今回は、「運営管理 ~H29-15 生産の合理化・改善(4)ECRSの原則~」について説明します。
目次
運営管理 ~平成29年度一次試験問題一覧~
平成29年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
製品工程分析・運搬分析・流動数分析 -リンク-
本ブログにて「製品工程分析」「運搬分析」「流動数分析」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- 製品工程分析・運搬分析・流動数分析のまとめ
- 製品工程分析
- R4-13 物の流れの管理-分析手法(8)製品工程分析
- R2-7 物の流れの管理-分析手法(6)工程分析
- R1-13 物の流れの管理-分析手法(5)工程分析
- H30-10 物の流れの管理-分析手法(4)工程分析
- H29-6 物の流れの管理-分析手法(2)工程分析
- 運搬分析
- H29-13 物の流れの管理-分析手法(3)運搬活性分析
ECRSの原則(改善の4原則)
「ECRSの原則」は、生産活動の作業効率を改善するために検討すべき観点とその順番を示しており、Eliminate(排除)、Combine(結合)、Rearrange(交換)、Simplify(簡素化)という4つの観点の頭文字から構成されています。
「ECRSの原則」を活用して、作業自体をなくしたり(E)、作業をまとめて行ったり(C)、作業の順番を入れ替えたり(R)、作業を単純化する(S)といった方法で、生産活動における作業効率を改善していきます。
分析手法
今回の問題で出題されている分析手法について説明していきます。
ABC分析
「ABC分析」は、材料などの在庫管理を効率的に行うための管理手法として用いられる代表的な方法です。
「ABC分析」では、横軸に在庫の品目を金額または量の多い順番に並べて、縦軸に在庫の金額または量を描いた「ABC曲線」により、在庫の品目をグルーピングして、A品目、B品目、C品目に該当するグループごとに在庫管理方法を決定していきます。
「ABC分析」は「パレート分析」と同様のグラフを使いますが、横軸に品目を取る場合は「ABC分析」といい、横軸に問題や課題を取る場合は「パレート分析」といいます。
ABC分析
多くの在庫品目を取り扱うときそれを品目の取り扱い金額又は量の大きい順に並べて、A、B、Cの3種類に区分し、管理の重点を決めるのに用いる分析。(JISZ8141-7302)
連合作業分析
「連合作業分析」とは「IE(作業研究)-方法研究-動作研究-作業系列」で採用される分析手法であり、作業者や機械による作業を効率化するために、時間の経過に合わせた作業内容の関連性を「ECRSの原則」に従って分析することによって、作業サイクルの時間短縮、作業者や機械の稼働率向上、配置人員数の削減を実現することを目的としています。
「連合作業分析」は、人が機械を使って行う作業内容の関連性を分析する「人・機械分析」と、複数の作業者が協同して行う作業内容の関連性を分析する「組作業分析」に大別されます。
人・機械分析
「人・機械分析」では、「機械が作業している間の作業者の手待ち」や「作業者が作業している間の機械の停止・空転」といったポイントに着目して改善することによって、作業の効率化を図っていきます。
組作業分析
複数の作業者が協同して行う作業を「組作業」といいます。
「組作業分析」では、複数の作業者で実施している「組作業」における作業者相互の稼働関係を記録した結果から、作業方法や人員配置の見直しを行い、作業者が受け持つ作業量の不均衡や手待ちの是正を行うことによって、作業の効率化を図っていきます。
連合作業分析
人と機械、二人以上の人が協同して作業を行う時、その共同作業の効率を高めるための分析手法。(JISZ8141-5213)
流動数分析
「流動数分析」とは、横軸に「時間」を、縦軸に「累計数量」を描いた「流動数曲線」を用いて物の流れの状況などを分析することをいいます。
「流動数曲線」は「累計流入曲線」と「累計流出曲線」の2つの曲線で構成され、「累計流入曲線」の方が「累計流出曲線」と同じか上方に描画されます。
「流動数分析」は、「見込生産における余剰在庫の分析」「受注生産における受注から納品までの期間の分析」「生産工程における仕掛品の在庫量や滞留時間の分析」「製品の販売から代金の回収までの期間の分析」などに用いられます。
流動数分析(見込生産/受注生産)
生産工程における仕掛品の在庫量や滞留時間の分析
「流動数分析」を用いて、生産工程における仕掛品の在庫量や滞留時間を分析する場合、「累計流入曲線」においては縦軸に前工程から受け入れた材料や仕掛品の累計数量を、「累計流出曲線」においては縦軸に次工程に引き渡した仕掛品や製品の累計数量を描画します。
生産工程における仕掛品の在庫量や滞留時間の分析
「累計流入曲線」と「累計流出曲線」の縦軸(累計数量)の差分は、自工程に停滞している仕掛品の在庫量を表しており、横軸(時間)の差分は、前工程から仕掛品を受け入れてから、次工程に引き渡すまでの所要時間を表しています。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【平成29年度 第15問】
次の4つの手法で分析した結果から改善案を検討する際に、「ECRSの原則」が利用できる手法の数として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
<分析手法>
①ABC分析
②連合作業分析
③事務工程分析
④流動数分析
[解答群]
ア 1
イ 2
ウ 3
エ 4
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
「ECRSの原則」に関する知識を問う問題です。
「ECRSの原則」は、生産活動の作業効率を改善するために検討すべき観点とその順番を示しており、Eliminate(排除)、Combine(結合)、Rearrange(交換)、Simplify(簡素化)という4つの観点の頭文字から構成されています。
「ECRSの原則」を活用して、作業自体をなくしたり(E)、作業をまとめて行ったり(C)、作業の順番を入れ替えたり(R)、作業を単純化する(S)といった方法で、生産活動における作業効率を改善していきます。
選択肢に記載された4つの分析手法が、作業効率の改善を図るために利用されるものかという観点で確認していきます。
①ABC分析
「ABC分析」は、材料などの在庫管理を効率的に行うための管理手法として用いられる代表的な方法です。
「ABC分析」では、横軸に在庫の品目を金額または量の多い順番に並べて、縦軸に在庫の金額または量を描いた「ABC曲線」により、在庫の品目をグルーピングして、A品目、B品目、C品目に該当するグループごとに在庫管理方法を決定していきますが、作業効率の改善を図るための分析手法ではないため「ECRSの原則」は利用しません。
②連合作業分析
「連合作業分析」では、作業者や機械による作業を効率化するために、時間の経過に合わせた作業内容の関連性を「ECRSの原則」に従って分析することによって、作業サイクルの時間短縮、作業者や機械の稼働率向上、配置人員数の削減を実現するなど作業効率の改善を図るための手法であるため、「ECRSの原則」を利用します。
③事務工程分析
「事務工程分析」とありますが「工程分析」と理解すればよいかと思います。
「工程分析」では、効率化のために工程の作業内容を把握して、作業の無駄を無くすために動作を分析することにより、作業効率の改善を図るための手法であるため、「ECRSの原則」を利用します。
④流動数分析
「流動数分析」とは、横軸に「時間」を、縦軸に「累計数量」を描いた「流動数曲線」を用いて物の流れの状況などを分析することをいいますが、作業効率の改善を図るための分析手法ではないため「ECRSの原則」は利用しません。
「ECRSの原則」が利用できる手法は「連合作業分析」と「事務工程分析」の「2つ」です。
答えは(イ)です。
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