今回は、「財務・会計 ~R2-1 売上原価の計算(6)商品勘定~」について説明します。
目次
財務・会計 ~令和2年度一次試験問題一覧~
令和2年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
売上原価の計算 -リンク-
本ブログにて「売上原価の計算」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- R5-1 売上原価の計算(7)移動平均法
- R1-1 売上原価の計算(5)商品有高帳
- H28-1 売上原価の計算(1)商品有高帳
- H27-1 売上原価の計算(2)商品勘定
- H24-2 売上原価の計算(3)商品有高帳
- H22-4 売上原価の計算(4)商品有高帳
棚卸資産の評価 -リンク-
「棚卸資産の評価」については、過去にも説明していますので、以下のページにもアクセスしてみてください。
商品勘定による売上原価の算出
「当期に販売された商品の価額」である売上原価は、商品勘定において「期首における商品残高」と「当期に仕入れた商品の価額」の合計金額から、「期末における商品残高」を差し引いて求めることができます。
棚卸資産(期末における商品)の評価
「商品」は棚卸資産に区分され、期末の棚卸において「実際の在庫の数量(実地数量)」や「在庫の価値(正味売却価額)」により算出した価額が「帳簿上の価額(簿価切下前)」よりも低くなっている場合は、「実際の在庫の数量(実地数量)」や「在庫の価値(正味売却価額)」により算出した価額を「商品(棚卸資産)」の貸借対照表価額とし(低価法)、その差額は、「棚卸減耗費」と「商品評価損」という勘定科目に計上して、費用として処理を行います。
棚卸減耗費と商品評価損
「棚卸減耗費」と「商品評価損」の説明を、以下に示します。
- 棚卸減耗費
「棚卸減耗費」は、数量不一致を表しており、帳簿上の商品の数量(帳簿数量)と実際の商品の数量(実地数量)の差分で求められます。 - 商品評価損
「商品評価損」は、商品の価値低下を表しており、実際に存在する商品の貸借対照表価額(簿価切下前)と正味売却価額の差分で求められます。
棚卸減耗費と商品評価損のイメージ図
「棚卸減耗費」と「商品評価損」については、以下の図で覚えておくことをお薦めします。
全体の大きな四角が、「貸借対照表価額(簿価切下前)」を示しており、「棚卸資産減耗費(赤色四角)」と「商品評価損(緑色四角)」で評価した結果が、「貸借対照表価額(切り下げ後)(青色四角)」となります。
棚卸減耗費と商品評価損の表示区分
損益計算書における「棚卸減耗費」と「商品評価損」の表示区分を以下に示します。
若干の言葉の定義は異なりますが、「棚卸減耗費」と「商品評価損」共に、毎期発生するような一般的な理由によるか、突発的に発生するような臨時的な理由によるかで、表示区分が異なってきます。
項目 | 条件 | 損益計算書の 表示区分 |
棚卸減耗費 | 原価性あり (毎期発生するような正常な範囲) |
売上原価 販売費 |
原価性なし (臨時の事象により発生した異常な範囲) |
営業外費用 特別損失 |
|
商品評価損 | 原則 | 売上原価 |
臨時の事象に起因し、かつ多額な場合 (重要な事業部門の廃止、災害損失の発生) (簿価切下額の戻入れは不可) |
特別損失 |
棚卸減耗費と商品評価損の仕訳
「棚卸減耗費」と「商品評価損」を計上する場合の仕訳を以下に示します。
貸方の「棚卸資産」には、貸借対照表価額を「正味売却価額」に変更する勘定科目が入ります。
借方 | 貸方 | ||
棚卸減耗費 商品評価損 |
10,000 20,000 |
棚卸資産(商品、製品、仕掛品など) | 30,000 |
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【令和2年度 第1問】
以下の資料に基づき、当期の売上原価として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
【資 料】
期首商品棚卸高 100,000円
当期商品純仕入高 750,000円
期末商品棚卸高
