経済学・経済政策 ~R2-11-2 国際収支と為替変動(3)IS-LM-BP分析~

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今回は、「経済学・経済政策 ~R2-11-2 国際収支と為替変動(3)IS-LM-BP分析~」について説明します。

 

記事が長くなってしまったため「令和2年度 第11問」を2回に分けて解説しています。

今回は「経済学・経済政策 ~R2-11-1 国際収支と為替変動(2)BP曲線~」の続きです。

前回は、国際収支が均衡する点の組み合わせを表す「BP曲線」について説明しましたが、今回は、資本移動が完全に自由な場合の「IS-LM-BP分析」について説明していきます。

 

目次

経済学・経済政策 ~令和2年度一次試験問題一覧~

令和2年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

IS-LM-BP分析 -リンク-

本ブログにて「IS-LM-BP分析」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。

 

 

本ページにおいては、説明を分かりやすくするために、海外通貨のことを「ドル」と表記しています。

 

IS-LM-BP分析とは

「IS-LM-BP曲線」とは、縦軸に「利子率(r)」を、横軸に「GDP(Y)」を取ったグラフにおいて「財市場」が均衡する点の組み合わせを表す「IS曲線」と「資本市場(貨幣市場)」が均衡する点の組み合わせを表す「LM曲線」と「国際収支」が均衡する点の組み合わせを表す「BP曲線」を同時に表現して、「財政政策」や「金融政策」による「財市場」への効果と「資本市場(貨幣市場)」への効果と「国際収支」への効果を同時に分析するグラフのことをいいます。

 

IS-LM-BP曲線(資本移動が完全に自由な場合)

 

「IS-LM分析」を理解していないと「IS-LM-BP分析」を理解するのは難しいです。
まずは「IS-LM分析」を学習したいという方は、以下のページを参照してみてください。

 

 

財政政策や金融政策の効果(資本移動が完全に自由な場合)

資本移動が完全に自由な場合、「GDP(Y)」に関係なく「国内利子率(r)」と「国際利子率(rf)」が同じになる点で「国際収支」が均衡するため「BP曲線」は水平の曲線として表されます。

 

IS-LM-BP曲線(資本移動が完全に自由な場合)

 

資本移動が完全に自由な場合、「変動相場制」と「固定相場制」で「財政政策」と「金融政策」の効果が完全に逆転することが特徴です。

 

変動相場制 固定相場制
財政拡張政策 無効 極めて有効
金融緩和政策 極めて有効 無効

 

変動相場制の場合

「変動相場制」における「財政政策」と「金融政策」の効果を説明していきます。

特に、資本移動が完全に自由で「変動相場制」を採用している場合の「IS-LM-BP分析」のことを「マンデル=フレミング・モデル」といいます。

 

財政拡張政策

「変動相場制」における「財政拡張政策」は景気対策として無効となります。

 

変動相場制 固定相場制
財政拡張政策 無効 極めて有効
金融緩和政策 極めて有効 無効

 

「財政拡張政策」を行った場合に「財市場/IS曲線」と「資本市場(貨幣市場)/LM曲線」が変化していく流れを以下に示します。

 

  1. 「財政拡張政策」により「IS曲線」が右方にシフトする
  2. 「国内利子率」が「国際利子率(rf)」よりも高くなるため「円買いドル売り(資本流入)」が発生する
  3. 「円買いドル売り(資本流入)」により「円高ドル安」となるため「輸出(EX)」が減少して「輸入(IM)」が増加する
  4. 「輸出(EX)」が減少して「輸入(IM)」が増加するため、「財市場」において「YD=C+I+G+EX-IM」で表される「総需要(YD)」が減少して「IS曲線」が左方にシフトする
  5. 「国内利子率」が「国際利子率(rf)」よりも高い限り「IS曲線」が左方にシフトし続けて「国内利子率」が「国際利子率(rf)」と同じになった時点で均衡する(最終的に「IS曲線」は元の位置まで戻ってしまう

 

 

金融緩和政策

「変動相場制」における「金融緩和政策」は景気対策として極めて有効となります。

 

変動相場制 固定相場制
財政拡張政策 無効 極めて有効
金融緩和政策 極めて有効 無効

 

「金融緩和政策」を行った場合に「財市場/IS曲線」と「資本市場(貨幣市場)/LM曲線」が変化していく流れを以下に示します。

 

