今回は、「運営管理 ~H28-24 消防法(1)小売店舗の防火管理~」について説明します。
目次
運営管理 ~平成28年度一次試験問題一覧~
平成28年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
消防法 -リンク-
本ブログにて「消防法」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
消防法
「消防法」とは、昭和23年に制定された法律であり、火災を予防・警戒・鎮圧し、国民の生命・身体・財産を火災から保護するとともに、火災・地震などの災害による被害を軽減するほか、災害等による傷病者の搬送を適切に行うことにより、社会秩序を保持し、公共の福祉の増進に資することを目的として、火災の予防・警戒・調査、消防設備、消火活動、救急業務、危険物の取り扱いなどを規定しています。
建物の分類
「消防法」において「防火対象物」は「山林又は舟車、船きよ若しくはふ頭に繋留された船舶、建築物その他の工作物若しくはこれらに属する物」と定義されています。
ちなみに、「舟車」とは「船舶安全法第二条第一項の規定を適用しない船舶、端舟、はしけ、被曳船その他の舟及び車両をいう」と定義されています。
さらに、「防火対象物」は、「消防法施行令別表第1」において不特定多数の人が利用する「特定防火対象物」と特定の人が利用する「非特定防火対象物」に分類されています。
- 特定防火対象物
不特定多数の人が利用する用途の防火対象物 - 非特定防火対象物
特定の人が利用する用途の防火対象物
特定防火対象物
「消防法施行令別表第1」に定められた、不特定多数の人が利用する「特定防火対象物」を以下に示します。
- 劇場、映画館、演芸場又は観覧場
- 公会堂又は集会場
- キャバレー、カフェー、ナイトクラブその他これらに類するもの
- 遊技場又はダンスホール
- 性風俗関連特殊営業を営む店舗その他これらに類するもの
- カラオケボックス等
- 待合、料理店その他これらに類するもの
- 飲食店
- 百貨店、マーケットその他の物品販売業を営む店舗又は展示場
- 旅館、ホテル、宿泊所その他これらに類するもの
- 病院、診療所又は助産所
- 老人短期入所施設、特別養護老人ホーム、乳児院、知的障害者施設等
- 老人デイサービスセンター、老人福祉センター、保育所、通所による障害者支援施設等
- 幼稚園又は特別支援学校
- 公衆浴場のうち、蒸気浴場、熱気浴場その他これらに類するもの
- 上記の特定用途を含む複合用途防火対象物
- 地下街
- 準地下街
非特定防火対象物
「消防法施行令別表第1」に定められた、特定の人が利用する「非特定防火対象物」を以下に示します。
- 寄宿舎、下宿又は共同住宅
- 小学校、中学校、高等学校、高等専門学校、大学、専修学校、各種学校その他これらに類するもの
- 図書館、博物館、美術館その他これらに類するもの
- 特定防火対象物以外の公衆浴場
- 車輌の停車場、船舶、航空機の発着場(旅客の乗降・待合の用に供する建築物に限る)
- 神社、寺院、教会その他これらに類するもの
- 工場又は作業場
- 映画スタジオ又はテレビスタジオ
- 自動車車庫又は駐車場
- 飛行機又は回転翼航空機の格納庫
- 倉庫
- 重要文化財、重要有形民俗文化財、史跡、重要美術品として認定された建造物
- 延長50メートル以上のアーケード
- 市町村長の指定する山林
- 総務省令で定める舟車
消防設備
「消防設備」とは、消防法や関係政令で規定する「消防の用に供する設備、消防用水及び消火活動上必要な施設」 のことをいい、「消火設備」「警報設備」「避難設備」「消防活動用設備」に分類されます。「消防法」で対象と定められている建物では、これらの「消防設備」を基準に従って設置しなければなりません。
消火設備
「消火設備」とは、水や消火剤を用いて消火を行う機械器具や設備のことをいいます。
- 消火器
- 屋内・屋外消火栓設備
- スプリンクラー設備
- 泡消火設備
- ガス系消火設備
- 粉末消火設備など
警報設備
「警報設備」とは、火災などを通報するために設置しなければならない感知・警報・通報設備のことをいいます。
