今回は、「運営管理 ~R2-25 店舗立地と出店(2)商圏分析~」について説明します。
目次
運営管理 ~令和2年度一次試験問題一覧~
令和2年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
商圏分析 -リンク-
本ブログにて「商圏分析」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
商圏
「商圏」とは、小売店舗や集積の商業施設が顧客を吸引できる地理的範囲のことであり、潜在的に対象とする顧客が存在する地域のことをいいます。
「商圏」は物理的な距離だけではなく、交通事情、施設の規模、取扱商品の種類なども踏まえて把握する必要があります。
例えば、最寄品(日用品など)では「商圏」の範囲は狭くなり、買回品(高級品、専門品、選好品など)では「商圏」の範囲は広くなります。
また、インターネットが普及した現在は、インターネット販売などの業態では、物理的な制約が取り払われたため「商圏」の範囲が一気にグローバルに拡大しました。
商圏分析
「商圏分析」とは、店舗の集客範囲(商圏)を設定し、市場ボリュームや地域特性等に関する情報を収集して、出店戦略、販促戦略といった企業のマーケティング戦略を構築するための材料として利用することをいいます。
「商圏分析」には、「ライリーの法則」「ライリー&コンバースの法則」「コンバースの法則」などの手法があります。
ライリーの法則(小売引力の法則)
「ライリーの法則」とは、2つの都市(都市Aと都市B)がその間にある地域(X)から吸引する購買力の割合(獲得できる顧客の割合)が、その2つの都市の人口の比に比例し、距離の比の2乗に反比例するという法則のことをいいます。
2つの都市の人口の比に比例し、距離の比の2乗に反比例するということは、ある地域(X)から吸引する購買力は、町の人口よりも町までの距離の方が影響が大きいことを示しています。
なお、「ライリーの法則」は、買回品(高級品、専門品、選好品など)を対象とした法則です。
「ライリーの法則」の公式は以下の通りです。
公式を理解するために、公式の導出に関する考え方を以下に示します。
ライリー&コンバースの法則
「ライリー&コンバースの法則」とは、2つの都市(都市Aと都市B)の「商圏分岐点」を算出する方法のことをいいます。
「商圏分岐点」とは「ライリーの法則」において「Ba÷Bb=1」となる地点であり、2つの都市(都市Aと都市B)が吸引する購買力の割合(獲得できる顧客の割合)が「1:1」となる地点(X)を表しています。
「ライリー&コンバースの法則」の公式は以下の通りです。
公式を理解するために、公式の導出に関する考え方を以下に示します。
コンバースの法則(新小売引力の法則)
「コンバースの法則」とは、大都市Aと近傍の小都市Bにおける購買力の吸引に関する法則であり、買回品(高級品、専門品、選好品など)を対象とした法則です。
上記を読んでも意味が分かりにくいですが、大都市Aと小都市Bの2つの都市があるとした場合、小都市Bにおける購買力の中で大都市Aに吸引されてしまう購買力(小都市の顧客が大都市に出かけて買い物してしまうこと)と小都市Bに残る購買力(小都市の顧客が小都市で買い物すること)の割合を算出する方法です。
なお、「コンバースの法則」は、買回品(高級品、専門品、選好品など)を対象とした法則です。
「コンバースの法則」の公式は以下の通りです。
公式における「4」という数字は「慣性因子」といいます。
コンバースがアメリカ合衆国の100 以上の小都市における流行品の買物行動を調査して導き出した統計的な数値であり、必ずしもすべてのケースに適用できる数値とは限りません。
公式を理解するために、公式の導出に関する考え方を以下に示します。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【令和2年度 第25問】
A市とB市との2つの市の商圏分岐点を求めたい。
下図で示す条件が与えられたとき、ライリー&コンバースの法則を用いて、B市から見た商圏分岐点との距離を求める場合、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
[解答群]
ア 2.5 km
イ 3 km
ウ 5 km
エ 7.5 km
オ 10 km
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
「商圏分岐点」に関する知識を問う問題です。
「ライリー&コンバースの法則」とは、2つの都市(都市Aと都市B)の「商圏分岐点」を算出する方法のことをいいます。
「商圏分岐点」とは「ライリーの法則」において「Ba÷Bb=1」となる地点であり、2つの都市(都市Aと都市B)が吸引する購買力の割合(獲得できる顧客の割合)が「1:1」となる地点(X)を表しています。
「ライリー&コンバースの法則」の公式は以下の通りです。
公式を理解するために、公式の導出に関する考え方を以下に示します。
「ライリー&コンバースの法則」の公式を用いて、「B市から見た商圏分岐点との距離」を算出します。
なお、問題文で与えられている「失業率」は、商圏分岐点を算出するためには必要のない情報であり、ダミーデータです。
- B市から見た商圏分岐点(Db)
= A市とB市の距離(Dab)÷( 1 + √ A市の人口(Pa)÷ B市の人口(Pb))
= 15km ÷( 1 + √ 48万人 ÷ 12万人 )= 15km ÷( 1 + 2 )= 5km
ちなみに、「ライリー&コンバースの法則」の公式を用いて、「A市から見た商圏分岐点との距離」は以下の通りです。
- A市から見た商圏分岐点(Da)
= A市とB市の距離(Dab)÷( 1 + √ B市の人口(Pb)÷ A市の人口(Pa))
= 15km ÷( 1 + √ 12万人 ÷ 48万人 )= 15km ÷( 1 + 0.5 )= 10km
つまり、A市とB市の距離は「15km」あり、2つの都市の商圏分岐点は、A市から見て「10km」、B市から見て「5km」の場所に位置しているということを意味しています。
答えは(ウ)です。
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