事例Ⅲ ~平成29年度 解答例(5)(第4問)~

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今回は、「事例Ⅲ ~平成29年度 解答例(5)(第4問)~」について説明します。

 

目次

事例Ⅲ ~平成29年度試験問題一覧~

平成29年度のその他の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

取引先との関係強化

取引先と言っても色々あります。例として、自社の製品やサービスを提供している主要顧客であったり、過去に製品やサービスを共同開発したことのある企業や大学といった研究機関などが挙げられます

いずれにしても、既に取引があり信頼関係が構築されている取引先は、企業にとって重要な経営資源であり、収益を拡大するための戦略を検討する上で必要不可欠な要素です。

事例Ⅲの問題で、取引先との関係強化について直接的に問われることはあまり多くないと思われますが、知識として頭の片隅に入れておかないと、試験中は気付かないことがあるので、注意が必要です。

 

与件文において、取引先との関係を強化するためのチャンスを示すキーワードは以下の通りです。

  • 主要顧客から新規顧客を紹介してもらう。
  • 主要顧客から新製品や新サービスの提供依頼を受ける。
  • 主要顧客から海外進出に向けて協力依頼を受ける。
  • 取引先とC社の主力製品を共同開発したことがある。

 

試験問題の例

以下に示すような問題では、解答の中に「取引先の関係強化」というキーワードを盛り込むことができないか検討してみることをお薦めします。

 

  • C社の今後の戦略を提案せよ。
  • 取引先に紹介された企業からの新規受注を獲得することによるC社のメリットは何か。
  • 取引先から依頼された新製品を開発して提供することによるC社のメリットは何か。

 

対策と効果の例

解答の中に「取引先の関係強化」というキーワードを盛り込んだ解答例を以下に示します。

 

C社の今後の戦略

  • C社の戦略は、主要顧客との関係を強化して、主要顧客のニーズに応じた新製品を提供することで、収益性の向上を図ることである。
  • C社の戦略は、既存製品を共同開発した取引先との連携を強化して、市場のニーズに応じた新製品の共同開発を進めることである。

 

C社のメリット

  • 取引先に紹介された企業からの新規受注を獲得することによって、取引先との関係を強化することができる。
  • 取引先からの依頼に応えて新製品を開発することによって、取引先との関係を強化することができる。

 

第4問

第4問(配点30点)

 

C社社長は、今後大きな設備投資や人員増をせずに、高付加価値なCNC木工加工機事業を進めたいと思っている。これを実現するためには、製品やサービスについてどのような方策が考えられるか、140字以内で述べよ。

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

解答の方向性

第4問は、大きな設備投資や人員増をせずに、高付加価値な新規事業を進めていくための方策を提言せよ。という問題です。

 

与件文には、大きな設備投資や人員増をせずに、高付加価値な新規事業を進めていくための方策に関連する具体的な記述は見当たらないため、発想を膨らませて、C社に最適な方策を解答として整理していくこととなりますが、解答が単なる一般論にならないよう注意する必要があるため、与件文の中からまだ取り上げていない題材がないかを探して、C社に関連性のある具体的な提言とする構成する必要があります。(これは事例Ⅲに限った話ではありません。)

 

与件文で関連しそうな箇所

与件文の最後に「加工賃収入が中心であったC社にとって、付加価値の高い最終製品に育つものとしてCNC木工加工機は今後が期待されている」との記述はありますが、具体的な方策を示唆するようなヒントは記載されていません。

与件文に登場する人物の中で、第1問から第3問までの解答の材料として取り上げなかった「CAD等のITの技能を備えた常務」と「外部のCNC制御装置製作企業」を活用した解答としていくことで、単なる一般論ではなく、C社に効果的な提言としていくことができそうです。

 

問題文の中では、以下の部分が該当します。

 

  • 現在の社長は、創業者である先代社長から経営を引き継いだ。10年前、CAD等のITの技能を備えた社長の長男(現在常務)が入社し、設計のCAD化や老朽化した設備の更新など、生産性向上に向けた活動を推進してきた。この常務は、高齢の現社長の後継者として社内で期待されている。
    ⇒対応策としてITを活用できるかもしれない。
  • 新規事業は、次元CADで作成した次元データを用いて、次元形状の加工ができる小型・精密木工加工機「CNC木工加工機」の事業化である。この新規事業は、異業種交流の場で常務が耳にした木材加工企業の話がヒントになり進められた。「木工加工機は大型化、NC化が進み、加工機導入の際には多額の投資を必要とするようになった。以前使っていたならい旋盤のような汎用性があり操作性が良い加工機が欲しいが、見つからない」との情報であった。ならい旋盤とは、模型をなぞって刃物が移動し、模型と同じ形状の加工品を容易に再現できる旋盤である。
    ⇒「ならい旋盤のような汎用性があり操作性が良い加工機が欲しい」という顧客のニーズが記載されているため、C社の製品開発はここを目指すべきということになります。
  • 常務と設計担当者が中心となり加工機の設計、開発を進め、外部のCNC制御装置製作企業も加えて、試作機そして1号機の実現にこぎつけた。
    ⇒製品の開発には、これまでも連携した「外部のCNC制御装置製作企業」の協力が不可欠です。
  • 特に、NC機械を使用した経験のない家具や工芸品などの木工加工関係者から、プログラムの作成方法、プログラムの提供の可能性、駆動部や刃物のメンテナンス方法、加工可能な材質などに関する質問が多くあり、それに答えることで、CNC木工加工機の加工精度や操作性、メンテナンスの容易性が来展者から評価され、C社内では大きな手応えを感じた。
    ⇒サービスとして何を提供できるかを探したとき、与件文の中でヒントとなるのはここだけのようです。
  • これまで加工賃収入が中心であったC社にとって、付加価値の高い最終製品に育つものとしてCNC木工加工機は今後が期待されている。
    ⇒与件文の最終行に以下の文章がありますが、あまりヒントにはなりそうにありません。

