経済学・経済政策 ~R1-18 資源配分機能(6)余剰分析(関税と補助金)~

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今回は、「経済学・経済政策 ~R1-18 資源配分機能(6)余剰分析(関税と補助金)~」について説明します。

 

目次

経済学・経済政策 ~令和元年度一次試験問題一覧~

令和元年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

余剰分析(貿易) -リンク-

本ブログにて「余剰分析(貿易)」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。

 

 

余剰分析

「余剰分析」とは、財市場において資源配分の効率性を分析する手法のことをいいます。

「余剰」とは、財市場の取引により得られる「利益」のことを表しており、「余剰分析」では「消費者余剰」と「生産者余剰」と「政府余剰」を重ね合わせた「社会的総余剰(総余剰)」に基づき、資源配分が効率的になっているかを確認していきます。

 

例:社会的総余剰(消費者余剰+生産者余剰)

 

余剰分析(貿易)

「財市場(完全競争市場)」において、貿易による「余剰(利益)」の変化について考えていきます。

 

輸入

自由貿易の場合(輸入品に対する関税や輸入量の制限がない場合)

「財市場(完全競争市場)」において、輸入品に対する関税や輸入量の制限がない自由貿易が行われ、財の価格は国内の需要曲線と供給曲線の交点で均衡していた国内価格(PE)から国際価格(Pi)に下落すると、消費者による需要量は「XE(点Eの需要量)」から「XG(点Gの需要量)」に増加して、生産者による供給量は「XE(点Eの供給量)」から「XF(点Fの供給量)」に減少します

また、需要量の増加と供給量の減少により「超過需要」となりますが、供給量の不足分(XG-XF)は輸入財により賄われます

 

「余剰(利益)」という観点で見ると「消費者余剰」は増加して「生産者余剰」は減少します。

 

余剰の変化(自由貿易(輸入))

 

自由貿易が行われていなかった場合と比較すると「社会的総余剰(総余剰)」は「三角形EFG」だけ増加します。

 

社会的総余剰の増加分(自由貿易(輸入))

 

保護貿易の場合(輸入品に関税を賦課する場合)

自由貿易が行われていた輸入品に政府が関税(t)を賦課すると、財の価格が自由貿易における価格(Pi)から関税が賦課された価格(Pi+t)に上昇するため、消費者による需要量は「XG(点Gの需要量)」から「XI(点Iの需要量)」に減少して、生産者による供給量は「XF(点Fの供給量)」から「XH(点Hの供給量)」に増加します

また、自由貿易の場合と比較して、需要量が減少して供給量が増加するため、供給量の不足分が「XG-XF」から「XI-XH」に減少して輸入量も減少します。

 

「余剰(利益)」という観点で見ると、自由貿易の場合と比較して「消費者余剰」は減少して「生産者余剰」は増加します。

また、自由貿易における価格(Piと関税が賦課された価格(Pi+t)の差額(Pi+t-Pi)に、輸入量(XI-XH)を乗じた面積で表される関税収入が「政府余剰」として増加します。

 

余剰の変化(輸入品に関税を賦課する場合)

 

政府が関税を賦課する場合の「社会的総余剰(総余剰)」は、自由貿易の場合と比較して「三角形HFJ+三角形IKG」だけ減少(余剰の損失(死荷重))します。

 

社会的総余剰(輸入品に関税を賦課する場合)

 

余剰の損失(輸入品に関税を賦課する場合)

 

保護貿易の場合(輸入品に補助金を交付する場合)

自由貿易が行われていた輸入品1単位に対して政府が一定額の補助金(t)を交付すると、生産者は財1単位を販売するごとに一定額の補助金を受け取ることになり、財の限界費用(1単位を生産するための費用)が減少するため、供給曲線が平行に下方にシフトします。

供給曲線は平行に下方にシフトしますが財の価格(Pi)は変動しないため、生産者による供給量は「XF(点Fの供給量)」から「XJ(点Jの供給量)」に増加します。一方、需要曲線はシフトすることなく財の価格(Pi)も変動しないため、消費者による需要量は「XG(点Gの需要量)」から増減しません

また、自由貿易の場合と比較して、供給量が増加するため、供給量の不足分が「XG-XF」から「XG-XJ」に減少して輸入量も減少します。

 

