事例Ⅲ ~平成25年度 解答例(6)(第3問)~

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今回は、「事例Ⅲ ~平成25年度 解答例(6)(第3問)~」について説明します。

 

目次

事例Ⅲ ~平成25年度試験問題一覧~

平成25年度のその他の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

新規事業の開発

「新規事業の開発」においては、計画段階では「自社の強みを生かせる事業であること」「市場の調査・分析による需要予測」、実行段階では「計画的かつ段階的に進めていくこと」が重要なポイントです。
「新規事業の開発」といっても、いろいろなパターンが考えられるので、「新規事業の種類」「新規事業の開発体制」「新規事業の進出先」という観点で以下に分類してみます。

 

新規事業の種類

「新規事業の種類」は「新製品」と「新サービス」に分類することができますが、「新規事業の開発」の進め方は、その種類には関係なく、基本的な考え方は変わりません。

 

  • 新製品
  • 新サービス

 

新規事業の開発体制

「新規事業の開発体制」は「C社単独で開発を進めるのか」と「取引先と連携して開発を進めるのか」に分類することができます。

 

  • C社単独で開発を進める
  • 取引先と連携して開発を進める

 

「C社単独で開発を進める」場合の重要なポイントは、上述の通り、計画段階では「自社の強みを生かせる事業であること」「市場の調査・分析による需要予測」、実行段階では「計画的かつ段階的に進めていくこと」ですが、「取引先と連携して開発を進める」場合は、「自社が主体的となって市場分析を行うこと」「協力体制で計画を進めること」というようなポイントが追加されます。

 

二次試験で出題される企業が「新規事業の開発」に失敗するパターンとして一番出題されやすいのは、「他社からの勧めにより新規事業の開発を進めたため失敗した。」ではないかと考えられます。他社から勧められた場合でも、必ず自社で市場分析を行い、自社で開発すべきかどうかを判断すべきです。

 

新規事業の進出先

「新規事業の進出先」は「国内」と「海外」に分類することができます。

 

  • 国内展開
  • 海外展開

 

「新規事業の進出先」が「海外」の場合は、「従業員が現地に赴いて、現地の市場調査を行うこと」「従業員が現地に赴任して、生産管理を行いながら現地従業員を教育していくこと」というようなポイントが追加されます。

 

他社と共同した新規事業開発(国内)

 

他社と共同した新規事業開発(国内)のポイント

  • 自社の強みを生かせる事業であること
  • 他社に任せることなく、自社が主体的となって市場の調査・分析による需要予測を行うこと
  • 計画的かつ段階的に進めていくこと
  • 協力体制で新規事業の開発を進めること

 

他社と共同した新規事業開発(国内)の流れ

  • SWOT分析により自社の特性を把握する。
  • 他社に任せることなく、自社が主体的となって、新規参入しようとしている市場の調査・分析を行い、需要を予測する。
  • 需要予測に基づく自社の収支計画を立案して共同事業者と合意する。
  • 予め製品の量産化や撤退基準を明確に設定して共同事業者と合意する。
  • 共同事業者と協力体制で、定期的に収支計画に対する進捗状況を確認する。

 

第3問

第3問(配点30点)

 

C社経営者は、これまで蓄積した生産技術のノウハウを活用し、通信用部材市場以外での新規事業開発を模索している。過去に経験したY社との共同開発事業の失敗の要因と、その失敗の要因を踏まえた今後の新規事業開発の留意点を、140字以内で述べよ。

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

解答の方向性

第3問では、C社の過去の新規事業開発の失敗要因を把握し、今後の新規事業開発の留意点を分析・提案する能力を問われています。

 

与件文を読んでいくと「過去にY社との共同開発により東京進出を目指していたが失敗した」という流れがあるので、「今後の新規事業開発の留意点」を検討する際「東京進出に向けた新規事業開発」とか「他社との共同事業開発」という枠組みを無意識のうちに設定して考えてしまうかもしれませんが、この問題にはそういう前提はありません。

したがって、「今後の新規事業開発の留意点」の解答において、「関東工場」「東京支店」「共同開発」といったキーワードを盛り込んで、新規事業の幅を狭めないよう注意が必要です。

新規事業開発は、計画的に段階的に慎重に進めていくべきという鉄則があるので、「今後の新規事業開発の留意点」については、その新規事業開発における鉄則に基づき、解答を構成していきます。

 

与件文で関連しそうな箇所

与件文では、【通信用部材以外の新製品開発】に記述されています。

 

Y社主導の共同開発において、新規事業が軌道に乗るかどうかの見極めも付かない状態で、いきなりビルを建設したと記述されています。あり得ないですね。

 