 

製品の開発

これまでのCNC木工加工機の設計・開発に関する経緯を整理してみます。

 

異業種交流の場で常務が耳にした「以前使っていたならい旋盤のような汎用性があり操作性が良い加工機が欲しい」という情報をヒントにして、常務と設計担当者が中心となり加工機の設計、開発を進め、外部のCNC制御装置製作企業も加えて、試作機そして1号機の実現にこぎつけた。

木工機械の展示会に出店したところ、来展者2社から注文が入り、本格的に生産がスタートした。このCNC木工加工機については、各方面から注目されており、今後改良や新機種の開発を進めていく予定である。

C社にとって付加価値の高い最終製品に育つものとしてCNC木工加工機は今後が期待されている。

 

もう少し簡潔に整理すると、C社にとって目指すべき最終製品は顧客のニーズである「ならい旋盤のような汎用性があり操作性が良い加工機」である。常務と設計担当者に外部のCNC制御装置製作企業も加えて、試作機そして1号機の実現にこぎつけたが、今後さらに改良や新機種の開発を進めていく予定である。ということになります。

 

サービスの開発

「製品の開発」は、これまでに開発してきた経緯や目指すべき最終製品に関する記述があるためイメージしやすいですが、サービスについては全く記述がないため、どこから取り掛かればよいか分からず、難しい問題です。

 

まず、「CAD等のITの技能を備えた常務」に着目します。

「第1問」「第2問」でも、CAD等のITの技能を備えた常務の技術を活用して「対応策としてITを活用できるかもしれない。」と考えながらも、実際には解答には盛り込まなかったことがしっくりときていませんでしたが「第4問」では活用できそうです。

 

続いて、ITを活用したサービスを開発しようとしたときに、何を提供できるのかについて与件文を見直していくと、該当するのは以下の箇所だけであり、「プログラムの作成方法」に関する研修を行ったり、「プログラムの提供」を行うことができそうです。

 

  • 特に、NC機械を使用した経験のない家具や工芸品などの木工加工関係者から、プログラムの作成方法、プログラムの提供の可能性、駆動部や刃物のメンテナンス方法、加工可能な材質などに関する質問が多くあり、それに答えることで、CNC木工加工機の加工精度や操作性、メンテナンスの容易性が来展者から評価され、C社内では大きな手応えを感じた。

 

したがって、ITの技能を備えた社長の長男(現在常務)を中心として、NC機械を使用した経験のない木工加工関係者に対して、「プログラムの作成方法」に関する研修や「プログラムの提供」を行うサービスを開発する。という趣旨で解答を整理していきます。

 

  • あくまで「木工加工関係者」を対象とした展示会で評価を受け大きな手応えを感じた状況ではあるが、製品は「各方面から注目されており」という記述があるため、サービス提供の対象を「木工加工関係者」に限定せず「顧客」に変更する。
  • C社にとっては、「プログラムの作成方法」に関する研修を実施したとしても、継続的なサービス提供にはならないが、「プログラムの提供」を行えば継続的にサービス提供をすることができる。また、顧客視点で考えた場合、プログラムを作成する技術者を増員して育成するよりも、プログラム自体を提供してもらった方が効率的だと考えられるため、開発するサービスは「プログラムの提供」を行うサービスに集中することとする。

 

上記の考えから、ITの技能を備えた社長の長男(現在常務)を中心として、NC機械を使用した経験のない顧客に対して、「プログラムの提供」を行うサービスを開発する。という趣旨で解答を整理していきます。

 

解答例

ここまでに整理してきた内容を140文字以内にまとめます。

 

製品は、CNC木工加工機の設計、開発を進めた外部のCNC制御装置製作企業と引き続き連携して、ならい旋盤のような汎用性があり操作性が良い製品の共同開発を進める。サービスは、ITの技能を備えた常務を中心として、NC機械を使用した経験のない顧客にプログラムを提供するサービスを開発する。(136文字)

 

事例Ⅰ~事例Ⅲは正解のない試験なので、あくまで解答例として参考にしてもらえればと思います。

 


 

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