  1. 「金融緩和政策」により「LM曲線」が下方(右方)にシフトする
  2. 「国内利子率」が「国際利子率(rf)」よりも低くなるため「円売りドル買い(資本流出)」が発生する
  3. 「円売りドル買い(資本流出)」により「円安ドル高」となるため「輸出(EX)」が増加して「輸入(IM)」が減少する
  4. 「輸出(EX)」が増加して「輸入(IM)」が減少するため、「財市場」において「YD=C+I+G+EX-IM」で表される「総需要(YD)」が増加して「IS曲線」が右方にシフトする
  5. 「国内利子率」が「国際利子率(rf)」よりも低い限り「IS曲線」が右方にシフトし続けて「国内利子率」が「国際利子率(rf)」と同じになった時点で均衡する

 

 

固定相場制の場合

「固定相場制」における「財政政策」と「金融政策」の効果を説明していきます。

 

財政拡張政策

「固定相場制」における「財政拡張政策」は景気対策として極めて有効となります。

 

変動相場制 固定相場制
財政拡張政策 無効 極めて有効
金融緩和政策 極めて有効 無効

 

「財政拡張政策」を行った場合に「財市場/IS曲線」と「資本市場(貨幣市場)/LM曲線」が変化していく流れを以下に示します。

 

  1. 「財政拡張政策」により「IS曲線」が右方にシフトする
  2. 「国内利子率」が「国際利子率(rf)」よりも高くなるため「円買いドル売り(資本流入)」が発生する
  3. 「中央銀行(日本銀行)」は為替相場を一定に保つため「円買いドル売り(資本流入)」により「円高ドル安」とならないよう「円売りドル買い」介入を行う
  4. 「中央銀行(日本銀行)」による「円売りドル買い」介入により「ハイパワードマネー(H)」が増加して「貨幣供給量(M)」が増加するため「LM曲線」が下方(見た目は右方)にシフトする
  5. 「国内利子率」が「国際利子率(rf)」よりも高い限り「中央銀行(日本銀行)」による「円売りドル買い」介入が続けられ「国内利子率」が「国際利子率(rf)」と同じになった時点で均衡する

 

 

金融緩和政策

「固定相場制」における「金融緩和政策」は景気対策として無効となります。

 

変動相場制 固定相場制
財政拡張政策 無効 極めて有効
金融緩和政策 極めて有効 無効

 

「金融緩和政策」を行った場合に「財市場/IS曲線」と「資本市場(貨幣市場)/LM曲線」が変化していく流れを以下に示します。

 

  1. 「金融緩和政策」により「LM曲線」が下方(右方)にシフトする
  2. 「国内利子率」が「国際利子率(rf)」よりも低くなるため「円売りドル買い(資本流出)」が発生する
  3. 「中央銀行(日本銀行)」は為替相場を一定に保つため「円売りドル買い(資本流出)」により「円安ドル高」とならないよう「円買いドル売り」介入を行う
  4. 「中央銀行(日本銀行)」による「円買いドル売り」介入により「ハイパワードマネー(H)」が減少して「貨幣供給量(M)」が減少するため「LM曲線」が上方(見た目は左方)にシフトする
  5. 「国内利子率」が「国際利子率(rf)」よりも低い限り「中央銀行(日本銀行)」による「円買いドル売り」介入が続けられ「国内利子率」が「国際利子率(rf)」と同じになった時点で均衡する(最終的に「LM曲線」は元の位置に戻ってしまう)

 

 

試験問題

それでは、実際の試験問題を解いてみます。

【令和2年度 第11問】

グローバル化の進展には、資本移動と為替レート制度が重要である。ここでは、マンデル=フレミング・モデルの完全資本移動かつ小国のケースを考える。

変動為替レート制下での財政政策と金融政策の効果に関する記述として、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。

 

a 財政拡大政策は、完全なクラウディング・アウトを引き起こし、所得は不変である。
b 金融緩和政策は、自国通貨高による純輸出の減少を引き起こす。
c 財政拡大政策は、自国通貨安による純輸出の増加を引き起こす。
d 金融緩和政策は、純輸出の増加を通じて、GDPを押し上げる。

 

[解答群]

