独占市場(供給独占)」「複占市場」「寡占市場」などに分類されます。

本ページでは「費用逓減産業(自然独占)」について説明しています。

 

財市場の分類

 

費用逓減産業(自然独占)

「費用逓減産業」とは、総費用に占める「固定費用(FC)」の割合が非常に大きく、生産量が増加するほど「長期平均費用(LAC)」が減少するという特性を持つ産業のことをいい、「電気・ガス・水道」などの産業が例として挙げられます。

「費用逓減産業」は、事業を開始するために大規模な設備投資が必要であり、新規参入が困難であるため、自ずと「独占」状態となります。このように自ずと「独占」状態になることを「自然独占」といいます。

 

費用逓減産業(自然独占)の企業が直面する需要曲線(D)

「費用逓減産業(自然独占)」の企業が直面する「需要曲線(D)」の考え方は「独占企業(供給独占)」の企業が直面する「需要曲線(D)」の考え方と同じです。

 

「費用逓減産業(自然独占)」においては、市場における供給者が1社しか存在しておらず、全ての需要者は唯一の供給者である企業から供給される財を消費するため、「費用逓減産業(自然独占)」の企業が直面する需要曲線は、市場全体の需要曲線と同じく右下がりの曲線となります。

したがって、「費用逓減産業(自然独占)」の企業は、財の「生産量」を減らしてその価格を高く設定したり、財の価格を低く設定して「生産量」を増やすことができます。

 

費用逓減産業の企業が直面する需要曲線(D)

 

各企業が直面する需要曲線は「d」で表され、市場全体の需要曲線を表す場合は「D」と表されますが、市場を独占する企業が直面する需要曲線は、市場全体の需要曲線と同一であるため「D」と表されます

各企業の生産量は「q」で表され、市場全体の生産量を表す場合は「Q」と表されますが、市場を独占する企業の生産量は、市場全体の生産量と同一であるため「Q」と表されます

 

限界収入(MR:Marginal Revenue)

「費用逓減産業(自然独占)」の企業における「限界収入曲線(MR)」の考え方は「独占企業(供給独占)」における「限界収入曲線(MR))」の考え方と同じです。

 

「限界収入(MR)」とは、生産量を1単位増加したときの総収入の増加分のことをいいます。

「費用逓減産業(自然独占)」においては「需要曲線(D)」が右下がりの曲線であるため「費用逓減産業(自然独占)」の企業における「限界収入曲線(MR)」は「需要曲線(D)」と異なり、Y軸の切片が同じで傾きが2倍の曲線となります。

 

費用逓減産業の企業における限界収入曲線(MR)

 

利潤を最大化させる生産量の決定(MR=MC)

「費用逓減産業(自然独占)」の企業の利潤を最大化させる条件は「完全競争市場」や「独占市場(供給独占)」の企業において利潤を最大化させる条件(MR=MC)と同じです。

 

「費用逓減産業(自然独占)」の企業では、利潤を最大化させる「限界収入曲線(MR)」と「限界費用曲線(MC)」の交点において「生産量(Qm)」を決定するため、財の価格は「生産量(Qm)」における「需要曲線(D)」の高さ(Pm)で決定します。

 

費用逓減産業(自然独占)における利潤の最大化

 

余剰分析(費用逓減産業(自然独占))

「費用逓減産業(自然独占)」の「余剰(利益)」について考えていきます。

 

「費用逓減産業(自然独占)」の企業においては「限界収入曲線(MR)」は「需要曲線(D)」と異なり、Y軸の切片が同じで傾きが2倍の曲線となります。

「費用逓減産業(自然独占)」においては「プライスメーカー」である企業の利潤を最大化させる「限界収入曲線(MR)」と「限界費用曲線(MC)」の交点で「生産量(Qm)」を決定するため、財の価格は「生産量(Qm)」における「需要曲線(D)」の高さ(Pm)で決定します。

 

費用逓減産業(自然独占)の余剰分析

 

完全競争市場の余剰との比較

「費用逓減産業(自然独占)」と「完全競争市場」の「余剰」を比較した結果を以下に示します。

 

  • 「消費者余剰」は、価格の上昇と生産量(消費量)の減少により「完全競争市場」の場合よりも減少します
  • 「生産者余剰」は、価格の上昇により増加するため、「完全競争市場」の場合よりも増加します。
  • 「消費者余剰」と「生産者余剰」を重ね合わせた「社会的総余剰」は「完全競争市場」の場合よりも減少します。この減少してしまう「余剰」のことを「余剰の損失(死荷重)」といいます。

 

利潤を最大化させる生産量における総収入・総費用・利潤の大きさ

「費用逓減産業(自然独占)」の企業の「利潤を最大化させる生産量における総収入・総費用・利潤の大きさ」の考え方は「完全競争市場」や「独占市場(供給独占)」の企業の考え方と同じです。

 

利潤を最大化させる「生産量(Qm)」における「費用逓減産業(自然独占)」の企業の「総収入(平均収入)」「総費用(平均費用)」「利潤(平均利潤)」の大きさについて説明していきます。

 

