今回は、「運営管理 ~H30-19 保全(1)保全活動~」について説明します。
目次
運営管理 ~平成30年度一次試験問題一覧~
平成30年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
保全活動
「保全」とは、計画、点検、検査、調整、修理、取替といった観点により、設備のライフサイクル全般において故障を排除すること、および設備の技術的側面を正常・良好な状態に保ち、効率的な生産活動を維持するための活動のことをいいます。
「保全活動」は、設計時の技術的性能を維持するための「維持活動」と性能劣化を修復・改善する「改善活動」に分類することができます。
さらに、「維持活動」は「予防保全」と「事後保全」に分類され、「改善活動」は「改良保全」と「保全予防」に分類されます。
「保全活動」の種類と説明を以下に示します。
種類 | 説明 | |
予防保全 | 故障に至る前に寿命を推定して、故障を未然に防止する方式の保全 生産停止または性能低下をもたらす状態を発見するための「点検・診断」を目的としたものと、初期段階に行う「調整・修復」を目的としたものがある。 |
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定期保全 | 従来の故障記録、保全記録の評価から周期を決め、周期ごとに行う保全方式(時間を基準とした保全活動) | |
予知保全 | 設備の劣化傾向を設備診断技術などによって管理し、故障に至る前の最適な時期に最善の対策を行う予防保全の方法(設備の状態を基準とした保全活動) | |
事後保全 | 設備に故障が発見された段階で、その故障を取り除く方式の保全 | |
改良保全 | 故障が起こりにくい設備への改善、又は性能向上を目的とした保全活動。 | |
保全予防 | 設備、系、ユニット、アッセンブリ、部品などについて、計画・設計段階から過去の保全実績又は情報を用いて不良や故障に関する事項を予知・予測し、これらを排除するための対策を織り込む活動。 |
保全費
「保全費」とは、設計時の技術的性能を維持するための「維持活動」や、性能劣化を修復・改善する「改善活動」といった「保全活動」に関する費用のことをいい、設備の修理、改善、点検、検査に関する「保守費用」や、交換用の予備品に関する「在庫費用」が該当します。
設備の使用可能期間を延長させたり、その価値を増加させるためにかかる費用など、設備の固定資産として計上される費用は「保全費」には含まれません。
寿命特性曲線(故障率曲線・バスタブ曲線)
設備の故障率は、使用開始直後が最も高く、徐々に減少し、ある期間を過ぎると一定となり、その後劣化の進行とともに増加します。
「寿命特性曲線(故障率曲線)」は、設備の時間経過に伴って変化する故障率の推移を表しており、その形状から「バスタブ曲線」とも呼ばれています。
「寿命特性曲線」は、設備設計の不備(設備自体の設計ミスや潜在的な欠陥)や製作過程の不手際(作業者の不慣れによる操作ミス)といった原因による故障率が高い「初期故障期」と、故障率が低く設備が安定的に稼働する「偶発的故障期」と、設備や部品の寿命が原因により故障率が高くなる「磨耗故障期」に分類することができます。
「初期故障期」の故障率は時間の経過と共に低下していく曲線として表されますが、この時期に設備設計や製作過程の問題点を洗い出してこれらの欠陥を取り除くための対策を実施することによって「偶発故障期」の故障率を低く抑えることができます。
「偶発故障期」の故障率は低い状態で推移して設備が安定的に稼働します。
「摩耗故障期」の故障率は時間の経過と共に増加していく曲線として表されますが、「磨耗故障期」の初期段階に老朽化した部品の交換などを実施することによって、故障率が高くなることを遅らせることができ、設備寿命を長くすることができます。
保全活動と故障期の関係
「保全活動」については、その定義を理解していても、正解を選びにくい問題が出題されるため、以下に「保全活動」と「故障期」の関係を図示してみました。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【平成30年度 第19問】
JISで定義される設備故障とその保全活動に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 機能停止型故障を抑制するために、事後保全を実施した。