帳簿棚卸数量 実地棚卸数量 原価 正味売却価額 A商品 120 個 110 個 @ 1,200 円 @ 1,000 円 B商品 80 個 70 個 @ 1,000 円 @ 1,100 円 なお、棚卸減耗損および商品評価損はすべて売上原価に含める。
[解答群]
ア 626,000円
イ 648,000円
ウ 663,000円
エ 670,000円
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
商品勘定により売上原価を算出する問題です。
商品勘定による売上原価の算出
「当期に販売された商品の価額」である売上原価は、商品勘定において「期首における商品残高」と「当期に仕入れた商品の価額」の合計金額から、「期末における商品残高」を差し引いて求めることができます。
問題で期末商品の「実地棚卸数量」や「正味売却価額」が与えられているということは「棚卸減耗費」や「商品評価損」が発生すると想定されますが、「棚卸減耗損および商品評価損はすべて売上原価に含める」と記述されているため、「棚卸減耗費」や「商品評価損」を実際に算出しなくても「期末における商品残高」さえ算出できれば「売上原価」を求めることができます。
期末商品棚卸高の算出
「商品」は棚卸資産に区分され、期末の棚卸において「実際の在庫の数量(実地数量)」や「在庫の価値(正味売却価額)」により算出した価額が「帳簿上の価額(簿価切下前)」よりも低くなっている場合は、「実際の在庫の数量(実地数量)」や「在庫の価値(正味売却価額)」により算出した価額を「商品(棚卸資産)」の貸借対照表価額とし(低価法)、その差額は、「棚卸減耗費」と「商品評価損」という勘定科目に計上して、費用として処理を行います。
- 「棚卸減耗費」は、数量不一致を表しており、帳簿上の商品の数量(帳簿数量)と実際の商品の数量(実地数量)の差分で求められます。
- 「商品評価損」は、商品の価値低下を表しており、実際に存在する商品の貸借対照表価額(簿価切下前)と正味売却価額の差分で求められます。
「A商品」については「棚卸減耗費」と「商品評価損」が発生しますが、「B商品」については、「帳簿上の価額(原価)」よりも「正味売却価額」の方が高値となっているため、「商品評価損」は発生しません。
「A商品」と「B商品」の「期末棚卸高(貸借対照表価額)」のイメージは以下の通りです。
問題で与えられた数値に基づき、「期末商品棚卸高」を算出します。
価額 | 数量 | 期末商品棚卸高 | |
A商品 | @ 1,000 円 | 110 個 | 110,000 |
B商品 | @ 1,000 円 | 70 個 | 70,000 |
合計 | 180,000 |
売上原価の算出
「期首商品棚卸高」と「当期商品純仕入高」の合計金額から「期末商品棚卸高」を差し引いて、「売上原価」を算出します。
- 売上原価 = 期首商品棚卸高 + 当期商品純仕入高 - 期末商品棚卸高
= 100,000円 + 750,000円 - 180,000円 = 670,000円
「商品勘定」は以下の通りです。
今回の問題を解くためには必要ありませんが、参考として「棚卸減耗費」と「商品評価損」を算出してみます。
棚卸減耗損(参考)
「A商品」と「B商品」の「棚卸減耗費」は以下の通りです。
- 棚卸減耗費 = 原価 ×(帳簿棚卸数量-実地棚卸数量)
- 棚卸減耗費(A商品)= 1,200円 ×( 120個 - 110個 )= 12,000円
- 棚卸減耗費(B商品)= 1,000円 ×( 80個 - 70個 )= 10,000円
商品評価損(参考)
「A商品」と「B商品」の「商品評価損」は以下の通りです。
なお、「B商品」については、「帳簿上の価額(原価)」よりも「正味売却価額」の方が高値となっているため、「商品評価損」は発生しません。
- 商品評価損 =( 原価 - 正味売却価額 )× 実地棚卸数量
- 商品評価損(A商品)=( @1,200円 - @1,000円 )× 110個 = 22,000円
- 商品評価損(B商品): 原価 < 正味売却価額 のため、商品評価損は発生しません。
商品勘定(棚卸減耗費/商品評価損を表示した場合)(参考)
「棚卸減耗費」と「商品評価損」も表示した場合の「商品勘定」は以下の通りです。
時間がある方は「H27-1 売上原価の計算(2)商品勘定」も併せて確認してみてください。
答えは(エ)です。
コメント