事例Ⅳ ~令和2年度 解答例(9)(ROI:投下資本利益率)~

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令和2年度の事例Ⅳの「第4問(設問1・2)」に関する解答例(案)を説明していきます。

私なりの思考ロジックに基づく解答例(案)を以下に説明しますので、参考としてもらえればと思います。

 

目次

事例Ⅳ ~令和2年度試験問題一覧~

令和2年度のその他の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

第4問(設問1・2)

第4問(配点25点)

 

D社の報告セグメントに関する当期の情報(一部)は以下のとおりである。

 

(単位:百万円)
戸建住宅事業 飲食事業 その他 事業合計
売上高 4,330 182 43 4,555
セグメント利益 146 △23 △25 98
セグメント資産 3,385 394 65 3,844

※内部売上高および振替高はない。
※セグメント利益は営業利益ベースで計算されている。

 

D社では、戸建住宅事業における顧客満足度の向上に向けて、VR(仮想現実)を用い、設計した図面を基に、完成予定の様子を顧客が確認できる仕組みを次期期首に導入することが検討されている。ソフトウェアは400百万円で外部から購入し、5年間の定額法で減価償却する。必要な資金400百万円は銀行借り入れ(年利4%、期間5年)によって調達する予定である。このソフトウェア導入により、戸建住宅事業の売上高が毎年92百万円上昇することが見込まれている。以下の設問に答えよ。

 

(設問1)

(a)戸建住宅事業および(b)D社全体について、当期のROIをそれぞれ計算せよ。解答は、%で表示し、小数点第3位を四捨五入すること。

 

(設問2)

各事業セグメントの売上高、セグメント利益およびセグメント資産のうち、このソフトウェア導入に関係しない部分の値が次期においても一定であると仮定する。このソフトウェアを導入した場合の次期における戸建住宅事業のROIを計算せよ。解答は、%で表示し、小数点第3位を四捨五入すること。

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

考え方(第4問 設問1)

D社の報告セグメントに関する当期の情報に基づく「戸建住宅事業のROI」と「D社全体のROI」を求められています。

 

ROIを算出するために使用する各事業セグメントの投下資本については、与件文において以下の通り記述されています。

 

戸建住宅事業および飲食事業については、それぞれ担当取締役がおり、取締役の業績は各事業セグメントの当期ROI(投下資本営業利益率)によって評価されている。なお、ROIの算定に用いる各事業セグメントの投下資本として、各セグメントに帰属する期末資産の金額を用いている。

 

投下資本利益率(ROI:return on investment)

「投下資本利益率(ROI)」は、投下資本に対する利益の割合を示す指標のことをいいます。

今回の問題においては、与件文において「ROIの算定に各事業セグメントの投下資本として、各セグメントに帰属する期末資産の金額を用いている」と記述されているため、「投下資本利益率(ROI)」は以下の計算式により算出することができます。

 

  • 投下資本利益率(ROI) = セグメント利益 ÷ セグメント資産 × 100%

 

当期のROIの算出

「当期の戸建住宅事業のROI」と「当期のD社全体のROI」を算出します。

 

  • 当期の戸建住宅事業のROI
    = セグメント利益 ÷ セグメント資産 × 100%
    = 146 百万円 ÷ 3,385 百万円 × 100%
    = 4.3131・・・・%
    4.31%(小数点第3位を四捨五入)

 

  • 当期のD社全体のROI
    = セグメント利益 ÷ セグメント資産 × 100%
    = 98 百万円 ÷ 3,844 百万円 × 100%
    = 2.5494・・・・%
    2.55%(小数点第3位を四捨五入)

 

解答(第4問 設問1)

D社の報告セグメントに関する当期の情報に基づく「(a)戸建住宅事業」と「(b)D社全体」の当期のROIは以下の通りです。

 

(a) 4.31 (%)
(b) 2.55 (%)

 

考え方(第4問 設問2)

次期期首にソフトウェアを導入した場合に想定される「次期の戸建住宅事業のROI」を求められています。

 

売上高(※ 問題を解くためには必要ありません。)

次期期首にソフトウェアを導入した場合に想定される「次期の戸建住宅事業の売上高」を算出します。

 

ソフトウェア導入に関係しない部分

ソフトウェア導入に関係しない部分の「売上高」は、次期においても一定( 4,330 百万円 )です。

 

  • ソフトウェア導入に関係しない部分の売上高( + 4,330 百万円 )

 

ソフトウェア導入による部分

ソフトウェアを導入することにより、次期の「売上高」が92 百万円上昇すると想定されています。

 

  • ソフトウェア導入による部分の売上高( + 92 百万円 )

 

次期の戸建住宅事業の売上高

次期期首にソフトウェアを導入した場合に想定される「次期の戸建住宅事業の売上高」は以下の通りです。

 

