今回は、「運営管理 ~H28-27 商品調達・取引条件(1)仕入形態~」について説明します。
目次
運営管理 ~平成28年度一次試験問題一覧~
平成28年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
仕入形態の分類(所有権・保管責任)
小売業者による仕入形態は、所有権や保管責任の観点から「買取仕入」「委託仕入」「消化仕入(売上仕入)」に分類されます。
「委託仕入」と「消化仕入(売上仕入)」は混同されやすく違いが分かりづらいですが、「委託仕入」は、小売業者は供給元から商品を預かって販売を委託されているだけと考えると分かりやすいと思います。
「所有権」については、「消化仕入(売上仕入)」は、商品が販売された時点で「所有権」が供給元から小売業者、そして購入者へと移転しますが、「委託仕入」は、小売業者に「所有権」が移転することがないという大きな違いがあります。
「買取仕入」「委託仕入」「消化仕入(売上仕入)」の特徴を以下に示します。
買取仕入 | 委託仕入 | 消化仕入 (売上仕入) |
|
小売業者の会計処理 (仕入) |
仕入時点で計上 | なし | 販売時点で計上 |
小売業者の会計処理 (売上) |
販売時点で計上 (商品販売価額) |
販売時点で計上 (販売手数料) |
販売時点で計上 (商品販売価額) |
店舗在庫の所有権 (売れ残りリスク) |
小売業者 | 供給元 | 供給元 |
店舗在庫の保管責任 (商品管理リスク) |
小売業者 | 小売業者 | 供給元 |
商品の価格設定 | 小売業者 | 供給元 | 供給元 |
小売業者の利益率 | 高 | 中 | 低 |
買取仕入
「買取仕入」は、小売業者が供給元から商品を買い取って仕入を行う形態であり、小売業者は、商品を買い取った時点で「仕入」を計上して、商品が販売された時点で「売上」を計上します。
小売業者が商品を買い取った時点で、商品の「所有権」は供給元から小売業者に移転するため、原則として売れ残った商品を供給元に返却することはできません。そのため、売れ残りリスクはすべて小売業者が負うこととなります。
また、商品の「保管責任」についても、商品を買い取った時点で小売業者に移転するため、万引き、紛失、欠損といった商品管理リスクは小売業者が負うことになります。
委託仕入
「委託仕入」は、小売業者と供給元の販売委託契約に基づき小売業者が商品を販売する形態であり、小売業者は、商品が販売された時点で、供給元から受け取る販売手数料を「売上」として計上します。
なお、「委託仕入」の場合、小売業者は供給元から商品を預かって販売を委託されているだけなので、会計処理上「仕入」は計上されません。
つまり、「委託仕入」では、小売業者に「所有権」が移転することはなく、売れ残った商品は供給元に返却することができるため、小売業者には売れ残りリスクがありません。
ただし、商品の「保管責任」は、商品が納入された時点で小売業者に移転するため、万引き、紛失、欠損といった商品管理リスクは小売業者が負うことになります。
「委託仕入」では、供給業者が商品の販売価格を設定します。
また、「委託仕入」では、供給元が「売れ残りリスク」を負うこととなるため、供給元から小売業者への仕入価格も「買取仕入」よりも高く設定されます。(小売業者の利益率が「買取仕入」よりも低く設定されます。)
委託仕入の会計処理
「委託仕入」の会計処理については、過去に説明しているページがあるので、リンクを紹介しておきます。
小売業者側の会計処理については、以下ページの中で「受託者による仕訳」を参考にしてください。
消化仕入(売上仕入)
「消化仕入(売上仕入)」は、供給元が商品を持ち込んで販売する形態であり、小売業者は、商品が販売された時点で「仕入」と「売上」を計上します。
商品が販売されるまで「所有権」は供給元にあり、売れ残った場合は供給元が商品を持ち帰るため、小売業者には売れ残りリスクがありません。
また、商品の「保管責任」も商品が販売されるまで供給元にあるため、万引き、紛失、欠損といった商品管理リスクも供給元が負うことになります。
「消化仕入(売上仕入)」では、供給業者が商品の販売価格を設定します。
また、「消化仕入(売上仕入)」では、供給元が「売れ残りリスク」や「商品管理リスク」を負うこととなるため、供給元から小売業者への仕入価格が「買取仕入」や「委託仕入」よりも高く設定されます。(小売業者の利益率が「買取仕入」や「委託仕入」よりも低く設定されます。)
