今回は、「運営管理 ~H29-13 IE/作業研究(6)運搬活性分析~」について説明します。
目次
運営管理 ~平成29年度一次試験問題一覧~
平成29年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
IE(Industrial Engineering:経営工学)
「IE」は「経営工学」と呼ばれ、生産性を向上させる技術として発展してきました。
その中で、工場の生産活動を対象とした改善の技術は「作業研究」と呼ばれ、工程や動作を分析して改善する「方法研究」と稼動状況や標準時間の設定を研究する「作業測定」で構成されています。
インダストリアルエンジニアリング、経営工学
経営目的を定め、それを実現するために、環境(社会環境及び自然環境)との調和を図りながら、人、物(機械、設備、原材料、補助材料及びエネルギー)、金及び情報を最適に設計し、運用し、統制する工学的な技術・技法の体系。(JISZ8141-1103)
方法研究
「方法研究」は、さらに「工程の分析を行う工程分析」と「作業の分析を行う動作研究」に分類されます。
「工程分析」とは、効率化のために工程を記号で把握して分析することであり、「動作研究」とは、作業の無駄を無くすために動作を分解して分析することです。
運搬分析
製品を生産する工程では、原材料、仕掛品、完成品といった物品の「運搬」が必ず発生しますが、「運搬」は製品に対して「付加価値」を生みだす作業ではないため「ムダ」と位置付けられます。
「付加価値」を生みださない「ムダ」である「運搬」を削減して、効率化するために「運搬工程分析」「運搬活性分析」「空(カラ)運搬分析」という手法を用いて、生産活動の改善を実現していきます。
今回は、「運搬活性分析」について説明します。
運搬活性分析
「運搬活性」とは対象とする物品の「移動のしやすさ」のことを表しています。
「運搬活性分析」では、各工程における物品の状態を「5段階の運搬活性示数」に区分することによって、工程全体における「運搬(ムダ)」を分析していきます。
「運搬活性示数」は、物品を移動する際の「4つの手間」のうち「省かれている手間の数」を表しており、数値が高いほど物品が移動しやすい状態にある(優れている)ことを示しています。
4つの手間
物品を移動する際の「4つの手間」には、以下4つが定義されています。
- まとめる
- 起こす
- 持ち上げる
- 持っていく
運搬活性示数
「運搬活性示数」は、物品を移動する際の「4つの手間」のうち「省かれている手間の数」を表しており、数値が高いほど物品が移動しやすい状態にある(優れている)ことを示しています。
床にバラ置きにされている物品は、移動するために「①まとめて、②起こして、③持ち上げて、④持っていく」という4つの手間がかかるため、運搬活性示数は最小の「0」となります。
一方で、既に動いているコンベア上に置かれている物品など運搬中の物品は、移動するための手間がかからず、4つの手間が省かれている状態であるため、運搬活性示数は最大の「4」となります。
平均活性示数
「平均活性指数」では、工程全体における「運搬活性示数」の平均値を表しています。
「平均活性指数」は、以下の公式により算出することができます。
例として、各工程における物品の状態を記した「運搬活性グラフ」での「平均活性示数」を求めていきます。
運搬活性グラフ
上記の「運搬活性グラフ」の全工程における「平均活性示数」は以下の通りとなります。
- ( 0+3+4+0+3+4+3+4 )÷ 8工程 = 2.625
上記の「運搬活性分析」の結果、工程1や工程4で物品を「床にバラ置き」にするのではなく、「パレット置き」と「容器/箱入り」にすることで「平均活性示数」をさらに改善できることが分かります。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【平成29年度 第13問】
工場内でのマテリアルハンドリングに関する記述として、最も不適切なものはどれか。
ア 運搬活性示数は、置かれている物品を運び出すために必要となる取り扱いの手間の数を示している。
イ 運搬管理の改善には、レイアウトの改善、運搬方法の改善、運搬制度の改善がある。
ウ 運搬工程分析では、モノの運搬活動を「移動」と「取り扱い」の2つの観点から分析する。
エ 平均活性示数は、停滞工程の活性示数の合計を停滞工程数で除した値として求められる。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
「運搬分析」に関する知識を問う問題です。
(ア) 不適切です。
「運搬活性示数」は、置かれている物品を移動するための4つの手間のうち「省かれている手間の数」を表しているため、選択肢の内容は不適切です。
(イ) 適切です。
運搬管理の改善には、レイアウトの改善、運搬方法の改善、運搬制度の改善があるため、選択肢の内容は適切です。
(ウ) 適切です。
「工程分析」においては「運搬」の1種類で区分して分析を行いますが、「運搬工程分析」では、運搬活動を「移動」と「取り扱い」の2種類に分けて分析を行うため、選択肢の内容は適切です。
「運搬工程分析」については、また改めて説明したいと思います。
(エ) 適切です。
「平均活性指数」は、工程全体における「運搬活性示数の合計値」を「工程数」で除することにより求められるため、選択肢の内容は適切です。
答えは(ア)です。
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