項目 金額
ソフトウェア導入に関係しない部分の売上高(当期と同額) 4,330
ソフトウェア導入による部分の売上高 92
売上高(次期) 4,422

 

セグメント利益

次期期首にソフトウェアを導入した場合に想定される「次期の戸建住宅事業のセグメント利益」を算出します。

 

ソフトウェア導入に関係しない部分

ソフトウェア導入に関係しない部分の「セグメント利益」は、次期においても一定( 146 百万円 )です。

 

  • ソフトウェア導入に関係しない部分のセグメント利益( +146 百万円 )

 

ソフトウェア導入による部分

ソフトウェアを導入することにより、次期の売上高が92 百万円上昇して、80 百万円の減価償却費( 400 百万円 ÷ 5年 = 80 百万円 )が発生するため、その差額(12百万円)だけ「セグメント利益」が増加すると想定されています。

 

  • ソフトウェア導入による部分の売上高( + 92 百万円 )
  • 無形固定資産の減価償却( ▲80 百万円:400 百万円 ÷ 5年 )

 

なお、D社のセグメント利益は営業利益ベースで計算されているとの条件があるため、「営業外費用」である借入金に対する支払利息( 400 百万円 × 4% = 16 百万円 )はセグメント利益には含まれません

 

次期の戸建住宅事業のセグメント利益

次期期首にソフトウェアを導入した場合に想定される「次期の戸建住宅事業のセグメント利益」は以下の通りです。

 

項目 金額
ソフトウェア導入に関係しない部分のセグメント利益(当期と同額) 146
ソフトウェア導入による部分の売上高 92
ソフトウェア導入による部分の売上原価(無形固定資産の減価償却) ▲80
セグメント利益(次期) 158

 

セグメント資産

次期期首にソフトウェアを導入した場合に想定される「次期の戸建住宅事業のセグメント資産」を算出します。

 

ソフトウェア導入に関係しない部分

ソフトウェア導入に関係しない部分の「セグメント資産」は「セグメント利益」の金額( 146 百万円 )だけ増加すると想定されています。

 

  • ソフトウェア導入に関係しない部分のセグメント利益の増加( +146 百万円 )

 

ソフトウェア導入に関係しない部分のセグメント資産について

各社からの模範解答集において、この部分について様々な解釈があるようです。

次に説明しますが、ソフトウェア導入による部分の「セグメント資産」に、ソフトウェアを導入した場合に発生するセグメント利益相当額である「12 百万円(売上高-減価償却費)」が含まれていることを考えると、ソフトウェア導入に関係しない部分についても、次期のセグメント利益相当額である「146 百万円」を「セグメント資産」に含めるべきと判断しました。

 

ソフトウェア導入による部分

ソフトウェアを導入した場合、以下の取引により「セグメント資産」が増減すると想定されています。

 

  • 銀行からのソフトウェア購入資金の借り入れ( +400 百万円 )
  • ソフトウェアの購入( ▲400 百万円 )
  • ソフトウェアの無形固定資産化( +400 百万円 )
  • ソフトウェア導入による部分の売上高( + 92 百万円 )
  • 無形固定資産の減価償却( ▲80 百万円:400 百万円 ÷ 5年 )
  • 銀行への利息の支払い( ▲16 百万円:400 百万円 × 4% )

 

次期の戸建住宅事業のセグメント資産

次期期首にソフトウェアを導入した場合に想定される「次期の戸建住宅事業のセグメント資産」は以下の通りです。

 

項目 金額
セグメント資産(当期) 3,385
ソフトウェア導入に関係しない部分のセグメント利益による流動資産(現金預金など)の増加 146
銀行からのソフトウェア購入資金の借り入れによる流動資産(現金預金など)の増加 400
ソフトウェアの購入による流動資産(現金預金など)の減少 ▲400
ソフトウェアの無形固定資産化による固定資産(無形固定資産)の増加 400
ソフトウェア導入による部分の売上による流動資産(現金預金など)の増加 92
無形固定資産の減価償却による固定資産(無形固定資産)の減少 ▲80
銀行への利息の支払いによる流動資産(現金預金など)の減少 ▲16
セグメント資産(次期) 3,927

 

次期の戸建住宅事業のROIの算出

次期期首にソフトウェアを導入した場合に想定される「次期の戸建住宅事業のROI」を算出します。

 

  • 次期の戸建住宅事業のROI
    = セグメント利益 ÷ セグメント資産 × 100%
    158 百万円 ÷ 3,927 百万円 × 100%
    = 4.0234・・・・%
    4.02%(小数点第3位を四捨五入)

 

解答(第4問 設問2)

次期期首にソフトウェアを導入した場合に想定される「次期の戸建住宅事業のROI」は以下の通りです。

4.02 (%)

 


次回は、「事例Ⅳ ~令和2年度 解答例(10)(ROI:投下資本利益率)~」として「第4問(設問3)」について説明します。

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