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【平成28年度 第27問】
小売店の商品仕入に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 委託仕入では、一定期間店頭で販売し、売れ残った商品だけ小売店が買い取る。
イ 委託仕入では、商品の販売価格は原則として小売店が自由に設定する。
ウ 委託仕入において、店頭在庫の所有権は小売店にある。
エ 消化仕入では、商品の販売時に小売店に所有権が移転する。
オ 消化仕入をすると、小売店の廃棄ロスが発生しやすい。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
小売業者の仕入形態に関する知識を問う問題です。
小売業者による仕入形態は、所有権や保管責任の観点から「買取仕入」「委託仕入」「消化仕入(売上仕入)」に分類されます。
「委託仕入」と「消化仕入(売上仕入)」は混同されやすく違いが分かりづらいですが、「委託仕入」は、小売業者は供給元から商品を預かって販売を委託されているだけと考えると分かりやすいと思います。
「所有権」については、「消化仕入(売上仕入)」は、商品が販売された時点で「所有権」が供給元から小売業者、そして購入者へと移転しますが、「委託仕入」は、小売業者に「所有権」が移転することがないという大きな違いがあります。
「買取仕入」「委託仕入」「消化仕入(売上仕入)」の特徴を以下に示します。
買取仕入 | 委託仕入 | 消化仕入 (売上仕入) |
|
小売業者の会計処理 (仕入) |
仕入時点で計上 | なし | 販売時点で計上 |
小売業者の会計処理 (売上) |
販売時点で計上 (商品販売価額) |
販売時点で計上 (販売手数料) |
販売時点で計上 (商品販売価額) |
店舗在庫の所有権 (売れ残りリスク) |
小売業者 | 供給元 | 供給元 |
店舗在庫の保管責任 (商品管理リスク) |
小売業者 | 小売業者 | 供給元 |
商品の価格設定 | 小売業者 | 供給元 | 供給元 |
小売業者の利益率 | 高 | 中 | 低 |
(ア) 不適切です。
「委託仕入」の場合、小売業者は供給元から商品を預かって販売を委託されているだけなので、小売業者に「所有権」が移転することはなく、売れ残った商品は供給元に返却することができます。
したがって、「委託仕入」では、一定期間店頭で販売し、売れ残った商品は供給元に返却するため、選択肢の内容は不適切です。
(イ) 不適切です。
「委託仕入」は、小売業者と供給元の販売委託契約に基づき小売業者が商品を販売する形態であり、小売業者に「所有権」が移転することはなく、売れ残った商品は供給元に返却することができるため、売れ残りリスクは供給元にあります。
「委託仕入」では、供給業者が商品の販売価格を設定します。
また、「委託仕入」では、供給元が「売れ残りリスク」を負うこととなるため、供給元から小売業者への仕入価格も「買取仕入」よりも高く設定されます。(小売業者の利益率が「買取仕入」よりも低く設定されます。)
したがって、「委託仕入」において、小売業者が商品の販売価格を自由に設定することはできないため、選択肢の内容は不適切です。
(ウ) 不適切です。
「委託仕入」の場合、小売業者は供給元から商品を預かって販売を委託されているだけなので、小売業者に「所有権」が移転することはなく、売れ残った商品は供給元に返却することができます。
したがって、「委託仕入」において、店頭在庫の所有権は供給元にあるため、選択肢の内容は不適切です。
(エ) 適切です。
「消化仕入(売上仕入)」は、供給元が商品を持ち込んで販売する形態であり、小売業者は、商品が販売された時点で「仕入」と「売上」を計上します。
したがって、「消化仕入(売上仕入)」では、商品の販売時に小売店に所有権が移転するため、選択肢の内容は適切です。
(オ) 不適切です。
「消化仕入(売上仕入)」は、商品が販売されるまで「所有権」は供給元にあり、売れ残った場合は供給元が商品を持ち帰るため、小売業者には売れ残りリスクがありません。
したがって、「消化仕入(売上仕入)」では、小売店の廃棄ロスは発生しないため、選択肢の内容は不適切です。
答えは(エ)です。
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