今回は、「経済学・経済政策 ~H28-5 主要経済指標(6)消費者物価指数~」について説明します。
目次
経済学・経済政策 ~平成28年度一次試験問題一覧~
平成28年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
物価指数・消費者物価指数・企業物価指数・GDPデフレーター -リンク-
本ブログにて「物価指数(ラスパイレス指数・パーシェ指数)」「消費者物価指数」「企業物価指数」「GDPデフレーター」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- 物価指数・消費者物価指数・企業物価指数・GDPデフレーターのまとめ
- R3-1 国民経済計算(10)実質GDPの推移
- R2-3 国民経済計算(1)国民所得概念と国民経済計算
- H30-4 主要経済指標(4)物価指数
- H28-1 国民経済計算(6)実質GDPとGDPデフレーターの推移
- H27-5 主要経済指標(7)物価指数(ラスパイレス指数・パーシェ指数)
- H27-9 主要経済指標(8)企業物価指数
- H24-2 主要経済指標(11)物価指数
物価指数
「物価指数」とは、物価の上昇率を表す指標のことをいいます。
「物価指数」は、100を基準として、数値が100より大きければ物価が上昇していることを示しており、また数値が100より小さければ物価が下落していることを示しています。
「物価指数」には「基準時点の財の数量」をウエイトにした「ラスパイレス指数」と、「比較時点の財の数量」をウェイトにした「パーシェ指数」があります。
「ラスパイレス指数」の代表的な例には「消費者物価指数(CPI)」や「企業物価指数(CGPI)」があり、「パーシェ指数」の代表的な例には「GDPデフレーター」があります。
ラスパイレス指数
「ラスパイレス指数」とは、「基準時点の財の数量」をウエイトにして算出される「物価指数」のことをいい、以下の計算式により求めることができます。
「ラスパイレス指数」では、比較時点において基準時点と同じ数量の財を消費したときに、物価が基準時点と比べてどれだけ変化しているのかを表しています。
分かりづらいので、比較時点を「今年」、基準時点を「10年前」として言い換えてみます。
「ラスパイレス型」の物価指数では、今年の価格で10年前と同じ数量を消費した場合、10年前の価格で10年前の数量を消費した場合と比べて、何倍のお金が必要となるのかを表しています。
パーシェ指数
「パーシェ指数」とは、「比較時点の財の数量」をウェイトにして算出される「物価指数」のことをいい、以下の計算式により求めることができます。
「パーシェ指数」では、基準時点において比較時点と同じ数量の消費を行ったときに、物価が比較時点と比べてどれだけ変化しているのかを表しています。
分かりづらいので、比較時点を「今年」、基準時点を「10年前」として言い換えてみます。
「パーシェ指数」では、今年の価格で今年の数量を消費した場合、10年前の価格で今年の数量を消費した場合と比べて、何倍のお金が必要となるのかを表しています。
消費者物価指数(CPI)
「消費者物価指数」は、全国の世帯が購入する財とサービスの価格変動を総合的に測定し、物価の変動を時系列的に測定する指標であり、家計の消費構造を一定のものに固定し、これに要する費用が物価の変動によってどう変化するかを表した数値のことをいいます。
対象範囲
「消費者物価指数」は、世帯の消費生活に及ぼす物価の変動を測定するものであるため、家計の「消費支出」を対象としています。
消費支出に含まれるもの
- 財とサービスの購入と一体となって徴収される消費税などの間接税
- 持家の住宅費用(帰属家賃方式)
消費支出に含まれないもの
- 信仰・祭祀費、寄付金、贈与金、他の負担費及び仕送り金
- 直接税や社会保険料などの支出(非消費支出)
- 有価証券の購入、土地・住宅の購入などの支出(貯蓄及び財産購入のための支出)
指定品目
「消費者物価指数」の算定に採用されている「指数品目」は、世帯が購入する多種多様な財とサービス全体の物価変動を代表できるように、家計の消費支出の中で重要度が高いこと、価格変動の面で代表性があること、継続調査が可能であることなどの観点から選定した「指数品目」を対象としています。
価格
「消費者物価指数」の算定に採用されている「指数品目」の価格には、原則として小売物価統計調査の動向編によって得られた市町村別、品目別の小売価格を採用しています。
なお、パソコン(デスクトップ型/ノート型)」と「カメラ」については、POS情報により全国の主要な家電量販店で販売された全製品の販売価格を採用しています。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【平成28年度 第5問】
日本銀行は、2013年1月に「物価安定の目標」として消費者物価の前年比上昇率を2%と定めた。これは消費者物価指数(CPI)によって測られる。消費者物価指数に関する記述として、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。
a 消費者物価指数は、家計に直接影響する物価の変動を的確にとらえるために、消費者が購入するすべての商品を対象として価格を調査している。
b 消費者物価指数は、家計による消費支出を対象とするので、消費税などの間接税を含まない。
c 生鮮食品を除く総合指数による消費者物価指数は、「コアCPI」と呼ばれる。
d 総務省が作成する消費者物価指数はラスパイレス方式である。
[解答群]
ア aとb
イ aとc
ウ bとc
エ bとd
オ cとd
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
消費者物価指数に関する知識を問う問題です。
「消費者物価指数」は、全国の世帯が購入する財とサービスの価格変動を総合的に測定し、物価の変動を時系列的に測定する指標であり、家計の消費構造を一定のものに固定し、これに要する費用が物価の変動によってどう変化するかを表した数値のことをいいます。
(a) 不適切です。
「消費者物価指数」の算定に採用されている「指数品目」は、世帯が購入する多種多様な財とサービス全体の物価変動を代表できるように、家計の消費支出の中で重要度が高いこと、価格変動の面で代表性があること、継続調査が可能であることなどの観点から選定した「指数品目」を対象としています。
したがって、消費者物価指数は、家計に直接影響する物価の変動を的確にとらえるために、消費者が購入するすべての商品ではなく、家計の消費支出の中で重要度が高いこと、価格変動の面で代表性があること、継続調査が可能であることなどの観点から選定した商品を対象として価格を調査しているため、選択肢の内容は不適切です。
(b) 不適切です。
「消費者物価指数」は、世帯の消費生活に及ぼす物価の変動を測定するものであるため、家計の「消費支出」を対象としています。
消費支出に含まれるもの
- 財とサービスの購入と一体となって徴収される消費税などの間接税
- 持家の住宅費用(帰属家賃方式)
したがって、消費者物価指数は、家計による消費支出を対象とするので、消費税などの間接税を含んでいるため、選択肢の内容は不適切です。
(c) 適切です。
「コアCPI」とは「消費者物価指数」に含まれている対象商品から生鮮食品を除いて算出した数値のことをいいます。
したがって、生鮮食品を除く総合指数による消費者物価指数は「コアCPI」と呼ばれるため、選択肢の内容は適切です。
(d) 適切です。
「物価指数」には「基準時点の財の数量」をウエイトにした「ラスパイレス指数」と、「比較時点の財の数量」をウェイトにした「パーシェ指数」があります。
「ラスパイレス指数」の代表的な例には「消費者物価指数(CPI)」や「企業物価指数(CGPI)」があり、「パーシェ指数」の代表的な例には「GDPデフレーター」があります。
したがって、総務省が作成する消費者物価指数はラスパイレス方式であるため、選択肢の内容は適切です。
(c)と(d)に記述されている内容が適切であるため、答えは(オ)です。
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