今回は、「経済学・経済政策 ~R1-11 資源配分機能(5)余剰分析(特殊な形状の供給曲線)~」について説明します。
目次
経済学・経済政策 ~令和元年度一次試験問題一覧~
令和元年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
余剰分析(消費者余剰・生産者余剰・政府余剰) -リンク-
本ブログにて「余剰分析(消費者余剰・生産者余剰・政府余剰)」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
余剰分析
「余剰分析」とは、財市場において資源配分の効率性を分析する手法のことをいいます。
「余剰」とは、財市場の取引により得られる「利益」のことを表しており、「余剰分析」では「消費者余剰」と「生産者余剰」と「政府余剰」を重ね合わせた「社会的総余剰(総余剰)」に基づき、資源配分が効率的になっているかを確認していきます。
例:社会的総余剰(消費者余剰+生産者余剰)
消費者余剰
「消費者余剰」は、財市場で取引することにより消費者(需要者)が得られる「利益」のことをいいます。
「需要曲線」は、消費者が財を消費するために支払ってもよいと考えている「価格」と「需要量」の組み合わせを表しているため「消費者余剰」は「需要曲線」と「価格」の差額を表す範囲として求めることができます。
- 消費者余剰 = 需要曲線(右下がりの曲線)- 価格(水平の曲線)
生産者余剰
「生産者余剰」は、財市場で取引することにより生産者(供給者)が得られる「利益」のことをいいます。
「供給曲線」は、生産者が財を生産するための限界費用(生産量を1単位増加すると追加で発生する費用)の曲線を表しているため「生産者余剰」は「価格」と「供給曲線」の差額を表す範囲として求めることができます。
- 生産者余剰 = 価格(水平の曲線)- 供給曲線(右上がりの曲線)
ただし、生産者が「需要曲線」と「供給曲線」の「交点E」における「生産量(XE)」を超えて生産してしまった場合、生産者が財を生産するための限界費用である「供給曲線」の方が「価格」よりも高くなってしまうため、生産すればするほど損失が多くなってしまいます。
政府余剰
「政府余剰」とは、財市場に「政府が介入する場合」に政府が得られる「利益」のことをいいます。
社会的総余剰(総余剰)
「社会的総余剰(総余剰)」とは、「消費者余剰」と「生産者余剰」と「政府余剰」を重ね合わせた「余剰」の合計のことをいいます。
今回は「政府余剰」について説明していないため、「消費者余剰」と「生産者余剰」を重ね合わせた「社会的総余剰(総余剰)」のイメージ図を以下に示します。
以下の図においては「三角形ABE」が「社会的総余剰(総余剰)」を表しています。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【令和元年度 第11問】
下図は、供給曲線の形状が特殊なケースを描いたものである。座席数に上限があるチケットなどは、ある一定数を超えて販売することができないため、上限の水準において垂直になる。なお、需要曲線は右下がりであるとする。
この図に関する記述として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
[解答群]
ア 供給曲線が垂直になってからは、生産者余剰は増加しない。
イ このイベントの主催者側がチケットの価格をP1に設定すると、超過需要が生じる。
ウ チケットがP3で販売されると、社会的余剰は均衡価格の場合よりも□GEFHの分だけ少ない。
エ チケットがQ1だけ供給されている場合、消費者は最大P2まで支払ってもよいと考えている。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
供給曲線の形状が特殊なケースの余剰分析に関する知識を問う問題です。
「余剰分析」とは、財市場において資源配分の効率性を分析する手法のことをいいます。
「余剰」とは、財市場の取引により得られる「利益」のことを表しており、「余剰分析」では「消費者余剰」と「生産者余剰」と「政府余剰」を重ね合わせた「社会的総余剰(総余剰)」に基づき、資源配分が効率的になっているかを確認していきます。
均衡状態におけるチケットの販売価格と販売量(供給量)
消費者によるチケットの販売価格と購買意欲の関係を表す「需要曲線」と、イベントの主催者(生産者)がチケットを販売(供給)するための限界費用を表す「供給曲線」の「交点E」で「需要量」と「販売量(供給量)」が均衡して、チケットの販売価格が「P2」に「販売量(供給量)」が「Q2」に決定します。
(ア) 不適切です。
チケットの「販売量(供給量)」が「Q2」の場合において、供給曲線が垂直となっています。
供給曲線上の「点F」におけるチケットの販売価格を「P4」とした場合、チケットの「販売量(供給量)」が「Q2」であれば、イベントの主催者(生産者)はチケットの販売価格を「P2」から「P4」の間で設定することができます。
イベントの主催者(生産者)が、チケットの販売価格を「P4」に設定した状態から「P2」に値上げすると「生産者余剰」が増加します。
したがって、供給曲線が垂直になってからも、生産者余剰は増加するため、選択肢の内容は不適切です。
(イ) 不適切です。
イベントの主催者(生産者)がチケットの販売価格を「P1」に設定した場合、「需要量」と「販売量(供給量)」は、それぞれ需要曲線の「点G」と供給曲線の「点I」となるため「需要量」は「Q1」に「供給量」は「Q2」に決定します。
イベントの主催者(生産者)がチケットの販売価格を「P1」に設定すると「需要量(Q1)< 供給量(Q2)」となるため「超過供給」が生じます。
したがって、このイベントの主催者側がチケットの価格をP1に設定すると、超過需要ではなく超過供給が生じるため、選択肢の内容は不適切です。
(ウ) 適切です。
チケットの販売価格が「P3」に設定する場合、イベントの主催者(生産者)は「供給曲線」に基づき、チケットの「販売量(供給量)」を「Q1」に決定します。
したがって、チケットが「P3」で販売されると、チケットの「販売量(供給量)」は「Q1」となり「消費者余剰」と「生産者余剰」を重ね合わせた「社会的総余剰(総余剰)」は以下の通りとなります。
チケットの販売価格が「P3」である場合の「社会的総余剰(総余剰)」は、「需要量」と「販売量(供給量)」が均衡する「交点E」でチケットを販売する場合と比べて「社会的総余剰(総余剰)」が「四角形GHFE」だけ減少します。
したがって、チケットがP3で販売されると、社会的余剰は均衡価格の場合よりも□GEFHの分だけ少ないため、選択肢の内容は適切です。
(エ) 不適切です。
「需要曲線」は、消費者が財を消費するために支払ってもよいと考えている「価格」と「需要量」の組み合わせを表しています。
つまり、チケットの「販売量(供給量)」が「Q1」である場合、消費者は需要曲線の「点G」におけるチケットの「販売価格」である「P1」まで支払ってもよいと考えています。
したがって、チケットがQ1だけ供給されている場合、消費者は最大P2までではなく最大P1まで支払ってもよいと考えているため、選択肢の内容は不適切です。
答えは(ウ)です。
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