経済学・経済政策 ~R2-20 製品差別化と独占的競争(1)独占的競争市場~

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今回は、「経済学・経済政策 ~R2-20 製品差別化と独占的競争(1)独占的競争市場~」について説明します。

 

目次

経済学・経済政策 ~令和2年度一次試験問題一覧~

令和2年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

完全競争市場・独占市場(供給独占)・独占的競争市場 -リンク-

本ブログにて「完全競争市場」「独占市場(供給独占)」「独占的競争市場」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。

 

 

独占的競争市場

「独占的競争市場」とは、財を提供する供給者が多数存在しているため競争的ではあるものの財に対してある程度の差別化がなされている市場のことをいいます。

「完全競争市場」は「供給者が多数存在しており財が同一であること」という条件に基づいた市場で、「独占(供給独占)」は「供給者が1社であり財が差別化されていること」という条件に基づいた市場ですが、「独占的競争市場」はその中間に位置する市場というイメージです。

 

完全競争市場 独占的競争市場 独占(供給独占)
供給者 多数 多数 1社
市場で扱う財 同一 ある程度差別化 差別化
価格支配力 なし あり あり
市場への参入と退出 長期的には可能 長期的には可能 不可能

 

「独占的競争市場」においては、財がある程度差別化されているため「完全競争市場」とは異なり、各企業が価格支配力を有する「プライスメイカー」として、自らの利潤を最大化させるように価格を設定することができます。

 

独占的競争市場における各企業が直面する需要曲線

「独占的競争市場」においては、財がある程度差別化されているため「完全競争市場」とは異なり、各企業が直面する「需要曲線(d)」は右下がりの曲線となります。したがって、「独占的競争市場」の各企業は、財の「生産量」を減らしてその価格を高く設定したり、財の価格を低く設定して「生産量」を増やすことができます。

ちなみに、「完全競争市場」においては、各企業は市場全体で決定した価格を受容する「プライステイカー」であるため、各企業が直面する需要曲線は水平となります

「完全競争市場」の各企業が直面する水平な需要曲線(以下左図)と「独占的競争市場」の各企業が直面する右下がりの需要曲線(以下右図)を以下に示します。

 

完全競争市場と独占的競争市場の需要曲線(d)

 

各企業が直面する需要曲線は「d」で表されます。
なお、市場全体の需要曲線を表す場合は「D」と表記されます。
各企業の生産量は「q」で表されます。
なお、市場全体の生産量を表す場合は「Q」と表記されます。

 

独占的競争企業の均衡

「独占的競争市場」における各企業の「短期均衡」と「長期均衡」について説明します。

ここでいう「短期」とは、労働量を増減させることはできるものの資本量を増減させることができない程度の短い期間のことをいい、「長期」とは、労働量だけでなく資本量も増減させることができる長い期間のことをいいます。

「独占的競争市場」は「市場への参入と退出」を自由に行うことができる市場ではありますが、市場に参入するには新たな設備投資を行うなど資本量の増加が伴い、市場から退出するには設備の処分を行うなど資本量の減少が伴うため、「短期均衡」においては「市場への参入と退出」ができない前提で、「長期均衡」においては「市場への参入と退出」ができる前提で、財の価格と生産量の均衡について考えていきます

 

独占的競争企業の短期均衡

「短期均衡」においては、「独占(供給独占)」の企業と同様の手順により、利潤を最大化させる財の価格と生産量を決定します。

 

右下がりの「需要曲線(d)」と、「需要曲線(d)」とY軸の切片が同じで傾きが2倍の「限界収入曲線(MR)」と、「U字型」の「限界費用曲線(MC)」と「費用曲線(AC)」を描画します。

 

「独占的競争市場」における企業は、利潤を最大化させる「限界収入曲線(MR)」と「限界費用曲線(MC)」の交点において「生産量(qm)」を決定するため財の価格は「生産量(qm)」における「需要曲線(d)」の高さ(Pm)で決定します。

なお、「生産量(qm)」における「需要曲線(d)」上の点のことを「供給点」といいます。

「独占的競争市場」における企業の短期均衡のイメージ図を以下に示します。

 

独占的競争市場(短期均衡)

 

この場合、「生産量(qm)」における「需要曲線(d)」の「点M(価格)と「平均費用曲線(AC)」の「点G(平均費用)」の差が「平均利潤」を表しているため、「平均利潤(点M-点G)」に「生産量(qm)」を乗じた面積が、企業の「利潤」となります。

 

短期均衡における企業の利潤

 

