経済学・経済政策~H29-21 資源配分機能(13)余剰分析(関税の引き下げ)~

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今回は、「経済学・経済政策~H29-21 資源配分機能(13)余剰分析(関税の引き下げ)~」について説明します。

 

目次

経済学・経済政策 ~平成29年度一次試験問題一覧~

平成29年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

余剰分析(貿易) -リンク-

本ブログにて「余剰分析(貿易)」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。

 

 

余剰分析

「余剰分析」とは、財市場において資源配分の効率性を分析する手法のことをいいます。

「余剰」とは、財市場の取引により得られる「利益」のことを表しており、「余剰分析」では「消費者余剰」と「生産者余剰」と「政府余剰」を重ね合わせた「社会的総余剰(総余剰)」に基づき、資源配分が効率的になっているかを確認していきます。

 

例:社会的総余剰(消費者余剰+生産者余剰)

 

余剰分析(貿易)

「財市場(完全競争市場)」において、貿易による「余剰(利益)」の変化について考えていきます。

 

輸入

自由貿易の場合(輸入品に対する関税や輸入量の制限がない場合)

「財市場(完全競争市場)」において、輸入品に対する関税や輸入量の制限がない自由貿易が行われ、財の価格は国内の需要曲線と供給曲線の交点で均衡していた国内価格(PE)から国際価格(Pi)に下落すると、消費者による需要量は「XE(点Eの需要量)」から「XG(点Gの需要量)」に増加して、生産者による供給量は「XE(点Eの供給量)」から「XF(点Fの供給量)」に減少します

また、需要量の増加と供給量の減少により「超過需要」となりますが、供給量の不足分(XG-XF)は輸入財により賄われます

 

「余剰(利益)」という観点で見ると「消費者余剰」は増加して「生産者余剰」は減少します。

 

余剰の変化(自由貿易(輸入))

 

自由貿易が行われていなかった場合と比較すると「社会的総余剰(総余剰)」は「三角形EFG」だけ増加します。

 

社会的総余剰の増加分(自由貿易(輸入))

 

保護貿易の場合(輸入品に関税を賦課する場合)

自由貿易が行われていた輸入品に政府が関税(t)を賦課すると、財の価格が自由貿易における価格(Pi)から関税が賦課された価格(Pi+t)に上昇するため、消費者による需要量は「XG(点Gの需要量)」から「XI(点Iの需要量)」に減少して、生産者による供給量は「XF(点Fの供給量)」から「XH(点Hの供給量)」に増加します

また、自由貿易の場合と比較して、需要量が減少して供給量が増加するため、供給量の不足分が「XG-XF」から「XI-XH」に減少して輸入量も減少します。

 

「余剰(利益)」という観点で見ると、自由貿易の場合と比較して「消費者余剰」は減少して「生産者余剰」は増加します。

また、自由貿易における価格(Piと関税が賦課された価格(Pi+t)の差額(Pi+t-Pi)に、輸入量(XI-XH)を乗じた面積で表される関税収入が「政府余剰」として増加します。

 

余剰の変化(輸入品に関税を賦課する場合)

 

政府が関税を賦課する場合の「社会的総余剰(総余剰)」は、自由貿易の場合と比較して「三角形HFJ+三角形IKG」だけ減少(余剰の損失(死荷重))します。

 

社会的総余剰(輸入品に関税を賦課する場合)

 

余剰の損失(輸入品に関税を賦課する場合)

 

試験問題

それでは、実際の試験問題を解いてみます。

【平成29年度 第21問】

昨今、WTOを中心とする多国間交渉はうまくいかず、FTAのような比較的少数の国の間の交渉が増加している。

下図は、関税引き下げによって輸入品の価格がP0からP1に下落する場合を描いている。この図に関する説明として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

 

 

[解答群]

