事例Ⅲ ~令和元年度 解答例(6)(第4問)~

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今回は、「事例Ⅲ ~令和元年度 解答例(6)(第4問)~」について説明します。

 

目次

事例Ⅲ ~令和元年度試験問題一覧~

令和元年度のその他の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

主要顧客への売上依存

「主要顧客への売上依存」は「事例Ⅱ」でよく出題される内容です。

「主要顧客への売上依存」は、継続的に安定した受注を見込むことができるため一定の売上高を確保することができるというメリットがありますが、企業全体が主要顧客に依存する体質となり、新規顧客を開拓したり新商品を開発する必要性が薄れてしまうため、営業力が弱くなったり商品開発力が弱くなるといったデメリットも多数あります。

また、主要顧客の業績悪化や経営方針の変更などの理由によって、取引量が減少したり、取引自体が中止となってしまう可能性も考えておかなければなりません。

中小企業にとって、売上高の多くを依存している主要顧客からの取引中止は死活問題へと直結してしまうため、そうなる前に「主要顧客への売上依存」から脱却する対策を講じる必要があります。

 

主要顧客への売上依存によるメリットとデメリット

主要顧客への売上依存による「メリット」と「デメリット」を以下に示します。

 

メリット

 

  • 継続的な受注により、安定した売上を上げることができる。
  • 大口取引先からの注文対応に集中すればよいため、経営資源の有効活用ができる。

 

デメリット

 

  • 大口取引先の業績悪化や方針の変更などの理由によって、取引量が減少したり、取引自体が中止となる恐れがある。
  • 大口取引先との取引が中止となった場合、売上高の多くを失うこととなり経営破綻に直結する恐れがあるなど経営リスクが高い
  • 新規顧客開拓や提案型の営業を行う必要性が薄れてしまうため、待ち受け型の営業スタイルとなってしまい営業力が低下する。
  • 新商品を開発する必要性が薄れてしまうため、商品の開発力が低下する。
  • 大口顧客に売上を依存していることを弱みとして利用され、値引き要求などに対する交渉力が低下する。
  • 取引量が増加していることを理由としたボリュームディスカウントにより利益率が低下する。
  • 取引量が増加していることを理由に、大口取引先から売上代金の支払条件を緩和させられるなど、売上債権を回収するまでの期間が長くなり資金繰りが厳しくなる

 

第4問

第4問(配点20点)

 

新工場が稼働した後のC社の戦略について、120字以内で述べよ。

 

解答の方向性

第4問では、新工場が稼働した後のC社の戦略を提言する能力を問われています。

 

C社は、自動車部品メーカーX社からの機械加工の受託生産に応じるために、新工場の建設や工作機械の導入に多額の投資を実施するため、新工場が稼働した後は、それらの設備や仕組みをどのように活用して収益性を高めていくかという観点で戦略を考えていく必要があります。

新工場の設備や仕組みを活用して収益性を高めるためには、X社以外の生産活動についてもコスト削減を図るか、または売上を拡大するかの2通りの方向性が考えられます。なお、売上を拡大する場合は、そのターゲットを選定して解答に盛り込んでいきます。

 

与件文で関連しそうな箇所

与件文では、1ページ目に記述されている「企業概要」の最初の段落と最後の段落、および3ページ目の「自動車部品機械加工の受託生産計画」に記述されています。

 

「企業概要」の最初の段落にはC社の組織編制が記述されており、最後の段落にはC社の売上構成が記述されています。ちなみに、C社の組織編制については、新規顧客を獲得するという戦略を取る場合に必要となる営業組織が存在するか否かを確認するだけです。

今回の問題では、新工場が稼働した後のC社の戦略を求められているため、「自動車部品機械加工の受託生産計画」において、新工場がどのような方針のもとで建設されたのかという観点を中心に確認していきます。

 

問題文の中では、以下の部分が該当します。

 

詳細に示すと以下の通りとなります。

 

  • C社は、輸送用機械、産業機械、建設機械などに用いられる金属部品の製造業を顧客に、金属熱処理および機械加工を営む。資本金6千万円、従業員数40名、年商約5億円の中小企業である。組織は、熱処理部、機械加工部、設計部、総務部で構成されている。
    ⇒C社の組織には「営業部」が存在しません。新規顧客を獲得するという戦略を取る場合は、営業部を設置して営業力を強化する必要があると考えられます。

 

