今回は、「運営管理 ~H30-29 売場構成・陳列(1)商品陳列~」について説明します。
目次
運営管理 ~平成30年度一次試験問題一覧~
平成30年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
客単価の向上
店舗の「売上高」は「客単価」と「来店客数」を掛け合わせたものとして考えられます。
「来店客数」の増加は、広告などの店舗外活動を中心とした販売促進活動によって実現されますが、「客単価」の増加は、「インストアマーチャンダイジング」という店舗内の販売促進活動によって実現することができます。
「商品の陳列方法」も「インストアマーチャンダイジング」の1つの施策です。
顧客の購買動機形成や意思決定に関しては、最初から買うものを決めて来店する人は約1割しかおらず、店舗に来てから購入するものを決定する非計画購買が約9割を占めているというデータがあるため、商品の陳列方法を工夫することによって、顧客の衝動買いを促進するなど「客単価」の増加を図ることができます。
「客単価」は「動線長」「立寄率」「視認率」「買上率」「買上個数」「商品単価」を掛け合わせたものとして考えられるため、以下の式のように表現することができます。
具体的には、商品の陳列方法を工夫することによって、来店した顧客が店内を歩き回る距離を伸ばし(動線長の向上)、商品の前で顧客の足を引き留めさせ(立寄率の向上)、商品に気付かせ(視認率の向上)、興味や関心を持たせて購入してもらう(買上率の向上)という流れをイメージしてもらうと分かりやすいと思います。
客単価の構成要素
要素 | 説明 |
動線長 | 店内をどれだけ長く歩いてもらえるか。 |
立寄率 | 店内を歩きながらどれだけ売り場に立ち寄ってもらえるか。 |
視認率 | 立ち寄った売り場でどれだけ多くの商品を視認してもらえるか。 |
買上率 | 視認した商品をどれだけ購入してもらえるか。 |
買上個数 | 商品をどれだけ多く購入してもらえるか。 |
商品単価 | より単価の高い商品を購入してもらえるか。 |
商品陳列方法の分類
商品の陳列方法は、「量感陳列」と「展示陳列」に分類されます。
量感陳列
「量感陳列」とは、食料品や日用雑貨といった最寄品を対象とした陳列方法であり、商品を平台、ワゴン、ゴンドラなどにまとめて陳列して、商品のボリューム感と安さを演出することによって、顧客の購買意欲を刺激する陳列方法です。
展示陳列
「展示陳列」とは、高級品やファッション品といった買回品を対象とした陳列方法であり、商品をショーウインドウ、ステージ、コーナーなどに展示して、顧客に店舗のコンセプトを訴求したり、重点商品を魅力的に見せる陳列方法です。
陳列方法
商品の陳列には様々な方法がありますが、一部を以下に示します。
エンド陳列
「エンド陳列」とは、陳列している列の端に、その列に陳列している品種と同じ商品をまとめて陳列する方法です。特売品などのマグネット商品をボリューム感いっぱいに陳列することで、顧客の購買意欲を刺激する方法です。
ジャンプル陳列
「ジャンプル陳列」とは、テーブル、バスケット、ショッピングカートに商品を投げ込むように陳列する方法です。少ない手間で商品を陳列することができますが、商品が安っぽく感じられるため、高額商品には不向きであり、特売品の陳列に向いている陳列方法です。
カットケース陳列
「カットケース陳列」とは、商品を什器に陳列するのではなく、商品の箱をカットしてそのまま陳列する方法です。ディスカウントストアでよく使用される方法であり、陳列の手間が少なく、新鮮さや安さを訴求することができます。
レジ前陳列
「レジ前陳列」とは、商品を購入する顧客が必ず通過するレジの手前に、単価の低い商品を陳列する方法です。顧客の「ついで買い」を誘発し、客単価のアップを図ることができます。
フック陳列
「フック陳列」とは、商品をフックに吊り下げて陳列する方法です。
子供向けの「お菓子」であったり、ドラッグストアの「歯ブラシ」などをイメージすれば分かりやすいかと思います。
フックに吊り下げて陳列するため、顧客だけでなく店員にとっても商品が見やすいため、在庫量を把握しやすいというメリットがありますが、フックに吊り下げることができる商品数が限定されるため、大量に陳列できないというデメリットもあります。
バーチカル陳列(垂直陳列)
「バーチカル陳列」とは、商品間の品質に差がない場合に、同一商品群や関連商品を最上段から最下段まで垂直にに陳列する方法のことをいいます。
ホリゾンタル陳列(水平陳列)
「ホリゾンタル陳列」とは、商品間の品質に著しい差がある場合、商品を同じ棚板に水平に陳列する方法のことをいいます。
ゴールデンゾーン
「ゴールデンゾーン」とは、顧客にとって、最も商品が目に付きやすく、最も手に取りやすい高さのことをいい、商品の販売効果が高いため、売れ行きのよい商品や粗利益率の高い商品を陳列することによって、店舗の売上を効率的に増やすことができます。
男性・女性・子供によって目線の高さが異なるため、ターゲットとする顧客によって「ゴールデンゾーン」の高さも変わってきます。
例えば、お菓子売り場では、大人向けのお菓子は陳列棚の上の方に、子供向けのお菓子は、陳列棚の下の方に並べるといった具合に、ターゲットとする顧客の身長によって、そのゾーンを使い分ける必要があります。
フェイシング管理
「フェイス」とは、商品を陳列したときに顧客の目に見える面のことをいい、「フェイシング管理」とは、棚に陳列する商品の「フェイス数」を決定することをいいます。
棚に商品を陳列するときに「フェイス数」を増やすと、顧客の目に付きやすくなるため、商品の売上を増加させる効果がありますが、「フェイス数」を増やした商品の売上増加率は逓減していくため、「フェイス数」を1から10に増やしても売上が10倍に増加するわけではありません。
