今回は、「運営管理 ~R2-27 建築基準法(2)建築基準法~」について説明します。
目次
運営管理 ~令和2年度一次試験問題一覧~
令和2年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
建築基準法
「建築基準法」は、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、公共の福祉の増進に資することを目的として昭和25年に制定された法律であり、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準、建築確認、違反建築物に対する措置などを定めています。
建築基準法の一部を改正する法律(平成30年法律第67号)
最近発生した大規模火災や防火に関する技術開発の状況等を踏まえ、建築物・市街地の安全性の確保、既存建築ストックの活用、木造建築物に関する多様なニーズへの対応といった社会的要請に対応するため、平成30年に建築基準法の一部が改正されました。
背景
最近発生した大規模火災を防止するため、老朽化した木造建築物の建替え等により市街地の安全性を向上することや、建築物の適切な維持管理により安全性の確保を円滑に進めることが求められています。
また、増加傾向にある空き家を利活用する必要があるため、安全性を確保しながら既存建築ストックを有効活用する建築規制の合理化が求められています。
さらに、循環型社会を形成するために建築材料に木材を利用しながら、国土の保全や地域経済の活性化に貢献するため、建築物の木造・木質化に役立つように建築基準を合理化することが求められています。
法改正の概要
これらの社会的な背景に対応するために、改正された建築基準法の主な概要は以下の通りです。
- 建築物・市街地の安全性の確保
- 既存建築ストックの活用
- 木造建築に関する多様なニーズへの対応
建築物・市街地の安全性の確保
糸魚川市大規模火災(H28.12)や埼玉県三芳町倉庫火災(H29.2)などの大規模火災による甚大な被害の発生を踏まえ、建築物の適切な維持保全・改修等により、建築物の安全性の確保を図ることや、密集市街地の解消を進めることが課題とされています。
建築物・市街地の安全性の確保
維持保全計画に基づく適切な維持保全の促進等により、建築物の更なる安全性の確保を図るとともに、防火改修・建替え等を通じた市街地の安全性の確保を実現します。
- 維持保全計画の作成等が求められる建築物の範囲を拡大します。(大規模倉庫等を想定)
- 既存不適格建築物の所有者等に対する特定行政庁による指導及び助言を創設します。
- 防火地域・準防火地域(※1)内において、延焼防止性能の高い建築物の建蔽率(※2)を10%緩和します。
(※1)防火地域・準防火地域:市街地における火災の危険を防除するために定める地域
(※2)建ぺい率:建築物の建築面積の敷地面積に対する割合
既存建築ストックの活用
空き家の数は、この20年で1.8倍に増加しているため、用途変更等による空き家の利活用が極めて重要となっていますが、そのためには、建築基準法に適合させるために、大規模な工事が必要となることが課題とされています。
戸建住宅等の福祉施設等への用途変更に伴う制限の合理化
空き家等を福祉施設・商業施設等に用途変更する際に、大規模な改修工事を不要とするとともに、手続を合理化し、既存建築ストックの利活用を促進します。
- 戸建住宅等(延べ面積200㎡未満かつ階数3以下)を福祉施設等とする場合に、在館者が迅速に避難できる措置を講じることを前提に、耐火建築物等とすることを不要とします。
- 用途変更に伴って建築確認が必要となる規模を見直します。
(不要の規模上限を100㎡から200㎡に見直し)
大規模な建築物等に係る制限の合理化
既存建築ストックの多様な形での利活用を促進します。
- 既存不適格建築物を用途変更する場合に、段階的・計画的に現行基準に適合させていくことを可能とする仕組みを導入します。
- 新たに整備される仮設建築物と同様、既存建築物を一時的に特定の用途とする場合も制限を緩和します。
木造建築を巡る多様なニーズへの対応
必要な性能を有する木造建築物の整備の円滑化を通じて、木造建築に関する多様な消費者ニーズへの対応、地域資源を活用した地域振興を図ることが求められています。
木造建築物等に係る制限の合理化
中層木造共同住宅など木造建築物の整備を推進するとともに、防火改修・建替え等を促進します。
- 耐火構造等とすべき木造建築物の対象を見直します。
(高さ13m・軒高9m超→高さ16m超・階数4以上) - 上記の規制を受ける場合についても、木材をそのまま見せる(あらわし)等の耐火構造以外の構造を可能とするよう基準を見直します。
- 防火地域・準防火地域内において高い延焼防止性能が求められる建築物についても、内部の壁・柱等において更なる木材利用が可能となるよう基準を見直します。
その他
- 老人ホーム等の共用の廊下や階段について、共同住宅と同様に、容積率の算定基礎となる床面積から除外します。
- 興行場等の仮設建築物の存続期間(現行1年)を延長します。
- 用途制限等に係る特例許可手続を簡素化します。 等
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【令和2年度 第27問】
近年、空き家が増加傾向にある中で、住宅をそれ以外の用途(店舗等)に変更して活用することが求められている。また、木材を建築材料として活用することで、循環型社会の形成等が期待されている。そのため、建築物・市街地の安全性の確保および既存建築ストックの活用、木造建築を巡る多様なニーズへの対応を背景として、平成30年に建築基準法の一部が改正された(平成30年法律第67号)。
この改正された建築基準法に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 維持保全計画の作成等が求められる建築物の範囲が縮小された。
イ 既存不適格建築物の所有者等に対する特定行政庁による指導および助言が条文から削除された。
ウ 戸建住宅を、一定の要件(延べ面積200㎡未満など)を満たす小売店舗に用途変更する場合に、耐火建築物とすることが不要になった。