- 自動火災報知設備
- ガス漏れ火災警報設備
- 漏電火災警報器
- 火災通報装置
- 非常警報器具および非常警報設備など
避難設備
「避難設備」とは、火災などの災害が発生したときに避難のために使われる機械器具や設備のことをいいます。
- 避難器具(はしご、救助袋)
- 誘導灯及び誘導標識
- 非常用照明など
消防活動用設備
「消防活動用設備」とは、消防隊が消火活動の際に利便を与えることを主眼として設置する設備のことをいいます。
- 排煙設備
- 連結送水管
- 無線通信補助設備など
消防設備の点検と報告
「消防設備」は、ただ単に設置するだけでなく、いざという時に正常に動作するよう適切に維持管理することが非常に重要であるため、「消防法」において「消防設備」の定期点検の実施と点検結果の報告について定められています。
定期点検の実施
「消防設備点検」には「機器点検(6ヶ月に1回)」と「総合点検(1年に1回)」があります。
また、「特定防火対象物」においては、通常の「消防設備点検」に加えて「防火対象物点検(1年に1回)」を実施するよう定められています。
定期点検の種類
建物の分類 | 消防設備点検 | 防火対象物点検 (1年に1回) |
|
機器点検 (6ヶ月に1回) |
総合点検 (1年に1回) |
||
特定防火対象物 | ○ | ○ | ○ |
非特定防火対象物 | ○ | ○ | × |
なお、これらの点検は、「消防設備士」または「消防設備点検資格者」が実施するよう定められています。
機器点検(6ヶ月に1回)
「機器点検」とは、以下の事項について、消防用設備等の種類に応じ、告示で定める基準に従い確認する点検のことをいいます。
- 消防用設備等に附置される非常電源(自家発電設備に限る)または動力消防ポンプの正常な作動
- 消防用設備等の機器の適正な配置、損傷等の有無その他主として外観から判別できる事項
- 消防用設備等の機能について、外観からまたは簡易な操作により判別できる事項
総合点検(1年に1回)
「総合点検」とは、消防用設備機器の全部、あるいは一部を作動させて、総合的な機能を消防用設備の種類に応じて確認する点検のことをいいます。
防火対象物点検(1年に1回)
「防火対象物点検」とは、消防法の基準に従って、火災や防災に対する備えや対策が行われているかを確認する点検のことをいいます。
点検結果の報告
「特定防火対象物」は「1年に1回」の頻度で「非特定防火対象物」は「3年に1回」の頻度で、消防設備点検の実施結果を管轄の消防長または消防署長に報告しなければなりません。
点検結果の報告
建物の分類 | 報告の頻度 |
特定防火対象物 | 1年に1回 |
非特定防火対象物 | 3年に1回 |
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【平成28年度 第24問】
小売店舗(一般住居と併用するものは除く)における防火管理に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 店舗に設置されている消火器具や火災報知設備などの機器点検は、1年に1回行わなければならない。
イ 店舗に設置されている非常電源や配線の総合点検は、2年に1回行わなければならない。
ウ 店舗は、機器点検・総合点検を行った結果を消防長または消防署長へ3年に1回報告しなければならない。
エ 店舗は、特定防火対象物である。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
消防法に基づく小売店舗の防火管理に関する知識を問う問題です。
「消防法」とは、昭和23年に制定された法律であり、火災を予防・警戒・鎮圧し、国民の生命・身体・財産を火災から保護するとともに、火災・地震などの災害による被害を軽減するほか、災害等による傷病者の搬送を適切に行うことにより、社会秩序を保持し、公共の福祉の増進に資することを目的として、火災の予防・警戒・調査、消防設備、消火活動、救急業務、危険物の取り扱いなどを規定しています。
(ア) 不適切です。
「消防設備」は、ただ単に設置するだけでなく、いざという時に正常に動作するよう適切に維持管理することが非常に重要であるため、「消防法」において「消防設備」の定期点検の実施と点検結果の報告について定められています。
