今回は、「財務・会計 ~H30-1 伝票式会計(2)~」について説明します。
目次
財務・会計 ~平成30年度一次試験問題一覧~
平成30年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
伝票式会計/帳簿組織 -リンク-
「伝票式会計」では、「仕訳帳」を使わずに「伝票」を用いて日々の取引を記録していきます。一方で、「帳簿組織」とは、日々の取引を「仕訳帳」に記帳する管理体系です。
「伝票式会計」と「帳簿組織」は、一緒に勉強することをお薦めします。
伝票
伝票には、「入金伝票」「出金伝票」「振替伝票」「仕入伝票」「売上伝票」の5種類の伝票があり、使用する伝票の種類により「三伝票制」と「五伝票制」という2つの運用体系があります。
三伝票制
「三伝票制」では、「入金伝票」「出金伝票」「振替伝票」の合計3種類の伝票で取引を管理していきます。
入金伝票
借方は「現金」となり、貸方には伝票に記載される勘定科目が計上されます。
出金伝票
貸方は「現金」となり、借方には伝票に記載される勘定科目が計上されます。
振替伝票
伝票に、借方と貸方の勘定科目が記載されています。
五伝票制
「五伝票制」では「三伝票制」で紹介した3種類の伝票に「仕入伝票」と「売上伝票」を追加した合計5種類の伝票で取引を管理していきます。
仕入伝票
借方は「仕入」、貸方は「買掛金」となります。
ただし、伝票に「買掛金」「支払手形」などの勘定科目が記載されている場合は、貸方には伝票に記載される勘定科目が計上されます。
なお、仕入れた商品の「返品(仕入戻し)」と「値引(仕入値引)」については、「仕入伝票」に赤字で記入されます。
売上伝票
借方は「売掛金」、貸方は「売上」となります。
ただし、伝票に「売掛金」「受取手形」などの勘定科目が記載されている場合は、借方には伝票に記載される勘定科目が計上されます。
なお、販売した商品の「返品(売上戻り)」と「値引(売上値引)」は「売上伝票」に赤字で記入されます。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【平成30年度 第1問】
商品120,000円を売り上げ、代金のうち30,000円を現金で受け取り、残額を掛けとした。以下のように入金伝票を作成した場合、振替伝票はどのように記入すべきか。最も適切なものを下記の解答群から選べ。なお、当社では3伝票制が用いられているものとする。
[解答群]
ア 売掛金 90,000 売上 90,000 イ 売掛金 120,000 売上 120,000 ウ 現金
売掛金30,000
90,000売上 120,000 エ 現金
売掛金90,000
30,000売上 120,000
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
「伝票会計」による仕訳処理に関する知識を問う問題です。
三伝票制
今回の企業では「三伝票制」を採用しているため、以下の3種類の伝票で取引を管理しています。
今回の問題では、商品販売時における代金の一部受取に関する処理を起票するため、「入金伝票」と「振替伝票」を使用します。
- 入金伝票
- 出金伝票
- 振替伝票
商品販売と代金の一部受取に関する仕訳処理
まず最初に、伝票を意識せずに、取引内容に関する仕訳処理を行います。
取引内容
- 商品120,000円を売り上げ、代金のうち30,000円を現金で受け取り、残額を掛けとした。
仕訳処理
上記の取引内容に関する仕訳処理は以下の通りとなります。
借方 | 貸方 | ||
売掛金 現金 |
90,000円 30,000円 |
売上 | 120,000円 |
入金伝票の仕訳処理
入金伝票には、「借方」の勘定科目は、必ず現金となるため記載されず、「貸方」の勘定科目が記載されます。
入金伝票(例)
仕訳処理
今回の「入金伝票」には、「貸方」の勘定科目が「売掛金」と記載されているため、仕訳処理は以下の通りとなります。
借方 | 貸方 | ||
現金 | 30,000円 | 売掛金 | 30,000円 |
振替伝票の仕訳処理
振替伝票には、「借方」と「貸方」の勘定科目が記載されます。
振替伝票(例)
仕訳処理
今回の取引では「商品120,000円を売り上げ、代金のうち30,000円を現金で受け取り、残額を掛けとした。」となっていますが、「入金伝票」において「貸方」が「売上」ではなく「売掛金」と記載されていることから、「振替伝票」ではいったん全額を「売掛金」として起票していることが分かります。
したがって、「振替伝票」に関する仕訳処理は、以下の通りとなります。
借方 | 貸方 | ||
売掛金 | 120,000円 | 売上 | 120,000円 |
仕訳処理の確認
「入金伝票」と「振替伝票」の仕訳処理を合わせた場合と、伝票を意識せずに行った取引の仕訳処理を比較して、仕訳内容に間違いがないか確認を行います。
「入金伝票」と「振替伝票」の仕訳処理を合わせた場合
借方 | 貸方 | ||
売掛金 現金 |
120,000円 30,000円 |
売上 売掛金 |
120,000円 30,000円 |
伝票を意識せずに行った取引の仕訳処理
借方 | 貸方 | ||
売掛金 現金 |
90,000円 30,000円 |
売上 | 120,000円 |
答えは(イ)です。
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