総収入/平均収入

利潤を最大化させる「生産量(Qm)」における「費用逓減産業(自然独占)」の企業の「平均収入」は縦軸の高さ(Pmとなり、「総収入」は「平均収入(Pm)」に「生産量(Qm)」を乗じた面積となります。

 

費用逓減産業(自然独占)の企業の平均収入と総収入

 

総費用/平均費用

利潤を最大化させる「生産量(Qm)」における「費用逓減産業(自然独占)」の企業の「平均費用」は縦軸の高さ(CACとなり、「総費用」は「平均費用(CAC)」に「生産量(Qm)」を乗じた面積となります。

 

費用逓減産業(自然独占)の企業の平均費用と総費用

 

利潤/平均利潤

利潤を最大化させる「生産量(Qm)」における「費用逓減産業(自然独占)」の企業の「平均利潤」は「平均収入(Pm)」から「平均費用(CAC)」を控除した縦軸の高さ(Pm-CACとなり、「利潤」は「平均利潤(Pm-CAC)」に「生産量(Qm)」を乗じた面積となります。

 

費用逓減産業(自然独占)の企業の平均利潤と利潤

 

費用逓減産業(自然独占)における最適資源配分の実現

「費用逓減産業(自然独占)」において「社会的総余剰」を最大化して最適資源配分を実現する方法について説明します。

 

社会的総余剰の最大化

 

補助金の交付

最適資源配分を実現するために政府が介入する方法として「補助金の交付」があります。

政府が補助金を交付すれば、社会的総余剰が最大となり、最適資源配分を実現することができますが、独占企業に政府が補助金を与えることで、所得分配の不公正が起きるため、現実的に実行されません

 

 

「補助金の交付」の長所と短所を以下に示します。

 

長所

  • 「社会的総余剰」が最大となり最適資源配分を実現できる。

 

短所

  • 「長期限界費用(LMC)」を正確に測定することができないため、補助金の価格設定が難しい。
  • 資源配分の最適化を実現できるが、独占企業に政府が補助金を交付することにより、所得分配の不公正が発生する。

 

価格規制

最適資源配分を実現するために政府が介入するもう一つの方法として「価格規制」があります。

「価格規制」には、「限界費用」と等しくなるように財の価格を規制する「限界費用価格形成原理」と、「平均費用」と等しくなるように財の価格を規制する「平均費用価格形成原理」があります。

 

限界費用価格形成原理

「限界費用価格形成原理」とは、財の価格が「限界費用」と等しくなるように規制することをいいます。

「限界費用価格形成原理」では、「需要曲線(D)」と「長期限界費用曲線(LMC)」が均衡する「交点E」の「価格(Pe)」で財の価格を規制します。

 

余剰分析(限界費用価格形成原理)

「限界費用価格形成原理」により、財の価格を「Pe」で規制した場合の「余剰(利益)」について考えていきます。

 

財の価格を「価格(Pe)」で規制すれば、消費者による財の消費量が「Qe」となり、また生産者による財の生産量が「Qe」となるため、「社会的総余剰」が最大となり、最適資源配分を実現できます

 

余剰分析(限界費用価格形成原理)

 

企業の総収入・総費用・利潤の大きさ(限界費用価格形成原理)

「限界費用価格形成原理」により、財の価格を「Pe」に規制した場合の企業の「総収入(平均収入)」「総費用(平均費用)」「利潤(平均利潤)」の大きさについて説明していきます。

 

「限界費用価格形成原理」により、財の価格を「Pe」に規制すると「長期平均費用(LAC)」の方が「価格(Pe)」よりも高くなり生産者の利潤が「マイナス」となってしまうため、採算が合わなくなる生産者は、この市場から退出してしまいます。

政府としては、採算が合わなくなる生産者が市場から退出しないようにするため、「長期限界費用(LAC)」と「価格(Pe)」の差額に補填するために補助金を交付するなどを行わなければならなくなります。

 

企業の収支状況(限界費用価格形成原理)

 

「限界費用価格形成原理」の長所と短所を以下に示します。

 

長所

  • 「社会的総余剰」が最大となり最適資源配分を実現できる。

 

短所

  • 「長期限界費用(LMC)」を正確に測定することができないため、財の価格設定が難しい。
  • 生産者の利潤が「マイナス」となるため、この市場から生産者が退出しないように政府が生産者に対して「マイナス」を補填する補助金を交付するなどの対処が必要となる。
  • 「長期限界費用(LMC)」を正確に測定することができないため、交付する補助金の金額設定が難しい。

 

総収入/平均収入

「限界費用価格形成原理」により、財の価格を「Pe」に規制した場合の企業の「平均収入」は縦軸の高さ(Peとなり、「総収入」は「平均収入(Pe)」に「生産量(Qe)」を乗じた面積となります。

 

企業の平均収入と総収入(限界費用価格形成原理)

 

総費用/平均費用

「限界費用価格形成原理」により、財の価格を「Pe」に規制した場合の企業の「平均費用」は縦軸の高さ(CACとなり、「総費用」は「平均費用(CAC)」に「生産量(Qe)」を乗じた面積となります。

 

企業の平均費用と総費用(限界費用価格形成原理)