ア aとb
イ aとd
ウ bとc
エ cとd

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

考え方と解答

マンデル=フレミング・モデルにおける財政政策と金融政策の効果に関する知識を問う問題です。

 

変動相場制の場合

「変動相場制」における「財政政策」と「金融政策」の効果を説明していきます。

特に、資本移動が完全に自由で「変動相場制」を採用している場合の「IS-LM-BP分析」のことを「マンデル=フレミング・モデル」といいます。

 

財政拡張政策

「変動相場制」における「財政拡張政策」は景気対策として無効となります。

 

 

金融緩和政策

「変動相場制」における「金融緩和政策」は景気対策として極めて有効となります。

 

 

(a) 適切です。

「財政拡張政策」を行った場合に「財市場/IS曲線」と「資本市場(貨幣市場)/LM曲線」が変化していく流れを以下に示します。

 

  1. 「財政拡張政策」により「IS曲線」が右方にシフトする
  2. 「国内利子率」が「国際利子率(rf)」よりも高くなるため「円買いドル売り(資本流入)」が発生する
  3. 「円買いドル売り(資本流入)」により「円高ドル安」となるため「輸出(EX)」が減少して「輸入(IM)」が増加する
  4. 「輸出(EX)」が減少して「輸入(IM)」が増加するため、「財市場」において「YD=C+I+G+EX-IM」で表される「総需要(YD)」が減少して「IS曲線」が左方にシフトする
  5. 「国内利子率」が「国際利子率(rf)」よりも高い限り「IS曲線」が左方にシフトし続けて「国内利子率」が「国際利子率(rf)」と同じになった時点で均衡する(最終的に「IS曲線」は元の位置まで戻ってしまう

 

したがって、財政拡大政策は、完全なクラウディング・アウトを引き起こし、所得は不変であるため、選択肢の内容は適切です

 

(b) 不適切です。

「金融緩和政策」を行った場合に「財市場/IS曲線」と「資本市場(貨幣市場)/LM曲線」が変化していく流れ(途中まで)を以下に示します。

 

  1. 「金融緩和政策」により「LM曲線」が下方(右方)にシフトする
  2. 「国内利子率」が「国際利子率(rf)」よりも低くなるため「円売りドル買い(資本流出)」が発生する
  3. 「円売りドル買い(資本流出)」により「円安ドル高」となるため「輸出(EX)」が増加して「輸入(IM)」が減少する

 

したがって、金融緩和政策は、自国通貨高による純輸出の減少ではなく、自国通貨安による純輸出の増加を引き起こすため、選択肢の内容は不適切です

 

(c) 不適切です。

「財政拡張政策」を行った場合に「財市場/IS曲線」と「資本市場(貨幣市場)/LM曲線」が変化していく流れ(途中まで)を以下に示します。

 

  1. 「財政拡張政策」により「IS曲線」が右方にシフトする
  2. 「国内利子率」が「国際利子率(rf)」よりも高くなるため「円買いドル売り(資本流入)」が発生する
  3. 「円買いドル売り(資本流入)」により「円高ドル安」となるため「輸出(EX)」が減少して「輸入(IM)」が増加する

 

したがって、財政拡大政策は、自国通貨安による純輸出の増加ではなく、自国通貨高による純輸出の減少を引き起こすため、選択肢の内容は不適切です

 

(d) 適切です。

「金融緩和政策」を行った場合に「財市場/IS曲線」と「資本市場(貨幣市場)/LM曲線」が変化していく流れ(途中まで)を以下に示します。

 

  1. 「金融緩和政策」により「LM曲線」が下方(右方)にシフトする
  2. 「国内利子率」が「国際利子率(rf)」よりも低くなるため「円売りドル買い(資本流出)」が発生する
  3. 「円売りドル買い(資本流出)」により「円安ドル高」となるため「輸出(EX)」が増加して「輸入(IM)」が減少する
  4. 「輸出(EX)」が増加して「輸入(IM)」が減少するため、「財市場」において「YD=C+I+G+EX-IM」で表される「総需要(YD)」が増加して「IS曲線」が右方にシフトする

 

したがって、金融緩和政策は、純輸出の増加を通じて、GDPを押し上げるため、選択肢の内容は適切です

 

(a)と(d)に記述されている内容が適切であるため、答えは(イ)です。


 

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