「余剰(利益)」という観点で見ると、自由貿易の場合と比較して「生産者余剰」は増加しますが「消費者余剰」は増減しません

 

生産者余剰と消費者余剰の変化(輸入品に補助金を交付する場合)

 

また、政府としては、財1単位に対して交付する一定額の補助金(t)に、生産者による供給量(XJ)を乗じた面積で表される補助金を交付するため「損失(マイナス)」の「政府余剰」が発生します。

 

政府余剰の変化(輸入品に補助金を交付する場合)

 

政府が輸入品に補助金を交付する場合の「社会的総余剰(総余剰)」は、自由貿易の場合と比較して「三角形HFJ」だけ減少(余剰の損失(死荷重))します。

 

社会的総余剰(輸入品に補助金を交付する場合)

 

余剰の損失(輸入品に補助金を交付する場合)

 

試験問題

それでは、実際の試験問題を解いてみます。

【令和元年度 第18問】

下図は、産業保護という観点から、輸入関税と生産補助金の効果を描いたものである。輸入関税をかける場合、この財の国内価格はPfからPdへと上昇する。また、生産補助金を交付する場合、この財の供給曲線はS0からS1へとシフトする。

この図に基づいて、下記の設問に答えよ。

 

 

(設問1)

輸入関税をかけた場合、また、生産補助金を交付した場合の需要量と供給量に関する記述として、最も適切なものはどれか。

 

ア 輸入関税をかけた場合の需要量はQ1である。
イ 輸入関税をかけた場合の供給量はQ2である。
ウ 生産補助金を交付した場合の需要量はQ3である。
エ 生産補助金を交付した場合の供給量はQ4である。

 

(設問2)

輸入関税と生産補助金による社会的余剰の比較に関する記述として、最も適切なものはどれか。

 

ア □BCJKの分だけ、生産補助金の方が輸入関税よりも損失が少なく、産業保護の政策としてより効果的である。

イ □FGKHの分だけ、輸入関税の方が生産補助金よりも損失が少なく、産業保護の政策としてより効果的である。

ウ △FIHと△GJKの分だけ、輸入関税の方が生産補助金よりも損失が少なく、産業保護の政策としてより効果的である。

エ △FIHの分だけ、生産補助金の方が輸入関税よりも損失が少なく、産業保護の政策としてより効果的である。

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

考え方と解答(設問1)

関税と補助金による需要量と供給量の変化に関する知識を問う問題です。

 

自由貿易が行われている場合の需要量と供給量

「財市場(完全競争市場)」において、輸入品に対する関税や輸入量の制限がない自由貿易が行われている場合、消費者による需要量は「Q1(点Fの需要量)」、生産者による供給量は「Q2(点Gの供給量)」となります

国内における需要と供給のバランスは「超過需要」となりますが、供給量の不足分(Q1-Q2)は輸入財により賄われます。

 

 

政府が関税を賦課する場合の需要量と供給量の変化

自由貿易が行われていた輸入品に政府が関税を賦課すると、財の価格が自由貿易における価格(Pf)から関税が賦課された価格(Pd)に上昇するため、消費者による需要量は「Q1(点Fの需要量)」から「Q3(点Hの需要量)」に減少して、生産者による供給量は「Q2(点Gの供給量)」から「Q4(点Kの供給量)」に増加します

 

 

政府が補助金を交付する場合の需要量と供給量の変化

自由貿易が行われていた輸入品1単位に対して政府が一定額の補助金を交付すると、生産者は財1単位を販売するごとに一定額の補助金を受け取ることになり、財の限界費用(1単位を生産するための費用)が減少するため、供給曲線が「S0」から「S1」へと平行に下方にシフトします。

供給曲線は平行に下方にシフトしますが財の価格(Pf)は変動しないため、生産者による供給量は「Q2(点Gの供給量)」から「Q4(点Jの供給量)」に増加します。一方、需要曲線はシフトすることなく財の価格(Pf)も変動しないため、消費者による需要量は「Q1(点Fの需要量)」から増減しません

 

 

(ア) 不適切です。

自由貿易が行われていた輸入品に政府が関税を賦課すると、財の価格が自由貿易における価格(Pf)から関税が賦課された価格(Pd)に上昇するため、消費者による需要量は「Q1(点Fの需要量)」から「Q3(点Hの需要量)」に減少します

 

したがって、輸入関税をかけた場合の需要量はQ1ではなくQ3であるため、選択肢の内容は不適切です

 

