今回は、「事例Ⅲ ~令和2年度 解答例(1) 全体構成の理解~」について説明します。
目次
事例Ⅲ ~令和2年度試験問題一覧~
令和2年度のその他の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
全体構成の理解
事例Ⅰ~事例Ⅲの問題では、最初に、試験問題の全体像を把握して、それぞれの問題で与件文のどこを参考にして解答するかを考えることをお薦めします。
令和2年度の試験問題では「第1問」の「C社の弱み」を選択するのが非常に難しくなっています。
「創業からの事業変遷を理解した上で」「○○業界における」「○○面における」といった条件が一切なく単純に「C社の弱みを述べよ」と求められており、与件文全体から「C社の弱み」に該当する箇所を抽出しても、その数が多すぎてどれを選択すればよいのか分からないため、「第4問」まで解答した後、最後に「C社の弱み」を選択していくことになるのではないかと思います。
また、「第2問」と「第3問」の両方で、納期遅延に対する対策を求められているため、与件文から抽出した内容を「第2問」と「第3問」にどう振り分ければよいかが分かりづらい構成となっていますが、試験問題の全体像を把握してそれぞれの問題で求められていることの本質を理解すれば、割と簡単に振り分けることができたりします。(ただ、すごく時間がかかりますが。。。)
このように、最初に、試験問題の全体像を把握して、それぞれの問題で与件文のどこを参考にして解答するかを考えることが非常に重要です。
第1問
第1問(配点20点)
C社の(a)強みと(b)弱みを、それぞれ40字以内で述べよ。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
第1問では、ステンレス加工業C社の事業内容を把握し、C社の強みと弱みを分析する能力を問われています。
「事例Ⅲ」の第1問としてよくあるパターンの問題のように見えます。
しかし、過去の問題では「創業からの事業変遷を理解した上で」「○○業界における」「○○面における」といった条件が付いていましたが、今回の問題では、これらの条件が一切なく単純に「C社の強みと弱み」を求められています。
過去の問題では、与件文の「1ページ目」に記述されている【C社の概要】を中心に該当する文言を抽出していましたが、今回は与件文全体から「C社の強みと弱み」に該当する箇所を抽出しなければなりません。
実際に問題を解いてみると分かりますが、与件文から該当する箇所を抽出するのも大変ですし、抽出した内容から、どれを「C社の弱み」とするかが非常に難しいため「第4問」まで解答した後、根幹にある大きな問題を「C社の弱み」として選択していくのが良いのではないかと思います。
与件文で関連しそうな箇所
過去の問題では「創業からの事業変遷を理解した上で」「○○業界における」「○○面における」といった条件が付いていましたが、今回の問題では、これらの条件が一切なく単純に「C社の強みと弱み」を求められているため、与件文全体から「C社の強みと弱み」に該当する箇所を抽出する必要があります。
「C社の強み」は「1ページ目」の【C社の概要】から抽出することができますが「C社の弱み」となりそうな候補は、与件文全体に渡って記述されています。
問題文の中では、以下の部分が該当します。
第2問
第2問(配点40点)
C社の大きな悩みとなっている納期遅延について、以下の設問に答えよ。
(設問1)
C社の営業部門で生じている(a)問題点と(b)その対応策について、それぞれ60字以内で述べよ。
(設問2)
C社の製造部門で生じている(a)問題点と(b)その対応策について、それぞれ60字以内で述べよ。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
第2問では、納期遅延の発生に影響している営業部門と製造部門の問題点を整理し、その解決策を助言する能力を問われています。
営業部門については、与件文全体を見ても問題点とその対応策について記述されている箇所は少ないため、【業務プロセス】に記述されている内容を参考とすればよいと気付くことができると思います。
しかし、製造部門については、【業務プロセス】と【生産の現状】に数多くの問題点が記述されており、すべての記述が納期遅延に結び付いてしまうため、どれを採用して「第2問」の解答とすればよいのか判断するのが非常に難しくなっています。
私は、【業務プロセス】に記述されている製造部門の問題点を何度も読み返して、「第2問」では「複雑な形状など高度な加工技術が必要な製品」の納期遅延に対する対応策として「生産計画の作成方法の改善」を解答することとし、C社が製作する全ての製品を対象とした納期遅延に対する対応策については、「第3問」「第4問」の解答に盛り込むこととしました。
与件文で関連しそうな箇所
与件文では、2ページ全般と3ページの中盤に記述されています。
【業務プロセス】の「4段落目」に記述されている内容から「営業部門と製造部門で生じている問題点」を抽出していきます。
