今回は、「経済学・経済政策 ~H30-4 主要経済指標(4)物価指数~」について説明します。
目次
経済学・経済政策 ~平成30年度一次試験問題一覧~
平成30年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
物価指数・消費者物価指数・企業物価指数・GDPデフレーター -リンク-
本ブログにて「物価指数(ラスパイレス指数・パーシェ指数)」「消費者物価指数」「企業物価指数」「GDPデフレーター」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- 物価指数・消費者物価指数・企業物価指数・GDPデフレーターのまとめ
- R3-1 国民経済計算(10)実質GDPの推移
- R2-3 国民経済計算(1)国民所得概念と国民経済計算
- H28-1 国民経済計算(6)実質GDPとGDPデフレーターの推移
- H28-5 主要経済指標(6)消費者物価指数
- H27-5 主要経済指標(7)物価指数(ラスパイレス指数・パーシェ指数)
- H27-9 主要経済指標(8)企業物価指数
- H24-2 主要経済指標(11)物価指数
物価指数
「物価指数」とは、物価の上昇率を表す指標のことをいいます。
「物価指数」は、100を基準として、数値が100より大きければ物価が上昇していることを示しており、また数値が100より小さければ物価が下落していることを示しています。
「物価指数」には「基準時点の財の数量」をウエイトにした「ラスパイレス指数」と、「比較時点の財の数量」をウェイトにした「パーシェ指数」があります。
「ラスパイレス指数」の代表的な例には「消費者物価指数(CPI)」や「企業物価指数(CGPI)」があり、「パーシェ指数」の代表的な例には「GDPデフレーター」があります。
ラスパイレス指数
「ラスパイレス指数」とは、「基準時点の財の数量」をウエイトにして算出される「物価指数」のことをいい、以下の計算式により求めることができます。
「ラスパイレス指数」では、比較時点において基準時点と同じ数量の財を消費したときに、物価が基準時点と比べてどれだけ変化しているのかを表しています。
分かりづらいので、比較時点を「今年」、基準時点を「10年前」として言い換えてみます。
「ラスパイレス型」の物価指数では、今年の価格で10年前と同じ数量を消費した場合、10年前の価格で10年前の数量を消費した場合と比べて、何倍のお金が必要となるのかを表しています。
パーシェ指数
「パーシェ指数」とは、「比較時点の財の数量」をウェイトにして算出される「物価指数」のことをいい、以下の計算式により求めることができます。
「パーシェ指数」では、基準時点において比較時点と同じ数量の消費を行ったときに、物価が比較時点と比べてどれだけ変化しているのかを表しています。
分かりづらいので、比較時点を「今年」、基準時点を「10年前」として言い換えてみます。
「パーシェ指数」では、今年の価格で今年の数量を消費した場合、10年前の価格で今年の数量を消費した場合と比べて、何倍のお金が必要となるのかを表しています。
GDPデフレーター
「GDPデフレーター」とは「名目GDP」から「実質GDP」を算出するために用いられる「物価指数(パーシェ指数)」のことをいいます。
- 名目GDP:国内で新たに生み出された付加価値の時価総額
- 実質GDP:名目GDPから物価変動を取り除いたもの
- GDPデフレーター:「名目GDP」から「実質GDP」を算出する「物価指数」
「実質GDP」は「名目GDP」を「GDPデフレーター」で除して求められます。
この式を変換すると、「GDPデフレーター」は「名目GDP」を「実質GDP」で除して求めることができます。
「GDPデフレーター」は、GDPを構成する項目ごとにデフレーターを作成して実質値を求めた後「名目値 ÷ 各構成項目の実質値の合計」として逆算して求められるため、「消費者物価指数」や「企業物価指数」よりも包括的な「物価指数」を表しています。
「GDPデフレーター」は、その数値が100より大きければ物価が上昇していることを表しており「名目GDP > 実質GDP」となります。また、その数値が100より小さければ物価が下落していることを表しており「名目GDP < 実質GDP」となります。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【平成30年度 第4問】
経済を時系列で捉えるときには、名目値と実質値の区別が大切である。これらの関係を理解するために、次のような設例を考える。この設例では、商品Aと商品Bの2つがあり、それぞれの価格と生産量は下表のようになる。基準年を2015年とするとき、この設例に関する記述として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
商品A 商品B 価格 生産量 価格 生産量 2015年 100円 10個 100円 10個 2017年 110円 9個 90円 11個
[解答群]
ア 2017年の実質GDPは、1,980円である。
イ 2017年の物価指数(パーシェ型)は、100になる。
ウ 2017年の物価指数(ラスパイレス型)は、100になる。
エ 2017年の名目GDPは、2,000円である。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
物価指数に関する知識を問う問題です。
(ア) 不適切です。
「実質GDP」は「名目GDP」を「GDPデフレーター」で除して求められます。
選択肢(エ)で求めた「名目GDP(1,980円)」と、選択肢(イ)で求めた「GDPデフレーター」である「物価指数(パーシェ型)(99)」を用いて「実質GDP」を算出します。
- 実質GDP
= 名目GDP ÷ GDPデフレーター(物価指数(パーシェ型))× 100
= 1980円 ÷ 99 × 100 = 2,000円
したがって、2017年の実質GDPは、1,980円ではなく2,000円であるため、選択肢の内容は不適切です。
(イ) 不適切です。
「物価指数(パーシェ型)」とは、「比較時点の財の数量」をウェイトにして算出される「物価指数」のことをいい、以下の計算式により求めることができます。
問題文で与えられた以下の表から、2017年の「物価指数(パーシェ型)」を算出します。
商品A | 商品B | |||
価格 | 生産量 | 価格 | 生産量 | |
2015年(基準時点) | 100円 | 10個 | 100円 | 10個 |
2017年(比較時点) | 110円 | 9個 | 90円 | 11個 |
- 物価指数(パーシェ型)
=( 110円 × 9個 + 90円 × 11個 )÷( 100円 × 9個 + 100円 × 11個 )× 100
= 99
したがって、2017年の物価指数(パーシェ型)は、100ではなく99になるため、選択肢の内容は不適切です。
(ウ) 適切です。
「物価指数(ラスパイレス型)」とは、「基準時点の財の数量」をウエイトにして算出される「物価指数」のことをいい、以下の計算式により求めることができます。
問題文で与えられた以下の表から、2017年の「物価指数(ラスパイレス型)」を算出します。
商品A | 商品B | |||
価格 | 生産量 | 価格 | 生産量 | |
2015年(基準時点) | 100円 | 10個 | 100円 | 10個 |
2017年(比較時点) | 110円 | 9個 | 90円 | 11個 |
- 物価指数(ラスパイレス型)
=( 110円 × 10個 + 90円 × 10個 )÷( 100円 × 10個 + 100円 × 10個 )× 100
= 100
したがって、2017年の物価指数(ラスパイレス型)は、100になるため、選択肢の内容は適切です。
(エ) 不適切です。
「名目GDP」とは、国内で新たに生み出された付加価値の時価総額のことをいいます。
問題文で与えられた以下の表から、2017年の名目GDPを算出します。
商品A | 商品B | |||
価格 | 生産量 | 価格 | 生産量 | |
2015年 | 100円 | 10個 | 100円 | 10個 |
2017年 | 110円 | 9個 | 90円 | 11個 |
- 名目GDP
= 110円 × 9個 + 90円 × 11個
= 1,980円
したがって、2017年の名目GDPは、2,000円ではなく1,980円であるため、選択肢の内容は不適切です。
答えは(ウ)です。
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