 

利潤/平均利潤

「限界費用価格形成原理」により、財の価格を「Pe」に規制した場合の企業の「平均利潤」は「平均収入(Pe)」から「平均費用(CAC)」を控除した縦軸の高さ(Pm-CACとなり、「利潤」は「平均利潤(Pm-CAC)」に「生産量(Qm)」を乗じた面積となります。

「平均費用(CAC)」の方が「平均収入(Pe)」よりも高くなっているため、企業の利潤は「マイナス」となります

 

企業の平均利潤と利潤(限界費用価格形成原理)

 

平均費用価格形成原理

「平均費用価格形成原理」とは、財の価格が「平均費用」と等しくなるように規制することをいいます。

「平均費用価格形成原理」では、「需要曲線(D)」と「長期平均費用曲線(LAC)」が均衡する「交点H」の「価格(Ph)」で財の価格を規制します。

 

余剰分析(平均費用価格形成原理)

「平均費用価格形成原理」により、財の価格を「Ph」で規制した場合の「余剰(利益)」について考えていきます。

 

財の価格を「価格(Ph)」で規制すれば、消費者による財の需要量が「Qh」となり、生産者による財の生産量が「Qh」となりますが、「社会的総余剰」が最大とならず最適資源配分を実現できません

 

余剰分析(平均費用価格形成原理)

 

企業の総収入・総費用・利潤の大きさ(平均費用価格形成原理)

「平均費用価格形成原理」により、財の価格を「Ph」に規制した場合の企業の「総収入(平均収入)」「総費用(平均費用)」「利潤(平均利潤)」の大きさについて説明していきます。

 

「平均費用価格形成原理」により、財の価格を「Ph」に規制すると「長期平均費用(LAC)」と「価格(Ph)」が等しくなるため、生産者の利潤が「ゼロ」となり採算が取れるようになります(独立採算制)

 

企業の収支状況(平均費用価格形成原理)

 

「平均費用価格形成原理」の長所と短所を以下に示します。

 

長所

  • 生産者の利潤が「マイナス」とはならない(ゼロ)ため、政府から補助金を交付する必要はない。

 

短所

  • 「社会的総余剰」が最大とならず最適資源配分を実現できない。

 

総収入/平均収入

「平均費用価格形成原理」により、財の価格を「Ph」に規制した場合の企業の「平均収入」は縦軸の高さ(Phとなり、「総収入」は「平均収入(Ph)」に「生産量(Qh)」を乗じた面積となります。

 

企業の平均収入と総収入(平均費用価格形成原理)

 

総費用/平均費用

「平均費用価格形成原理」により、財の価格を「Ph」に規制した場合の企業の「平均費用」は縦軸の高さ(Phとなり、「総費用」は「平均費用(Ph)」に「生産量(Qh)」を乗じた面積となります。

 

企業の平均費用と総費用(平均費用価格形成原理)

 

利潤/平均利潤

「平均費用価格形成原理」により、財の価格を「Ph」に規制した場合「価格(Ph)」と「長期平均費用(Ph)」が等しくなるため「利潤」は「ゼロ」となります

 

企業の平均利潤と利潤(平均費用価格形成原理)

 

2部料金制

「2部料金制」とは、消費者が消費量に関係なく均等に負担する「基本料金」と消費者が消費量に応じて負担する「従量料金」に分解して、財の価格を設定する方法のことをいいます。

「2部料金制」を導入すれば「費用逓減産業(自然独占)」の企業の利潤が「マイナス」にならない(ゼロとなる)ため、政府が補助金の交付をしなくても最適な生産水準を達成することができます

 

従量料金

「従量料金」は、消費者が消費量に応じて負担する変動料金のことをいいます。

「従量料金」の価格は「限界費用価格形成原理」と同じ方法で設定します。

「従量料金」は、「生産量(Qe)」における「長期限界費用(LMC)」である「点E」における「価格Pe」に「生産量(Qe)」を乗じた「四角形Pe0QeE」の面積として表されます。

 

基本料金

「基本料金」は、消費者が消費量に関係なく均等に負担する固定料金のことをいいます。

「基本料金」の価格は「限界費用価格形成原理」に基づいて設定した「従量料金」によって発生する企業の赤字分を回収できるように設定します。

「基本料金」は、「生産量(Qe)」における「長期平均費用(LAC)」である「点G」における「価格(Pg)」と「生産量(Qe)」における「長期限界費用(LMC)」である「点E」における「価格Pe」の「差分(Pg-Pe)」に「生産量(Qe)」を乗じた「四角形PgPeEG」の面積として表されます。

 

2部料金制を導入した場合の基本料金と従量料金

 

「2部料金制」の長所と短所を以下に示します。

 

長所

  • 「社会的総余剰」が最大となり最適資源配分を実現できる。
  • 生産者の利潤が「マイナス」にならない(ゼロ)ため、政府が補助金を交付しなくても最適な生産水準を実現できる

 

短所

  • 「長期平均費用(LAC)」と「長期限界費用(LMC)」を正確に測定することができないため「基本料金」と「従量料金」の価格設定が難しい。

 


 

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