今回は、「事例Ⅲ ~平成30年度 解答例(1) 全体構成の理解~」について説明します。
目次
事例Ⅲ ~平成30年度試験問題一覧~
平成30年度のその他の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
全体構成の理解
事例Ⅰ~事例Ⅲの問題では、最初に、試験問題の全体像を把握して、それぞれの問題で与件文のどこを参考にして解答するかを考えることをお薦めします。
平成30年度の試験問題は、それぞれの問題と与件文を関連付けるのが比較的簡単でした。
あえて言うなら、「第2問」と「第4問」で、与件文の最後の方で記述されている「成型機の段取り時間が長時間となっていること」と「金型や材料の保管場所が混乱していること」をどのように使い分けるかさえ決めておけば、あとは悩むことなく解くことができると思われます。
第1問
第1問(配点20点)
顧客企業の生産工場の海外移転などの経営環境にあっても、C社の業績は維持されてきた。その理由を80字以内で述べよ。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
第1問では、顧客企業の生産工場の海外移転などの経営環境にあっても、C社が業績を維持してきた理由を分析する能力を問われています。
「事例Ⅲ」の第1問としてよくあるパターンの問題であり、与件文から該当する文言を抜き出して列挙していきます。与件文から該当する文言を抜き出すのはそれほど難しくありませんが、抜き出した内容を文字数内に収めるために取捨選択するのが難しい問題です。
与件文で関連しそうな箇所
与件文では、【C社の概要】の中盤に記述されています。
「1990年代後半から顧客企業の生産工場の海外移転に伴い量産品の国内生産は減少し」という文章から「近年、国内需要分の家電製品の生産が国内に戻る傾向があり」という文章の前の段落までに、その当時のC社の企業活動が記述されています。
問題文の中では、以下の部分が該当します。
第2問
第2問(配点20点)
C社の成形加工課の成形加工にかかわる作業内容(図2)を分析し、作業方法に関する問題点とその改善策を120字以内で述べよ。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
第2問では、C社の成形加工にかかわる作業内容から問題点を分析してその改善策を提案する能力を問われています。
「第2問」は、あくまで「作業方法」に関する問題点と改善策を解答するよう求められているため、図2で与えられた「マン・マシン・チャート」と「段取り作業内容の詳細」の内容を読み取って、解答を構成していきます。
与件文を読んでいくと、「金型や材料の保管状況」に問題があることが分かりますが、「金型や材料の保管状況」に対する改善策は「第4問」で解答していくこととします。
与件文で関連しそうな箇所
与件文では、【C社の概要】の中盤と【図2 成形加工作業者の一日の作業内容】に記述されています。
【C社の概要】の中盤に、「図2」の説明と段取り作業時間の短縮の重要性が記述されてはいますが、あまり解答に採用できそうな文言はないため、【図2 成形加工作業者の一日の作業内容】に表現されている内容を中心に確認していきます。
問題文の中では、以下の部分が該当します。
第3問
第3問(配点20点)
C社の生産計画策定方法と製品在庫数量の推移(図1)を分析して、C社の生産計画上の問題点とその改善策を120字以内で述べよ。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
第3問では、C社の生産計画策定方法と製品在庫数量の推移を分析して生産計画上の課題を把握し、その改善策を提案する能力を問われています。
与件文に「製品在庫数量の推移」の図が示されているということは、製品の「在庫管理」に問題があるということが推測できます。
事例Ⅲにおいて、「在庫管理」に関する問題が出題された場合は、改善策により「適正な在庫水準の維持」を提案するパターンが多いため、その方向で解答を構成していきます。
与件文で関連しそうな箇所
与件文では、【生産概要】の全般と【図1 製品Aの在庫数量推移(2018年7月)】に記述されています。
「図1」において在庫数量の推移が示されているため、製品在庫の管理方法に問題があると推測しながら与件文を読んでいくと「過大な製品在庫」というキーワードが見つかります。
問題文の中では、以下の部分が該当します。
第4問
第4問(配点20点)
C社が検討している生産管理のコンピュータ化を進めるために、事前に整備しておくべき内容を120字以内で述べよ。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
第4問では、C社が検討している生産管理のコンピュータ化を生産現場で効率的に運用するために、事前に整備しておくべき内容について分析する能力を問われています。
与件文を読んでいくと、金型や材料の保管状況に問題があると記述されており、その問題に対する改善策が「第4問」で解答すべき内容です。
最初に試験問題の全体構成を確認しておかないと、「成形加工の作業方法」に関する問題点と改善策について求められている「第2問」の中で、「金型や材料の保管状況」に関する内容まで解答してしまっている可能性がありますので、注意してください。
与件文で関連しそうな箇所
与件文では、【生産概要】の後半に記述されています。
【生産概要】の後半で、金型や材料の保管状況に問題があると記述されています。
問題文の中では、以下の部分が該当します。
第5問
第5問(配点20点)
わが国中小製造業の経営が厳しさを増す中で、C社が立地環境や経営資源を生かして付加価値を高めるための今後の戦略について、中小企業診断士として120字以内で助言せよ。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
第5問では、C社が付加価値を高めるために活用できる立地環境や経営資源を分析して、今後の戦略を提案する能力を問われています。
今後の戦略を提案する問題では、C社の強みを生かして解答を構成していきます。
ここまでの問題で、一切触れていない「最近、習得した成形加工の際に金属部品などを組み込んでしまう成形技術(インサート成形)」を中心的な要素として、あとは、事例Ⅲの解答に使える追加的な要素である「新規事業を開発する」「取引先との関係を強化する」を組み合わせて解答を考えていきます。
与件文で関連しそうな箇所
与件文では、【C社の概要】の前半から中盤にかけて、および後半部分に記述されています。
与件文を読んでいくと、C社が付加価値を高めるために、以下の3つの資源を活用することができそうです。
- 工業団地に立地する中小企業との信頼関係
- 古くから取引があり国内生産への発注が戻り始めた顧客企業
- 最近習得した成形技術(インサート成形)
問題文の中では、以下の部分が該当します。
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