  • その後X社の増産計画により、自動車部品専用の熱処理工程を増設し、それによってC社売上高に占めるX社の割合は約20%までになっている。
    ⇒自動車部品メーカーX社からの機械加工の受託生産に応じる前の段階で、C社売上高に占めるX社の割合は約20%となっているため、新工場を建設して機械加工の受託生産に応じた場合、C社売上高に占めるX社の割合はさらに増加することとなります
    「主要顧客への売上依存」は、「事例Ⅱ」でよく出題される内容であり、継続的に安定した受注を見込むことができるため一定の売上高を確保することができるというメリットがありますが、企業全体が主要顧客に依存する体質となり、新規顧客を開拓したり新商品を開発する必要性が薄れてしまうため、営業力が弱くなったり商品開発力が弱くなるといったデメリットも多数あります。
    また、主要顧客の業績悪化や経営方針の変更などの理由によって、取引量が減少したり、取引自体が中止となってしまう可能性も考えておかなければなりません。
    中小企業にとって、売上高の多くを依存している主要顧客からの取引中止は死活問題へと直結してしまうため、顧客への売上依存が高くなりすぎないよう、新規顧客を獲得する戦略を取る必要があります。
    ⇒C社には「自動車部品専用の熱処理工程」を増設してX社の売上を伸ばしてきた背景があることから、C社には自動車部品業界におけるノウハウが多く蓄積されていると考えられます。今回建設する「量産の機械加工ができる新工場」と「自動車部品専用の熱処理工程」を組み合わせれば、自動車部品メーカーの新規顧客を獲得することができそうと考えられます。

 

  • 外注かんばんの電子データ化などのシステム構築は、X社の全面支援によって行われる予定となっているが、確定受注情報となる外注かんばんの社内運用を進めるためには、C社内で生産管理の見直しが必要になる。この後工程引取方式は、X社自動車部品の機械加工工程および自動車部品専用の熱処理工程に限定した運用範囲とし、その他の加工品については従来同様の生産計画立案と差立方法で運用する計画である。
    ⇒後工程引取方式は、X社自動車部品の機械加工工程および自動車部品専用の熱処理工程に限定した運用範囲とすると記述されているため、新工場が稼働した後に、後工程引取方式の運用範囲を拡大するという戦略を取るのも非常に魅力的ですが、「外注かんばんの電子データ化などのシステム構築は、X社の全面支援によって行われている」ため、C社が単独でその運用範囲を拡大するのは難しいように感じられます。
    仮に、運用範囲を拡大するためにシステムの追加構築を実施するとした場合は追加投資が発生してしまいます。C社としては自動車部品メーカーX社からの機械加工の受託生産に応じるために、新工場の建設や多額の工作機械の購入に莫大な投資を行っている状況を考えると、さらなる投資が発生する運用範囲の拡大は実施すべきではないと考えられます。
    したがって、新工場が稼働した後のC社の戦略としては「追加投資は実施しない」前提で考え、後工程引取方式の運用範囲の拡大は採用しないこととします。

 

  • X社の受託生産部品だけの生産をする専用機化・専用ライン化にするのではなく、将来的にはX社向け自動車部品以外の量産の機械加工ができる新工場にする。
    ⇒「C社社長の新工場計画についての方針」の中で、新工場はX社向け自動車部品以外の量産の機械加工についても対応できるようにすると記述されています。
    X社以外の新規顧客の部品の機械加工にも対応できることから、量産の機械加工ができる新工場を活用して新規顧客を獲得することができそうです。

 

新工場が稼働した後の戦略

「新工場が稼働した後の戦略」の材料となりそうな箇所を以下に示します。

 

  • 工場の建設や多額の工作機械の購入に莫大な投資を行っている状況を考えると、さらなる追加投資は発生しないようにする。
  • 主要顧客への売上依存が高くなりすぎないよう新規顧客を獲得する。
  • 量産の機械加工ができる新工場と自動車部品専用の熱処理設備を組み合わせて、自動車部品メーカーの新規顧客を獲得する。
  • 新規顧客を獲得するという戦略を取る場合は、営業部を設置して営業力を強化する必要がある。

 

文章を1つにまとめます。

 

  • 新工場が稼働した後のC社の戦略は、営業部を設置するなど営業力の強化を図り、量産の機械加工ができる新工場と自動車部品専用の熱処理設備を組み合わせて、自動車部品メーカーの新規顧客を獲得して、さらなる追加投資は発生しないようにしながら、主要顧客への売上依存が高くなりすぎないように、事業を拡大することである。(149文字)

 

文章が長すぎるため、簡潔にします。

 

  • C社の戦略は、営業部を設置するなど営業力の強化を図り、量産の機械加工ができる新工場と自動車部品専用の熱処理設備を活用して自動車部品メーカーの新規顧客を獲得することによって、設備の追加投資とX社への売上依存を抑えながら事業を拡大することである。(120文字)

 

解答例

ここまでに整理してきた内容に基づき、120文字以内にまとめます。

 

C社の戦略は、営業部を設置するなど営業力の強化を図り、量産の機械加工ができる新工場と自動車部品専用の熱処理設備を活用して自動車部品メーカーの新規顧客を獲得することによって、設備の追加投資とX社への売上依存を抑えながら事業を拡大することである。(120文字)

 

事例Ⅰ~事例Ⅲは正解のない試験なので、あくまで解答例として参考にしてもらえればと思います。

 


 

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