「消防設備点検」には「機器点検(6ヶ月に1回)」と「総合点検(1年に1回)」があります。
また、「特定防火対象物」においては、通常の「消防設備点検」に加えて「防火対象物点検(1年に1回)」を実施するよう定められています。
定期点検の種類
建物の分類 | 消防設備点検 | 防火対象物点検 (1年に1回) |
|
機器点検 (6ヶ月に1回) |
総合点検 (1年に1回) |
||
特定防火対象物 | ○ | ○ | ○ |
非特定防火対象物 | ○ | ○ | × |
したがって、店舗に設置されている消火器具や火災報知設備などの機器点検は、1年に1回行わなければならないのではなく、6ヶ月に1回行わなければならないため、選択肢の内容は不適切です。
(イ) 不適切です。
「消防設備」は、ただ単に設置するだけでなく、いざという時に正常に動作するよう適切に維持管理することが非常に重要であるため、「消防法」において「消防設備」の定期点検の実施と点検結果の報告について定められています。
「消防設備点検」には「機器点検(6ヶ月に1回)」と「総合点検(1年に1回)」があります。
また、「特定防火対象物」においては、通常の「消防設備点検」に加えて「防火対象物点検(1年に1回)」を実施するよう定められています。
定期点検の種類
建物の分類 | 消防設備点検 | 防火対象物点検 (1年に1回) |
|
機器点検 (6ヶ月に1回) |
総合点検 (1年に1回) |
||
特定防火対象物 | ○ | ○ | ○ |
非特定防火対象物 | ○ | ○ | × |
したがって、店舗に設置されている非常電源や配線の総合点検は、2年に1回行わなければならないのではなく、1年に1回行わなければならないため、選択肢の内容は不適切です。
(ウ) 不適切です。
「特定防火対象物」は「1年に1回」の頻度で「非特定防火対象物」は「3年に1回」の頻度で、消防設備点検の実施結果を管轄の消防長または消防署長に報告しなければなりません。
点検結果の報告
建物の分類 | 報告の頻度 |
特定防火対象物 | 1年に1回 |
非特定防火対象物 | 3年に1回 |
選択肢(エ)とも関連しますが、「小売店舗(一般住居と併用するものは除く)」は「特定防火対象物」に該当するため「1年に1回」の報告義務があります。
したがって、店舗は、機器点検・総合点検を行った結果を消防長または消防署長へ3年に1回報告しなければならないのではなく、1年に1回報告しなければならないため、選択肢の内容は不適切です。
(エ) 適切です。
「防火対象物」は、「消防法施行令別表第1」において不特定多数の人が利用する「特定防火対象物」と特定の人が利用する「非特定防火対象物」に分類されています。
「消防法施行令別表第1」に定められた、不特定多数の人が利用する「特定防火対象物」を以下に示します。
- 劇場、映画館、演芸場又は観覧場
- 公会堂又は集会場
- キャバレー、カフェー、ナイトクラブその他これらに類するもの
- 遊技場又はダンスホール
- 性風俗関連特殊営業を営む店舗その他これらに類するもの
- カラオケボックス等
- 待合、料理店その他これらに類するもの
- 飲食店
- 百貨店、マーケットその他の物品販売業を営む店舗又は展示場
- 旅館、ホテル、宿泊所その他これらに類するもの
- 病院、診療所又は助産所
- 老人短期入所施設、特別養護老人ホーム、乳児院、知的障害者施設等
- 老人デイサービスセンター、老人福祉センター、保育所、通所による障害者支援施設等
- 幼稚園又は特別支援学校
- 公衆浴場のうち、蒸気浴場、熱気浴場その他これらに類するもの
- 上記の特定用途を含む複合用途防火対象物
- 地下街
- 準地下街
「小売店舗(一般住居と併用するものは除く)」は「百貨店、マーケットその他の物品販売業を営む店舗又は展示場」に該当するため、「特定防火対象物」です。
したがって、店舗は特定防火対象物であるため、選択肢の内容は適切です。
答えは(エ)です。
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