問題文の中では、以下の部分が該当します。

 

詳細に示すと以下の通りとなります。

 

  • C社では、通信用部材以外の新製品開発にも積極的に取り組んできた。開発部では取引先、仕入先など関連企業からの依頼や情報提供に応じて、また社内からの提案に応じて新製品企画・開発を行っている。
    ⇒「第1問(設問1)」の解答でもありましたが、C社は新製品開発力が高い企業です。
    では、なぜY社との共同開発事業に失敗してしまったのでしょうか。。。

 

  • その取り組みとして、過去に大手建材メーカーY社からの提案で、Y社の建材メーカーとしてのノウハウとC社の通信用部材のノウハウを活用し、新製品として施工性が良く多機能なオフィス用OAフロアを事業化した経験がある。OAフロアとは、コンピュータなどの多くの配線を床下配線可能な状態にするために床を二重化するものである。全国に販売拠点を持ち多くの建設会社と取引関係のあるY社は、ビル工事を施工する建設会社からOAフロアの引き合いがあった場合、他メーカーから商品を仕入れて受注に対応していたが、当時引き合いが多くなったことから自社ブランド製品化を進めるためにC社へ共同開発の提案を行ったものである。
    ⇒Y社からC社に対して共同開発の提案を行うまでの経緯が記述されていますが、ポイントはC社自身で市場分析を行った様子がないことです。
    また、「当時引き合いが多くなった」というY社の感覚的な文言しか記述されておらず、Y社においても詳細な市場分析を行ったのかすら疑問が残ります。
    いずれにしても、新規事業開発においては、C社自身で市場需要予測、SWOT分析といった分析を実施することが鉄則です。

 

  • 北関東にOAフロア量産の関東工場をC社が建設して製造し、Y社の物流センターへ納品する契約をした。Y社では物流センターに在庫し即納体制を整え、全国にある販売網を利用して建設会社に営業を展開した。しかし、ビル完成後にIT機器等を納品する事務機メーカーのシンプルな機能で軽量化された低価格製品と競合し、Y社の販売数量が低迷したため、C社はこの事業から撤退した。
    ⇒Y社との共同開発では、製品を販売開始する前の段階からOAフロアを量産するための関東工場を建設するなど、新規事業開発を一気に進めたと読み取れます。
    新規事業開発においては、新規事業への進出失敗による投資回収リスクを最低限に抑えるため、予め量産化や撤退の評価基準を明確に設定した上で、収益計画を立案した上で、定期的に進捗状況を確認しながら徐々に生産規模を拡大していくなど、計画的かつ段階的に進めていくことが鉄則です。

 

  • その他C社開発部では、通信用部材以外の新製品開発を多く手掛けてきたが、現在まで大きな成功例はなく推移している。
    ⇒Y社との共同開発だけでなく、それ以外にも数多くの新製品開発を手掛けてきたが、大きな成功例がないと記述されています。
    これは、仕入先など関連企業からの依頼や情報提供に応じて、また社内からの提案に応じて新製品開発を行ってはいるものの、C社自身が開発に着手する前に十分な市場分析を実施していない(または市場分析能力が低い)ということを示しています。

 

Y社との共同開発事業の失敗要因

  • C社自身で市場需要予測、SWOT分析といった分析を実施することなく、Y社主導の共同開発提案に基づき、共同開発事業を進めたこと
  • 製品を販売開始する前の段階から、OAフロアを量産するための関東工場を建設するなど、新規事業開発を一気に進めたこと

 

今後の新規事業開発の留意点

新規事業開発における留意点(鉄則)は以下の通りです。

 

  • 新規事業開発においては、C社自身で市場需要予測、SWOT分析といった分析を実施すること
  • 収益計画を立案した上で、定期的に進捗状況を確認しながら徐々に生産規模を拡大していくなど、計画的かつ段階的に進めていくこと
  • 予め量産化や撤退の評価基準を明確に設定すること。

 

解答例

ここまでに整理してきた内容に基づき、140文字以内にまとめます。

 

失敗要因は、Y社主導の共同開発提案に基づき関東工場を建設するなど事業開発を一気に進めたことである。新規事業開発の留意点は、C社自身で十分な市場分析を行い予め量産化や撤退の評価基準を明確に設定した上で、収益計画に対する進捗状況を定期的に確認しながら計画的かつ段階的に進めることである。(140文字)

 

事例Ⅰ~事例Ⅲは正解のない試験なので、あくまで解答例として参考にしてもらえればと思います。

 


 

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