今回は、「運営管理 ~R2-6 QC手法(5)ヒストグラム~」について説明します。
目次
運営管理 ~令和2年度一次試験問題一覧~
令和2年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
QC7つ道具
「QC7つ道具」とは、生産現場の品質改善活動で活用できるように、様々な統計的手法が工夫され簡便化されたツールのことをいいます。
- パレート図
- ヒストグラム
- 散布図
- 管理図
- 特性要因図
- チェックシート
- 層別
ヒストグラム
「ヒストグラム」は、データの分布状態(バラツキ)を把握するために活用される統計グラフの一種であり、データが発生する全ての範囲を等間隔に区分して、各区間に入るデータの度数を棒グラフで表します。
中心データの度数が高く、データ全体の範囲が狭い場合は、バラツキが少なく安定していることを示しており、中心データの度数が低く、データ全体の範囲が広い場合は、バラツキが大きく不安定であることを示しています。
ヒストグラムの分布形状
「ヒストグラム」は、中心付近が最も高く、中心から離れるほど低くなる左右対称の「つり鐘型」が理想ですが、実際には、様々な形状のものがあります。
「ヒストグラム」は、その形状により「つり鐘型」「櫛歯型」「すそ引き型」「絶壁型」「ふた山型」「高原型」「離れ小島型」に分類されます。
つり鐘型
「つり鐘型」とは、分布が左右対称で、中心付近の度数が最も高く、中心から離れていくについて度数が減少していく形状のことをいいます。
「つり鐘型」は、工程が安定状態にある場合に現れる形状です。
くし歯型
「くし歯型」とは、中心から離れていくについて度数が増減しながら徐々に減少していく形状のことをいいます。
「くし歯型」は、目盛りの設定や測定に誤りの可能性がある場合に現れる形状です。
すそ引き型
「すそ引き型」とは、分布が左右非対称で、中心よりも右端(または左端)にずれており、片方は中心から離れていくについて緩やかに、もう片方は急激に度数が減少していく形状のことをいいます。
「すそ引き型」は、片側に制限がある場合に現れる形状です。
絶壁型
「絶壁型」とは、分布が左右非対称で、極端に右端(または左端)にずれており、右側(または左端)が絶壁のように切れている形状のことをいいます。
「絶壁型」は、規格に収まっていない製品を全て選別して取り除いた場合に現れる形状です。
ふた山型
「ふた山型」とは、中心付近が凹み、左右に山がある形状のことをいいます。
「ふた山型」は、平均値の異なる2つの分布が混在している場合に現れる形状であり、加工品質に差のある2台の機械により生産された場合、技術レベルが異なる2人の作業者により生産された場合などが原因として考えられるため、層別したヒストグラムを作成して原因を分析する必要があります。
高原型
「高原型」とは、中心から離れても度数が減少せず山全体が膨らんでいる形状のことをいいます。
「高原型」は、平均値の異なる複数の分布が混在している場合に現れる形状であり、「ふた山型」と同様に層別したヒストグラムを作成して原因を分析する必要があります。
離れ小島型
「離れ小島型」とは、「つり鐘型」の分布から離れた位置に小島がある形状のことをいいます。
「離れ小島型」は、本来の正常な分布である「つり鐘型の分布」から離れた位置に異なった分布が僅かに混入した場合に現れる形状であり、機械の調整ミスや破損等により本来とは異なる分布が現れた場合などが原因として考えられるため、工程に異常がないか、測定に誤りがないか、他の工程のデータが混入していないかなどについて調査を行う必要があります。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【令和2年度 第6問】
工場での加工品の長さを測定して、そのヒストグラムを作成した結果、下図の①~③が得られた。その原因を調べたところ、おのおのについて以下のa~cの事実が明らかになった。
【原因】と【結果】の組み合わせとして、最も適切なものを次ページの解答群から選べ。
【原因】
a 2つの機械で生産した加工品が混合していた。
b 規格を超えている加工品について手直しをしていた。
c 一部の工具に破損が見られた。
【結果】
[解答群]
ア aと① bと② cと③
イ aと① bと③ cと②
ウ aと② bと③ cと①
エ aと③ bと① cと②
オ aと③ bと② cと①
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
「QC7つ道具」である「ヒストグラム」に関する知識を問う問題です。
「ヒストグラム」は、データの分布状態(バラツキ)を把握するために活用される統計グラフの一種であり、データが発生する全ての範囲を等間隔に区分して、各区間に入るデータの度数を棒グラフで表します。
中心データの度数が高く、データ全体の範囲が狭い場合は、バラツキが少なく安定していることを示しており、中心データの度数が低く、データ全体の範囲が広い場合は、バラツキが大きく不安定であることを示しています。
① ふた山型
「ふた山型」とは、中心付近が凹み、左右に山がある形状のことをいいます。
「ふた山型」は、平均値の異なる2つの分布が混在している場合に現れる形状であり、加工品質に差のある2台の機械により生産された場合、技術レベルが異なる2人の作業者により生産された場合などが原因として考えられるため、層別したヒストグラムを作成して原因を分析する必要があります。
② 離れ小島型
「離れ小島型」とは、「つり鐘型」の分布から離れた位置に小島がある形状のことをいいます。
「離れ小島型」は、本来の正常な分布である「つり鐘型の分布」から離れた位置に異なった分布が僅かに混入した場合に現れる形状であり、機械の調整ミスや破損等により本来とは異なる分布が現れた場合などが原因として考えられるため、工程に異常がないか、測定に誤りがないか、他の工程のデータが混入していないかなどについて調査を行う必要があります。
③ 絶壁型
「絶壁型」とは、分布が左右非対称で、極端に右端(または左端)にずれており、右側(または左端)が絶壁のように切れている形状のことをいいます。
「絶壁型」は、規格に収まっていない製品を全て選別して取り除いた場合に現れる形状です。
問題文で与えられた「結果(ヒストグラム)」と「原因」の組み合わせは以下の通りです。
形状 | 原因 | |
① | ふた山型 | a 2つの機械で生産した加工品が混合していた。 |
② | 離れ小島型 | c 一部の工具に破損が見られた。 |
③ | 絶壁型 | b 規格を超えている加工品について手直しをしていた。 |
「aと①」「bと③」「cと②」の組み合わせとなるため、答えは(イ)です。
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