「営業部門で生じている問題点の対応策」については【業務プロセス】の「2段落目」に記述されている内容から解答を抽出していき、「製造部門で生じている問題点の対応策」については【生産の現状】の「3段落目」に記述されている「生産計画の作成方法」から解答を抽出していきます。
問題文の中では、以下の部分が該当します。
第3問
第3問(配点20点)
C社社長は、納期遅延対策として社内のIT化を考えている。C社のIT活用について、中小企業診断士としてどのように助言するか、120字以内で述べよ。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
第3問では、C社の納期遅延の対策に有効な社内のIT活用について、助言する能力を問われています。
「第2問」において、製造部門で生じている問題点の対応策として「生産計画の作成方法の改善」について解答しましたが、あくまで「複雑な形状など高度な加工技術が必要な製品」の納期遅延に対する対応策であり、C社が製作する全ての製品を対象とはしていません。
製造部長が作成している生産計画をシステム化して、C社が製作する全ての製品を対象とした問題点を解決することができれば、生産計画の精度がより向上すると考えられるため、C社が製作する全ての製品を対象とした問題点について記述されている箇所を抽出して、IT化を検討していきます。
なお、問題文に「納期遅延対策として社内のIT化を考えている」と記述されています。
納期遅延を根絶するためには生産計画だけでなく生産統制を強化する必要があるため「生産管理システム」にするべきか迷いましたが、与件文に記述されている内容を踏まえると「生産計画システム」の方がC社に対する提言として具体性が高まると考え、あえて「生産管理システム」ではなく「生産計画システム」として解答を検討することとしました。
また、IT化による改善を求められる際は、営業部門と製造部門で様々な情報をリアルタイムに共有するという内容を解答するパターンがよくありますので、今回も解答に使えそうな情報がないか確認していきます。
なお、IT化を進めるためには、あらかじめ業務プロセスが見直されて確立されていることが前提条件です。
「第1問」において「標準化が確立されておらず脆弱な業務プロセス」が「C社の弱み」であると解答していることも考慮すると、まずは業務プロセスの見直しを進める必要があることにも注意が必要です。
与件文で関連しそうな箇所
与件文では、2ページの後半と3ページ全般に渡って記述されています。
【業務プロセス】の「最終段落」に「納期遅延の根絶」に向けた全社的な改善活動の中で支援システムとしてIT化も検討していると記述されています。
IT化により改善すべき問題点については【生産の現状】に記述されている内容から抽出していきます。
問題文の中では、以下の部分が該当します。
第4問
第4問(配点20点)
C社社長は、付加価値の高いモニュメント製品事業の拡大を戦略に位置付けている。モニュメント製品事業の充実、拡大をどのように行うべきか、中小企業診断士として120字以内で助言せよ。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
第4問では、モニュメント事業の充実と拡大を狙うC社の戦略について、助言する能力を問われています。
まずは、「第3問」のIT活用で改善することができなかった以下3つの問題を漏らすことなく、解答に盛り込むようにします。
- 各作業チームの技術力に差があること
- 工場建屋の制約により、作業スペースの確保が難しいこと
- レイアウトの問題により、モノの移動に関連する作業が多いこと
また、「第1問」において「C社の弱み」とした(または弱み候補とした)にもかかわらず「第3問」までに触れられていない以下の問題についても、モニュメント事業の充実と拡大を狙うC社にとって改善すべきと考えられるため、解答に盛り込んでいくよう考えていきます。
- 工場建屋の制約から設置高さ7m以内の製品に限定されていること
- モニュメント製品は受注量の変動が大きいこと
与件文で関連しそうな箇所
「第3問」のIT活用で改善することができなかった以下3つの問題については「3ページ目」の【生産の現状】に記述されている内容から抽出していきます。
- 各作業チームの技術力に差があること
- 工場建屋の制約により、作業スペースの確保が難しいこと
- レイアウトの問題により、モノの移動に関連する作業が多いこと
「工場建屋の制約から設置高さ7m以内の製品に限定されていること」については「1ページ目」の【C社の概要】の「2段落目」に記述されている内容から、「モニュメント製品は受注量の変動が大きいこと」については「1ページ目」の【C社の概要】の「最終段落」に記述されている内容と「2ページ目」の【業務プロセス】の「2段落目」と「3段落目」に記述されている内容から抽出していきます。
問題文の中では、以下の部分が該当します。
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