事例Ⅲ ~平成24年度 解答例(6)(第4問)~

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今回は、「事例Ⅲ ~平成24年度 解答例(6)(第4問)~」について説明します。

 

目次

事例Ⅲ ~平成24年度試験問題一覧~

平成24年度のその他の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

第4問

第4問(配点30点)

 

C社の既存製品の販売数量は減少傾向にあり、さらに既存顧客から製品単価の引き下げ要求がある。それを克服して収益性を高めるには、あなたは中小企業診断士としてどのような方法を提案するか、Y社との新規取引以外で、C社にとって実現性の高い提案を140字以内で述べよ。

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

解答の方向性

第4問では、受注量の減少傾向、製品単価の引き下げ要求がある食肉製品製造業のC社にとって、収益性を高めるための方法を分析する能力と提案する能力を問われています。

 

収益性を高めるには「売上の拡大」「原価の低減」の2つの方法があります。

 

売上の拡大

一般的に、売上を拡大するための手段としては「既存顧客の受注拡大」と「新規顧客からの受注獲得」と「新規事業の開発」が考えられます。

 

既存顧客の受注拡大

問題文に「既存製品の販売数量は減少傾向にあり、さらに既存顧客から製品単価の引き下げ要求がある」と記述されており「既存顧客の受注拡大」は実現性が低いと考えられるため、解答から除外します。

 

新規顧客からの受注獲得

問題文に「Y社との新規取引以外」と記述されているため「Y社以外の新規顧客からの受注獲得」と限定されます。

 

新規事業の開発

問題文に「C社にとって実現性の高い提案」と記述されており、「食肉製品の生産販売」を生業としてきたC社にとって「新規事業の開発」は実現性が高い手段ではないと考えられるため、解答から除外します。

 

原価の低減

原価の低減は、一言で表現すると「生産性の向上」と言い換えることができます。
既存製品の生産工程において、非効率となっている問題に対する改善策を提案することができます。

 

まとめ

上記の検討結果から、解答には以下の2つを盛り込んで解答を構成していくこととします。

 

  • 生産性の向上による原価の低減
  • Y社以外の新規顧客からの受注獲得

 

与件文で関連しそうな箇所

与件文では、【企業概要】の中盤、【生産概要】の前半から中盤、【図1 C社の製品別月平均販売数量】、【新規事業】の後半に記述されています。

 

生産性の向上による原価の低減

【企業概要】には既存顧客の売上拡大が厳しい現状が記述されており、【生産概要】にはC社の生産工程における問題点が記述されています。「第2問」の解答で採用しなかった少品種多量生産となっている製品ラインナップの見直しが解答の骨子になると考えられます。

 

Y社以外の新規顧客からの受注獲得

【新規事業】では「Y社からの要求で実現に向けて取り組んでいるセントラルキッチン事業」の実現に向けて取り組んでいるため、Y社からの受注を獲得した後「セントラルキッチン事業」のノウハウを横展開して新規顧客を開拓していくという解答になると考えられます。

 

問題文の中では、以下の部分が該当します。

 

詳細に示すと以下の通りとなります。

 

  • C社社長はX社の加工部門を引き継いだ後、加工工程の見直し、加工技術の向上などを行い生産性の改善を進めた。そして、X社以外の食品スーパーへの販売数量を増加させ、また販売品目を絞って少品種多量生産体制をつくり、さらに生産性の向上を達成するなど経営改善を進めてきた。その後、外食チェーンからの受注にも成功している。
    ⇒食品スーパーへの販売については、加工工程の見直し、加工技術の向上、販売品目を絞った少品種多量生産体制の構築により生産性の向上を達成してきたと記述されていますが、外食チェーンへの販売においては生産性の向上について触れられていません。
    外食チェーンへの販売についても、食品スーパーへの販売と同様に、加工工程の見直し、加工技術の向上、販売品目を絞った少品種多量生産体制の構築により生産性を向上させて収益性を高めるという提案ができそうです。

 

  • 現在ではX社を含めた食品スーパー4社計80店舗、外食チェーン6社計30店舗と取引を行い、生産数量の60%は食品スーパー、40%は外食チェーン向けである。近年、食品スーパー向け製品の販売数量はほぼ横ばいで推移しており、外食チェーン向け製品も外食産業の業績が思わしくないことから減少傾向にある。
    ⇒食品スーパー4社計80店舗、外食チェーン6社計30店舗と取引を行っていると記述されており、取引先が非常に多いことが分かります。製品の納品先が多ければ、製品の配送業務が非効率となっている可能性が考えられます。

 

  • 現在の資本金は4,000万円、従業員はパート60名を含む100名である。会社組織としては製品企画部、営業部、製造部、品質保証部、総務部がある。営業部員がつかんだ顧客の製品ニーズを製品企画部で新製品として企画し、製造部で生産、品質保証部で製品検査をそれぞれ担当している。
    ⇒「営業部員がつかんだ顧客の製品ニーズを製品企画部で新製品として企画」と記述されており、顧客の製品ニーズをつかむ営業力の高さと、営業部が入手した情報に基づき新製品を企画して開発する技術力の高さを示しています。
    C社が、外食チェーンからの新規受注できたのは、この営業力と新製品を開発する技術力の高さによるものだと考えられます。

 

  • 製品は約50品目あり、販売数量上位30位までの各製品の月平均販売数量は図1に示すとおりである。食品スーパー向け製品の販売は少品種多量で、外食チェーン向けは多品種少量である。
    ⇒この文章と「図1」を見ても、外食チェーン向け製品は「多品種少量」であること分かるため、生産性が低い状況になっていると考えられます。