エ 耐火構造等とすべき木造建築物の対象が見直され、高さ16m超または地上階数4以上が含まれなくなった。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
平成30年に改正された建築基準法に関する知識を問う問題です。
「建築基準法」は、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、公共の福祉の増進に資することを目的として昭和25年に制定された法律であり、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準、建築確認、違反建築物に対する措置などを定めています。
最近発生した大規模火災や防火に関する技術開発の状況等を踏まえ、建築物・市街地の安全性の確保、既存建築ストックの活用、木造建築物に関する多様なニーズへの対応といった社会的要請に対応するため、平成30年に建築基準法の一部が改正されました。
改正された建築基準法の主な概要は以下の通りです。
- 建築物・市街地の安全性の確保
- 既存建築ストックの活用
- 木造建築に関する多様なニーズへの対応
(ア) 不適切です。
平成30年に改正された「建築物・市街地の安全性の確保」に関する記述です。
建築物・市街地の安全性の確保
糸魚川市大規模火災(H28.12)や埼玉県三芳町倉庫火災(H29.2)などの大規模火災による甚大な被害の発生を踏まえ、建築物の適切な維持保全・改修等により、建築物の安全性の確保を図ることや、密集市街地の解消を進めることが課題とされています。
建築物・市街地の安全性の確保
維持保全計画に基づく適切な維持保全の促進等により、建築物の更なる安全性の確保を図るとともに、防火改修・建替え等を通じた市街地の安全性の確保を実現します。
- 維持保全計画の作成等が求められる建築物の範囲を拡大します。(大規模倉庫等を想定)
- 既存不適格建築物の所有者等に対する特定行政庁による指導及び助言を創設します。
- 防火地域・準防火地域(※1)内において、延焼防止性能の高い建築物の建蔽率(※2)を10%緩和します。
(※1)防火地域・準防火地域:市街地における火災の危険を防除するために定める地域
(※2)建ぺい率:建築物の建築面積の敷地面積に対する割合
したがって、維持保全計画の作成等が求められる建築物の範囲が縮小されたのではなく拡大されたため、選択肢の内容は不適切です。
(イ) 不適切です。
平成30年に改正された「建築物・市街地の安全性の確保」に関する記述です。
建築物・市街地の安全性の確保
糸魚川市大規模火災(H28.12)や埼玉県三芳町倉庫火災(H29.2)などの大規模火災による甚大な被害の発生を踏まえ、建築物の適切な維持保全・改修等により、建築物の安全性の確保を図ることや、密集市街地の解消を進めることが課題とされています。
建築物・市街地の安全性の確保
維持保全計画に基づく適切な維持保全の促進等により、建築物の更なる安全性の確保を図るとともに、防火改修・建替え等を通じた市街地の安全性の確保を実現します。
- 維持保全計画の作成等が求められる建築物の範囲を拡大します。(大規模倉庫等を想定)
- 既存不適格建築物の所有者等に対する特定行政庁による指導及び助言を創設します。
- 防火地域・準防火地域(※1)内において、延焼防止性能の高い建築物の建蔽率(※2)を10%緩和します。
(※1)防火地域・準防火地域:市街地における火災の危険を防除するために定める地域
(※2)建ぺい率:建築物の建築面積の敷地面積に対する割合
したがって、既存不適格建築物の所有者等に対する特定行政庁による指導および助言が条文から削除されたのではなく新たに創設されたため、選択肢の内容は不適切です。
(ウ) 適切です。
平成30年に改正された「既存建築ストックの活用」に関する記述です。
既存建築ストックの活用
空き家の数は、この20年で1.8倍に増加しているため、用途変更等による空き家の利活用が極めて重要となっていますが、そのためには、建築基準法に適合させるために、大規模な工事が必要となることが課題とされています。
戸建住宅等の福祉施設等への用途変更に伴う制限の合理化
空き家等を福祉施設・商業施設等に用途変更する際に、大規模な改修工事を不要とするとともに、手続を合理化し、既存建築ストックの利活用を促進します。
- 戸建住宅等(延べ面積200㎡未満かつ階数3以下)を福祉施設等とする場合に、在館者が迅速に避難できる措置を講じることを前提に、耐火建築物等とすることを不要とします。
- 用途変更に伴って建築確認が必要となる規模を見直します。
(不要の規模上限を100㎡から200㎡に見直し)
したがって、戸建住宅を、一定の要件(延べ面積200㎡未満など)を満たす小売店舗に用途変更する場合に、耐火建築物とすることが不要になったため、選択肢の内容は適切です。
(エ) 不適切です。
平成30年に改正された「木造建築を巡る多様なニーズへの対応」に関する記述です。
木造建築を巡る多様なニーズへの対応
必要な性能を有する木造建築物の整備の円滑化を通じて、木造建築に関する多様な消費者ニーズへの対応、地域資源を活用した地域振興を図ることが求められています。
木造建築物等に係る制限の合理化
中層木造共同住宅など木造建築物の整備を推進するとともに、防火改修・建替え等を促進します。
- 耐火構造等とすべき木造建築物の対象を見直します。
(高さ13m・軒高9m超→高さ16m超・階数4以上) - 上記の規制を受ける場合についても、木材をそのまま見せる(あらわし)等の耐火構造以外の構造を可能とするよう基準を見直します。
- 防火地域・準防火地域内において高い延焼防止性能が求められる建築物についても、内部の壁・柱等において更なる木材利用が可能となるよう基準を見直します。
したがって、耐火構造等とすべき木造建築物の対象が見直され、高さ16m超または地上階数4以上が含まれなくなったのではなく、「高さ16m超・階数4以上」が含まれるようになったため、選択肢の内容は不適切です。
答えは(ウ)です。
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