今回は、「事例Ⅲ ~平成28年度 解答例(2)(第1問)~」について説明します。
目次
事例Ⅲ ~平成28年度試験問題一覧~
平成28年度のその他の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
第1問
第1問(配点20点)
カット野菜業界におけるC社の(a)強みと(b)弱みを、それぞれ40字以内で述べよ。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
解答の方向性
第1問では、X農業法人時代の事業経過、およびC社の現在の事業内容を把握し、カット野菜業界におけるC社の強みと弱みを分析する能力を問われています。
「事例Ⅲ」の第1問としてよくあるパターンの問題であり、与件文から該当する文言を抜き出して列挙していきます。与件文から該当する文言を抜き出すのはそれほど難しくありませんが、抜き出した強みと弱みを文字数内に収めるために取捨選択するのが難しい問題です。
「カット野菜業界における」という枕詞が入っていることに注意して解答を考えていきます。
与件文で関連しそうな箇所
与件文では、【C社の概要】に分散して記載されています。
また、【生産概要】の最下行に記載されている「衛生管理レベルの課題」が該当しそうです。
問題文の中では、以下の部分が該当します。
詳細に示すと以下の通りとなります。
【C社の概要】の中盤には、「原材料費率が大きく増加した」「限界利益がマイナスとなっている」「効果的な生産管理が組織的に行われていない」といったC社の経営状況に関する問題が記述されていますが、問題文に「カット野菜業界における」という枕詞が入っていること、およびC社の経営状況に関する改善は「第2問」の題材として取り上げられていることから、「第1問」の解答には使用しません。
- C社は、2013年に野菜を栽培するX農業法人から分離し、設立された企業である。
⇒この文章だけを読んでも分かりませんが、X農業法人の出資子会社であることによって、一定量の野菜を調達できたり、顧客から新たな取引の要望を受けるといったメリットを享受しているため「強み」として捉えていきます。 - カット野菜は、販売先の意向を受けて、野菜の流通を担っている卸売業者や仲卸業者が、野菜の販売方法の一つとして始めたと言われている。またカット野菜は、販売先から要望される通年納品に応えるため、常に一定量の野菜を確保する必要がある。
そのため同業者の多くが野菜の調達能力が高い卸売業者や仲卸業者である。
⇒同業者の多くと同様に、C社はX農業法人の出資子会社であり野菜の調達能力が高いため「強み」として捉えていきます。 - 工場操業状況は、規格外野菜を主に原料として利用していた時には収穫時期から約半年間の季節操業となっていたが、市場規格品の使用や他産地からの仕入れによって工場操業期間は長くなったものの、C社に受け継がれた後でもまだ約3カ月の休業期間が例年生じている。販売先からは通年取引の要望がある。
⇒販売先から通年取引の要望があるにも関わらず、まだ約3カ月の休業期間が生じているため「弱み」として捉えていきます。もし、通年取引ができるようになればカット野菜業界における大きな「強み」となるはずです。 - 現在取引関係にある顧客や関連する業界から、C社とX農業法人との関係に注目した新たな取引の要望がある。
⇒ここでも、C社がX農業法人の出資子会社であることを理由に、顧客から新たな取引の要望を受けているため「強み」として捉えていきます。 - また食品工場としての施設・設備面などの衛生管理、作業方法などの衛生管理、どちらの管理レベルにも課題があり、販売先からの改善要求もある。
⇒販売先からの改善要求もあるにも関わらず、衛生管理レベルに課題があり対処ができていないことは深刻な状況であるため「弱み」として捉えていきます。
ただし、衛生管理レベルについては「第3問」でも取り扱うため、「第3問」の解答を記入した後、記載内容が重複していないかについて確認する必要があります。
強み
抜き出した「強み」を整理します。
- 2013年に野菜を栽培するX農業法人から分離し、設立された企業である。
- C社とX農業法人との関係に注目した新たな取引の要望がある。
- 通年取引の要望に応えることはできていないが、X農業法人から常に一定量の規格外野菜を安価に調達することができる。
弱み
抜き出した「弱み」を整理します。
「限界利益がマイナスとなっている」「効果的な生産管理が組織的に行われていない」といった内容は、カット野菜業界における「弱み」ではないため、取り上げていません。
- 販売先から通年取引の要望があるが、まだ約3カ月の休業期間が例年生じている。
- 食品工場としての衛生管理レベルに課題があり、販売先からの改善要求もある。
解答例
ここまでに整理してきた内容を40文字以内にまとめます。
C社の強み
X農業法人の100%子会社であり、同社から一定量の規格外野菜を安価に調達できること。(40文字) |
C社の弱み
通年取引ができず衛生管理レベルに課題があるなど販売先の要望に応えられていないこと。(40文字) |
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