 

 

  • 製品の生産工程は、購入した部分肉の受入検査、一次加工(整形)、スライス、トレー盛り付け、包装、製品検査である。納品は、各顧客からの注文によって週2回それぞれの顧客の配送センターへ配送することが原則となっている。生産計画は毎月20日までに翌月の計画が作成されるが、その時点では顧客からの注文内容は確定しておらず、各営業担当が各顧客への販売数量を予測し、製造部では製品在庫との調整を図って見込み生産を行っている。製造原価構成では原材料費と人件費の割合が大きい。コスト削減対策の1つとして、スライス工程では汎用機を使用すると熟練工を必要とすることから、高い加工技術を必要としない専用機化を進めて人件費の抑制などを行ってきたが、既存の顧客からは一層の製品単価引き下げ要請がある。
    ⇒製品の配送については「週2回それぞれの顧客の配送センターへ配送する」と記述されており各店舗に配送しているわけではないため、製品の配送業務は非効率にはなっていないと考えられます。
    製造原価構成では原材料費と人件費の割合が大きく、人件費の削減については対策を講じてきたと記述されています。
    「第2問」において人件費の削減については触れていますが、「原材料費の削減」については一度も触れていないため、第4問の解答に「原材料費の削減」というキーワードを盛り込むことを忘れないようにします。

 

  • 打ち合わせの過程でY社からは、全店で必要とする主力メニューの牛肉のスライス、味付け、野菜のカットなどについて盛り付け前までの事前加工を行うことを要求されている。加えて製品のトレーサビリティは国産牛を使用することから個体管理すること、前日発注・翌日全店直接配送を行うことなど、C社でセントラルキッチンとしての機能を持つよう要求されている。C社では、Y社の要求内容に対応可能かどうか検討中である。
    ⇒C社が、Y社からの要求に応じてセントラルキッチン事業を実現できれば、習得したセントラルキッチン事業のノウハウを生かして、Y社以外の新規顧客の受注獲得に向け提案することができます。

 

収益性を高めるために実現性の高い提案

 

生産性の向上による原価の低減

既存製品については受注を拡大することは難しいため、原価を低減して収益性を高めていきます。与件文から抜き出した内容を整理すると以下の通りです。

 

  • 外食チェーンへ販売している製品は「多品種少量」となっているため、加工工程の見直し、加工技術の向上、販売品目を絞った少品種多量生産体制の構築により生産性を向上させて収益性を高める。
  • 取引先の店舗数が非常に多いが、製品を各店舗に配送しているわけではないため、製品の配送業務は非効率にはなっていない。
    特に改善するための要素はないため、解答には盛り込まない。
  • 製造原価構成では原材料費と人件費の割合が大きいが、「原材料費の削減」については一度も触れていないため、第4問の解答に「原材料費の削減」というキーワードを盛り込む。

 

販売品目の絞り込み

少品種多量生産とするために、外食チェーンに販売している製品ラインナップを絞り込むには「貢献利益分析」を活用します。

「貢献利益分析」は「事例Ⅳ」で頻出のカテゴリですが、詳しく知りたい方は「事例Ⅳ ~④限界利益と貢献利益による分析~」をご覧ください。

 

  • 「貢献利益分析」は、製品ラインナップや事業部門の採算性を見極め、企業全体の利益に貢献していない製品の生産を中止したり、事業部門を廃止する判断をするために活用されます。

 

「貢献利益」は「売上高」から「変動費」と「個別固定費」を控除して算出します。

「貢献利益」は「共通固定費を回収して全社の利益獲得に貢献する度合いを示す利益」を表しており、製品ラインナップや事業部門の採算性を見極め、企業全体の利益に貢献していない製品の生産を中止したり、事業部門を廃止する判断をするために活用されます。

 

  • 「貢献利益」がマイナスとなっている製品は製造を中止した方がよい。
  • 「貢献利益」がマイナスとなっている店舗は閉店した方がよい。
  • 「貢献利益」がマイナスとなっている事業部門は廃止した方がよい。

 

 

提案内容

 

  • 外食チェーン向けの製品ラインナップを貢献利益の高い販売品目に絞り込み少品種多量生産とすることで生産性を向上して原材料費と人件費を低減する。

 

Y社以外の新規顧客からの受注獲得

与件文において、Y社以外の新規顧客からの受注獲得に関する情報は多く記述されていませんが、抜き出した内容を整理すると以下の通りです。

 

  • 顧客の製品ニーズをつかむ営業力の高さと、営業部が入手した情報に基づき新製品を企画して開発する技術力の高さにより、新規顧客からの受注を獲得する。
  • セントラルキッチン事業のノウハウを生かして、新規顧客からの受注を獲得する。

 

提案内容

 

  • セントラルキッチン事業のノウハウを生かして顧客の製品ニーズに対応する新製品を企画してY社以外の新規顧客から受注を獲得する。

 

解答例

ここまでに整理してきた内容に基づき、140文字以内にまとめます。

 

収益性を高めるには①外食チェーン向けの製品ラインナップを貢献利益の高い販売品目に絞り込み少品種多量生産とすることで生産性を向上して原材料費と人件費を低減する。②セントラルキッチン事業のノウハウを生かして顧客の製品ニーズに対応する新製品を企画してY社以外の新規顧客から受注を獲得する。(140文字)

 

事例Ⅰ~事例Ⅲは正解のない試験なので、あくまで解答例として参考にしてもらえればと思います。

 


 

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