イ 寿命特性曲線上での設備の初期故障を抑制するために、保全予防を実施した。
ウ 設備故障の状態は、「設備が規定の機能を失う状態」と「設備が規定の性能を満たせなくなる状態」の2つに分類される。
エ 設備の信頼性を表す故障強度率は、「1-故障停止時間の合計÷負荷時間の合計」によって計算される。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
設備故障と保全活動に関する知識を問う問題です。
(ア) 不適切です。
「事後保全」とは、設備に故障が発見された段階で、その故障を取り除く方式の保全のことをいいます。
「機能停止型故障」を抑制するために実施するのは「事後保全」ではなく「予防保全」のため、選択肢の記述内容は不適切です。
「保全活動」の種類と説明を以下に示します。
種類 | 説明 | |
予防保全 | 故障に至る前に寿命を推定して、故障を未然に防止する方式の保全 生産停止または性能低下をもたらす状態を発見するための「点検・診断」を目的としたものと、初期段階に行う「調整・修復」を目的としたものがある。 |
|
定期保全 | 従来の故障記録、保全記録の評価から周期を決め、周期ごとに行う保全方式(時間を基準とした保全活動) | |
予知保全 | 設備の劣化傾向を設備診断技術などによって管理し、故障に至る前の最適な時期に最善の対策を行う予防保全の方法(設備の状態を基準とした保全活動) | |
事後保全 | 設備に故障が発見された段階で、その故障を取り除く方式の保全 | |
改良保全 | 故障が起こりにくい設備への改善、又は性能向上を目的とした保全活動。 | |
保全予防 | 設備、系、ユニット、アッセンブリ、部品などについて、計画・設計段階から過去の保全実績又は情報を用いて不良や故障に関する事項を予知・予測し、これらを排除するための対策を織り込む活動。 |
(イ) 適切です。
設備の故障率は、使用開始直後が最も高く、徐々に減少し、ある期間を過ぎると一定となり、その後劣化の進行とともに増加します。
「寿命特性曲線(故障率曲線)」は、設備の時間経過に伴って変化する故障率の推移を表しており、その形状から「バスタブ曲線」とも呼ばれています。
「寿命特性曲線」は、設備設計の不備(設備自体の設計ミスや潜在的な欠陥)や製作過程の不手際(作業者の不慣れによる操作ミス)といった原因による故障率が高い「初期故障期」と、故障率が低く設備が安定的に稼働する「偶発的故障期」と、設備や部品の寿命が原因により故障率が高くなる「磨耗故障期」に分類することができます。
「保全予防」とは、「設備、系、ユニット、アッセンブリ、部品などについて、計画・設計段階から過去の保全実績又は情報を用いて不良や故障に関する事項を予知・予測し、これらを排除するための対策を織り込む活動。」です。
設備を導入する前の計画・設計段階で「保全予防」を実施して、故障の発生しにくい設備を導入することができれば「初期故障期」における故障発生を抑制することができるため、選択肢の記述内容は適切です。
(ウ) 不適切です。
JISにおける「故障」の定義は、以下の通りです。
- 規定の機能を失う
- 規定の性能を満たせなくなる
- 設備による産出物や作用が規定の品質レベルに達しなくなる
選択肢には、上記「3点」の故障の定義のうち「2点」しか記述されていないため、選択肢の記述内容は不適切です。
故障
設備が次のいずれかの状態になる変化。a)規定の機能を失う、b)規定の性能を満たせなくなる、c)設備による産出物や作用が規定の品質レベルに達しなくなる。
備考 設備が生産ラインなどの大規模なシステムの一部となっていて、システム全体を停止に至らしめるような重大又は決定的な故障を大故障(通称としてドカ停)、逆に設備の部分的な停止又は設備の作用対象の不具合による停止で、短時間に回復できる故障を小故障(通称としてチョコ停)という。(JISZ8141-6108)
(エ) 不適切です。
設備の信頼性を表す「故障強度率」は、以下の公式により算出することができます。
したがって、選択肢の記述内容は不適切です。
答えは(イ)です。
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