フェイス数を増やすことによる効果
「フェイシング管理」では、商品の販売実績に基づき、売れ筋商品の「フェイス数」は増やし、売れ行きの良くない商品については「フェイス数」を少なくするというのが基本的な考え方です。
「フェイス数」を増やして商品を陳列した場合に得られる効果は以下の通りです。
- 売上の増加
- 品切れによる販売機会の損失の防止
- 商品の補充回数の削減
売上の増加
棚に商品を陳列するときに「フェイス数」を増やすと、顧客の目に付きやすくなるため、商品の売上を増加させる効果があります。
売れ筋商品だけでなく、新商品やプライベート商品など販売を促進したい商品についても「フェイス数」を増やすことによって、商品の認知度が上がり、売上増加を期待することができます。
品切れによる販売機会の損失の防止
「売れ筋商品」であれば、陳列している商品が他の商品よりも早く減少していきます。
売れ筋商品の「フェイス数」を増やすと、陳列できる商品の数量が増えるため、品切れなどによる販売機会の損失を防ぐすることができます。
商品の補充回数の削減
「売れ筋商品」であれば、陳列している商品が他の商品よりも早く減少していきます。
売れ筋商品の「フェイス数」を増やすと、陳列できる商品の数量が増えるため、倉庫に保管している商品を店頭に陳列する補充作業の回数を削減することができます。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【平成30年度 第29問】
売場づくりの考え方に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 売上数量が異なる商品でも売場スペースを均等に配分することで、欠品を減らし、商品ごとの商品回転率を均一化することができる。
イ 同じ商品グループを同じ棚段にホリゾンタル陳列すると、比較購買しやすい売場になる。
ウ 購買率の高いマグネット商品をレジ近くに配置することで、売場の回遊性を高めることができる。
エ ゴールデンゾーンに商品を陳列する場合、それ以外の位置に陳列された商品より多フェイスにしなければ視認率は高まらない。
オ 棚割計画を立てる際、類似商品や代替性のある商品をまとめて配置することをフェイシングという。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
店舗における売場づくりに関する知識を問う問題です。
(ア) 不適切です。
商品を陳列するとき、商品の販売実績に基づき、売れ筋商品の「フェイス数」は増やし、売れ行きの良くない商品については「フェイス数」を少なく陳列することを「フェイシング管理」といいます。
「フェイス数」を増やして商品を陳列した場合に得られる効果は以下の通りです。
- 売上の増加
- 品切れによる販売機会の損失の防止
- 商品の補充回数の削減
商品の販売実績に基づき、フェイシング管理によって商品の売場スペースを配分することで、商品の欠品を減らすことができるため、「売上数量が異なる商品でも売場スペースを均等に配分することで、欠品を減らすことができる」とした選択肢の内容は不適切です。
ちなみに、「商品回転率の均一化」についても、商品の販売実績に基づき、フェイシング管理等によって商品の売場スペースを配分することで実現することができます。
(イ) 適切です。
「ホリゾンタル陳列」とは、商品間の品質に著しい差がある場合、商品を同じ棚板に水平に陳列する方法のことをいいます。
棚に陳列された同じカテゴリの商品群から品目を比較選択する場合、顧客の視線は左から右に水平に流れていくとされているため、水平に陳列する「ホリゾンタル陳列」が適しています。
したがって、選択肢の内容は適切です。
(ウ) 不適切です。
「マグネット商品」とは、集客力の高い商品であり、店舗に顧客を引き寄せる(誘導する)商品のことをいいます。「マグネット商品」には、以下の2種類があります。
- 店舗の前を歩く人に興味を与えて店舗に誘導する商品
- 特売のチラシなどにより顧客を店舗に誘導する商品
「店舗の前を歩く人に興味を与えて店舗に誘導する商品」は、店舗の入り口付近など店舗の前を歩く人が目にする場所に陳列します。
「特売のチラシなどにより顧客を店舗に誘導する商品」は、店舗の一番奥に陳列して、来店した顧客の動線長を長く(回遊性の向上)することによって、顧客に特売商品以外の「ついで買い」を誘発するという使い方をすることもできます。
「レジ前陳列」とは、商品を購入する顧客が必ず通過するレジの手前に、単価の低い商品を陳列することによって、顧客の「ついで買い」を誘発し、客単価のアップを図るための陳列方法のことをいいます。
上述の説明内容から、選択肢の内容は不適切です。
(エ) 不適切です。
「ゴールデンゾーン」とは、顧客にとって、最も商品が目につきやすく、最も手に取りやすい高さのことをいい、それ以外の位置に陳列された商品より多フェイスにしなくても、商品の視認率が高いゾーンであるため、選択肢の内容は不適切です。
(オ) 不適切です。
「フェイス」とは、商品を陳列したときに顧客の目に見える面のことをいい、「フェイシング管理」とは、棚に陳列する商品の「フェイス数」を決定することをいいます。
棚に商品を陳列するときに「フェイス数」を増やすと、顧客の目に付きやすくなるため、商品の売上を増加させる効果があります。
したがって、「フェイシング」とは、類似商品や代替性のある商品をまとめて配置することではなく、棚に陳列する同一商品の「フェイス数」を決定することであるため、選択肢の内容は不適切です。
答えは(イ)です。
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