ア 関税引き下げ後、国内の生産者余剰は、引き下げ前より三角形FGHの分だけ減少する。
イ 関税引き下げ後、消費者余剰は、関税引き下げ幅に輸入量CGを乗じた分だけ増加する。
ウ 関税引き下げによる、国内の生産者から消費者への再分配効果は、四角形P0FGP1である。
エ 関税引き下げによる貿易創造効果は、四角形BCGFの部分である。

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

考え方と解答

関税の引き下げに伴う余剰の変化に関する知識を問う問題です。

 

「余剰分析」とは、財市場において資源配分の効率性を分析する手法のことをいいます。

「余剰」とは、財市場の取引により得られる「利益」のことを表しており、「余剰分析」では「消費者余剰」と「生産者余剰」と「政府余剰」を重ね合わせた「社会的総余剰(総余剰)」に基づき、資源配分が効率的になっているかを確認していきます。

 

関税の引き下げによる余剰の変化

関税の引き下げによって財の価格が「P0」から「P1」に下落すると、消費者による需要量は「点B」から「点C」に増加して、生産者による供給量は「点F」から「点G」に減少します。

また、関税を引き下げる前と比較して、需要量が増加して供給量が減少するため、供給量の不足分が「B-F」から「C-G」に増加して輸入量も増加します。

 

「余剰(利益)」という観点で見ると、関税を引き下げる前と比較して「消費者余剰」は増加して「生産者余剰」は減少します。

また、関税収入が少なくなるため「政府余剰」は減少しますが、「社会的総余剰(総余剰)」は「三角形FGH+三角形BIC」だけ増加します。

 

 

(ア) 不適切です。

関税の引き下げによって財の価格が「P0」から「P1」に下落すると、生産者による供給量は「点F」から「点G」に減少するため「生産者余剰」は「四角形P0P1GF」だけ減少します。

 

 

したがって、関税引き下げ後、国内の生産者余剰は、引き下げ前より三角形FGHではなく四角形P0P1GFの分だけ減少するため、選択肢の内容は不適切です

 

(イ) 不適切です。

関税の引き下げによって財の価格が「P0」から「P1」に下落すると、消費者による需要量が「点B」から「点C」に増加するため「消費者余剰」は「四角形P0P1CB」だけ増加します。

 

 

したがって、関税引き下げ後、消費者余剰は、関税引き下げ幅に輸入量CGを乗じた分ではなく四角形P0P1CBの分だけ増加するため、選択肢の内容は不適切です

 

(ウ) 適切です。

関税の引き下げによって財の価格が「P0」から「P1」に下落すると、生産者による供給量は「点F」から「点G」に減少するため「生産者余剰」は「四角形P0P1GF」だけ減少します。

また、関税の引き下げによって財の価格が「P0」から「P1」に下落すると、消費者による需要量が「点B」から「点C」に増加するため「消費者余剰」は「四角形P0P1CB」だけ増加します。

つまり、「生産者余剰」から「消費者余剰」に再分配されたのは、関税の引き下げにより減少した生産者余剰(四角形P0P1GF)と増加した消費者余剰(四角形P0P1CB)の重複する範囲(四角形P0P1GF)となります。

 

 

したがって、関税引き下げによる、国内の生産者から消費者への再分配効果は、四角形P0FGP1であるため、選択肢の内容は適切です

 

(エ) 不適切です。

関税の引き下げにより「消費者余剰」は増加して「生産者余剰」は減少します。また、関税収入が少なくなるため「政府余剰」は減少しますが、「社会的総余剰(総余剰)」は「三角形FGH+三角形BIC」だけ増加します。

「貿易創造効果」とは、関税の引き下げや撤廃によって新たに発生する貿易のことをいい、「社会的総余剰(総余剰)」の増加分である「三角形FGH+三角形BIC」のことを示しています

 

 

したがって、関税引き下げによる貿易創造効果は、四角形BCGFではなく三角形FGHと三角形BICの部分であるため、選択肢の内容は不適切です

 

答えは(ウ)です。


 

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