独占的競争企業の長期均衡

「独占的競争市場」は「市場への参入と退出」を自由に行うことができる市場であるため、短期均衡において「正の利潤」を得ることができるのであれば、その利潤を獲得するために新たな企業が参入してきます

新たな企業は、その利潤が「ゼロ」になるまで参入し続けてくるため、長期においては企業の利潤が「ゼロ」となる点で均衡します

 

「需要曲線(d)」と「平均費用曲線(LAC)」が接するまで「需要曲線(d)」が左方にシフトして、その接点において財の「価格(Pm’)」と「生産量(qm’)」が決定します。

この場合、「生産量(qm’)」における「需要曲線(d)」と「平均費用曲線(LAC)」の接点である「点M’」では「価格=平均費用となるため、「平均利潤」および企業の「利潤」が「ゼロ」となります

「独占的競争市場」における各企業の長期均衡のイメージ図を以下に示します。

 

独占的競争市場(長期均衡)

 

試験問題

それでは、実際の試験問題を解いてみます。

【令和2年度 第20問】

居酒屋は独占的競争市場の一例として考えられている。このような独占的競争市場における居酒屋に関する記述として、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。

 

a この居酒屋は、周囲の居酒屋が価格を下げた場合でも、製品差別化のおかげで需要が減少することはない。
b この居酒屋は、正の利潤を見込んで新規の居酒屋が多数参入してくると、製品が差別化されていたとしても、長期的に利潤はゼロになる。
c この居酒屋は、他の居酒屋とは差別化したメニューを出しているので、価格支配力を持つ。
d この居酒屋は、プライス・テイカーである。

 

[解答群]

ア aとc
イ aとd
ウ bとc
エ bとd

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

考え方と解答

独占的競争市場に関する知識を問う問題です。

 

「独占的競争市場」とは、財を提供する供給者が多数存在しているため競争的ではあるものの財に対してある程度の差別化がなされている市場のことをいいます。

「完全競争市場」は「供給者が多数存在しており財が同一であること」という条件に基づいた市場で、「独占(供給独占)」は「供給者が1社であり財が差別化されていること」という条件に基づいた市場ですが、「独占的競争市場」はその中間に位置する市場というイメージです。

 

完全競争市場 独占的競争市場 独占(供給独占)
供給者 多数 多数 1社
市場で扱う財 同一 ある程度差別化 差別化
価格支配力 なし あり あり
市場への参入と退出 長期的には可能 長期的には可能 不可能

 

(a) 不適切です。

「独占的競争市場」においては、財がある程度差別化されているため「完全競争市場」とは異なり、各企業が直面する「需要曲線(d)」は右下がりの曲線となります。したがって、「独占的競争市場」の各企業は、財の「生産量」を減らしてその価格を高く設定したり、財の価格を低く設定して「生産量」を増やすことができます。

 

 

需要者から見た場合、周囲の居酒屋が価格を下げると、相対的にこの居酒屋の価格が高くなってしまうため、需要が減少します。

 

したがって、この居酒屋は、周囲の居酒屋が価格を下げた場合、製品差別化をしていても需要が減少するため、選択肢の内容は不適切です

 

(b) 適切です。

「独占的競争市場」は「市場への参入と退出」を自由に行うことができる市場であるため、短期均衡において「正の利潤」を得ることができるのであれば、その利潤を獲得するために新たな企業が参入してきます

新たな企業は、その利潤が「ゼロ」になるまで参入し続けてくるため、長期においては企業の利潤が「ゼロ」となる点で均衡します

 

独占的競争市場(長期均衡)

 

したがって、この居酒屋は、正の利潤を見込んで新規の居酒屋が多数参入してくると、製品が差別化されていたとしても、長期的に利潤はゼロになるため、選択肢の内容は適切です

 

(c) 適切です。

「独占的競争市場」においては、財がある程度差別化されているため「完全競争市場」とは異なり、各企業が価格支配力を有する「プライスメイカー」として、自らの利潤を最大化させるように価格を設定することができます。

 

したがって、この居酒屋は、他の居酒屋とは差別化したメニューを出しており、価格支配力を持つため、選択肢の内容は適切です

 

(d) 不適切です。

「独占的競争市場」においては、財がある程度差別化されているため「完全競争市場」とは異なり、各企業が価格支配力を有する「プライスメイカー」として、自らの利潤を最大化させるように価格を設定することができます。

 

したがって、この居酒屋は、プライス・テイカーではなくプライス・メイカーであるため、選択肢の内容は不適切です

 

(b)と(c)に記述されている内容が適切であるため、答えは(ウ)です。


 

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