(イ) 不適切です。

自由貿易が行われていた輸入品に政府が関税を賦課すると、財の価格が自由貿易における価格(Pf)から関税が賦課された価格(Pd)に上昇するため、生産者による供給量は「Q2(点Gの供給量)」から「Q4(点Kの供給量)」に増加します

 

したがって、輸入関税をかけた場合の供給量はQ2ではなくQ4であるため、選択肢の内容は不適切です

 

(ウ) 不適切です。

自由貿易が行われていた輸入品1単位に対して政府が一定額の補助金を交付すると、供給曲線が「S0」から「S1」へと平行に下方にシフトしますが、需要曲線はシフトすることなく財の価格(Pf)も変動しないため、消費者による需要量は「Q1(点Fの需要量)」から増減しません

 

したがって、生産補助金を交付した場合の需要量はQ3ではなくQ1であるため、選択肢の内容は不適切です

 

(エ) 適切です。

自由貿易が行われていた輸入品1単位に対して政府が一定額の補助金を交付すると、供給曲線が「S0」から「S1」へと平行に下方にシフトします。供給曲線は平行に下方にシフトしますが財の価格(Pf)は変動しないため、生産者による供給量は「Q2(点Gの供給量)」から「Q4(点Jの供給量)」に増加します

 

したがって、生産補助金を交付した場合の供給量はQ4であるため、選択肢の内容は適切です

 

答えは(エ)です。


 

考え方と解答(設問2)

関税と補助金による余剰の変化に関する知識を問う問題です。

 

自由貿易が行われている場合の余剰

「財市場(完全競争市場)」において自由貿易が行われている場合の「消費者余剰」と「生産者余剰」は以下の通りです。

 

 

政府が関税を賦課する場合の余剰の変化

自由貿易が行われていた輸入品に政府が関税を賦課すると、財の価格が自由貿易における価格(Pf)から関税が賦課された価格(Pd)に上昇します。

財の価格が上昇すると、消費者による需要量が減少するため「消費者余剰」は減少し、生産者による生産量が増加するため「生産者余剰」は増加します。

また、自由貿易における価格(Pfと関税が賦課された価格(Pd)の差額(Pd-Pf)に、輸入量(Q3-Q4)を乗じた面積で表される関税収入が「政府余剰」として増加します。

 

 

政府が関税を賦課する場合の「社会的総余剰(総余剰)」は、自由貿易の場合と比較して「三角形KGJ+三角形HIF」だけ減少(余剰の損失(死荷重))します。

 

 

政府が補助金を交付する場合の余剰の変化

自由貿易が行われていた輸入品1単位に対して政府が一定額の補助金を交付すると、、生産者は財1単位を販売するごとに一定額の補助金を受け取ることになり、財の限界費用(1単位を生産するための費用)が減少するため、供給曲線が「S0」から「S1」へと平行に下方にシフトします。

供給曲線は平行に下方にシフトしますが財の価格(Pf)は変動しないため、「生産者余剰」は増加します。一方、需要曲線はシフトすることなく財の価格(Pf)も変動しないため、「消費者余剰」は増減しません

 

 

また、政府としては、財1単位に対して交付する一定額の補助金(Pd-Pf = B-C)に、生産者による供給量(Q4)を乗じた面積で表される補助金を交付するため「損失(マイナス)」の「政府余剰」が発生します。

 

 

政府が輸入品に補助金を交付する場合の「社会的総余剰(総余剰)」は、自由貿易の場合と比較して「三角形KGJ」だけ減少(余剰の損失(死荷重))します。

 

 

政府が関税を賦課する場合の「社会的総余剰(総余剰)」は、自由貿易の場合と比較して「三角形KGJ+三角形HIF」だけ減少して、政府が補助金を交付する場合の「社会的総余剰(総余剰)」は、自由貿易の場合と比較して「三角形KGJ」だけ減少するため、政府が関税を賦課するよりも、政府が補助金を交付する方が「社会的総余剰(総余剰)」が「三角形HIF」だけ大きく、産業保護の政策として効果的であることが分かります。

 

したがって、△FIHの分だけ、生産補助金の方が輸入関税よりも損失が少なく、産業保護の政策としてより効果的であるため、選択肢(エ)に記述されている内容が適切です

 

答えは(エ)です。


 

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