平成30年度の事例Ⅳの「第1問」に関する解答例(案)を説明していきます。
私なりの思考ロジックに基づく解答例(案)を以下に説明しますので、参考としてもらえればと思います。
昨日の記事「事例Ⅳ ~平成30年度 解答例(1)(経営分析)~」の続きです。
目次
事例Ⅳ ~平成30年度試験問題一覧~
平成30年度のその他の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
第1問(設問1) 前回からの続き
Step3.財務諸表の数値分析(財務指標の絞り込み)
効率性
財務指標一覧(効率性)
効率性の財務指標を以下に示します。
財務指標(効率性) | D社 | 同業他社 | 比較 |
総資本回転率 | 2.99回 | 2.95回 | ○ |
売上債権回転率 | 6.34回 | 6.51回 | × |
棚卸資産回転率 | 150.30回 | 1815回 | × |
固定資産回転率 | 13.07回 | 28.36回 | × |
有形固定資産回転率 | 17.08回 | 42.21回 | × |
考察
- 「総資本回転率」は、同業他社と比較して若干優れている。今回の問題では、D社が優れていると考えられる財務指標と、D社の課題を示すと考えられる財務指標を選択する必要があるため、「総資本回転率」を選択候補として残しておく。
- 外部業者に代金回収業務等を委託しているため「売上債権回転率」が低いと予想した。
同業他社と比較して低い数値とはなっているが、「棚卸資産回転率」「固定資産回転率」「有形固定資産回転率」ほどには数値の差は大きくない。 - 「棚卸資産回転率」は、同業他社と比較して低い数値とはなっているが、与件文等から、その原因等については読み取ることができないこと、およびD社はサービス業であり「棚卸資産(在庫)」の多さが問題となる業種ではないため、選択候補とはしない。
- 「固定資産回転率」と「有形固定資産回転率」が、同業他社と比較して低い数値となっている。財務諸表を読み解くと「土地」と「建物」といった「有形固定資産」が多いことがその原因と判断することができること、および「有形固定資産回転率」の方が「固定資産回転率」よりも、課題を狭い範囲で指摘できることから、「有形固定資産回転率」を選択候補として残すこととする。
検討結果
「総資本回転率」と「有形固定資産回転率」を候補として残す。
安全性
財務指標一覧(安全性)
安全性の財務指標を以下に示します。
財務指標(安全性) | D社 | 同業他社 | 比較 |
流動比率 | 133.79% | 108.88% | ○ |
当座比率 | 121.72% | 104.34% | ○ |
固定比率 | 64.25% | 86.49% | ○ |
固定長期適合率 | 53.99% | 58.72% | ○ |
自己資本比率 | 35.59% | 12.01% | ○ |
負債比率 | 181.01% | 732.43% | ○ |
考察
- 「安全性」の全ての財務指標が同業他社よりも優れている。
- 「短期安全性(流動比率/当座比率)」は優れているが、同業他社と比較して「現金及び預金」は少ない状況であるため、選択候補とはしない。
- 「長期安全性(固定比率/固定長期適合率)」は優れているが、効率性において「有形固定資産回転率」が低いと判断しているため、選択候補とはしない。
- 「資本構造(自己資本比率/負債比率)」が同業他社と比較して著しく優れている。
「借入金」が少ないが「未払費用」が多くなっているため「負債」が少ないとは言い切れない。「資本剰余金」が多いことが「資本構造」が優れている理由であると考えられるため、同業他社と比較して優れている財務指標として「自己資本比率」を選択する。 - 「資本剰余金」とは、株主払込剰余金、合併差益、自己株式処分差益など株主から出資された余剰資本を示している。
検討結果
「自己資本比率」で決定
Step4.財務指標の確定
最後に、「収益性」「効率性」「安全性」のバランスを見て、問題の条件と一致しているか、指摘する内容や原因が重複していないか、論理的な矛盾がないか、などの確認を実施しながら、最終的に解答する財務指標を確定します。
-
収益性
- D社が優れていると考えられる財務指標として「売上高総利益率」が、D社の課題を示すと考えられる財務指標として「売上高販管費比率」が選択候補に残っている。
- 「安全性」においてD社が優れていると考えられる財務指標を選択するため、「収益性」ではD社の課題を示すと考えられる財務指標を選択する。
- したがって、「収益性」ではD社の課題を示すと考えられる財務指標として「売上高販管費比率」を選択する。
-
効率性
- D社が優れていると考えられる財務指標として「総資本回転率」が、D社の課題を示すと考えられる財務指標として「有形固定資産回転率」が選択候補に残っている。
- 「安全性」においてD社が優れていると考えられる財務指標を選択するため、「効率性」ではD社の課題を示すと考えられる財務指標を選択する。
- したがって、「効率性」ではD社の課題を示すと考えられる財務指標として「有形固定資産回転率」を選択する。
-
安全性
- 考察の結果「自己資本比率」が選択されている。
- 論理的な矛盾はないため、「安全性」ではD社が優れていると考えられる財務指標として「自己資本比率」を選択する。
Step5.解答
確定した財務指標を解答します。
優れている指標については①の欄に、課題となる指標については②、③の欄に記載します。
(a) | (b) | |
① | 自己資本比率 | 35.59(%) |
② | 売上高販管費比率 | 22.95(%) |
③ | 有形固定資産回転率 | 17.08(回) |
第1問(設問2)
「設問2」では、D社の財政状態及び経営成績を同業他社と比較して、D社が優れている点と課題について考えていきます。
考え方
「設問2」では「収益性」「効率性」「安全性」の3つの観点を入れるのが鉄則です。
「収益性」「効率性」「安全性」に分けて、優れている点と課題を記載します。
- 「安全性」としては、株主からの払込資本が多いことによって、資本構造が優れている。
- 「収益性」としては、販売費及び一般管理費の削減が課題である。
- 「効率性」としては、有形固定資産の有効活用が課題である。
解答
これを「50文字」以内にまとめます。
- 払込資本が多く安全性に優れ、販管費削減と有形固定資産の有効活用による収益性と効率性の改善が課題である。(50文字)
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